<脳移植>移植先は女子高生①~生きる方法~

とある組織のボスである男は、
病気で”余命あとわずか”な状況だったー。

そんな彼を救うために、部下は
”脳移植で生き永らえる”方法を提案するー。

だが、その”移植先”はー…?

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”紫獄会(しごくかい)”ー
裏社会で暗躍している犯罪組織の一つ。

しかし、組織の規模としてはかなり小さく、
大規模な組織と対立するようなことがあれば、
あっという間に壊滅させられてしまうようなー、
そんな”小さな組織”だったー。

それでもー…
”紫獄会”がこれまで持ってきたのには
理由があるー。

リーダーである柴田 源三郎(しばた げんざぶろう)の、
強いリーダーシップと、強い人望ー。
それが、この小さな組織を支え続けて来たのだー。

がー、その柴田源三郎は、既に高齢ー。
70代に差し掛かっており、
既に病によって、その身体は冒されつつあったー。

「ーー会長の容態はー?」
眼鏡をかけた理知的な男が言うと、
いかにも荒れくれ者、と言わんばかりの男が
目に涙を浮かべながら「ーーよくねぇっす」と、声を上げたー。

「ーーー…今は話せるか?」
眼鏡の男の言葉に、「へいー…今日は意識はあります」と、
泣きながら源三郎のいる部屋の扉を開けたー。

「おぅーー
 勝野(かつの)ー」

眼鏡の男が入って来たのに気づくと、
源三郎はそんな言葉を口にしたー。

眼鏡の男ー、
勝野 零児(かつの れいじ)は、
冷徹な雰囲気を漂わせる組織のNo2ー。

元々No2は別の男だったものの、
その男は、源三郎の同級生で、紫獄会を共に立ち上げた男だったためー、
源三郎よりも先にこの世を去っているー。

今は、30代後半のこの男が、組織のNo2だー。

一見すると、彼は”いかにも組織を裏切りそうな”雰囲気に
見えるため、最初は紫獄会のメンバーたちも零児のことを疑っていたし、
仲間として迎え入れることに反発していたー。

だがー、零児は心の底から、源三郎のことを慕っていて、
彼のために全力を尽くし続けていて、
今では紫獄会のメンバーたちからも慕われているー。

そんな、零児が源三郎を見つめるー。

病気でやせ細った身体ー
その上、70代の源三郎はかなり弱弱しく見えるー。

「ーーー…くくーー
 俺も、もう、長くはないだろうなぁ」
源三郎はそう言いながら目を細めるー。

弱弱しい雰囲気でも、
その眼光は鋭く、過酷な世界を生き抜いてきたことが分かるー。

「そんなことは、言わないでくださいー」
零児が言うと、源三郎は「いやー、己の運命を受け入れるのも大事なことさ」と、
弱弱しく笑うー。

「ーー俺たちは、犯罪者だー。
 そのことを忘れてはいけないー」

源三郎は遺言かのように、そう語り出すー。

”紫獄会”は、源三郎が若い頃に既に亡き友人と立ち上げた組織で、
苦しむ人々を救いたい、という思いから始まった組織だー。

”手段を択ばず、苦しむ人々を救う”

その目的のために、多数の犯罪にも手を染めたー。

結果的に”紫獄会”のおかげで救われた人も大勢いるのが事実で、
現在の組織No2・零児もその一人。
零児がまだ子供だった頃に、親が悪徳業者に借金まみれにされ、
苦しんでいた時、紫獄会が、その悪徳業者を闇に葬ったことで、
救われたのだー。

しかしー
それでもーー
”罪”を犯していることには変わりはないー

例え、どんなに救われた人がいようともー
そのことは忘れてはいけないー。

「ーー俺が死んだら、俺の死を伏せたまま、
 紫獄会を解散しろー」

源三郎が自分の死後について語り出すー。

紫獄会は裏社会において、
敵も多いー。
源三郎が死んだとなれば、あっという間に各組織が動き出し、
叩きのめされるだろうー。

そうなれば、零児も、他の舎弟たちも命を落とすかもしれないー。

それは、避けたいー。

「ー”お前たちの就職先”の候補も見つけてあるー
 俺の顔が効く会社・団体ばかりだから、面倒を見てくれるはずだー」

源三郎がそれだけ言うと、
零児は「いえ」と、メガネをいじりながら言葉を口にしたー。

「ー我々には、会長がまだ必要ですー。
 それにー、紫獄会の助けを必要とする者もいるー。
 会長には、まだ、生きていただきたいー」

零児のそんな言葉に、
源三郎は呆れ顔で「無理言うなー。俺の身体はもう持たん」と、笑うー。

「ーーー…えぇ、会長の身体はもう持ちません」
零児があっさりとそう認めると、
源三郎は「死ぬなと言っておいて、それかー。勝野は相変わらず厳しいな」と、
苦笑いするー。

