最近ー
お姉ちゃんの様子がおかしいー
そんな違和感を抱き始めた妹ー。
果たして、その理由とはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「………」
高校から帰って来た、高峰 千里(たかみね ちさと)は、
戸惑いの表情を浮かべていたー
♪~~~
”隣の部屋”から、騒音が聞こえるー。
最近はいつも”こう”だー。
「お姉ちゃんー…」
千里は心配そうに表情を歪めるー。
隣の部屋にいるのはー、
姉の菜々花(ななか)ー。
しかし、最近、”菜々花”の様子が変なのだー。
千里は、ショートヘアーの活発なタイプの明るい子ー。
姉の菜々花は髪の長い、大人しくて恥ずかしがり屋なタイプの子ー。
二人は”正反対”で、
よく妹の千里は「お姉ちゃんももうちょっと明るく!」とか
「ほらほら元気出して!」とか、よくそんなことを
姉の菜々花に対して言い放っていたー。
がー…
少し前から、姉の菜々花の様子がおかしくなったのだー。
穏やかな感じの服装ー…
千里からすれば「お姉ちゃん…もうちょっとこうー、可愛くなれると思うけど」
みたいなことを言ってしまうぐらいに、大人しい服装ばかりだったのが
最近は何だか派手になったしー、
部屋では音楽を聞いたり、急にバイトで貯めたお金を使って買ったギターを弾いたり、
聞いたこともないような歌を熱唱していたりするー。
とても”お姉ちゃん”とは思えないー。
「ーーお、お姉ちゃんー音がー」
あまりにも平気で大音量を流している姉に
そんな指摘をする千里ー。
「ーん?あぁ、ごめんごめん」
菜々花はそんな風に言葉を口にすると、
少し乱れた髪を触りながら、流している音楽の音量を下げて、
「迷惑かけて、ごめんね」とだけ呟いたー。
”最近、おかしなお姉ちゃん”は、
妹の千里や、両親に対して敵意を向けて来たりー、
そういったことをするわけではないー。
妹の千里に対しても
”今まで通り”優しく接してくれることには変わりはないー。
しかし、やはり何かが変だー。
大学に行くときの服装も派手になったー。
”彼氏でもできたのかなー…
真矢(まや)ちゃんの友達も、彼氏が出来てからー
彼氏の影響を受けて変わっちゃったとかなんとか言ってた気がするしー”
千里は、姉・菜々花の豹変をそんな風に考えていたー。
しかしー…
実際には”そう”ではなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあ~~~…最近、確かに菜々花の様子は変だね~」
千里は、姉の通う大学の近くで、
姉の友人の一人、小原 克枝(おばら かつえ)からそんな話を聞いていたー。
三つ編みの髪型が特徴的で、小顔な感じの子だー。
”お姉ちゃんの様子がおかしい”
そんな状況が続き、心配になった千里は
”大学ではどうなんだろうー?”と、思い、
姉が高校時代、よく家に遊びに来ていた克枝に連絡を取り、
事情を説明した上で話を聞いていたのだー。
連絡先は、以前、家に遊びに来ていた際に、
何となく流れで交換していて、それ以降、一度も使っていなかったものの
ここで役に立つときが来たー。
「ーーー家でもそうなの?」
克枝が不思議そうに言うと、
「あ…はい…」と、千里は不安そうに頷くー。
「ーー何か大学で変わったこととかはありませんでしたかー?
