妹から、振った男につき纏われていると相談を受けた姉。
妹思いの姉は、実家で暮らす妹のため、その男に話を付けようとする。
しかし、その男はあろうことか
”憑依薬を手に、妹への憑依を実行に移す直前”だったー…!
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”最近、ちょっと困ったことがあってー”
実家で暮らす妹、愛奈(まな)と、いつものように
電話で話をしている最中、愛奈が急にそんな言葉を切り出したー。
姉の聡美(さとみ)は「ー困ったこと?」と、心配そうに言葉を口にしたー。
川崎 聡美(かわさき さとみ)は、
現在大学生ー。
実家を離れて一人暮らしをしているー。
しかし、妹の愛奈とはとても仲良しで、
実家を出た今でも、日常的にこうして通話をしていたー。
普段は趣味の話やお互いの学校のことなど、
雑談が多いものの、
今日は愛奈が突然、真剣な話を切り出したのだー。
「ーーつきまといー?」
聡美が心配そうにそんな言葉を口にすると、
愛奈は”うんー…”と、暗い声で返事をするー。
「あ、相手は誰?」
聡美がそう言うと、
”バイト先の重藤(しげふじ)って人ー”
と、愛奈は言葉を口にするー
聞けば、愛奈のバイト先にいる先輩の”重藤 信明(しげふじ のぶあき)”という
男に、少し前に告白されて、
それを断ったところ、しつこく重藤先輩につき纏われているのだというー。
「お父さんとお母さんには相談した?」
聡美のそんな言葉、愛奈は”なかなか言えなくて…”と、不安そうに
言葉を口にするー。
普段、明るい性格の愛奈ー
しかし、今日はかなり参っている様子で、
声もいつもより暗いー。
重藤先輩からつきまとわれるまでの経緯を詳しく確認する聡美ー。
愛奈の言っていることが本当ならー、という注釈付きにはなるものの、
愛奈の話を聞く限り、重藤先輩の一方的な好意で、
愛奈の断り方にも、何も問題はない、そう思えたー。
”学校の前でも、この前、待ち伏せされててー”
不安そうな愛奈ー。
学校の前まで来た、となるとやはり普通ではないー。
愛奈も、その重藤先輩に”そういうことはやめてほしい”と
伝えてはいるものの、改善しない状態ー。
バイト先の店長にもこっそり相談して、
シフトをずらしてもらったけれど、効果はないらしいー。
「ーーーねぇ、その人の写真とかあるー?」
聡美が心配そうに言うと、
愛奈は”え?写真?”と、不安そうに言葉を口にするー。
「ーうん。何でもいいのー。」
聡美がそう言うと、
愛奈は”あ…わたしがバイト始めた時に、事務所でちょっとした歓迎会みたいのが
あったときにーみんなで撮った写真があるかも”と、思い出したように言葉を口にするー。
「ーじゃあ、それを送って」
聡美がそう言うと、愛奈は”ど、どうして?”と、不思議そうな声を出すー。
「次、その”重藤先輩”がシフトに入ってる日に、
わたしが話をしてくるからー」
聡美がそう言うと、愛奈は心配そうに
”え…でも、お姉ちゃんだって、大変だしー”と、
心底申し訳なさそうに言葉を口にするー。
「ーふふー、そんなことは心配しなくていいの。
妹がピンチだったら、助けるのがお姉ちゃんの仕事だもん!」
聡美がそう言うと、
愛奈は、少し驚いた様子で、”お姉ちゃんー”と、
心底嬉しそうにお礼の言葉を口にしたー。
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後日ー
聡美は、妹・愛奈のバイト先である書店の付近まで出向き、
愛奈から受け取った写真を確認しながら
”重藤先輩”が出てくるのを待っていたー。
”ーお姉ちゃんー、重藤先輩、お姉ちゃんが思ってるよりも
ヤバい人だと思うからー、絶対に気を付けてねー”
妹の愛奈からは、今朝、改めてそんな連絡を受けているー。
一緒のバイト先にいる愛奈が”ヤバい”と言うのだから、
それなりにヤバい相手なのだろうー。
けれど、そういうつきまといをするような”小物”は、
