とある王国の姫と影武者が入れ替わってしまった…!
そっくりな二人の入れ替わりが、
王国の運命を変えていくー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーマティアスー
急に呼び出して、ごめんなさい」
やってきた側近のマティアスに対して、
エレオノーラ(ユリア)がそう言い放つー。
二人が入れ替わった翌日ー。
昨日の夜は”いろいろなこと”を試したものの、
結局元に戻ることは出来ず、
ユリア(エレオノーラ)が”一晩寝れば元に戻れるかもしれませんよ”と、
微かに希望を抱きながら眠りについたものの、
翌朝の今日、結局元に戻ることは出来ていない状態だったー。
「ーーーーー」
マティアスは少し不思議そうな顔をしてから、
ユリア(エレオノーラ)のほうを見つめると、
言葉を口にしたー
「姫様ーこれは何のご冗談ですかなー?」
とー。
優しいおじいさん、という感じの風貌の側近、マティアスの
そんな反応にー、
エレオノーラ(ユリア)は、ため息をつきながら
「やっぱりー、マティアスには分かってしまいますかー…」
と、ザンネンそうに言葉を口にしたー。
入れ替わった状態のままの二人ー。
”エレオノーラになったユリア姫が、そのまま姫として振る舞う”かー、
”ユリア姫になったエレオノーラが姫として振る舞うか”
二人は、どちらの方がトラブルにならないかどうか、を
色々と話し合ったー。
その結果、”身体は違っても中身が姫の方が、やっぱりちゃんと振る舞える”という
結論に達し、
エレオノーラの身体になったユリア姫が、姫として公務などを続ける、と、
二人はそんな答えを出していたー。
ユリア姫になったエレオノーラが姫のフリをする方法ももちろんあった。
しかし、それでは身体は”姫”でも中身は”影武者”であり、
エレオノーラだけでは決断できないことや、姫のフリをし続けるにも限界があるため、
こっちの選択肢は難しいと判断したのだー。
当然、公務にも支障が出てしまうー。
そして、答えを出した二人は、マティアスを呼び出し、
”エレオノーラ(ユリア)が、ユリアとして話をしても”
マティアスは気づくかどうかを試したーー
がー、
やはり、マティアスは”エレオノーラの身体で、ユリアが姫として振る舞っても”
それに気づいてしまうようだったー。
「ーー…マティアスー、ごめんなさいー
落ち着いて、聞いてもらえる?」
エレオノーラ(ユリア)がそう言うと、
マティアスは困惑した様子で、
エレオノーラ(ユリア)のほうを見るー。
そして、二人は昨晩起きた”入れ替わり”のことを伝えたー
「なんと…!そのようなことがー」
マティアスが驚くー。
「ーー昨日は、騙して申し訳ありませんでしたー」
昨夜、ユリア(エレオノーラ)がユリアのフリをして
マティアスと会話をしたことを謝罪すると、
マティアスは「い、いやー、それはいいー…しかしー」と、
今度は、エレオノーラ(ユリア)のほうを見つめるー。
「ー入れ替わったとは言え、幸い、わたしとエレオノーラは
ほとんど同じ姿ですー。
マティアス、あなたには分かってしまいますがー
他の者たちは、わたしがエレオノーラの身体で
いつも通り姫の仕事をしても、気付かないはずですー」
エレオノーラ(ユリア)が言うー。
元に戻れるまでは”影武者の身体”で、いつも通りの公務を
行うつもりである、とー。
「ーー確かにー…
姫様のことを一目で見分けられるのは
わたしと、セラフィーナ様と、あとは数名ほどですがー…」
マティアスはそこまで言うと、考え込むー
「ーーセラフィーナ様に気付かれた場合はー…
厄介ですぞー?」
とー。
「ーーえぇ…分かってますー」
エレオノーラ(ユリア)は困惑の表情を浮かべながらも、
「だからこそ、マティアスー。あなたの力が必要なの」と
言葉を口にするー。
エレオノーラの身体で、ユリアが公務を行う間、
マティアスに”気づかれないようにサポートしてほしい”と、
エレオノーラ(ユリア)はお願いするー。
そのために、リスクは承知で、
一番信頼できるマティアスに入れ替わりをことを打ち明けたのだー。
