<憑依>宝箱の中の悪魔①~お宝~

世界中の宝を集めることを生業としている
4人組のトレジャーハンター。

しかし、ある日”悪魔の魂”が封じられた宝箱を
そうとは知らずに開けてしまい…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「この先に、伝説の宝があるはずなんだー」

四人組のトレジャーハンターのリーダー・ルイが
そう呟きながら、草根をかき分けて、ジャングルの奥へと
進んでいくー。

「おいおいー…マジでこんなところにお宝があるのかよー?
 その情報、確かなんだろうな?」
バンダナをつけた男、ピエールがそう言うと、
「ーー信頼できる情報筋からです。情報に間違いはありません」と、
眼鏡の男・モルガンがそう言葉を口にするー

「あんたら、ごちゃごちゃ言ってるんじゃないよ。
 この先にいけば、分かることさ」

ピエールとモルガンの話に、口を挟んだのは
4人組の紅一点ー、唯一の女性メンバーのミシェル。

小さい頃に親に捨てられ、以降、過酷な環境で生き抜いてきた彼女は、
数年前にルイと出会い、以降、こうして共に
トレジャーハンターとして活動しているー。
とても気の強そうな女性で、
”盗賊の女親分”のような、そんな雰囲気だー。

「ーーまぁ、それもそうだなー」
ピエールがそう言うと、前を進んでいたルイが「あったぞ!」と、
声を上げたー。

ジャングルの奥地ー。
かなり険しい道を進み続けて、ようやくたどり着いたその先にはー、
宝箱が置かれていたー。

「ーへへーこりゃ、凄そうなお宝だな。」
ピエールがニヤニヤしながら言うと、
「ー近くに魔物が潜んでいる可能性もあります。気を付けて」
と、メガネをいじりながらモルガンが言うー。

「ーはっ!魔物なんか出て来たって、あたしらの敵じゃないだろ?」
ミシェルがそう言いながら宝箱に近付いていくー。

ルイは「油断はするなよ」
と、言いながら、ミシェルと共に宝箱の目の前までやってくるー

これまでの経験上ー、
結構”宝”の周りには、他のトレジャーハンターや盗賊が
待ち構えていたり、強力な魔物が待ち構えたりしていたこともあったー。

その危険性を十分に知っているルイたちは、
宝を前にしても、油断はしないー。

「ー罠の類はないようです。問題ないでしょう」
宝箱の周りに何か罠が仕掛けられていないかどうかを
モルガンが確認すると、ルイは「ありがとう」と、頷くー。

「よぉし、じゃあ、開けてみようぜ」
ピエールが言うと、ミシェルが宝箱を開いたー

その中にはーーー…
不気味に輝く紫色の宝石が入っていたー

「ーーこれはー?」
ミシェルが、それを手にしながら、仲間たちに見せるー。

「ーーー宝石…のようだな?」
ルイがそう呟くー

「へへ!売ったらすげぇ金になったりしてな!」
ピエールのそんな言葉に、
ミシェルは「見たこともない種類だから、ヨハンに見せて見ないと分からないねぇ」と、
首を横に振るー。

”ヨハン”とは、宝の”買取”をやっている闇の商人だー。

ルイたちトレジャーハンターも、回収した宝をヨハンに売却することも多く、
何かと助けられているー。

「ーーーそうと決まれば一度街に引き返して、
 ヨハンさんに連絡しましょう」
モルガンがそう言うと、
「ーーそうしよう」と、リーダー格のルイは頷いたー。

紫の宝石を手にしているミシェルも、それに応じて
歩き出そうとしたその時だったー。

宝石から突然、黒い煙のようなものが飛び出してー、
あっという間に、ミシェルの中へと入り込んだー。

ビクッと震えて、
一瞬、目を紫色に光らせたミシェルー。

だがー、
ミシェルはすぐに何事もなかったかのように笑みを浮かべて、
そのままゆっくりと歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「えへへへー」