第3者が出ていけば途端に委縮することも多いー。
妹の愛奈とも面識がある
高校時代からの彼氏・陸翔(りくと)も心配してくれてはいたしー、
いざとなったら”陸斗”も力を貸してくれるー、と言っていたー。
けれど、陸斗に迷惑をかけるわけにはいかないしー、
直接話をして、今日、ここで解決させるー、と、
聡美は一人、この場所にやってきていたー。
陸翔は心配するだろうからー、
”妹のストーカー”と、一人で話をすることは、伝えていないー。
そんなことを思っているとー、
妹・愛奈につきまとっているバイト先の先輩ー、
”重藤先輩”が、書店から姿を現したー。
「ーーー”あれが重藤先輩ー”」
聡美はそう確信すると、重藤先輩の方にすぐに近づいていくー。
当然ー、聡美も無警戒で重藤先輩に近付いているわけではないー。
”急に反撃してくる”可能性も考えながらー、
スマホを手に、すぐに通報できる準備もしつつー、
重藤先輩に接近したー。
「ーーーーー重藤さんですか?」
聡美がそう言うと、重藤先輩は「ーそうですが」と、答えたー。
小太りの眼鏡をかけた男で、
歳は20代後半ぐらいだろうかー。
そんなに悪意のある感じには見えないが、
人は見かけによらずー、とも言う。
いずれにせよ、油断してはいけないー。
「ーーー川崎 愛奈の姉ですー」
聡美がそう名乗ると、重藤先輩は少しだけ表情を歪めたー
「あぁー、川崎さんのお姉さんー。
いつも、お世話になっていますー」
ぺこりと頭を下げる重藤先輩ー。
一見すると礼儀は正しい感じだー。
けれどー、愛奈が嘘をつくとも思えないー。
単刀直入に、聡美は「妹のことで、お話があります」と、言い放つと、
重藤先輩は少しだけ頷いてから、
笑みを浮かべたー。
「ーーあぁ、あぁ、なるほどー
”愛奈ちゃん”から何か言われたんだね?」
突然、真面目そうな雰囲気を捨ててー、
邪悪な本性を露わにする重藤先輩ー。
ゾワッとした悪寒のようなものを感じながら、
聡美も”この男が危険な男”であるということを
直感的に感じ取るー。
しかしー、
聡美は”あえて”人通りの多いお店の前で声をかけたー。
重藤先輩の”バイト先”のすぐ側で声をかければ、
それも気になるだろうし、
この人通りの多い場所で、重藤先輩が何かを仕掛けて来ることは
難しいだろうー。
「ーーーーー」
聡美は少し気圧されそうになりながらも、
意を決して口を開くー。
「愛奈にー、妹につきまとっていると聞きましたー。
それは、本当ですか?」
聡美が言うと、重藤先輩はうすら笑みを浮かべたー。
「ーーーつきとまいだなんて失礼なー
僕ほど、愛奈ちゃんを愛している人間はいない」
重藤先輩のそんな言葉に、
聡美は「これ以上ー、これ以上、妹にしつこくするようであれば
こちらとしてもそれ相応の対応を考えさせていただきます」と、
ハッキリとした口調でー、毅然とした態度を示し、言い放つー。
「ーーーーーーー…ふふ」
重藤先輩は笑みを浮かべたー。
「ーーちょうど良かったー」
その言葉に、聡美は表情を歪めるー。
「ちょうど、愛奈ちゃんのことは諦めようと思ってたところだからー」
少し意外な言葉に、聡美は「それならー」と、少し安心した様子で
言葉を口にするー。
”重藤先輩”が、これ以上愛奈に何もしないと誓えるのであればー、
聡美としてもこれ以上何かをするつもりはないー。
あくまでも、争うことが目的ではなく、”つきまとい”を
やめさせることができれば、それでいいー。
「ーええ、ええ。”僕は”もう、二度と愛奈ちゃんには近づかないー。
約束しますよ」
重藤先輩はそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべたー。
「ーー”憑依”することにしたからー」
とー。
「ー!?!?!?!?」
想像もしてなかった、恐ろしい言葉ー。
重藤先輩が何を言っているのかー
サッパリ意味が分からないー。
しかしー、その言葉が”良い意味ではない”ことは、
何となく想像できたー。