「ーーーー」
確かに、”エレオノーラがユリアの身体で姫の公務を行う”よりかは
リスクは低いかもしれないー。
”姫の振る舞いを100%熟知しているわけではない”だろうし、
”エレオノーラがユリアの身体で公務を行えば、決定にも色々と支障が出る”
「ーーーーー…分かりました」
マティアスはそう言い放つと、エレオノーラ(ユリア)のほうを見つめながら
「私も全力でサポートいたしますー」と、深々と頭を下げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日からー、
ユリア姫は、影武者であるエレオノーラの身体で、姫として過ごし、
公務を行いー、
エレオノーラはユリア姫の身体で影武者として、姫の近くに控えるー。
マティアスら、限られた人間以外には予想通り全く問題なく、
他人の身体と入れ替わっても、ユリア姫は、ユリア姫として
振る舞い続けることが出来たー。
仮に、違和感を抱いた人間がいたとしても、
エレオノーラ(ユリア)自身が「わたしが姫です」な、振る舞いをしていて、
ユリア(エレオノーラ)が、「わたしが影武者です」な、振る舞いをしている以上ー、
それ以上突っ込む人間は、いないだろうー。
「ーーーー!」
書類に目を通し、サインをしていたエレオノーラ(ユリア)が、ふとペンを落とすー
「姫様?」
近くにいたユリア(エレオノーラ)が心配そうに声をかけると、
「ーふふー…姿形はほとんど同じなのにー、やっぱり、細かいところは違うみたいねー」
と、指を動かしながら笑ったー。
”ペンを持つ感覚”が、普段の自分とは違ったため、
まだ不慣れなのだと、エレオノーラ(ユリア)は言うー。
「すみませんー。書きにくい手でー」
ユリア(エレオノーラ)が苦笑いしながら言うと、
「ううんー。エレオノーラは何も悪くないし、そっちも
色々違いを感じてるでしょ?」と、笑うー。
「ーーえ~… あ~…そうですねー
食べ物がいつもより美味しく感じます!」
ユリア(エレオノーラ)が笑いながら言うと、
エレオノーラ(ユリア)は「ふふー…ほとんど同じ姿なのに、
やっぱり、色々違うところがあるのねー」と、微笑みながら
再びペンを手に、書類に目を通し始めたー。
”元に戻る方法”は分からないままー。
やがてー、
マティアスが配下の騎士に命じて
ユリア姫の妹、セラフィーナの忍を捕縛したー。
マティアスは姫にも秘密で、忍に拷問を行うー。
「ー姫様と影武者の身体を元に戻す方法は?」
マティアスがそう言い放つと、忍は悲鳴を上げながら「知らん!」と叫ぶー。
「ーーーーー」
姫のためなら、汚れ仕事もいとわないー。
マティアスは先代国王に仕えているときから、そうして
王を支えて来たー。
”穢れるのは私だけで十分なのですー”
マティアスを心配する先代には、そう言ったこともあったー。
「ーーーーーどうやら、本当に知らぬようだな」
マティアスはため息をつくー。
姫と影武者が入れ替わった原因は”忍の術”あるいは、薬の類に
よるものかと思っていたがー、
どうやら、違うようだー。
と、なると、本当に転倒したはずみで入れ替わってしまったのかもしれないー。
「ーーーーーす、全て話はした!助けてくれ!」
そう叫ぶ忍に対して、マティアスは穏やかな笑みを浮かべながら言い放ったー
「ー残念だが、姫様とエレオノーラの入れ替わりの事実を知った者は
生かしては帰せぬー。
それにー、姫様を命を狙うなど、重罪ぞー」
マティアスのその言葉に、忍は表情を歪めながらも、
死を覚悟して、そのまま口を閉ざしたー。
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「ーーーー今日は、お願いね」
エレオノーラ(ユリア)が言うー。
入れ替わってもうすぐ1週間ー。
今日は、王宮前でとある式典を行う予定がありー、
そこに、姫も出席するー。
だが、その場に妹のセラフィーナも出席するため、
今日ばかりは、”ユリア姫の身体になったエレオノーラがユリア姫のフリをする”
必要があるのだー。
「ーーはいー。姫様のために頑張ります!
