<入れ替わり>お兄ちゃんの気持ちは分かるけど②~涙~

モテない兄が、美少女と入れ替わった…!

相手からも”そのまま生活したい”と言われて
晴れて美少女となった兄は、喜びの日々を送るー。

しかしー…?

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達弘が萌愛になってから
1週間が経過したー。

性別の異なる身体に、色々悪戦苦闘することは
あったけれどー、
1週間も”女”として過ごせばー、
それなりに色々なことに慣れて来るー。

トイレも大分スムーズに済ませることができるようになったし、
女としての朝の準備も、お風呂も、
萌愛の身体での”食事加減”も、
制服の着方も、
慣れないスカートの雰囲気にも、色々と慣れてきたー。

もちろん、1週間で”女の生活”をマスターすることなど
できるはずもないけれどー、
それでも、最初よりかは随分と慣れたー。

だがーー

「ーーあぁ~~~~今日も可愛い~~!」
萌愛(達弘)は、朝、鏡を見つめると同時にそう叫んだー。

20年以上も”モテないあの身体”で過ごしてきたのだー。
それが今は、こんなに美少女になっているー。

そのことには、1週間経過しても全く慣れることはなくー、
鏡を見るたびに、ドキドキしてしまう状況が続いていたー。

そしてー、
今まで”容姿”を気遣っても全くの無駄、というような状態だった
達弘にとっては、
おしゃれをすればするほど可愛くなるかのようなー、
この身体は、奇跡のような身体だったー

「ー何着ても似合うんだもんなぁ…えへへへー」
萌愛(達弘)は、色々な格好ー…
と、言っても、外を歩けるような普通の格好だがー、
それらを毎日のように堪能していたー。

加えて、髪型も毎日、色々な髪型を試しながら
学校に登校していたー。

ポニーテールやツインテールにすると、全然イメージが変わるし、
三つ編みにすればまた、イメージが変わる。

髪型一つでこんなに変わるー。
”髪型”を変えるのが楽しいー。

そんな風に思う日が来るなんてー、
とても驚きの発想だったー。

「ーよし!今日も可愛い!」
萌愛(達弘)は、学校に行く準備を始めると、
そんな風に微笑みながら、そのまま学校へと向かったー。

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「なんか、お兄ちゃん、毎日楽しそうだねー」
事情を知る妹の尚美が、学校で、萌愛(達弘)と歩きながら笑うー。

「ーーはははー、やっと”あんな身体”とお別れできたしー、
 可愛いってこんなに楽しいことだったんだなー」
萌愛(達弘)が嬉しそうに笑うー。

入れ替わった相手の”萌愛”は、偶然、妹の尚美と同じ高校に
通っている女子高生だったー。
そのため、学校ではこうして妹の尚美と普通に会うこともできるー。

「ーー昨日も、可愛いヘアゴム買っちゃってさ~」
嬉しそうに色々言葉を口にする萌愛(達弘)ー。

だがー、尚美は表情を曇らせるー。

「ーーうん?尚美ーどうかしたのか?」
萌愛(達弘)がそう言うと、
「ーえ…あ、ううんー…なんかこうー…上手く言えないんだけどー」
と、尚美は寂しそうに言葉を口にするー。

「ーー?」
萌愛(達弘)が首を傾げるとー、
「ーーお兄ちゃんは”自分の姿”が嫌いだったのは知ってるしー、
 だから、萌愛ちゃんみたいな可愛い身体を手に入れて嬉しいのも分かるんだけどー…
 でも、なんだかー…ちょっと…」
と、尚美は目を逸らすー。

「ーーー…え…?えっとー…」
萌愛(達弘)は戸惑うー。

「ーーううん。ごめんねー。何でもないー。
 相手の子も”そうしたい”って言ってるんだし、お兄ちゃんも喜んでるんだし、
 何も問題ないよねー!
 変なこと言ってごめんね!忘れて!」

