ある日、妹の奇行を偶然目にした兄は、
妹が憑依されてしまったことを知るー。
そしてー、時を同じくして
”妹に憑依した男”の命を狙っている男が、
母親に憑依してしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいま~」
大学から帰宅した男子大学生の
寺沢 慎吾(てらさわ しんご)は、
いつもと変わらぬ日常を送っていたー。
母親の琴恵(ことえ)と何気ない雑談を交わし、
そして、自分の部屋のある2階へと上がっていくー。
妹・愛梨(あいり)の部屋の前を通り、
そのまま自分の部屋の中に入り、
ひと息つく慎吾ー。
いつも通りだー。
がー
”ひっ… ぁ… あ… な、なにこれ…”
隣の妹の部屋から、突然、そんな声が聞こえて来たのだー
苦しそうに呻く、愛梨の声ー。
「え…」
スマホをいじっていた慎吾は、困惑するー。
妹の愛梨は現在高校生ー。
しかし、そんな愛梨とは、今も普段は普通に仲良しな状態で、
慎吾自身も、小さい頃と変わらず、愛梨のことは可愛がっているー。
”仲良し”ではあるものの、異常な愛情を注いだりだとか、
そういうタイプでもなく、
本当に”純粋な仲良し兄妹”
そんな感じの二人ー。
が、今ー、その妹の部屋から
苦しそうな愛梨の声が聞こえてきているー
”た…助けて…”
そんな声も聞こえたため、
慎吾は「おいおいおい…」と、困惑しながら
すぐにスマホを置いて、隣の愛梨の部屋に向かうー。
苦しそうな愛梨の声に、少なからず慌てていた慎吾は
愛梨の部屋をノックすることも忘れてー、
そのまま扉を開くー。
するとー、
不安に思っていた慎吾が、想像していたような光景は
部屋の中には広がっておらずー、
愛梨は普通に鏡の前に立っていたー。
てっきり、妹の愛梨が倒れて苦しそうにしているんじゃないかと、
内心ヒヤヒヤしていた慎吾は、
少し安堵の表情を浮かべるのだったー。
がー…
すぐに、その安堵の表情が消え失せたー
愛梨が、鏡の前でニヤニヤしながら自分の胸を揉んでいたのだー
”え…”
慎吾は、見ちゃいけないものを見たかと思い、
愛梨が気付いてなさそうだったためそのまま扉を閉めようとするー。
「ーへへへへ…これが女の身体かぁ…」
愛梨が低い声でそう呟いたー
「え…」
ついうっかりと、声を漏らしてしまった慎吾ー。
胸を揉んでいた愛梨が、慎吾に気付いて振り返るー
「ーーーん?あ???」
愛梨がいつもとまるで違う雰囲気で、
下着を晒しながら振り返ると、
少し気まずそうな雰囲気でー、
「ーんだよー…見られたのかよー」
と、ため息をついたー
「え…??え…??ど、どういうことー…?」
慎吾が戸惑いの声を上げると、
愛梨は髪を面倒臭そうに掻きむしりながら、
下着を隠す様子もなく、そのまま足を開いてイスに座ったー
「ーーー…まさか見られるとはなー…
まぁ、いいかー」
愛梨はそれだけ言うと、
慎吾のほうを見て、笑みを浮かべたー。
いつも、笑顔が可愛い愛梨だがー、
今日の笑顔は、”いつもの”笑顔とは違う気がするー。
「ーーお前ー…弟?」
愛梨のそんな言葉に、
慎吾は「えっ!?はっ!??え?なに?」と、
混乱しながら言葉を口にするー。
「ーーーあ~…、その、何だー
ーー俺はお前の妹じゃなくてー」
愛梨がそう言葉を口にすると、
慎吾は頭の上に?を大量に浮かべた状態で
「な、何?い、意味が分からないー」と、言葉を口にするー
「ーーーーだからよ、そのー、なんだ
俺がお前の妹の身体を乗っ取ってるんだよ」
足を雑に広げたままの愛梨が言うー。
「ーーーーーーーー…!!」
愛梨の”乗っ取られてます”宣言に驚きの表情を浮かべる慎吾ー。
がー、
すぐに慎吾は「プッ」と、噴き出すと、
突然笑い声をあげ始めたー
「あはっ!ははははははっ!
何を言い出すのかと思えば、何だよいきなりー?」
慎吾のその言葉に、逆に少し驚く愛梨ー。
「ーいや、まぁー、”いつもの”ドッキリだろ?