それに、わたし、いつも近くで見てますから!」
ユリア(エレオノーラ)が元気に答えるー。
幸い、その”式典”は、ユリア姫が民に表彰を与えたり、
民に手を振るぐらいしかやることがないためー、
エレオノーラでも十分に代わりをすることができるー。
それにー、
セラフィーナと話す機会は、いつもこの式典の時はないー。
いざとなれば、エレオノーラ(ユリア)が助け舟を出すし、
マティアスとも事前に打ち合わせをしてあるー
二人は、最終確認を終えると、
そのまま式典の場に向かったー。
王宮前の広場に、ユリア(エレオノーラ)が、
姫として、毎月行っている表彰の行事を”いつも通り”
行っていくー。
「ーーーーー」
妹のセラフィーナは、いつものように派手な風貌で、
扇子を仰ぎながら、面倒臭そうにそれを見つめているー。
緊張しながら、毎月王宮主導で行っている
クローバー王国の各種表彰を行いー、
それをこなしていくー。
いつも、ユリア姫の背後で見ていたからー、
やり方は、分かっているー。
そしてーーー
それが終わりー
民衆に、ユリア姫(エレオノーラ)が手を振るー。
「ユリア姫~~~!」
「姫様~~~!」
民衆が嬉しそうに、ユリア姫(エレオノーラ)のほうを見つめているー。
「ーーーーーーーー」
ユリア姫(エレオノーラ)は、そんな民衆たちの方に向かって
手を振りながら思ったー。
”わたしが、姫ーーーー”
そんな感情が、芽生えるー。
貧しい村に生まれてー、
盗賊に襲われてー、
そんな、惨めだった自分がー
姫様に拾われて、そして、今では”姫”として手を振っているー
民たちが、憧れのまなざしを
自分の方に向けているー
地を這う存在だった、自分にーー
”気持ちいいーーー”
ユリア姫(エレオノーラ)はそんな風に思ったー
”女王”として君臨する快感をー、
生まれて初めて味わったー。
「ーーーー」
ユリア姫(エレオノーラ)がようやく式典を終えて王宮の中に引っ込むと、
エレオノーラ(ユリア姫)は、妹のセラフィーナの視線があるため、
「ー姫様ー、お疲れ様でした」と、”影武者”のフリをしながら声をかけるー。
「ー……」
セラフィーナは、式典を終えると、姉であるユリア姫には声をかけることなく
そのまま立ち去っていくー。
人の目がなくなったところで、
ようやく、エレオノーラ(ユリア姫)は「お疲れ様ー」と声をかけたー。
「あ、は、はいー。ありがとうございますー」
緊張した、という様子でユリア(エレオノーラ)が、ため息をつくと、
「ーちゃんと”ユリア姫”できてたねー。さすがエレオノーラ!」と、
エレオノーラ(ユリア)が感心するようにして、
ユリアとして振る舞うことのできた、ユリア(エレオノーラ)を称えたー。
「いえ、わたしなんか姫様と比べたら全然ー」
照れくさそうに呟くユリア(エレオノーラ)ー。
セラフィーナがいない場では引き続き、
”ユリアの身体になったエレオノーラ”が、影武者として、
”ユリア姫はエレオノーラの身体で”ユリア姫として振る舞うー。
身体が違っても、二人はそっくりである以上ー、
それでバレることはないー。
だが、セラフィーナがいる場では、
”エレオノーラの身体で、ユリアとして振る舞っていれば”バレるー。
側近のマティアスも気づいたぐらいだー。
彼女も確実に気づくだろうー。
これからも、セラフィーナが同席する場では、
”代わり”をお願いすることになるだろうー。
「ーーー…色々迷惑かけて、ごめんねー」
エレオノーラ(ユリア姫)が言うと、