尚美はそれだけ言うと、「あ!先生の提出物出しに行かなくちゃ!」と、
慌てた様子でそそくさと立ち去ってしまったー。

「尚美ー…」
少し不安そうに、萌愛(達弘)は、立ち去っていく尚美の姿を見つめたー。

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萌愛(達弘)は、みるみる可愛くなっていったー。

元々、”萌愛”はとても可愛らしかったが、
服装から振る舞い、おしゃれまで、色々な面を勉強して、
萌愛(達弘)は、萌愛が萌愛であった頃よりも、可愛くなったー

そして、元々”達弘”自身も、容姿には自信がなかったもののー
性格自体は明るめで、気配りのできる性格であったことから、
”萌愛”としてすぐに周囲と打ち解けたー。

しかもー、達弘が達弘であった頃とは違いー、
美貌も併せ持っている。

クラスの男子からはチヤホヤされー、
クラスの女子からもたくさん話しかけられてー、
今まで経験したことのないような幸せな時間を
噛みしめていたー。

そうこうしているうちに、”1か月”が経過ー。

達弘になった萌愛と、”約束”していたために、
達弘(萌愛)と連絡を取り、
”最後の確認”をするー。

最後の確認とは
”やっぱり、入れ替わったまま生活するのはやめたいです”と、
いう風になっていないかどうかの確認だー。

待ち合わせ場所に行くと、
達弘(萌愛)が姿を現したー。

相変わらず小太りのままだが、服装や、雰囲気は
幾分変わったように思えるー。
萌愛なりに、”萌愛好みの身体”にしているのだろうー。

「ーーあ、こんにちはー」
達弘(萌愛)が、手を振るー。

「ーどうも」
萌愛(達弘)が頭を下げるー。

しかしー
”萌愛になった達弘”は、あることを懸念していたー。

”元に戻りたい”と言われるのではないかー?という懸念だー。
入れ替わった直後ー、達弘は、
”萌愛のような可愛い子になれればラッキー”とは、思ってはいたー。

だが、あの時、達弘になった萌愛から
”元に戻る方法を探しましょう”と言われれば
何の不満もなく、一緒に元に戻る方法を探すつもりだったし、
元に戻るつもりだったー。

けれどー、”1か月”という長い期間”かわいいわたし”を堪能した
今となってはー…

”戻りたくない”という思いが強まってしまっていたー。

「ーーわぁ…わたし、別人みたいですねー
 すごい可愛いですよ!」

達弘(萌愛)が、萌愛(達弘)の姿を見て褒めるー。

「い、いやー…そ、そのーありがとうー」

”可愛い”と言われると興奮するー…と、いうか
ゾクゾクするー…
可愛くなっていく自分に、とても強い喜びを感じるー。

女子になってみてー、
女子がおしゃれをしたり、可愛くなりたいと願う気持ちが、
よく、分かった気がするー。

そんなことを思いながら、萌愛(達弘)は緊張した様子で、
達弘(萌愛)に確認するー。

すると、達弘(萌愛)は口を開いたー。

「言いましたよねー? 
 俺、元に戻るなんてー」

そこまで言いかけて、達弘(萌愛)は言葉を止めて
恥ずかしそうにすると、

「わたし、元に戻るなんて言いませんってー」
と、微笑んだー。

「ー1か月も男でいたら、”俺”って言うのが癖になってー」
苦笑いする達弘(萌愛)ー。

そんな”元自分”を見ながら
「ほ、本当に、もう、このままずっと?」と、
再び確認する萌愛(達弘)ー

「もちろん!あの日言った通りです!
 クーリングオフなんて、俺…いや、わたしには必要ありません!」

達弘(萌愛)は嬉しそうに言うー。

そんな言葉に、萌愛(達弘)は安心した様子で、
嬉しそうに「よかったー」と、頷いたー。

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翌日ー。

「ーーー…お兄ちゃんさー」
妹の尚美と一緒に、放課後、近くのスイーツ店で
一緒にスイーツを食べていると、尚美が口を開いたー

当然”入れ替わり”のことを尚美以外に言いふらすことはできないー。

そのため、表向きは”仲良しの先輩と後輩”と、
いうことになっているー。

「ーーん~?」
萌愛(達弘)が、スイーツの写真を撮影したりー、
可愛らしい自撮りをしながら反応すると、
尚美は「なんか、お兄ちゃん、変わったよねー」と、
少し寂しそうに微笑むー。

「ーん?~まぁ、身体も変わったしー、
 それに、やっぱり容姿が良くなると、気持ちも変わるよねー」

萌愛(達弘)がそう言うと、
尚美は、複雑そうな表情を浮かべるー。

「ーーーーーわたし、やっぱり前のお兄ちゃんの方が、好きだなー…」
ボソッと呟く尚美ー。

「え?」
萌愛(達弘)が、困惑の表情を浮かべるー。

「ーーーお兄ちゃんが嬉しそうにしてるのは、わたしも嬉しいしー、
 お兄ちゃんが喜ぶ気持ちも、十分分かると言えば分かるんだけどー…
 でもー…その…なんだか…寂しい」