しかしー、
零児は、それにあまり反応を示さず、
言葉を続けたー

「ーだからこそー”他の身体”を使う必要がある」
零児の言葉に、源三郎が表情を歪めるー。

「他の、身体ー?」
源三郎が言うと、零児は頷いたー

「ー会長の脳を移植するー…
 ”禁断の脳移植”手術ですー」

零児の言葉に、源三郎は呆然としながら零児を見つめたー。

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脳移植手術当日ー。

秘密裏に作られた”次世代の脳移植”を研究する施設に
零児と、若い構成員二人、
そして、車いすに乗った源三郎の姿があったー。

この施設では”次世代の脳移植”の研究を行っており、
移植手術は実用化の一歩手前までこぎつけていたー
しかし、今は”人間を使った実験データ”が不足している状態で、
実用化には至っていないー。

そんな話を裏社会の情報網を利用して見つけた零児は、
”うちの会長で試すことはできないか?”と、交渉を持ち掛けたのだー。
全ては、源三郎を救うためにー。

次世代の脳移植を研究しているこの研究機関は、
すぐに話に乗ったー。
そして、先日、零児が源三郎にそれを説明し、
今日、こうして脳移植手術を行うことになったのだー。

「しかしー、俺の脳を移植する相手は”同意”しているのかー?」
源三郎は言うー。

”紫獄会”の鉄の掟
それは”一般人を傷つけてはならない”というものー。
例え、自分が生き永らえるのだとしても、
”脳移植”相手の身体を無理やり乗っ取るようなことは、
したくなかったー。

「えぇ。問題ありませんー。
 ”脳の移植先”は、”脳死判定”を受けた人間や”植物状態”の人間でー、
 ご家族の了承も得ているとのことです」

零児がそう言いながら、源三郎の乗った車いすと共に歩くー。

脳の”移植先”には、血液型やその他色々な条件があるが、
その条件を”クリア”した者が一人だけいるのだと言うー。

今日は、その相手に”脳移植”を行うー
そんな予定になっているのだー。

「ーーお待たせいたしましたー…
 この先に、移植先の”身体”がありますー」
研究施設の主任・三笠 姫梨(みかさ ひめり)がそう言うと、
源三郎と共に、零児はその中へと入ったー
かなり若そうな美少女風の雰囲気を持つ人物でー、
セーラー服姿で”女子高生です!”と言われたら騙されてしまいそうな感じがあるー

