<憑依>あなたを守るため③~姉の怒り~(完)

バイト先の先輩に憑依されて、
姉が豹変してしまったー。

正気ではないと分かっていてもー、
姉の裏切りに心を痛めた彼女は、
ついに重藤先輩に屈してしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・

「僕たち、付き合うことになったんだー」

翌日ー
”バイト先”で、嬉しそうに”愛奈”と付き合うことになった、
と、自慢し始める重藤先輩ー。

「マ、マジかー!?」
バイト先の他の仲間が驚くー

重藤先輩からの視線を感じながら
愛奈は「う…うんー」と、元気なく頷くー。

「ーーははは、またまた、重藤、お前、無理やり
 そういうこと言わせてるんじゃないのか?」

呆れ顔でバイト先の一人が言うと、
愛奈は重藤先輩からの”圧”を感じながら、
「ーーーそ、そんなことないです」と、
やっとの思いで言葉を吐き出したー。

”逃げられないようにー”
重藤先輩は、”愛奈を彼女にしたこと”をそこら中に
言いふらし始めたのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーえ」

姉・聡美の彼氏・陸翔が驚きの表情を浮かべていたー

”会って話がしたい”と聡美から呼び出された陸翔。

待ち合わせ場所にやってくると同時に、
聡美から別れ話を切り出されたのだー

「え…どうして?」
戸惑う陸翔。

陸翔は、愛奈とも面識がありー、
聡美から、愛奈につきまとっているストーカー男のことも
聞かされているー。

”一人で話をつけに行く”と、いうことまでは
聞かされていないが、
何かあったのではないかと、すぐに悟った陸翔は
「ー妹さんのこと?」と、心配そうに言葉を口にするー

「あぁ、愛奈のことー?
 わたし、愛奈にはちょっと呆れちゃってー」
ため息をつきながら聡美が言うー。

「呆れたー…?喧嘩でもしたのか?」
陸翔がそう言うと、
「ううんー。そうじゃないの。重藤くんに失礼なことばっかり言ってー。
 思い出しただけでも、イライラするー」
と、聡美がそう言い放つー。

”イライラー?”
聡美からそんな言葉が聞けるとは驚きだー。

いやー
それよりもー

「し…重藤くんって…? 妹さんにつきまとってたって男の名前だよなー?」
陸翔は首を傾げるー。
確か”重藤”という名前だと聞いているー。

「ーーつきまとい?違うよー。
 重藤くんは、愛奈のことを思って心配してくれてたの」
聡美がそう言うと、陸斗は「お…おい…聡美?」と、心配そうに言葉を口にするー。

なんだか、聡美の様子が変だー。

「ーーーまぁ、そんなことより、
 わたし、”他に好きな人”が出来たから」

聡美は冷たくそう言い放つと、陸斗に今一度”別れよう”と、告げるー。

しかし、”別れるような”原因が一切思い浮かばない陸翔は食い下がるー。

「ーな、何かあったのかー?聡美ー…
 な、何か変だぞー…?

 何かあったなら、俺も力をー」

陸翔がそう言いかけると、
聡美は「いいー。わたしには重藤くんがいるから」と、
冷たく言い放って、そのまま「これでお別れ」と、
笑顔もなく、真顔で言い放ったー

「ーー……さ…さとーーー」
陸翔が、聡美を呼び止めようとするー。

しかし、振り返った聡美は、迷うことなく言い放ったー

「ー重藤くんの方がずっとずっと、わたしを満足させてくれるー…!
 あんたなんかじゃ、満足できないー」

”重藤先輩”から、彼氏と別れるように命令された聡美は、
”大好きな重藤くん”からの命令通りに、陸斗に別れを告げたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーんふふ…んふふふふふふふ♡」

メイド服姿で、”大好きな重藤くん”に
たっぷりフェラをし終えた聡美は、
嬉しそうに、顔についた”ミルク”を舐めているー。

「ーぐふふふふふ…」
重藤先輩はニヤニヤしながら”ボイスレコーダー”を手にするー。

聡美が憑依される前、重藤先輩と話をつけようとした際に
”聡美が”録音していたものだー。
もしも、重藤先輩が暴力を振るってきたりした時のために
聡美が録音していた音声ー。

それを、再生するー

”「これ以上ー、これ以上、妹にしつこくするようであれば
こちらとしてもそれ相応の対応を考えさせていただきます」”