分かるよー。」
慎吾が笑いながらそう言うー。
愛梨は時々悪戯をするタイプの子で、
今でも兄の慎吾に時々ドッキリを仕掛けているー。
慎吾は、目の前にいる愛梨の振る舞いは”ドッキリ”であると
考えたのだろうー。
「ーいやぁ、流石に今回はビビったよー
だって、愛梨、急に苦しそうな声出してたし、
何事かと思って」
慎吾が安心した様子でそう言うと、
「あ~でも、そのー…
なんて言うかなー…
もう、愛梨も高校生なんだしー
その、身体をそういう風に使うのは、やめような?」
と、心配しながら言葉を口にしたー。
あまり、色仕掛けだとか
自分の身体を粗末に扱うようなことは
してほしくないー。
そう思いつつ、慎吾が言葉を口にすると、
愛梨は「いや、あのな?ドッキリじゃねぇんだよ」と、
言葉を口にするー
慎吾は「あ~…まだ続いてるのか?」と、
未だにドッキリだと思い込んだ反応ー。
それに苛立ったのか、愛梨は下着を晒したまま、
それを乱暴に両手で揉み始めたー
「この女は、兄貴の前でこんなことするのかぁ?」
愛梨の言葉に、慎吾は「や、や、やめろって」と、
顔を赤らめながら言うー。
はだけた制服姿に、下着姿の愛梨が胸を揉んでいる状態は、
兄の慎吾からしても、困惑の光景だったー。
さらにはスカートをめくってゲラゲラと笑う愛梨ー。
「ーー俺は本当に、この女に憑依してるんだー
”憑依薬”でなー」
愛梨の言葉に、慎吾の顔色は少しずつ悪くなっていくー
ドッキリにしてはやりすぎのような気がするー。
慎吾自身も、そう思ったからだー。
「まだ信じねぇか?」
愛梨はそれだけ言うと、突然、慎吾にキスをしてきたー。
妹にキスをされて、あわてて愛梨を引きはがそうとする慎吾ー。
やっとの思いで愛梨を引きはがすと、
慎吾は「ど、ど、どういうことなんだ!まさか本当にー?」と、
驚きの表情を浮かべながら叫んだー
「そうさー。今、この女はー、俺に身も心も支配されてる状態だー
俺が使った憑依薬によってなー」
愛梨のその言葉に、慎吾は困惑しながらも
ようやく”妹が憑依された”という現実を認めたのか、
「じ、じゃあお前は誰だ!?妹から出ていけ!」と、
声を荒げたー
「へへー、お前は兄貴か?」
愛梨はそれだけ言うと、
「ーまぁ、俺はこの女を別に傷付けるつもりで憑依したんじゃない」
と、笑みを浮かべながら言葉を口にするー。
「じ、じゃあ…何のつもりでー?
っていうか、憑依される側の愛梨のことも考えろよ!
他人に勝手に身体を使われるだけで、傷つけてるのと同じだろ!」
慎吾が怒りを露わにするー。
すると、愛梨は少し考えてから「たしかにー」と、頷いたー
「憑依される側からしたら、たまったもんじゃないなー
勝手に下着を見られたり、揉まれたりー」
愛梨のそんな言葉に、
慎吾は”意外と話が分かる奴なのか?”と、困惑しながらも、
「じ、じゃあ、出てってくれ」と、言葉を続けるー
しかし、愛梨は「い・や・だ」と、笑うと、
「他人の身体を乗っ取るようなやつにそう言って、
”はいそうですね”なんて出てくと思ったか?」
などと、笑いながら呟くー。
「ーーま、まぁ…そ、それは、そうだけどー…
じ、じゃあ、話をまずは聞かせてくれ!
急に憑依とか何とか言われて、頭が爆発しそうだ!
