容姿を理由にいじめられて、悩む幼馴染の女子ー。
そんな彼女を見かねた彼は、
”俺がお前を可愛くしてやる”と、入れ替わりを持ちかけるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
並川 斗真(なみかわ とうま)は、
教室の窓際の座席で、廊下側に座る”幼馴染”のほうを見つめていたー。
斗真は”少し変わり者”な男子高校生で、
趣味は”ネットで変なものを見つけて買うこと”ー。
”人間は嘘をつく生き物だから、信用ならない”というのが持論で、
他のクラスメイトたちとあまり関わろうとせずに、
一匹狼のような態度を貫いていたー。
しかし、本人は気弱なわけではなく
常に周囲の人間関係を”観察”しており、
クラスメイトたちのあらゆる秘密を握っていることから、
誰も、斗真のことをいじめたりするようなことはなかったー。
そんな、斗真が見つめていたのは
”幼馴染”の鮎川 麻紀(あゆかわ まき)のことー。
麻紀は、小さい頃から”容姿を理由”に、いじめられておりー、
そんな境遇で長年生きて来たことから
ますます自分に自信を無くし、それが顔にも滲み出てしまっているー、
そんな状態だったー。
高校に入ってからは、ストレスで激太りし、
それを理由にさらにいじめがエスカレートする…という
最悪の悪循環に陥っていたー。
ボソボソ、と何かを呟く麻紀ー。
この、ボソボソとした話し方も、いじめっ子たちには
気に入らないらしいー。
「ーーーーーーー」
斗真は、そんな幼馴染の麻紀のことを
助けるわけでもなく、いじめに加担するわけでもなく、
見つめていたー。
人間は人間を傷つけ、嘘をつく、
最低な生き物だと思っている斗真は、
不愉快そうにその光景を見つめるー。
だがーーー
この日の放課後ー、
斗真は突然、麻紀に声をかけたー。
幼馴染とは言えー
”人との関りを嫌う一匹狼”と、
”いじめられている自分の自信のない少女”では、
ほとんど普段は関わりもなく、会話もないー。
そんな斗真にいきなり声をかけられて、
麻紀は「え…な、並川くんー…な、何か、わたし、悪いこと……したかな?」と、
自信なさそうに小声で言う。
また”いじめられる”と思っているようだー。
斗真はため息をつくと、
「ー俺はいじめねぇよ」と、言葉を口にしたー。
「ーーう、うんー…ありがとうー」
麻紀がお礼を口にすると、
斗真は「お礼を言うことじゃねぇだろー。イジメる方がおかしいんだから」と、
うんざりした様子で言うと、
麻紀は「ご、ごめんー」と、また謝罪の言葉を口にしたー。
「はぁ ネガティブすぎるだろ」
斗真はそう言うと、
「ー俺が人間観察が趣味なのは知ってるな?」と、麻紀に突然言い放つー
「え…し、知らないけどー…」
麻紀が、小声でそう言い返すと、
斗真はそれを無視して言葉を続けるー。
「ーお前と、クラスの奴らを見ていて、分かったことがあるー」
斗真がそう言うと、麻紀は戸惑いながらも、斗真のほうを見つめるー。
「ーな、何が分かったのー?」
麻紀は震えながらそう言葉を口にするー。
斗真が”そう聞いてほしそうな顔をしていた”からだー。
すると、斗真は”待ってました”と言わんばかりに、
それを表情には出さず、言葉を続けたー
「お前が、いじめられなくなる”条件”」
とー。
「ーーーー」
麻紀は不安そうに、斗真の先の言葉を待つと、
斗真は言ったー
「可愛くなるか、強くなるかー。どっちかだ。
例えば俺を見ろ。
俺は強いー。
だから、変わりものでも、誰も俺をいじめたりはしないー。
身体も鍛えてるしー、
何より俺はクラス中の情報を握ってるー。
情報を制すものは、全てを制すー。
それが、俺の強みだー」
斗真の言葉に、麻紀は心の中で
”相変わらず、並川くんは変わってるなぁ…”と、思うー。
しかしー
「ーわ、わたし…強くなんか…なれないよ…」
と、麻紀は自信なさげに言葉を呟くー
「あぁ、無理だな」
斗真は即答したー。
あまりに即答されたので、しょんぼりする麻紀ー。
「けどー
可愛くはなれるー。」
斗真はそう言い放つー。
「ーーーーーー」
呆然とする麻紀ー
「無理でしょ…」
自分でそう言ってしまう麻紀ー。
「いいや、無理じゃないー。
いいか、聞け」
斗真は強引にそう言うと、
麻紀に対して、説明を始めるー
「俺がこれまでクラスの奴らを見て来た感じー
”可愛い子”は、麻紀、お前みたいな性格でも
いじめられていないー
これは高校に入るまでも含めて
俺が色々な奴らを見て来た結果だ。
大人しくても、オドオドしてても、
可愛ければ守って貰えるー。
つまり、可愛いは正義だ」
斗真のそんな言葉に、
麻紀は「よ…よくわかんない…(なんで下の名前呼び…?)」と、
言葉を口にするー。
「ーー要は、お前が可愛くなれば
誰もお前をいじめなくなるってことだー。
現に、隣のクラスの田山(たやま)ー。
お前よりも大人しいし、独り言をよく言うようなやつだけどー
滅茶苦茶可愛いだろ?