”まだ正気だった”聡美の声が響き渡るー

「ーこんなこと僕に言って、ダメな女だなーお前は」
重藤先輩がわざとらしく言うと、
聡美は「ごめんなさい…」と、申し訳なさそうに言葉を口にするー

「ーくくくく…僕に変えられた気分はどうだい?」
重藤先輩が”わざと”そんな言葉を口にするー。

「ーー今のほうが、ずっとずっと幸せー」
うっとりした表情でそう言い放つ聡美ー。

そんな様子を見つめながら
”本当に、憑依は凄いなー”と、重藤先輩は改めて思うー。

憑依から抜け出しても、こんなに変わってしまった聡美を見てー
”染め上げてやった”という最高の快感を覚える重藤先輩ー。

”ーー元に戻してやる”というのは嘘だー。
そもそも、”憑依薬”はもう持っていないし、入手も難しいー。
”お姉ちゃん”は元には戻せないー。

「ークククー
 聡美、僕は”愛した相手”は、どんな手段を使っても手に入れるんだー。」

重藤先輩が、ニヤニヤしながらそう言うと、
聡美はうっとりした表情を浮かべながら微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

重藤先輩と、”愛奈”は何度も何度もデートを繰り返したー

”不本意な”デートー。
けれども、”お姉ちゃん”が元に戻ると信じてー。

キスされて、身体が震えるのを感じながら
愛奈はそれでも耐えたー。

頑張って楽しそうにしたー。

地獄のような、日々ー

それでも、愛奈は耐えたー。
”お姉ちゃん”を取り戻すためー。

”クククー
 元には戻さないさー”

重藤先輩は笑みを浮かべるー。

重藤先輩はー、
もう少ししたら、愛奈に”お姉さんを元に戻してあげよう”と、言うつもりだー。

その上で、”本人の意思も確認しなくちゃ”と、聡美に”元に戻りたいか?”と確認するー

聡美は恐らく”今のわたしがいいー”と、言うはずだー。

そして、重藤先輩は、愛奈に言うー。

”お姉ちゃん、元に戻りたくないってさー”
とー。

そんな日のことを思い浮かべながら、
重藤先輩はニヤニヤとするー。

愛奈と電話をしながら、”聡美”の家で居候状態の重藤先輩は
楽しそうに笑うー

”クククー
 愛奈ちゃんに憑依して、愛奈ちゃんをぶち壊すつもりだったけどー
 愛奈ちゃんが手に入るどころかー、お手伝い女まで出来てー
 最高だぜー”

愛奈と電話しながら、ご機嫌に笑う重藤先輩ー

だがーーー

「ーーーーー…重藤くんーー…

 ”愛奈”のこと ばっかりーーーー」

台所で洗い物をしていた聡美が、憎しみの籠った口調でそう呟いたー

「ーーーこんなに重藤くんのことが好きなのにーーー
 愛奈ばっかりー…」

ギリッと歯ぎしりをする聡美ー。

愛奈の姉・聡美は、
”大好きな重藤くん”が、自分の妹と付き合っていることにー、
日に日に強い怒りを感じ始めていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”お姉ちゃん”に呼び出された愛奈が、
早朝の神社に向かうと、そこには姉の聡美が待ち構えていたー。

「ーーーーーお姉ちゃんー…」
てっきり、”また”重藤先輩が何かを企んでいるのだろうと思いー、
警戒する愛奈ー

だが、今日、愛奈を呼び出したのは”聡美”の独断だったー。

「ーーーあんたなんかが、重藤くんの彼女だなんて、わたしは認めない」
聡美が敵意を剥き出しにして言うー。

「ーー…お、お姉ちゃんー… ど、どういうことー?」
愛奈は困惑するー。

「ーー重藤くんのこと愛してるのは、わたしー…!
 なのになんで愛奈ー… あんたなの!?」
愛奈の腕を乱暴に掴みながら、聡美が愛奈を睨むー

「ーーえ…ーー… そ、それはー」
愛奈は混乱するー。

”お姉ちゃん”は何を言っているのだろうー?
これも、重藤先輩から命令されたのだろうかー?

