<憑依>あなたを守るため②~姉の裏切り~

妹を守るために、”憑依”の身代わりとなった姉。

しかし、彼女は妹につきまとう男に”好意”を持つように
染められてしまい、妹を守るどころか、
妹を傷つける最悪の存在になってしまうー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

姉・聡美に呼び出された愛奈が、
聡美の家にやって来るー。

実家から1時間ほどの距離にある聡美の家ー。

そのインターホンを鳴らすと
すぐに聡美が中から姿を現したー。

「ーーーあ、愛奈!待ってたよ!」
笑みを浮かべる聡美ー。

「ーお姉ちゃん、話ってなに?」
姉との再会に少し嬉しそうにしながらも、
同時に愛奈は、不安そうな表情でそう呟くー。

「ーうん!まずは中に入って」
そう言いながら、愛奈を少し強引に中に入れると、
聡美は玄関の鍵を閉めて、そのまま愛奈を奥へと進ませたー。

がーー
愛奈は、表情を歪めたー。

”姉の部屋の中”に、重藤先輩がいたのだー。

「ーーひっ!?」
思わずビクッとする愛奈ー。

「ーーふふふ…何驚いてるの?」
クスクスと笑う姉の聡美ー。

それと同時に、重藤先輩はニヤニヤしながら
「ーやぁ、愛奈ちゃんー」と、笑みを浮かべたー。

「ーーお、お、お姉ちゃんー…
 な、何で重藤先輩が、ここにー?」
怯えた様子で言い放つ愛奈ー。

昨日ー、姉の聡美は”重藤先輩と話を付けて来る”と
そう言っていたー。
その聡美と重藤先輩が、何故一緒にいるのかー。
一緒にいるのかー。

「ーー愛奈ー。よく聞いて」
聡美はそう言うと、愛奈を諭すような口調で言い始めたー。

「昨日、”重藤くん”に会いに行くって話はしたよね?」
聡美のそんな言葉に、
愛奈は激しい違和感を覚えるー

「し、重藤”くん”ー?」
愛奈が困惑しながらそう言い返すも、聡美はそれを無視して続けるー。

「でもね、実際にお話してみたらー
 重藤くん、とってもいい人だったからー…

 愛奈はつきまとわれてるって言ってたけど、
 愛奈、重藤くんのこと、ちょっと勘違いしてるんじゃないかな?」

聡美のそんな言葉にー、
愛奈は「お…お姉ちゃん…?」と、”信じられない”というような
視線を向けるー。

「ー愛奈、
 一方的に相手をつきまといだなんて決めちゃだめ。
 重藤くんは、愛奈のことを思って色々心配してくれてるんだからー。」

姉・聡美の信じられない言葉は続くー

その様子を見ながら、重藤先輩は笑うー

”クククー 憑依ってホントにすごいなー。
 昨日”妹には手を出さないで”なんて言ってたあの女がー
 今じゃこのザマなんだからなー”

昨夜の”憑依”で、
”重藤くんが大好き”を繰り返した結果ー、
聡美は”重藤先輩が大好き”な女に変わってしまったー。
染められてしまったー。

今の聡美は”自分の意思”で、愛奈に”重藤くん”の良さを説いているのだー。

「ーそ、その人、学校まで勝手に来て!」
愛奈が重藤先輩を指差しながらそう言うと、
「それは、重藤くんが愛奈のことを心配してるからでしょ!」
と、聡美が少し声を荒げるー。

「ー違う!LINEだってしつこくしつこく送って来るし、わたし、怖いの!」
愛奈が涙目でそう叫ぶー。

聡美はそんな愛奈を見て
「ー親切にしてくれてる人に、そんな態度、よくないよ」と、
呆れたような表情を浮かべるー。

「ー重藤くんほど、愛奈のこと心配してくれてる人はいないよー。
 愛奈ー、重藤くんと付き合いなさい」

聡美がそんな言葉を口にするー。

「お……お姉ちゃん……ど、どうしちゃったのー?」
不安そうに呟く愛奈ー。

「ー別にどうもしてないー。
 でも、愛奈が悪い子だから、わたし、怒ってるの。」
聡美が苛立ちを露わにするー

「ーーーほら、重藤くんと早く付き合いなさい」
聡美がそう言い放つー

元々はー、
愛奈に憑依して、愛奈を滅茶苦茶にする予定だった重藤先輩ー。

愛奈を”聡美”のように俺色に染めることもできたが、
それはしたくなかったー。
それでは”元々の愛奈”がいなくなってしまうしー、
”染めた愛奈”は、”愛奈”であって、”愛奈”ではないー。

だから、それはしなかったー。

しかし、姉の聡美ならー、
別にどうでもいいー
”元に聡美”がいなくなろうと、重藤先輩からすれば興味がないことだし、
”姉”を使えば、愛奈ちゃんと付き合うことができるかもしれない、と
そう考えたのだー。