ユリア(エレオノーラ)は「いえー、姫様はわたしの恩人ですからー」と、
嬉しそうに微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからも、普段は”いつも通りの自分”として振る舞いながらー、
妹のセラフィーナも同席する場では、
”エレオノーラがユリア姫の身体で、ユリア姫”を演じたー。
しかしーー
その生活を続ける最中ー、
ユリア(エレオノーラ)の心の中に少しずつ、あることが芽生えて行ったー
”姫様”と呼ばれることへの快感ー
民衆が、自分のことを慕い、称えることへの快感ー。
人格者の姫君として、周囲から慕われる快感ー。
日に日に、そんな想いが強まっていくー。
側近のマティアスは”二人を元に戻す方法”を、全力で探っているー。
恐らく、そう遠くないうちにマティアスは元に戻る方法を見つけるだろうー。
けれどーー
”戻りたくないー”
という思いが、芽生え初めてしまっていたー。
戻ったらー、
わたしはまた”影武者”になるのだからー、
とー。
姫への恩義は忘れないー。
でもーーー…
貧しい村の出身であるエレオノーラにとってー、
例え”一時的”でも、姫としての立場を直接体験するのはー
刺激があまりにも強すぎたー。
そんなある日ー
「ーーあら、お姉さまー。」
妹のセラフィーナと偶然、王宮内で鉢合わせした
ユリア(エレオノーラ)ー
”やっぱり、セラフィーナ様はすぐ見分けがつくのねー…”
ユリア(エレオノーラ)は内心でそう思いながら
咄嗟に”ユリア”のフリをするとー、
セラフィーナはクスッと笑ったー
「ーそんなお芝居、必要ありませんわ」
とー。
「ーーな…何のこと?」
ユリア(エレオノーラ)は、なるべく動揺を見せないように
”わたしはユリアよ”と、いう振る舞いを続けるー。
がー、
最初は気づいていなかったセラフィーナも、
式典や行事で同席するうちに、ついに勘づいてしまったのだー。
”二人が入れ替わっている”
とー。
姉のユリアは、一つ見誤っていたー。
セラフィーナは人間的にも、王族としても未熟ー。
しかし、ユリアの想像以上に、洞察力は鋭かったのだー。
「ーーあなたさえその気ならー
あなたが本物の”姫”になることもできますわよ?」
セラフィーナが邪悪な笑みを浮かべながら言うー
「え…そ、それは、どういうー…?」
ユリア(エレオノーラ)が言うと、
セラフィーナはクスッと笑ったー
「ー本物の”姫”を消してしまえばいいのー」
悪魔のような囁きー。
その言葉に、ユリア(エレオノーラ)は、
”姫様への恩義”と”姫として振る舞う快感”の狭間で、
激しく揺らいだー
「姫様がいなくなればー…わたしが…姫ー…?」
ユリア(エレオノーラ)が呆然としながらそう囁くと、
「ーそうですわー。あなたは”お姉さま”の身体なのですからー」
と、セラフィーナは今一度、悪魔のような笑みを浮かべたー。
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!
姫と影武者の入れ替わりに暗雲が…★!
どうなってしまうのかは、明日のお楽しみデス~!
今日もありがとうございました~~!
コメント
恐ろしやぁ~ですネ!★
人間って権力に支配されますよネ汗
政治とか会社の上の人間もそうですけど…
どんな選択をしてどんな最後が待ってるのかっ!?
せっかく良い子だったのに、
影武者のエレオノーラもだんだん、不穏な子になってきてしまってますネ~!☆
明日の最終回もぜひ楽しんでくださいネ~!