”重藤くんが大好き”
そう刻まれた聡美は、
”妹と重藤くん”が付き合っている現状に、強い嫉妬を膨らませていたー。
日に日に、その嫉妬が強まっているー。

だが、そんな状況にあるとは知らない愛奈は混乱するー

「ーそれは…お姉ちゃんを…助けるためー」
愛奈がそう答えると、聡美は怒りの形相で叫ぶー。

「重藤くんはわたしのもの!!
 妹のくせにー…!お姉ちゃんのジャマをするの!?」
聡美が、怒鳴り声を上げながら、愛奈の胸倉をつかむー。

「ーーお、お姉ちゃんー…!
 もう、もう、やめてよー!」

愛奈が泣きながら言うー。

意味が分からないー

”重藤くんと付き合いなさい”と言い始めたり、
”重藤くんはわたしのもの”と言い始めたりーーー

「ー目を覚ましてよ!」
愛奈が言うと、聡美は「うるさい」と、愛奈を乱暴に突き飛ばすー。

「ー重藤くんにふさわしい女は、わたしよー。
 あんたとは違って、わたしは重藤くんと身体の関係も持ってるんだからー」

聡美が得意気に微笑むー。

そんな言葉に、愛奈は絶望するー。

「ーー嘘…」
”愛奈のいない場所”で、聡美と重藤先輩は身体の関係を持っていたー。
だから、愛奈は知らなかったー。

そんなことまで聞かされてー、
愛奈は膝を折るー。

「ーわたしから、重藤くんを取り上げないでー。
 このーー 泥棒!」

聡美はそう吐き捨てるように言うと、そのまま立ち去っていくー

愛奈は泣きながら”お姉ちゃん”の後ろ姿を見つめることしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー今日、愛奈に会ってきたのー」
聡美が、帰宅した重藤先輩に言い放つー

「ーーーえ」
重藤先輩が振り返るー。

別に、聡美のことを重藤先輩が全て”操作”しているわけではないしー、
洗脳しているわけでもないー。

あくまでも”重藤くんのことが大好き”ということを強く刻みつけた結果ー、
”重藤くんの言うこと”を聞いているだけに過ぎずー、
聡美は”染められたわたし”の意思で行動しているー。

「ーねぇ…なんで愛奈なの?」
聡美が呟くー。

「ーーあ?僕が愛奈ちゃんのこと、好きなのは知ってるだろ?」
重藤先輩が言うー。

「ーなんで…なんであんな女ー…」
聡美が歯ぎしりをするー

「ーー…お、おい?」
重藤先輩は少しだけ戸惑うー。

「ーーわたし…わたし、こんなに重藤くんのこと、愛してるのに!」
聡美が泣きながらそう叫ぶー。

「ーー重藤くん!もう我慢できないー!
 愛奈じゃなくて、わたしを見て!」

聡美がはぁはぁ言いながら、重藤先輩の手を掴むー。

「ーー調子に乗るなよ!」
重藤先輩はその手を振り払ってー、
「お前は”愛奈ちゃん”に近付くための道具だ!
 お前は僕の言うことを聞いていればいいんだ!
 大好きな僕に、尽くせばいいんだー!」
と、叫ぶー。

そして、不機嫌そうに「これから愛奈ちゃんと通話するんだからー邪魔しないでくれるかな」と、
スマホを手にしたー。

しかしー

「ーーーえ」
重藤先輩のスマホが取り上げられるー。

「ーなっ…おいっ!」
重藤先輩が叫ぶと同時に、聡美が重藤先輩のスマホを
床に叩きつけて、そのまま何度も何度もそれを踏みつけ始めたー

「ー愛奈愛奈愛奈愛奈愛奈愛奈愛奈愛奈愛奈!
 重藤くんを誰よりも愛してるのは、わたし!愛奈なんかじゃない!」

聡美はそう言うと、そのまま台所の方に向かって歩き出して、
包丁を手にすると、重藤先輩の方に向かってきたー

「ひぃっ!?」
重藤先輩が、情けない悲鳴を上げて、尻餅をつくー。

「ーー愛奈と重藤くんが一緒にいるのー
 これ以上、わたし、耐えられないー」

聡美が狂ったように呟くー。

「ーー愛奈に重藤くんを取られちゃうぐらいならー
 わたし、重藤くんと一緒に、愛奈のいない世界に行くもんー!」
聡美はそう言うと、重藤先輩に向かって、包丁を容赦なく振るってきたー。

「ーひっ…ぎゃああああああああああああ!!!」
頬にかすり傷を負った重藤先輩が、悲鳴を上げて、
あまりの恐怖にお漏らししてしまうー。

「ーぼ、ぼ、ぼ、僕の言うことを聞け!
 ぼ、僕が好きなら、僕が好きならー!」

重藤先輩がそう言うと、
聡美は包丁を手に微笑んだー

「ー重藤くんを殺したら、わたしも死ぬからー。
 
 それともーーー
 愛奈を捨てて、わたしと愛し合ってくれる?」

聡美の目は正気を失っているー。

”重藤くんが大好き”の想いが爆発してー、
狂気に染まっているー。

”くそー…憑依の影響が強すぎるー…!なんで、なんでこんなー!”