「ーちょうど、今日、このあと僕はー
”憑依薬”を使って、愛奈ちゃんに憑依するつもりだったんでー
もう、”僕は”2度と愛奈ちゃんには近づきませんー
くふふー、振り返って貰えないならー
愛奈ちゃんに憑依して、愛奈ちゃんを滅茶苦茶にしてやるー」
重藤先輩の目には狂気が宿っているー。
聡美は「ひ、憑依ってー…な、なにー…?」と、
呆然とした様子で呟くー。
そんなこと、できるわけがない、と言葉を添えながらー。
しかしー
重藤先輩は自信満々に言い放ったー。
「それができるんだなぁー。
今日の夜、僕が、”愛奈ちゃん”になるんだー
そして、愛奈ちゃんを
滅茶苦茶にしてやるー」
ニヤニヤと挑発的に笑う重藤先輩ー。
重藤先輩は、”今夜”ー、このあと愛奈に憑依するつもりだったのだー。
ギリギリのところで、恐ろしい事態が起きる直前にー、
聡美はそれを知ることができたー。
だがーー
「ー残念だけど、阻止する方法はないよー。
僕は既に憑依薬を飲んでるー。
いつでも、霊体になることができるんだー」
重藤先輩は、そんな言葉を口にしながら、
ふと、聡美のほうを見て
「あぁーーこの会話録音してるのかー」と、笑みを浮かべたー。
「でも、無駄だよ。
”憑依”なんて、世間に言っても誰も信じやしないー」
重藤先輩の悪魔のような言葉ー。
聡美は、喉がカラカラに乾くのを感じながら、
重藤先輩のほうを見つめるー。
”何か”される可能性までは考えていたがー、
こんな展開は考えていなかったー。
ここで今、周囲に助けを求めても
”重藤先輩”は何もしていないー。
つまり、どうすることもできないー。
「ーーー妹には、手を出さないで」
聡美が、困惑しながらも妹の愛奈を守りたい一心で
そう言葉を口にするー。
「ーーーーー」
重藤先輩は、少しだけ表情を歪めるー
「ーわたしはどうなっても構わないー
でも、愛奈には絶対に手出ししないで」
聡美が強い口調でそう言い放つー。
重藤先輩は思うー。
”愛奈ちゃんに憑依するにしても、この女ー厄介だなー…”
とー。
憑依薬の効力は6時間ほどー。
重藤先輩は”振り返ってくれない愛奈”に憑依して
その6時間で愛奈の人生を滅茶苦茶にするつもりだったー。
だが、思わぬジャマが入ったー。
「ーーーーー」
いやー、待てよー?
重藤先輩はあることを思いつくと、
邪悪な笑みを浮かべたー。
”こいつー…使えるかもしれないなー”
そう、思いながらー。
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翌日ー
「あ、お姉ちゃんー?どうしたの?」
今日は土曜日で学校もバイトも休みの愛奈が姉・聡美からの
電話に出ると、
姉・聡美は”大事な話があるんだけど、会えるかなー?”と、
言葉を口にするー。
「ーえ?大事な話ー?」
愛奈が不思議そうにそう言うと、
聡美は”うんー。ほら、この前相談されたーーー…バイト先の先輩のこと”と
言葉を口にしたー。
愛奈は「え…あ、うんー。今日なら会えるよー」と、
少し戸惑いながら返事をすると、
そのまま外出する準備を始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
妹・愛奈との電話を終えて、スマホを置く聡美ー。
聡美はーー…
バニーガールの格好をしたまま
にっこりと微笑むと、
横にいた男ーー…
”重藤先輩”に声をかけたー。
「ーー愛奈を呼びました」
とー。
「ーーククク…いい子だー」
重藤先輩がそう言いながら、バニーガール姿の聡美の太ももを
イヤらしい手つきで触るとー、
聡美は嬉しそうに「重藤くん…♡」と、笑みを浮かべるー。
その表情はとても幸せそうで、嫌々そうさせられているようには見えなかったー。
「ーークククククー」
重藤先輩は、そんな聡美の足を触りながら昨日のことを思い出すー。
・・・・・・・・・・・・・
”愛奈ちゃんへの憑依をやめてほしいならー
一つだけ、条件があるー”
重藤先輩がそう耳打ちをするー。
”じ、条件ー?”