例えばー…お姉ちゃんに彼氏が出来たとかー」
千里がそんな言葉を口にすると、
克枝は笑いながら、
「ーう~ん…彼氏はできてないと思うけどー」と、言葉を口にすると、
「でも、最近男子と一緒に居ることは多いかなぁ」と、
思い起こすような仕草をしながら言葉を口にするー。
「ーーじゃあ、やっぱり好きな人がいるんでしょうかー?」
千里が不安そうに呟くー。
別に、姉に彼氏ができること自体は不安じゃないし、
千里としても応援はしたいー。
けれど、好きな人が原因で、別人のように変わってしまっているとなると、
やっぱり不安だー。
「ーーあ~~~あと…先月…だったかなー
1回、菜々花、気を失ったことがあってー」
克枝が思い出したかのように言葉を口にするー。
「えっ…えぇ!?そ、そんな話は一度もー」
千里が言うと、克枝は「菜々花から聞いてないの?」と、
不安そうに言葉を口にしたー。
知らない千里のために、克枝は”先月”の出来事を説明するー。
先月、姉・菜々花の通うこの大学では学園祭があったようで、
その最中に、看板の準備をしていた男子が転落した事故があったのだと言うー。
「その男子ー、柿沼(かきぬま)くんって言うんだけどねー。
柿沼くんが看板を付けてる最中にバランスを崩しちゃってー、
脚立から落っこちちゃったの」
克枝は、そう言うと、
姉・菜々花の同級生である柿沼 紀彦(かきぬま のりひこ)のことを
説明しながら、さらに言葉を続けるー。
「その時下にいたー菜々花に、その男子がぶつかっちゃってー
それで、菜々花も医務室に運ばれたんだけどー」
と、”先月”姉の菜々花が気を失った、という時の出来事を語るー。
「ーそ、それで、お姉ちゃんは大丈夫だったんですかー?」
千里が不安そうに言うと、
克枝は、飲み物を口にしながら、
「うんー。ただぶつかっただけで、怪我とかは一切なかったし、
すぐに意識を取り戻したからー」と、
浮かない顔で説明するー。
「ただー」
「ただ?」
千里が不安そうに聞き返すー。
「ー千里ちゃんのお姉ちゃんにぶつかった方の男子ー
その”柿沼くん”っていう子がまだ意識を取り戻してなくてー」
「ーえぇっ!?」
千里は驚くー。
脚立から転落して、姉・菜々花にぶつかった方の男子生徒が
”まだ”意識を取り戻していないというのだー。
「ーー大けがしてるってことですか?」
千里がそう言うと、克枝は首を横に振ったー
「ー怪我自体は、大したことがないんだけどー、
なぜかまだ、意識が戻らないのー。
もう、じきに1か月ぐらいになるのに」
克枝のそんな言葉に、千里は表情を歪めるー。
「ーその学園祭の日っていつでしたっけ?」
日付を確認する千里ー。
ちょうど、その時期は
”お姉ちゃんがおかしくなりはじめた時期”と一致するー。
「ーーも、もしかしてお姉ちゃんー
その時、頭を打ったりしてるのかもー…」
千里は、”お姉ちゃんが急に変わった原因”として
一つの仮説を立てると、そんな言葉を口にするー。
だがー、
そんな千里の仮説を打ち壊す言葉を、克枝が口にしたー。
「ーねぇ、菜々花、”ギター買った”ってさっき言ってたよねー?」
克枝がそんな言葉を口にするー。
さっき、克枝と会った直後に、姉のことを説明する際に
確かにそのことは伝えているー。
「あ、はいー。それが何か?」
千里は不安そうにそう言葉を口にすると、
克枝は少しためらってから言葉を続けたー。
「ーー音楽とか、聞いたりしてない?」
その言葉に、
千里は「あ~…音楽聞いたり、歌ったりもしてますけどー…」
と、不満そうに返事をするー。
「ーーーーー」
克枝は、困惑した表情を浮かべてしばらく考え込むと、
やがて口を開いたー。
「そのー…柿沼くんも音楽好きでー…
自分のギターを持ってたからー」
克枝は言うー。
”わたしのおかしな妄想だと思って聞き流してくれればいいけど”と、
前置きした上で、
”菜々花の中に、柿沼くんがいるーなんて、一瞬考えちゃった”と、
言葉を口にしたー。
意識が戻らない柿沼 紀彦ー
様子のおかしい菜々花ー。
もしかしたら、”柿沼くん”が、菜々花に取り憑いているとか
そんな、心霊現象的なことが起きているのではないかと、
克枝はそう言ってるのだー。
「でもー…ちゃんと家のことはわかってますしー」
千里はすぐに否定するー。
確かに、一瞬ゾッとはしたー。
しかしー、とは言え、姉の菜々花は