尚美のそんな言葉に、
萌愛(達弘)は戸惑いながら、どう返事をしようか考えるー。

「ーーー……お兄ちゃんが…お兄ちゃんじゃなくなっちゃうみたいな気がしてー」

尚美がそう言葉を吐き出すー

「ーーーそ、それはー…身体が変わったからでー…すぐに慣れーーー」
萌愛(達弘)がそう言いかけて、
尚美の顔を見て、言葉を止めるー。

泣いてはいないー。
だが、尚美はぐっと涙をこらえているようなー
そんな悲しそうな表情を浮かべていたー

「ーーー!!」
萌愛(達弘)は思わず言葉を失ってしまうー。

萌愛になっても、妹の尚美のことは、変わらず大事にしているー。
そんな尚美にこんな顔をされてしまうなんてー…

達弘にとってはとても衝撃的な出来事だったー。

「ーーーーーお兄ちゃんー…可愛くなって、変わっちゃったー」
吐き出すように、悲しそうに呟く尚美ー。

「ーーーーーか、変わったつもりはなかったんだけどー」
萌愛(達弘)が、やっとの思いでそう言葉を口にすると、
尚美はついに我慢できなくなったのか、目から涙を一筋、流したー。

「ーーーお、おいー…尚美ー…」
妹を泣かせてしまったことに、萌愛(達弘)は激しく動揺していたー。

「ーご…ごめんー…俺、ど、どこが変わっちゃったかなー?
 じ、自分じゃー…無意識のうちにー」

萌愛(達弘)が言うと、
尚美は涙を拭きながら、
「ーーーー…前より、優しくなくなったー
 お兄ちゃんの、好きなところだったのにー」
と、言葉を口にするー。

「ーや、優しくー…?」
萌愛(達弘)が戸惑うー

「ー優しくて頼りになるお兄ちゃんが好きだったのにー…
 わたしの好きなお兄ちゃんは、いなくなっちゃったー」

寂しそうに言う尚美ー。

萌愛(達弘)は言葉を失うー。

だがー、やがて、尚美の方が気を取り直したのか
「へ、変なこと言って、ごめんねー
 わたしも、お兄ちゃんの変化に、ついていけてないだけかも」
と、無理に笑顔を作り始めるー。

「ーー…イケメンじゃなくても、
 世間はモテなかったとしてもー
 わたしは…お兄ちゃんのことが全部含めて好きだったからー」

尚美がそう呟くと、
無理に自分を納得させようとしているかのように、
何度か頷くー。

そしてー、
「ーお兄ちゃんが、幸せなら、妹のわたしも喜ばなくちゃねー…
 相手のー萌愛ちゃんもそうしたいって言うならー
 何も悪いことしてるわけじゃないんだし」
と、尚美は無理に笑いながらそう言葉を口にしたー。

「ーーーごめんね。お兄ちゃん、今、幸せなのに
 水を差すようなこと言ってー。

 ワガママな妹で、ごめんなさいー」

尚美が寂しそうにそう言葉を口にしたー。

萌愛(達弘)は、強い衝撃とショックを受けてー
尚美と食事を終えて、”萌愛の家”に帰宅してからも、
涙を流す尚美の顔が、何度も何度も頭の中に浮かび上がってきてー
忘れられなかったー。

「ーーーーー…」
萌愛(達弘)はため息をつくー。

”俺、何か変わっちゃったかなー…”
”俺、優しくなくなっちゃったかなー”

そんなことを、何度も何度も思うー。

妹の尚美からは、夜に改めて
”さっきはごめんね。お兄ちゃんは何も悪くないから気にしないで”
と、謝罪のメッセージのようなものも届いたー。

でも、尚美に”無理をさせている”のが、
そのメッセージからも伝わって来たー。

「ーーーー尚美ー」
萌愛(達弘)は、寂しそうに
尚美からのメッセージを見つめながら、
静かに妹の名前を呟いたー。

③へ続く

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コメント

実際に妹がいて、実際に仲良しな皆様は、
もし自分が達弘くんの立場で
そんなことを言われてしまったら、どんな決断をしますか~?笑

きっと、難しい問題なのデス…!

明日が最終回デス~!!

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