「ーえへへへへへ」

「ーへへへへへ」

バンダナを身に着けたピエールが
街を歩きながら、ニヤニヤと周囲を見渡すー。

「ーー下心が、あふれ出してますよ」
眼鏡をいじりながら、呆れ顔でモルガンが言うと、
「だってこの街、可愛い子ばっかりだし!」
と、ピエールが笑うー。

「ーーはぁ、全くー。」
首を横に振るモルガンー。

ピエールは可愛い子を見つけるといつもこうだー。

だが、その一方で、一緒に行動しているミシェルのことは
そういう目で見ることはなく、
本人曰く「ミシェルのことは男みたいなもんだと思ってるし」と、
以前、口にしてミシェルに”あたしのどこが男だって?”と、
ぶん殴られたこともあるー。

当のミシェル自身も「まぁ、あたしも女らしく、とかそんな風に
思ったことはないけどさ」と、笑っていたー。

こういう過酷な世界に身を置き続けている以上ー、
そのぐらいでないとなかなか務まらないのかもしれないー。

そんな会話をしながら、”ヨハン”の元にたどり着くと、
”闇の商人”などと言われているとは思えないような、
気さくな好青年風の男が姿を現したー

「やぁ、ルイさんー
 今日も何か収穫ですか?」

ヨハンがさわやかに出迎えるー。

ルイは「あぁ、ヨハンさんー。今日はこんな宝石を手に入れて」と、
ヨハンに紫色の宝石を手渡したー。

それを見つめるヨハンー。

しかしー
ヨハンは首を傾げるー。

「ーーこれは…残念ながら、価値のあるものではありませんね」
とー。

「ーな、なんだって?マジかよ!?」
バンダナがトレードマークのピエールが心底残念そうに
そう叫ぶと、ヨハンは「残念ながら、マジです」と、
微笑みながら言葉を口にするー。

「ーはは…そっかー。まぁ、ヨハンさんが言うならー仕方ないな」
ルイはそう言いながら、少しため息をつくー。

ヨハンはこの世のあらゆるものを売りさばく闇の商人だが
”取引”においては絶対に嘘はつかない男で、
その点はルイをはじめとする、トレジャーハンターたちからも
信頼されているー。

「ーこの石は恐らく”何かを封印する用途”で使われていたものと
 思われますがー、何も封印されている痕跡はありませんし、
 大昔に捨てられたものなのでしょう」

ヨハンのその言葉に、
ルイ、モルガン、ピエールは残念そうな表情を浮かべるー。

だがー…
背後に立っていたミシェルはニヤッと笑みを浮かべながら、
自分の胸に手を触れて、低い声で笑ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」

ルイたち4人が滞在させてもらっている村の宿屋に
たどり着くと、
ミシェルは、部屋に入ってから一人、笑みを浮かべたー。

「ーククククク…まさかー…
 女の身体が手に入るとはなー…」

ミシェルはそう呟くと、自分の胸をニヤニヤしながら
嬉しそうに揉み始めるー。

胸を揉んでいるうちに、どんどん気持ちよくなって、
はぁはぁと荒い息を吐き出しながら顔を赤らめると、
ミシェルは笑いながら、
「この女、ミシェルと言うのかー」と、
鏡を見つめながら笑ったー。

ミシェルに”憑依”したのはー
大昔に悪事の限りを尽くし、
当時、この辺りで栄えていた魔道国家の”封印石”と呼ばれるものに
封じ込めれた上で、葬られていた大悪党だー。

しかし、ルイたちがその封印を解いたことで、
既に魂だけの存在になっていた大悪党はー、
ミシェルに憑依したー。

憑依する前までは、まさか”女”だとは思わなかったー。

自分を封印している”箱”が開かれて、
”人間の手”に持たれていることまでは分かったためー、
咄嗟に、”経年劣化で弱まっていた封印石”から飛び出し、
その人間に憑依したー。

それが、ミシェルだったー。

「ーククククク…
 こいつらの中でも一番上玉の身体を手に入れたぜー」

ミシェルはそう呟きながら
満足そうに笑うと、
鏡に向かって

「ーわたしはミシェル… うふふふふふふ♡」
と、ミシェルの”フリ”をして、満足そうに微笑むー。

まさかー
トレジャーハンターとして活動するミシェルが
普段から”男のような振る舞い”であるとは知らずに、
大悪党は、自分が考える”女っぽさ”を強調した振る舞いをして、
満足そうに微笑みながら、歩き出したー。