「ーははは ほら、お姉ちゃんもこう言ってくれてるし、
 僕と、付き合ってくれないかな?」

重藤先輩がそう言い放つー。

「ーほら、重藤くんもこう言ってくれてる!
 絶対付き合ったほうがいいよ!愛奈のこと、大事にしてくれるだろうし、
 お姉ちゃんも、重藤くんみたいな人が愛奈の彼氏なら
 すっごく安心だし!」

聡美が嬉しそうにそう言い放つー

そんな”お姉ちゃん”を見つめながら聡美は涙目で
”重藤先輩”のほうを睨んだー

「お姉ちゃんに何を言ったんですかー?
 お姉ちゃんを、脅したんですか!?」

そう、叫びながらー。

愛奈には信じられなかったー。
姉の聡美が、こんなことを言い出すなんてー。

「別にー。僕は何もしていないよー。
 なぁ、お姉さんー」

重藤先輩がそう言うと、聡美は頷きながら
「そうよー。重藤くんに失礼でしょ」と、少し怒りながら言うー。

「ーー…違うー…お姉ちゃんは…そんなこと言わないー…!」
愛奈は首を横に振りながら重藤先輩のほうを見つめるー。

「ーーお姉ちゃんに…お姉ちゃんに何をしたの!?
 お姉ちゃんを元に戻して!」

愛奈がそう叫ぶー。

聡美は怒りの形相で「重藤くんに失礼でしょ!謝りなさい!」と、叫ぶー。

しかしー
重藤先輩はそれを止めたー。

「もういいよー」
とー。

「ーー…あ、うんー」
聡美はすぐに重藤先輩の指示に従うと、
重藤先輩は笑みを浮かべたー。

”ーーチッ、お姉ちゃんを使っても、そう簡単に僕の彼女にはならないかー”
とー。

聡美を使って”付き合いなよ”と言えば、
渋々首を縦に振る可能性も考えていたが
やはりだめだったー。

ならば”プランB”に進むしかないー。

「ー聡美、着替えておいで」
それだけ言うと、聡美は頷いてそのまま別の部屋に移動するー

「き、着替え…!?お、お姉ちゃんー!」
愛奈が不安そうに叫ぶも、
重藤先輩が、愛奈に声をかけるー。

「ー愛奈ちゃんのお姉ちゃんはー…
 ククー、もう、”僕に夢中”なんだー」

とー。

「ーど、どういうことー…?」
愛奈が不安そうに呟くー。

「ーーククククー
 まぁ、言葉で説明するよりも”見た方が”早いだろ」
と、重藤先輩が何かを用意し始めるー。

そうこうしているうちにー…
姉の聡美が”チャイナドレス”に着替えて部屋に戻って来たー

「お、お、お、お姉ちゃん!?」
愛奈は思わず叫ぶー。

「ーははは…綺麗だなぁ」
重藤先輩はそう言いながら、聡美を呼び寄せると、
そのまま聡美の太腿をイヤらしい手つきで触り始めるー

「あぁ…重藤くん…♡」

”女の顔”をして、嬉しそうに微笑む聡美ー。

快感を感じているような、
そんなお姉ちゃんの姿に、愛奈は涙を浮かべながら
「お姉ちゃん!正気に戻ってよ!」と、叫ぶー。

しかしー、
聡美は笑いながら
「愛奈、何か勘違いしてるでしょ?」と呟くー。

「わたしは重藤くんに脅されていないしー、
 わたしは重藤くんに何かされてるわけでもないー
 わたしは、自分の意思で重藤くんを自分の家に上げて、
 自分の意思でチャイナドレスを着て、
 重藤くんに足を触ってもらってるのー」

