街中で偶然、美少女と入れ替わってしまった兄。
彼は、そのことを”奇跡”だと喜ぶも、
お兄ちゃんが大好きな妹からしてみれば、複雑だったー…。
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霧島 達弘(きりしま たつひろ)は、
小さい頃から”モテない”人生を送って来たー。
太りやすい体質なのか、
食事に気を付けていても、簡単に太ってしまうし、
顔立ちも”イケメン”とは程遠い顔ー。
正直、彼自身、自分のことが好きではなかったー。
中学時代、高校時代と”好きな子”もできたー。
だが、全く相手にされず、その恋が実ることはなかったし、
大学生になった今、”もう恋愛なんて俺には無理だ”と、
少し前に、親に対して生涯独身宣言をしたところだったー。
そんな彼の家に、ある日ー、
実家で暮らす妹の霧島 尚美(きりしま なおみ)が遊びに来ていたー。
「ーーーははは、俺みたいなやつの家に来るなんて、
尚美も物好きだよなぁ」
達弘が笑いながらそう言うと、
「別に、俺になんて気を使わなくていいからな」と、笑うー。
ネガティブな一面も目立つものの、性格自体は明るく、
学校でもいじめを受けるタイプではないー。
ネタキャラとしていじられつつも愛されているようなー、
でも、”モテる”という点には全く縁のないー。
ーーそんな感じで、学校では通っているー。
「ーそんなんじゃないよ~
大体、来たくもないのに、休日を使って
お兄ちゃんの家にやってくるわけないでしょ?」
妹の尚美がそんな言葉を口にすると、
達弘もようやく「まぁ、それもそうか」と、笑うー。
達弘は、妹の尚美のことを、小さい頃からとても
大事にしてきたー。
それでいて”距離感”もわきまえていて、
妹の尚美を束縛したりすることも、絶対にしないー。
”本当の優しさ”を感じさせる、
そんなお兄ちゃんだー。
尚美は、どんなにモテなかったとしてもー、
兄・達弘のことが大好きだったー。
だから、高校生になった今でも、兄の達弘とは仲良しだったし、
尚美からすれば、父親以上に”何でも相談できる”そんな存在でもあったー。
「ーしっかしー、俺と尚美ー
同じ親から生まれたのに”差”がついたよなぁ」
ひと息つきながら、達弘がそう呟くと、
尚美は「またそんなこと言って~」と、苦笑いするー。
尚美は、”とても”可愛いー。
兄の達弘が”俺の容姿は一体何なんだ?”と、思ってしまうぐらいにー。
しかも、尚美はどんなに食べても太らない感じの体質で、
とても華奢な身体つきをしていてー、
自分とは本当に、何もかもが正反対と言えるー。
「ーーお兄ちゃんのいいところだって、たくさんあるよ
わたしーー、 うん、100個ぐらいは言えると思う」
尚美がそんなことを言いながら微笑むと、
「100個は盛りすぎだろ」と、達弘が笑うー。
「ーーモテるとか、モテないとかが、全てじゃないんだしー、
あんまり気にしちゃだめだからね」
尚美がそう言うと、達弘は「ははー…」と笑いながら、
「は~い」と、少しふざけた口調で返事をしたー。
「ーーで、最近学校の方はー?