その日の夜ー、
封印されていた大悪党の男は、
自分の部屋で、存分にミシェルの身体を弄んだー。

普段のミシェルが絶対に出さないような
甘い声や、妖艶な声を出しながら、
存分に”女”としての快楽を味わったー。

ミシェル本人が、今の自分を見たら
怒り狂ってしまうー
そんな光景が、朝になるまで、ずっと続いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーおはよう」
部屋から出て来たミシェルを見て、
ルイ、ピエール、モルガンの三人は驚くー。

いつもと違い、髪を下ろしていて、
服装も、動きやすい格好ではなく、町娘のような
そんな格好をしているー。

しかも、何だか少しおしゃれをしているようにも見えるー。

ミシェルに憑依した男は、
過去に盗みなども働いていて、
キラキラした財宝には目がなかったー。

昨晩、ミシェルに憑依したあと、以前、ミシェルが仲間と共に集めた”お宝”を
部屋で見つけて早速それを身に着けていたのだー。

「ーーえ… え?? ど、どういう風の吹き回しだよ?」
バンダナがトレードマークのピエールが笑いながら言うー。

「ーーど…どういうこと?」
ミシェルのフリをしながら、男がそう言うと、
ピエールは「い、いやいやいやいやいやいや、ミシェルがおしゃれとかー
え??? え???? なに? 今日、世界が終わるのか?」と、
笑いながらそう言うと、
ミシェルは困ったような表情を浮かべて、顔を赤らめたー。

「ーー!!!」
いつも気の強いミシェルのそんな仕草に、ピエールは
ギャップを感じてドキッとしてしまうー。

「ーははは…まぁ、いいじゃないかー。
 ミシェルだってたまにはそういうこともあるだろうしー。」
ルイがそう言うと、
ピエールは「いやいや、俺の中じゃミシェルは男みたいなもんなんだけど!」と、
叫びながら、ミシェルのほうを指さすー。

「ーーえぇ…?」
ミシェルに憑依している男は、そんなピエールの反応を見ながら
”この男ー、普段のこの女とのギャップにドキドキしているようだな”と、
内心で笑みを浮かべるー。

そう思いながら”あえて”ピエールのほうを見つめながら
「わ…わたし…これでも…女だから…」
と、恥ずかしそうに言葉を口にしてみたー

「~~~~~~~」
ピエールが顔を赤らめながら
「そ、そ、そ、そうだよなー…ご、ごめんな」と、
落ち着かない様子でソワソワとし始めるー。

「ーしかし…確かに珍しいですね。
 今日はオフの日とは言え、ミシェルさんが
 そんな格好をしているのはー」

眼鏡をかけたモルガンがそう呟くー。

今日は特に”お宝”の情報はないー。
お宝の情報がない日は、情報収集などを行ったりはするものの、
基本的には”休み”のようなものだー。
ルイやピエール、モルガンも、プライベートな時間を
楽しんだりすることはあるー。

が、ミシェルはいつも”あたしは宝さがししか興味ないね”とか、
言いながら、仕事の無い日は、村の酒場で大酒を飲んでいたりするような
そんな性格なのだー。

そのミシェルが、乙女のような格好をして、
穏やかに振る舞っているー。

戸惑うのも、無理はない。

「ーーわたしだって、おしゃれしたくなることぐらい、あるもんー」

普段のミシェルを知らない”憑依した男”が
ミシェルの身体でそんな言葉を口にすると、
ルイも、モルガンも、ピエールも戸惑いの表情を浮かべたまま、
三人で顔を見合わせたー

「ーーククククー」
ルイたちと別れたミシェルは笑うー。

「この女が、普段どんな女だったかは知らないけどー
 俺好みの振る舞いをさせてもらうぜー

 この身体はー、俺の新しい身体なんだからー」

ミシェルは低い声でそう呟くと、不気味な笑みを浮かべたー。

②へ続く

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コメント

気の強い女盗賊系のキャラ(この作品はトレジャーハンターですケド…)が
憑依されて、おしとやかな振る舞いをし始めるパターンのお話デス~!

私の作品は意外と、気の強い子が憑依されて穏やかな振る舞いを
し始めるパターンが少ない気がしたので
考えたお話デス!

明日も続きがあるので、楽しんでくださいネ~!

今日もありがとうございました~~!

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憑依<宝箱の中の悪魔>

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