そんな言葉に、呆然とする愛奈ー。

そしてーー
重藤先輩は、USBメモリに保存した動画を
パソコンで再生し始めたー。

「ーー!?!?!?」

その映像ではー、
突然、重藤先輩が黒い煙のようになって”聡美”に憑依する映像が映し出されていたー。

そして、”憑依”のことを説明する重藤先輩。

説明を終えると、さらにこう言葉を続けたー。

「ー昨日、僕の所に来たお姉さんに、
 僕は言ったんだー

 愛奈ちゃんに憑依されたくなければ、身代わりになれー、とね」

重藤先輩はそう言うと、
映像を指差しながら言ったー。

「憑依薬の効力は6時間ー。
 愛奈ちゃんを守るために、お姉ちゃんは6時間、僕に身体を貸したんだー」

そう呟く重藤先輩ー。

その光景だけでもショックなのに、
さらに、重藤先輩は言ったー。

「ーそして、僕は、”愛奈ちゃんのお姉ちゃん”に
 僕への愛を刻み込んだー」

映像に映る”憑依された聡美”が、
”重藤くん、大好き♡”と、しつこいぐらいに連呼しているー。

「ーーーーーふふふ♡」
チャイナドレス姿の聡美が、嬉しそうにその”映像”を見つめているー。

「ーお、お姉ちゃんー…!
 これ…!ほら、よく見て!お姉ちゃんがされたこと!」
愛奈は泣きそうになりながら、パソコンの画面を指差すー。

そこには、”聡美”が憑依されて、
重藤先輩の意のままに染められていく姿が
映っているのだー。

だがー
聡美は幸せそうな笑みを浮かべながら、
「ー重藤くんは、わたしの本当の気持ちに、気付かせてくれただけ」と、
聞く耳を持たないー。

「ークククー」
映像の再生が終わると、重藤先輩は
”妹”である愛奈の目の前で”お姉ちゃん”にキスをしてみせたー。

「重藤くん…♡」
幸せそうに微笑む聡美ー。

「ーーお姉ちゃん…嘘でしょ…… お姉ちゃん…」
その場で泣きだしてしまう愛奈ー。

「ーーーーー」
そんな愛奈を見てもー、
妹が目の前で泣いているのを見ても、聡美は
クスクスと笑ったままー。

そんな愛奈に対して、重藤先輩が近付いていくと、
静かに耳打ちをするー。

「ーー僕と付き合えー。
 そうしたら、お姉さんは元に戻してやるー」

ニヤリと笑う重藤先輩ー。

姉の聡美が
”愛奈だけは助けて”と言っているのを見て、
重藤先輩は、聡美と愛奈が固い絆で結ばれていることを
確信していたー。

姉と同様に、
妹である愛奈にも”この手”は通用するはずだー。

「ーーー僕と付き合うだけでいいー
 愛奈ちゃんに憑依したりしないし、傷つけたりはしないー。
 僕の彼女になってくれれば、それでいいー」

重藤先輩の言葉に、
愛奈は涙目で重藤先輩を睨みつけるー。

「ー嫌ならー、
 お姉ちゃんを、僕の彼女にするだけだー」

にやりと笑う重藤先輩ー。

「ーわたしが重藤くんのー?」
嬉しそうに反応する聡美ー。

「ーーククー…ほら、今、僕が君のお姉さんに
 ”彼女にしてあげる”と言ったら、
 お姉さんは喜んで僕の彼女になるだろうしー…

 何ならー…」

重藤先輩はにやりと笑うー。

「ー僕と結婚だってするだろうさー」
とー。

「ーーー…!!!」
愛奈は、心を抉られるような思いで、重藤先輩を睨むー。

こんな人と、お姉ちゃんが結婚ー?
お姉ちゃんの意思でもないのにー?

「ーお姉ちゃんを、元に戻して!」
愛奈は、重藤先輩に咄嗟に飛び掛かるようにして
襲い掛かったー。

非力な愛奈が相手とは言え、突然の行動に
少し驚く重藤先輩ー。

「重藤くん!」
チャイナドレス姿の聡美が驚いて声を上げるー。

「ーーー…愛奈!!何でそんな悪いことばっかりするの!?」
聡美はそう叫ぶと、愛奈の腕を掴んでー、
愛奈にビンタを食らわせたー。

生まれて初めて、妹に暴力を振るったー。

叩かれた愛奈は、姉の聡美を見て、
その場で再び泣き出してしまうー。

「ーー重藤くんに何てことするの!!!
 愛奈がそんな悪い子だなんて思わなかった!!!

 最低」

心底蔑むような口調で聡美にそう言われた愛奈は
あまりのショックに反論もできなくなってしまうー。

そんな様子を見た重藤先輩は興奮しながら
「ーほらほら、妹にそんなきついこと言っちゃだめだろ」と、
聡美に言い放つと、聡美は「うんー」と、嬉しそうに微笑むー。

「ーーお姉さんを救いたいだろ?
 だったらー、僕と付き合うんだー。

 もちろんー、”口だけじゃないかどうか”ちゃんと
 確かめさせてもらうけどー…
 そうだなー
 1か月ぐらい、”ちゃんと”僕の彼女でいられたらー
 お姉さんは元に戻してあげるよー」

笑う重藤先輩ー。

そんな言葉にーー…
心を打ち砕かれた愛奈はー、
呆然としながら、その首を縦に振ってしまったー

「ークククー…今日から愛奈ちゃんは僕の彼女だ!」
嬉しそうに宣言する重藤先輩ー。

”妹を守るため”
犠牲になった姉・聡美は、
自分自身が妹の愛奈を傷つける結果になるなどとは、
夢にも思っていなかったー。

けれど、今の聡美には、もうそんな想いはないー。

”重藤くん、大好きー”
という思いで埋め尽くされてしまった聡美は、
そんな様子を只々、嬉しそうに見つめていたー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

恐ろしい先輩に染め上げられてしまった
お姉ちゃんと、無理やり付き合うことになってしまった妹の運命は…?

どうなるのかは、明日のお楽しみデス~!!
今日もありがとうございました~!!

PR
憑依<あなたを守るため>
憑依空間NEO

コメント

タイトルとURLをコピーしました