重藤先輩はそう思ったー。

しかしー、
それ以上にーー

”怖い”という気持ちでいっぱいだったー。

泣きべそをかきながら、
「ま、愛奈とは別れるー…ぼ、ぼ、ぼ、僕も聡美のことが大好きだー!」と、
叫ぶー。

「ーーー」
聡美はそんな重藤先輩を見ると、嬉しそうに笑いながらー
「ーじゃあ、”結婚”しよー。
 あと、重藤くんの精子も、もっともっと、欲しいな♡」と、
重藤先輩を強く抱きしめて来たー

「わたし、”愛した相手”は、どんな手段を使っても手に入れるのーふふふ」
聡美が囁くー

「ーー!!!」

重藤先輩はハッとするー

”「ークククー
 聡美、僕は”愛した相手”は、どんな手段を使っても手に入れるんだー。」”

以前ー、
重藤先輩自身が、染めた聡美に言った言葉だー。

そうー。
聡美に憑依したときー、
聡美が受けた影響は”重藤くんが大好き”だけではないー。

重藤先輩の歪んだ性格ー
嫉妬深いところや、手段を択ばないところにまで
影響を受けているのだー

そのことを悟った重藤先輩はー、
”逆らえば本当に殺されてしまうー”と、
そのまま聡美の愛を受け入れることしかできなくなってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーそんなことがー…」
聡美の彼氏だった陸翔が悲しそうに言うー。

「ーーごめんなさいー…
 わたしを守ろうとしたせいで、お姉ちゃんがー」
愛奈がそう言うと、
陸翔は「いいやー、愛奈ちゃんのせいじゃないさ」と、悲しそうに笑うー。

愛奈は、姉の彼氏だった陸翔に連絡を取り、
事情を説明したー。

その上で、「お姉ちゃんを元に戻すためなら、何でもしますー」
と、姉を元に戻そうとすることを改めて伝えたー。

「ー俺も、力になれることがあればなんでもするよー。
 聡美が帰ってくるまでー、俺はいくらでも待つからー」

陸翔は、全てを受け入れて、そう言葉を口にすると
悲しそうに、スマホに保存してある聡美との写真を見つめたー。

だがーーー

「ーー別れよう」

「ーーえ?」

その日の夜だったー。

”重藤先輩”から呼び出された愛奈は困惑するー。

どうせまた、”嫌々デートさせられるのだと”そう思っていた愛奈ー。
しかし、告げられたのは”重藤先輩”からの別れの言葉だったー。

「ーーーえ… じ、じゃあ、お、お姉ちゃんを返してよ!」
愛奈がそう言うと、
重藤先輩は怯えた様子で背後を振り返ったー

「ーーふふふふ 愛奈ー
 これで、重藤くんは、わたしのものー」

聡美の声がして、物陰から聡美が姿を現すー

「お、お姉ちゃんー?」
愛奈が混乱しながら言うと、
聡美は「ーわたし、重藤くんと結婚するの!」と、
”無理矢理書かせた婚姻届”を手に微笑むー。

「ーーえ… だ、ダメだよお姉ちゃん!
 そんなことしたら、後戻りできないよ!!」
愛奈が必死に叫ぶー

「ーー許せない!お姉ちゃんを!!お姉ちゃんをこれ以上弄ばないで!」
愛奈が泣きながら重藤先輩に向かって叫ぶー。

だがーー

「ーーぼ、ぼ、ぼ、僕にはもう、止められないー」
重藤先輩がすっかり怯え切った様子で言うー。

「ーーー君のお姉さんー、僕のことが好きになりすぎてー
 僕には、もう、止められないー」

怯え切った様子の重藤先輩を前に、愛奈は表情を歪めるー。

「ーーじゃあ、重藤くんーー
 今日から、わたしたちは夫婦だから、ねー」

にっこりと微笑む聡美ー

「ーお、お姉ちゃんー…」
取り残された愛奈は、呆然と”変わり果ててしまったお姉ちゃん”を
見送ることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数か月後ー。