何か悩みとかはないか?」
達弘が真剣な表情に戻って、尚美のことを聞き始めるー。
特に大きな悩みはなかったようだがー、
日常的な愚痴や、色々な話を聞かされる。
そして、現在高3の尚美からは
大学受験についても、色々とアドバイスを求められて
達弘も親身になって、その相談に乗るー。
”頼られるお兄ちゃん”であることが
頷けるような、そんな親身な姿ー。
尚美も、そんな達弘のことを、とても信頼していたしー、
”大好きなお兄ちゃん”として誇りに思っていたー。
だがーー
その翌日のことだったー。
大学に向かうために歩いていた達弘ーー
しかしー
その途中でーー
「ーーえっ!?!?!?」
”遅刻しそう”と、学校に猛ダッシュしていた女子高生が、
階段で躓いて転落してきてー、
そのまま、先に階段を下りていた達弘とぶつかってしまったのだったー
「ーーだ、大丈夫ですかー?」
すぐに起き上がった達弘が、慌てた様子でそう叫ぶー
がーー
「えーー」
”大丈夫ですか”と、自分が言ったはずなのにー
女子高生の声がその場に響き渡ったのだー。
思わず、周囲をキョロキョロするー。
”自分以外の誰かが叫んだ”のだと、
そう思ったのだー。
だがー、あまり人通りのない公園のような広場にある階段で
転落したためか、周囲に人影はなかったー。
「ーー…!?」
達弘は続けて異変に気付くー。
倒れているのはー、女子高生のハズなのにー、
”自分”が倒れているのだー
「ーえ……!?」
困惑する達弘ー。
そして、今一度「大丈夫ですか?…」と、声を出して、
今度はハッキリと理解したー。
”自分の口から、女の声が出ているー”
とー。
やがてー、達弘が起き上がると、
「ーえっ…!?えええええっ!?」と、
達弘の身体は叫んだー。
そうー
達弘と、遅刻しそうで猛ダッシュしていた女子高生・月島 萌愛(つきしま もえ)は、
ぶつかった弾みで、”入れ替わって”しまったのだったー。
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「ーーーえええ…?」
萌愛になった達弘は、制服のスカートに落ち着かない様子で
ソワソワしながらも、達弘(萌愛)の言葉に驚いていたー。
それもそのはずー。
達弘になった萌愛から”このまま過ごしませんか?”と提案されたのだー。
つまり、元に戻りたくないのだというー。
「ーど、どうしてー?」
萌愛(達弘)が戸惑いながら言うー。
正直ー、達弘は自分が好きではなかったー。
そのため、今、自分自身がこうして”美少女”になっている状態は、
夢のようだー。
がー、同時に達弘は、”人に迷惑をかけること”は好きではなかったしー、
人を困らせるようなことをする変態ではないー。
萌愛の身体にドキドキしながらも、
達弘(萌愛)が「元に戻りたい」と言うのであれば、
その方法を一緒に探すつもりだったし、
変なことをするつもりは一切なかったー。
だがー…
意外なことに、”達弘になった萌愛”から、元に戻りたくない、と
そう言い始めたのだー。
「ーわたし、小さい頃から男の子になりたくてー」
達弘(萌愛)が言うー。
「ーえぇ…?こんなに可愛いのにー?」
萌愛(達弘)がそう言うと、
達弘(萌愛)は、容姿を褒められて喜ぶどころか、いかにも不快そうな
表情を浮かべたー。
”男になりたい”そんな、女性がいることも当然、達弘は理解しているー。
逆に”女になりたい”男性もいる、それも理解しているー。
だが、達弘が今まで出会ってきた”男に生まれたかったなぁ”という感じの女子は、
大抵、ボーイッシュな感じだったりする子が多かったので、
こんな、可愛らしく、髪も長い子が、男になりたいと思っているとは、
何となく想像がつかなかったー。
「ー可愛くなりたくて可愛くなったんじゃないですから」
達弘(萌愛)は、ムッとした様子でそう言うと、
両親が”女の子なんだから、女の子らしくしなさい”と、
髪を短くすることも、許してくれないのだと説明したー。
「ーーーー…わたしの可愛い身体をあげますからー
だから、このままでいることはできませんかー?」
達弘(萌愛)が今一度そんな言葉を口にするー。
男になりたい、とは言え、
いきなり見ず知らずの男ー、
それもイケメンではない達弘と入れ替わったまま
生きていきたい、なんて
なかなか吹っ飛んだ考えの持ち主だ、と、萌愛(達弘)は思うー。
「ーそ、そのー…
どこ触ってもいいですしー、何してもいいですから!
この身体をください!」
達弘(萌愛)が、そんなことを言いながら頭を下げるー。
「ーマジかー…」
呆然とする萌愛(達弘)ー。
がーーー
”この子の身体ならー”と、
自分の中にも欲望が湧き上がってくるのを感じたー。
正直なところ、”滅茶苦茶かわいい”ー。
この身体であればー、
今までの”モテない人生”に別れをつげることができるかもしれないし、
容姿のコンプレックスを全て払拭することができるー。
「ーーそ、そんなにー…男になりたいのか…?」
萌愛(達弘)が呆然としながら言うー。
「ーー」
コクリと頷く達弘(萌愛)ー
別にー、
達弘からしてみても”悪い”話ではないー。
もちろん、大学の友達や、妹の尚美、大事な人はたくさんいるけれど、
大事な人には事情を説明すればいいし、
ある程度失うものはあれど、得るものの方が多いー…気はする。
ついでにこの子は高校生のようだから、
”年齢”も数年とは言え、若返ることになるー。
社会人になると大変らしいから、学生時代が少しでも長くなるのは、悪くはないー。
「ーーーー………本当に後悔しない?