だから、誰も田山のことをいじめないー。
クソみたいな現実だけど
”可愛い”を手に入れれば、誰もお前をいじめなくなる」
”その自信はどこから来るの?”と思ってしまいたくなるほど、
斗真が自信満々にそんな言葉を口にすると、
「でも」と、麻紀は言葉を口にするー
「わたしなんかが、可愛くなれるわけ、ないよ」
とー。
「ーー安心しろ」
斗真はそう言い放つと、
「俺がお前を可愛くしてやるー」と、
自信満々にそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
斗真と麻紀が
カラオケルームにやってくるー。
別に歌うつもりはなかったのだが
あることをするために、ここにやってきたのだー。
「俺が”観察”してた結果ー
ちゃんと痩せて、身なりを整えて、それなりにおしゃれをすればー
お前は滅茶苦茶可愛いことが分かった」
斗真がそう断言するー
「そ…そ、そうなのかな…?」
戸惑う麻紀ー。
いきなり”可愛い”とか、大胆なことを言ってくる斗真ー。
けれど、斗真は麻紀に1mmの好意もないー。
人間が嫌いだし、男にも女にも興味がないー。
だが、それでも麻紀を助けようとしているのは
”幼馴染だから”という理由と、
”いじめを目にするのが不愉快だから”という理由のみー。
「ーーそうだ。俺が観察した結果だから間違いない。
だから、お前は可愛くなれるー
そして、昨日言った通り、可愛いは正義だ。
お前が可愛くなれば、いじめはなくなる」
斗真がそれだけ言いきると
「でも、昨日も言ったけど、わたし…可愛くなる自信なんてないし、無理だよー」
と、言葉を口にする麻紀。
「あぁ、お前じゃ無理だ。」
斗真が断言するー
流石に少しムッとする麻紀。
が、斗真が続けて口にした言葉が、
麻紀の思考を完全に滅茶苦茶にしたー
「だから、俺が代わりに可愛くなる」
斗真の言葉に、
麻紀は思わず「なにいってるの…?」と、
頭のおかしな人間を見るような目で斗真を見つめたー。
斗真はその視線をも無視して
「聞け」とだけ言うと、
「これから、俺とお前の身体を入れ替えるー。
で、俺がお前の身体で、お前を可愛くしてー
お前に身体を返す」と、言葉を口にしたー
麻紀は呆然として、完全に”ヤバいやつ”を見るような視線を向けるー。
「そんなにビビるなー。
俺が”ネットで変なものを買うのが好き”って言うのは知ってるな?」
「ーーーだから、知らないってばー…」
「ーそんな趣味で、俺は見つけたんだー
”他人と身体を入れ替える糸”をー。」
そう言いながら、赤い糸を鞄から取り出す斗真ー。
「ーーーな、なにそれー…ほ、ホントに身体、入れ替わるのー…?」
麻紀がそう言うと、
斗真は「ああ」と、断言するー。
「ーーこれで、俺がお前になって、お前を可愛くしたら
お前に身体を返すー。
それで、いじめはなくなる。
どうだ?」
斗真の言葉に、麻紀は表情を歪めるー。
「ー安心しろ。俺が人間に興味はないのは知ってるだろ?