”家のこと”は、ちゃんと分かっているしー、
会話がかみ合わない、ということもない。
克枝の言う通り”柿沼くん”という男子が、
菜々花になっているのであればー、
必ず”会話が噛み合わない”部分が出て来るはずだし、
家のことも、千里のことも知っているはずがないー。
「ーー確かに、それもそうねー」
克枝は頷くと、「変なこと言ってごめんね」とだけ言葉を口にすると、
「こっちで何か分かったら千里ちゃんに連絡するね」と、
少し不安そうにしながらも微笑んだー。
「ーーーありがとうございますー。
なんか、お姉ちゃんのことで時間を取らせてしまってすみません」
千里がそう言うと、克枝は少しだけ笑いながら、
「ー菜々花とは今でも仲良しだしー、
気にしないでー
それにー」
克枝はそう言うと、言葉を続けるー。
「わたしにもお姉ちゃんがいるから、千里ちゃんが
菜々花のこと心配する気持ちも分かるからー」
克枝のそんな言葉に、千里は安心した様子で
「本当に、ありがとうございますー」と、
今一度お礼の言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーあ、おかえり~」
帰宅すると、姉の菜々花が千里に気付いてそう言葉を口にしたー。
最近は前髪の一部分だけ赤く染めていて、
さらにその違和感は膨れ上がっているー。
本人によれば「ちょっとした気分転換」とのことだったがー、
”お姉ちゃん”はそんなことはしないー…気がするし、
最近はやっぱり、家に居てもなんだか服装が派手で、
千里からすると、気味の悪いデザインの指輪を身に付けたりもしているーー。
「ーーーーー」
千里は、そんな”お姉ちゃん”に「ただいま~」と言いながら
自分の部屋に入ろうとするも、
心配になって、ふと立ち止まったー。
”「ー千里ちゃんのお姉ちゃんにぶつかった方の男子ー
その”柿沼くん”っていう子がまだ意識を取り戻してなくてー」”
ふと、克枝から聞いたそんな言葉を思い出すー。
「ーーーーーー」
”柿沼くん”とやらは音楽が好きだったのだというー。
それに、ギターも。
「ーーーーー柿沼…」
千里が、そう呟くー。
「え?」
千里と同じく、自分の部屋に入ろうとしていた菜々花が
驚いた様子で千里のほうを見るー。
「ーーー!」
千里は、”柿沼”という名前に反応したお姉ちゃんを見て
さらに不安になるー。
「ー柿沼さん?」
千里がそう問いかけるようにして言うと、
菜々花は明らかに動揺した様子で、
「ーか、か、か、か、柿沼くんがどうかしたの!?」と、
不自然に高い声で答えたー。
「ーーーーーーー」
千里は、そんな菜々花の反応を見つめながら、
「ーーーーお姉ちゃん、その人が脚立から落ちた時に
ぶつかったってー」
と、克枝から聞いたことを、克枝の名前を出さずに言うー。
「ーーーー…え?あ、あぁ、うん!そんなこともあったね」
菜々花は落ち着かない様子で、自分の指で髪をいじくり出すー。
「ーーーーーもしかして…もしかしてなんだけどー…
今のお姉ちゃんー、”お姉ちゃんのフリした柿沼さん”だったりしない…よね?」
千里が、単刀直入にそんな言葉を口にするー。
心臓はバクバクしているし、緊張で今すぐこの場から逃げ出したい気持ちに
なりながらも、お姉ちゃんのために、そんな言葉を口にするー。
「ーーーーーーーあは、あははははっ~そんなこと~」
菜々花が目を泳がせながらそう言い放つー。
「ーだって、最近のお姉ちゃん、変だしー、
ギターとか音楽とか、今までお姉ちゃんが興味なさそうなこと、急に始めるしー、
しかもそれ、柿沼さんって人の趣味だって言うしー。
今のお姉ちゃん、まるでその人みたいになってるしー」
千里がひと思いにそう言葉を吐き出すと、
菜々花は「あは!あはははははー」と、笑いながらーーー
突然ー、
千里の前で土下座したー
「ご、ごめんなさいー!」
とー。
「ーー!?!?!?!?」
驚く千里ー。
菜々花は顔を上げてから
「だますつもりはー…なかったんだ!」
と、言葉を口にしたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
様子のおかしなお姉ちゃんから
語られる言葉とは…!?☆
続きはまた明日デス~!!
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