”こんな若くても主任になるんだなー”
零児はそんなことを思いながら、若い構成員二人を待機させ、
自身が源三郎の車いすを押しながら、奥へと入っていくー。

源三郎の脳を移植する相手はー
”若くて健康な高校生”だと聞いているー。

しかし、事故により脳死判定を受け、
家族は”多額の金銭”と引き換えに、我が子を”脳移植実験”の素体として
売り払ったらしいー。

その家族にはもう一人、難病の妹がいるらしく、
脳死判定を受けた子供を”お金に変える”というのは苦渋の決断だったのだろうー。

そう思いながら、
”会長の移植先”の身体を見て、零児は表情を歪めたー。

「ーーーー……え」
いつも冷静な零児が、珍しく動揺しているー。

「お、おい、こりゃ…どういうことだ?」
源三郎も、少し戸惑いの表情を浮かべるー。

”若くて肉体的には健康な高校生”ー
研究施設側からはそう伝えられていたー。

がー、
その相手は”男子”ではなく、”女子”だったー。

「ーーーーーこ、これはー…?
 お、女ではー?」

零児が、主任の姫梨に聞くと、
「えぇ。若くて健康な肉体ですー」と、頷いたー

「ーいや、だがー、しかしー」
零児は困惑するー

てっきり、男である源三郎の移植先は
”当然のように”男子高校生だと思っていたのだー。

がー、
実際に用意されていたのは、女子高生ー。

「ーー東山 史奈(ひがしやま ふみな)さんですー
 脳死状態ですが、身体自体は健康ー
 この子の身体に、柴田源三郎さんの脳を移植しますー」

主任の姫梨のそんな言葉に、
源三郎は「お、お、お、お、俺が女に!?」と、
高齢、しかも病に侵されている彼は、
かなり驚いた様子で叫んだー。

「ーはいー。性別の壁なんて、別に大したことはありませんよ?
 どうせ、他人の身体を使うことになれば
 最初は戸惑いますしー、
 時間と共に慣れるのも同じですー」

姫梨がそう言うと、
源三郎は「し…しかしー」と、寝たきりの状態の
史奈の身体を見つめたー。

普段は冷静な紫獄会のNo2、零児もさすがに
戸惑った様子を見せているー

「お、おいー勝野ー、まさか俺を女の子にしようってんじゃ?」
源三郎が表情を歪めながら言うー

「い、いえ、決してそんなー。
 私もてっきり、男だと思い込んでいたものでー」
零児が眼鏡をいじりながら言うと、
「ー大丈夫ですよ!すぐに慣れますから」と、姫梨は笑ったー。

「ーーお嬢ちゃんー」
老人らしい声で、源三郎が姫梨のほうを見ると、
諭すように言うー。

「ーあまり適当なことを言うもんじゃないー」
とー。

「ー男が女としてー、女が男として生きるということは
 想像以上に大変なことのはずだー。
 そんなに適当なことを言われると、こちらとしてもー」

源三郎が困り果てた様子で、そんな言葉を口にすると、
姫梨は「ー適当なことなんて言ってませんよ」と、頬を膨らませたー。

「実際に、男から女に脳移植して、
 今は楽しく過ごしてる人もいるんですから」
姫梨がそう呟くー。

確かに、”人間での実例がほとんどなく”とは聞いていたがー、
源三郎が初めてではないのだろうー。
と、いうことは過去にも男⇒女、あるいは女⇒男に脳移植をした
人間がいるということなのだろうかー。

「ー実際にその人間に会うまでは信用できんなー」
源三郎がそう言い放つと、
姫梨はにっこりと笑ったー

「わたしです」
とー。

「ん?」
源三郎が首を傾げるー

「男から女に脳移植した”実例”ー
 それが、わたしですー」
姫梨のそんな言葉に、
源三郎と、零児は驚きながら研究主任の姫梨のほうを見つめたー

「な…あ、あんたがー!?」
源三郎が叫ぶと、姫梨は「えぇ、そうですよ」と、にっこりと笑みを浮かべるー。

「ー”わたし”の身体はもうダメだったのでーー
 ”孫娘”の身体を貰っちゃいました」
姫梨が嬉しそうに微笑むー

唖然とする源三郎にさらに言葉をかける姫梨ー。

「ーーそりゃ、最初は色々戸惑いますよー
 でも、だんだんおしゃれとかそういうことが楽しくなってきたりー
 ”女”としての生活に慣れて来てー、
 普通に”女”になれますからー

 だから、心配はいりませんよ?」

綺麗な黒髪を揺らしながら微笑む姫梨ー。

「ーー……ま…まさか、そんなー」
源三郎は”嘘だ”と、思ったー。

しかし、姫梨は言ったー

「わたしが”おじいちゃん”の脳を移植される映像、見ます?」
とー、まるで姫梨本人であるかのような口ぶりでー

「ーーーい…いやー…いいーー
 ーーーー

 …分かったー。…信じよう」

源三郎が頷くー。

まだ、死ぬわけにはいかないー。
一度は死を覚悟したー。
だが、生きる道があるのであればー。

その相手の身体を無理やり奪うわけではないのであればー。

それに、賭けてみたいー

「ーふふっ ありがとうございます」
姫梨は嬉しそうに笑うと
「それでは、脳移植手術の準備と説明をしますのでー」
と、さらに奥の部屋に移動するように、源三郎と零児に対して促したー。

”零児ー…
 もしも失敗したらー、俺が死んだときと同じように
 紫獄会を解散してー…お前たちは先日話したように、一般の会社で働く道に進めー”

源三郎がそう言うと、
零児は”失敗など…”と、言いながらも、源三郎を安心させるために
”分かりましたー”と、静かに頷いたー。

そして、その日ー
源三郎は脳死状態の美少女・史奈の身体に脳を移植されー…

数日後ー
史奈の身体で目を覚ましたのだったー。

②へ続く

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コメント

久しぶりの脳移植モノですネ~!
果たして移植は成功したのかどうか、
それは明日のお楽しみデス~!

今日もありがとうございました~!

コメント

  1. TSマニア より:

    移植手術していろんな意味でどうなるのか!?

    今回の読んで女の子になっても慣れていくってコトで安心しました笑

    自分もいつか完全な女の子になります笑