姉の聡美は、”重藤先輩”と、結婚してしまったー。

止めることができなかったー。

けれどー、
愛奈と重藤先輩の縁が切れたことやー、
重藤先輩が、愛奈を傷つけるようなことを命令しなくなったことで、
”お姉ちゃん”は、”重藤先輩が大好きすぎる”以外は、
前に戻ったようなー、
そんな、気がするー。

「ーふふふ♡ 毎日毎日、本当に幸せー」
聡美が嬉しそうに言うー。

「ーーーお姉ちゃんー」
悲しそうに呟く愛奈ー。

「ーあ、そうだ、愛奈ー
 今度の誕生日プレゼント、何がいい?
 欲しいもの、買ってあげるー」

聡美が笑いながら言うー。

「ーーーえ、え~っとねー…」
愛奈が戸惑いながらも、言葉を口にするー。

”お姉ちゃん”は、
本当に幸せそうだー。

重藤先輩は、すっかり大人しくなりー、
”お姉ちゃん”の言いなり状態ー。
よほど、怖かったのだろうー。

”愛奈を守りたい”という、姉・聡美の想いはー、
形は全然違ってしまったけれどー、
結果的には、実現しているのかもしれないー。

もう、重藤先輩が愛奈に手を出すことはないのだからー。

「ーーーーー」
愛奈は、心底幸せそうな”お姉ちゃん”を見て思うー。

いつの日かー
もしもー
もしも、”元に戻す方法”が見つかったとしてー、
お姉ちゃんを元に戻したとしたらー

どうするべきなのだろうー、と。

”今のまま”なら、お姉ちゃんは
自分が幸せだと思い込んでー
例えそれが偽りの幸せでも、”大好きな重藤くん”と、
一生一緒に暮らすのかもしれないー。

けれどー、
”元に戻せばー”
憑依で歪められた部分を元に戻せばー
”陸翔を振って、妹につきまとっていた男に身体を捧げー、
 結婚までしてしまった”という現実に
直面することになるー。

「ーーー…」
愛奈が複雑な表情を浮かべながら、姉・聡美を見つめるー。

「ーーそういえば、わたしの学生証、見てみて~」
聡美が嬉しそうに自分の学生証を見せて来るー

”重藤 聡美”と書かれているー

結婚したことで、苗字も変わってしまったのだー。

「ーー重藤さんって呼ばれると、わたし、すっごい興奮しちゃってー」
聡美のそんな言葉に、
愛奈は、思わず聡美の手を握って、
目から涙をこぼしながら言葉を口にしたー

「ーお姉ちゃん、ごめんねー」
愛奈が涙を浮かべながら呟くー。

”こんな姉”の姿を見て、そう言わずにはいられなかったー。

本当のお姉ちゃんは、
重藤先輩と結婚なんか絶対にしたくなかったはずなのにー、
こんな風に”幸せ”な振る舞いをさせられているー。

あまりにも残酷で、泣きそうになるー。

「ーーえ?なにが?」
聡美が戸惑いながら苦笑いするー

「ーわたしのために、ごめんねー…お姉ちゃんー」

愛奈は、振り絞るように、そう言葉を口にするとー、
”いつか、元に戻せる方法が見つかったのならー…”
と、心の中で、改めて決意を固めるのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~!☆
物語を描き切るために、ちょっといつもより長めに…★笑

この状態のお姉ちゃんを前に…
元に戻せる方法がもしも見つかったなら、
皆様はどうしますか~?

元に戻ったお姉ちゃんがきっと苦しむことを織り込み済みで元に戻すか、
それとも”今は幸せそう”だから、そのままにしておくか…
悩みどころなのデス…!

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<あなたを守るため>
憑依空間NEO

コメント

  1. 匿名 より:

    憑依して、染めて、いいように利用しようとしたつもりが、結果的にとんでもないヤンデレ女を生み出すことになってしまいましたね。

    染めるタイプの話は、憑依人の思い通り、完全勝利みたいな話が多いので、こういう、ある意味憑依被害者に逆襲されるみたいな展開は珍しいので新鮮でいいですね。

    • 無名 より:

      ありがとうございます~!☆★

      いくつかの結末を頭の中に考えて、
      最終的にこの結果を選びました~!

      確かに染めた側が、大変な目に遭うお話は
      あまり多くはない気もしますネ~!

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