男の身体にも女の身体にも興味はない。
お前を可愛くしたらお前の身体を返すー。
どうせ俺は学校でも家でもほとんど喋らないから
入れ替わってる間の生活も特に問題ないはずだ。
だろ?」
斗真のその言葉に、麻紀は「た…確かにそうだけど…」と、困惑するー
「ーーなんで、興味がないのにわたしのために、そんなにー?」
麻紀がそう言うと、
「ー俺がいる教室で”いじめ”が行われているー
それが不愉快なだけ。
俺は、俺のためにお前を可愛くする。それだけだ」
と、斗真は断言したー
ある意味、清々しいまでの堂々とした理由だー。
優しさなど、微塵もないー。
だが、逆に”裏”も全くないことが伝わってくるようなー、
そんな、理由だったー。
そんな斗真の態度に、麻紀は「じ…じゃあ…お願いしても…いいかな…?」と
不安そうに言うと、斗真は「あぁ、任せろ」と、
得意気に頷いたー。
「ーーーー」
麻紀も、その気になり、赤い糸を互いの指につけてー、
準備を終えると斗真が「じゃあ、行くぞ」と、
言葉を口にしたー。
その瞬間、二人を衝撃が襲うー
今まで感じたことのないような、謎の衝撃を感じー、
少し意識が飛んだような感覚に陥りながらー、
すぐに目の前を見るとー、
そこには”自分”がいたーーー
「ー……~~~」
驚きのあまり、声も出ないー。
斗真になった麻紀は、
目の前に”自分”がいるのを見て、
只々驚き、言葉を失っていたー
「ーーーそんなに驚くなー。
ただ、身体が入れ替わっただけだー」
麻紀になった斗真がそう言うとー、
麻紀(斗真)は「ーお前、こんなハッキリ、喋れるんだな」と、
少しだけ驚いたような言葉を口にしたー。
普段、自信なさげに、のんびりとした口調で話す”麻紀”ー。
しかし、中身が斗真になったことで、
確かに同じ声なのに
”別人のような”喋り方をしているー。
「ーー…そ、そうだね…わ、わたしも、びっくりー…」
斗真(麻紀)がそう言葉を口にするー。
”斗真”は逆に驚くぐらいに、
弱弱しい表情を浮かべているー。
それを見た麻紀(斗真)は少しだけ心配そうに
”ーこれ、他のやつが見ても気づくか?”と、
心の中で呟くー。
だが、心配しても仕方がないー。
「ーよし。俺は今日からお前を可愛くしていくー。
ぽっちゃりしてるのは、ストレス的なものもあるだろうから
俺が中身になればすぐ痩せるだろうしー、
髪型もメイクも、何もかも、俺がアレンジして
お前を可愛くするー。
そうすれば、誰もお前をいじめなくなるー
いや、それどころか、バカな男子が
お前に告白してきたり、チヤホヤしてくるかもしれないな」
冷静に、麻紀(斗真)が言うと、
斗真(麻紀)は呆然とした様子でー
「く、口数の多いわたしー、初めて見たかもー…」
と、恥ずかしそうに顔を赤らめたー。
そんな反応に、少し”調子が狂うな”と、思いながらも、
「まぁー…とにかく俺は家でも学校でも一匹狼だから、
自分から話しかけなきゃ、特に何も問題はないだろー。
あ、家はここだ。分かるか?」
スマホに地図を表示して、
それを斗真(麻紀)に見せるー
「あ、うんー…ここなら、行ったことあるから大丈夫ー」
斗真(麻紀)がそう言うと、
麻紀(斗真)は「で、お前の家はー?」と、言葉を口にするー
「ー別に俺はお前の住所に興味ないし、
お前を可愛くした後は、次の日にはもう忘れてるから
悪用なんてしない。安心しろ」
麻紀(斗真)のそんな言葉に、
斗真(麻紀)は弱弱しく頷くと、家の場所を教えたー。
ここまで”興味ない”を連発されると、
逆に幼馴染としては少し悲しくなるー。
そんな、表情を浮かべていると、
麻紀(斗真)は言ったー。
「ー入れ替わる相手が誰であっても、
別に俺は興味ないしー、
お前だから興味ないわけじゃない。心配すんな。
俺は人間に興味がねぇ。それだけだー」
麻紀(斗真)のそんな言葉に、
斗真(麻紀)は
「な、なんかー…すごいなぁ…」と、少しだけ苦笑いしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーさて…とー」
麻紀の家に、”麻紀”として帰宅した斗真は、
部屋を見渡すと、ため息をついたー。
「性格が、表に出てる部屋だなー」
麻紀(斗真)は、麻紀の声にも身体にも
特段興味を示さずー、
”入れ替わった”という現実にだけ、少しワクワクしていたー。
「ーまぁー、それはいいー。
とにかくー」
あまり使っていないのか、部屋の隅に置かれた
ホコリ被った姿見を見つめながら、
麻紀(斗真)は、普段の麻紀が絶対に浮かべないような
笑みをニヤッと浮かべたー
「ーー俺がお前を可愛くしてやるー」
麻紀(斗真)はそう呟きながらーー
鏡に映る自分を見つめたー…。
②へ続く
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コメント
いじめられっ子と入れ替わって
その子を”可愛く”するお話ですネ~!
どんな風になっていくのか、ぜひ明日以降も
見届けて下さいネ~!
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