聡美が困惑した様子で重藤先輩を見つめると、
”お姉さんが、身代わりになること”と、
重藤先輩は答えるー。
”妹に憑依されたくなければ、お前に憑依させろ”と、
重藤先輩はそう言ったのだー。
当然、聡美はすぐには首を縦に振らなかったー。
しかしー、
”ーじゃあ、僕は愛奈ちゃんに憑依して、愛奈ちゃんの身体で好き放題して、
愛奈ちゃんを破滅させるだけだー”
と、冷たく言い放つ重藤先輩ー。
他に、”妹への憑依を阻止する方法はない”と、言わんばかりの態度を
示したー。
「ー力ずくで、僕をどうにかしようとしても無駄ですよー。
もう、僕は”憑依薬”を飲み終えてるー。
いつでも”霊体”になれるんだからー」
重藤先輩はそこまで言うと、邪悪な笑みを浮かべるー。
「安心しなよー。憑依薬の効力は”6時間”
明日の朝には、お姉さんは正気に戻りますよー」
その言葉に、聡美は重藤先輩を睨みながら言い放つー。
「ーー私が身代わりになったら”愛奈”には絶対に手を出さないって約束して」
とー。
「ーーーあぁ、約束するよ。僕は約束を守る男だー
それに、憑依薬は1本しか持っていないし、買ったサイトも閉鎖されちゃったから
もう、手に入れることもできない」
重藤先輩がそこまで言うとー、
聡美は険しい表情を浮かべながら、頷くー。
重藤先輩の言葉を信じたわけではないー。
けれどー、愛奈が憑依されるという最悪の事態を
避けなければいけない、と必死だった聡美は、
そんな提案を受け入れてしまったー
”わたしを身代わりに、愛奈を守れるのであればー…”
”わたし”が何をされるかは分からないー。
憑依されている間に”何”をしてしまうのかは分からないー。
けれどー…
それでもーー
たとえー
憑依されている間に”自殺”でもさせられたとしてもー…
それで、愛奈を守れるならー。
聡美はそう考えながら、重藤先輩の憑依を受け入れてしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨日のことを思い出し終えた重藤先輩は笑うー。
「ークククク…バカな女だー。
僕に憑依されて、僕のことが大好きになっちゃったんだからー」
昨夜ー、
聡美に憑依した重藤先輩は、
ひたすら”重藤先輩のことが大好き”と、刻み込むように呟き続けたー。
そしてー、重藤先輩のことを聡美の身体で想いながら、聡美の身体で
何度も何度もお楽しみを繰り返したー。
その結果ー、
聡美は”重藤先輩のことが大好きな女”に変えられてしまったー
”憑依薬”を使って、憑依した相手の思考を歪めることができるー。
汚染することができるー…
そう知っていた重藤先輩は、昨日、愛奈の姉・聡美が会いに来たことで、
”聡美を手駒にする”という恐ろしいことを思いついてしまったのだー。
(愛奈ちゃんに憑依して、愛奈ちゃんを染めることもできたけどー
愛奈ちゃん自身を変えちゃったら、それはもう愛奈ちゃんじゃなくて
汚染された愛奈ちゃんだから、僕の願いとは違うんだよなぁ…)
手に入らないなら壊せばいいー。
そう思って、愛奈に憑依しようとしていた重藤先輩はー、
姉の”聡美”を手に入れたことで、聡美を使って愛奈を我が物にしようと
画策していたー。
「ーークククー、昨日は”愛奈だけは”なんて言ってたのにー
僕の手伝いをして、妹を陥れる気分はどうだい?」
重藤先輩がそう言うと、
聡美は「重藤くんのためだもん…♡」と、幸せそうにー、
不気味な笑みを浮かべたー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最悪な先輩に憑依されて、汚染されてしまったお姉ちゃん…!
大変なことになりそうですネ~!…!
続きは、また明日デス~!!
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