俺の言いたいこと、分かるだろ!?」
慎吾がそう叫ぶと、
愛梨は「ーーははは。面白れぇ奴だなお前」と、言いながらも
「まぁいいー。教えてやるよ」
と、静かに頷いたー。
「ーーーーーー」
しかし、慎吾はソワソワした様子で「もう一つー」と、言葉を口にするー
「ん?」
愛梨が首をかしげると、
慎吾は愛梨の胸元辺りを指差しながら
「ーーと、とりあえず服をちゃんと着てくれー」と、
顔を赤らめながら言葉を口にしたー
「ーんだよ?妹の身体に興奮するのか?変態お兄ちゃん」
愛梨のそんな言葉に、
慎吾は「うるせー!胸をチラつかせるな!」と、
愛梨に服をちゃんと着るように再度促したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
母親の琴恵は、そんなことが2階で起きているとは知らず、
キッチンで晩御飯の用意をしていたー。
いつものように、順調に準備を進めていく琴恵ー。
だがー、
その時だったー。
冷蔵庫から食材を取り出そうと振り返ったその直後ー、
琴恵の背後に迫っていた”黒い影”と、目が合ったー
「えっ!?」
琴恵が驚くと同時に、その影がそのまま琴恵に飛び込むー
「ひっ!?」
ビクッと震えて、白目を剥いた琴恵はー、
すぐに目の輝きを取り戻すとー、
「逃げられると思うなよ」と低い声で囁いてから
そのまま晩御飯づくりを放棄して、
2階に向かって歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いやいやいやいや、俺の妹をそんなことに
巻き込まないでくれよー?」
2階では、妹の愛梨に憑依した男の言葉を聞いて、
兄の慎吾は戸惑っていたー。
聞けば、男はこの辺りで暗躍している裏社会組織・銀狼(ぎんろう)に
所属している男で、
敵対している犯罪組織・アビスに命を狙われて負傷ー、
ギリギリの所で逃げ出して、しばらく身を隠すために愛梨に憑依したー。
「ー銀行だとか銀閣だか知らないけど、
愛梨を返してくれ!」
慎吾がそう言うと、愛梨は「ははは~俺がヤバい組織の人間だと知っても、
ビビらないその感じー…嫌いじゃない」と、笑みを浮かべながら
慎吾のほうを見つめるー
「まぁさ、あれだよー。
別に俺はこの女の身体を傷つけるために憑依したんじゃないー
一時的な避難場所としてー
そう…まぁ、いわば宿みたいな感じで借りたいだけだー
そう言うなって」
愛梨が胡坐をかきながら笑うー。
「ーいやいやいや、何が宿だよ!?
宿って言うなら宿泊料金払えよ!」
慎吾がそう言うと、愛梨は「ははっ!そう来たかー」と、笑いながら
しばらく考えるー
「ーでもお前、悪いことして手に入れた金なんて、欲しくないだろ?」
愛梨の言葉に、慎吾は「当たり前だ!」と、叫ぶー。
「ーっていうか、堂々と悪いことして手に入れたとか言うなし!」
慎吾がそう言いながら愛梨の手をぺしっと叩くと、
愛梨は少し考えてからー
「じゃあ、宿泊料金は身体で払っちゃおうかな?」と、
甘い声を出しながら胸元をちらりと見せ付けて来たー
「ーーー!!!」
ドキッとしてしまう慎吾ー。
しかしすぐに「愛梨の身体はお前の身体じゃねぇ!」と、叫ぶー。
「ーそもそも、愛梨は明日も学校があるし!
急に意識がしばらく飛んだら本人も驚くし!
あんたが誰だかよく分からないけど、
そのままお風呂とかトイレ行かせるわけにはいかないし!」
慎吾が続けてそう叫ぶと、
愛梨は「ーまぁーー…学校は、あれだー。俺が代わりに行くから」と、
笑いながら言葉を口にしたー
「ーぜ~ったいダメだって!愛梨の身体で変なことするだろ!」
慎吾がさらに叫ぶー。
愛梨は”うるさい兄貴だなぁー…面白れぇけど”と、心の中で思いながら
口を開こうとするー。
がー
その時だったー。
部屋の扉が開くー。
慎吾が振り返ると、そこには母親の琴恵の姿があったー
「ーゲッ!」
慎吾は、咄嗟に焦りを感じたー。
”愛梨のこと”をどうやって説明すればいいのかー。
まさか”愛梨が憑依されちゃったんだ!”と言っても、
母・琴恵はすぐに信じてくれないだろうし、
愛梨に憑依したこの男も、どんな態度を取るか分からないー。
”愛梨のことを隠すのか”
それとも”打ち明ける”のかー
そんなことを迷っていると、
母・琴恵が突然口を開いたー。
「ーーそんな小娘の身体に逃げ込むとはー
落ちたもんだな、後藤」
母の口調がいつもと全然違うー。
「ーえっ!?!?」
慎吾が混乱していると、
愛梨が驚いた表情で叫んだー
「貴様は、まさか長谷川ー!」
そう叫ぶと同時に、愛梨は突然慌てた様子を見せ始めるー。
そんな様子を見ていた慎吾はー、
困惑した表情で、
「後藤ー?長谷川ー? …誰だよ!」と、叫んだー。
②へ続く
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コメント
敵対する人間それぞれに
妹と母親が憑依されてしまった男子大学生…!
とっても災難なのデス…!
今日は暑い(?)気がするので、
皆様も暑さに気を付けて下さいネ~!
お読み下さりありがとうございました~~!
コメント
さすが無名さんデス☆
スゴい展開になってますネ!
タイトルからスゴいデス笑
なかなか思いつかない発想デス★
みんな無事かまたは…
憑依でVSはあまり見ないかもしれませんネ~笑
全員無事か、それとも…
ドキドキなのデス…!