俺、別にイケメンでもないしー むしろー」
萌愛(達弘)は”騙すような形でそのまま”と、いうことができない
素直な性格で、自分の容姿のことを口にするー。
「ー全然モテないしーー…こんな姿形だけど」
萌愛が持っていた手鏡を手に、”達弘”の姿が見えるように
それを向けるー。
達弘(萌愛)は「全然いいですよ!」と、笑うー。
「別にわたし、イケメン好きじゃないですしー!」
達弘(萌愛)の言葉に、萌愛(達弘)は「ーーじ、じゃあー…」と、
”入れ替わったまま生活する”ということを承諾したー。
だが、後から”やっぱり元に戻りたいです!”なんて言われると
色々面倒臭いー。
例えば”萌愛としての生活に慣れた3年後ぐらい”に、いきなり
”身体を返してください!”なんて言われたらたまったものではないー。
そうだー”クーリングオフ”だー。
達弘はそう思いながら、言葉を口にするー。
「じゃあ、最初の1ヵ月はお試し期間で、
その間に”嫌だ!”と思ったら元に戻るってことで、どうかな?」
本物のクーリングオフとはちょっと違うものの、
つまりは”最初はお試し期間で、その間にイヤだったら元に戻る”という約束だー。
最も、元に戻る方法は分からないけれど、二人で力を合わせればー
「ーわかりました!でも、わたし、元に戻りたい!なんて思いませんけどー」
達弘(萌愛)の言葉に、困惑しながら、萌愛(達弘)は、
入れ替わり生活を受け入れたー。
そしてー、
お互いとして過ごすために必要な情報を交換するー。
お互いの家から、”必要なもの”を回収して、
達弘の妹の尚美や、親友など”必要な相手”にだけ、二人で出向いて事情を説明したー。
入れ替わった”片方”だけで、説明しに行っても、なかなか信じてもらえないとは
思うけれど、入れ替わった当事者二人で説明したからか、何とか信じてもらうことができたー。
一方、達弘になった萌愛は「わたしは別に、親にも友達にも入れ替わったことを
伝える気はないので」と、誰にも入れ替わりのことを伝えず、
達弘の身体で生活を始めたー。
萌愛になった達弘は、萌愛の身体で
生活を始めるー。
しばらくは”萌愛の実家”で暮らすことになるが、
萌愛の両親は仕事が忙しく、萌愛はほとんど放置されているような
そんな状況でー、むしろ、萌愛(達弘)にとっては
”見知らぬ両親”との接点が最小限で済むため
やりやすい環境とも言えたー。
「ーーへへへへ…可愛いなぁ…
これが俺なんてー…
3日前まで、あんなひどい姿だったのにー」
萌愛(達弘)は、鏡の前で髪を揺らしながら、
微笑んだり、怒った顔をしたりー、悲しそうな顔をしたり
色々な”萌愛”の表情を確かめてみるー。
「ー奇跡だー…」
萌愛(達弘)は、鏡に映る顔を見つめながら微笑むー。
まさかー”入れ替わり”なんて出来事が本当に起きるなんてー。
しかもー…
入れ替わった相手が”男になりたかった”などと言い始めて
”そのまま過ごそう”と言いだすなんてー。
「奇跡だ…すごすぎるー」
萌愛(達弘)は嬉しそうに笑うー。
しかもー
”奇跡”はもう一つあったー。
この”萌愛”という女子高生はー、
高校2年生ー。
達弘にとっては”妹”の尚美と同じ高校に通う”後輩”でー、
学校で普通に”尚美”と会うことができる環境にいる子だったのだー。
昨日ー、
尚美に色々学校を案内してもらったー
その時に、「まさか”妹”が先輩になるなんてー」と笑うと、
尚美も笑っていたー。
萌愛(達弘)は「あ~~…こんな奇跡あるんだな…」と、
美少女の身体をゲットしー、
”嫌いな自分”の身体とお別れできた幸せを嬉しそうに噛みしめるのだったー。
だがー、達弘はまだ知らないー。
”達弘が美少女になったこと”を、妹の尚美は喜んでいないことをー…。
②へ続く
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コメント
”美少女と入れ替わったお兄ちゃんに戸惑う妹”
そんなコンセプトから生まれた作品デス~!
今日は入れ替わって、物語の本筋に入るところまで…みたいな感じでした~★!
明日以降も、ぜひ楽しんでくださいネ~!!
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