彼氏に振られた彼女は
自暴自棄になり”復縁屋”を名乗る謎の憑依人に
自分の身体を貸してしまったー…
”悪魔のような男”に身を捧げてしまった彼女の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーお…おいおいおい…ど、どういうことだよー!?」
竜太郎は戸惑うー。
「ーーーわたし、竜太郎のためなら、なんでもするから…
だから、もう一度付き合ってー?」
甘い声を出しながら、顔を少し赤らめている麗が
身体を密着させて、竜太郎の腕を掴むと、
そのまま自分の胸を触らせるー
「ーーお、おいっ…!」
顔を真っ赤にする竜太郎ー
「ーふふふ♡ いつでも、気持ちいいこともたくさんしてあげるからー」
麗が甘い声で囁くー。
普段、麗はこんなことはしないー。
急に、どうしてしまったのだろうかー。
そう思いつつ、竜太郎は
「う、麗…!」と、麗を引き離すようにしながら
声を上げるー。
「ーど、どうしちゃったんだよー…」
戸惑う竜太郎ー
麗は、そんな竜太郎の反応を見ながら
お構いなしに自分の服を色っぽい振る舞いをしながら
脱ぎ始めるー
「な、な、なにをしてるんだ!?」
竜太郎が叫ぶー
「ーなにって?大好きな竜太郎の前で
脱いでるの♡」
笑みを浮かべる麗ー。
麗はー
”復縁屋”を名乗る男に憑依されているー。
”復縁”の依頼を受けると、憑依能力を使って依頼人に憑依ー
その身体で”復縁”を行う憑依人だー。
復縁屋の”憑依復縁”は三段階ー。
”願” ”誘” ”圧”ー。
このうちの”願”は、ただ単にお願いすることー。
これは既に竜太郎に対しては失敗しているー。
そして、今が2段階目ー
”誘”の段階ー。
依頼人の身体を使って相手を誘惑しー、
復縁を狙うー…
それが”誘”だー。
今までにも数々の人間を”復縁”させてきた復縁屋ー。
この”誘”の段階で誘いに乗る人間は多くー、
特に”男”は落としやすいー。
下着姿になって、わざとセクシーなポーズをしながら、麗は、
「ほらー…竜太郎…こっちに来て」と、
普段の麗が出さないような甘い声を出すー。
”ククククー さぁ来るんだー
僕がこの女の虜にしてやるー”
復縁屋は内心で笑みを浮かべるー。
竜太郎が誘いに乗ってきたら、
あとは簡単だー。
麗の身体を最大限利用して、
望むことなら何でもするー。
別れたとは言え、一度は好きになった女が相手ならー
多くの男は、これで落とすことができるー。
だがーー
「ーーーーーほらー…風邪ひくぞ」
竜太郎は、麗が脱いだ服を麗に手渡すと、
「全部、俺が悪いんだー。俺が麗とちゃんと付き合えなかったから…」と、
悲しそうに呟くー。
「そんなことまでさせちゃって、ごめんー
でも、俺にはやっぱり恋愛は、無理だー」
竜太郎のそんな言葉に、麗はきょとんとしたような表情を浮かべながらー
興ざめと言った様子で服を受け取ると、
そのまま白けた表情で服を着始めたー。
少しだけ話をした後に、竜太郎の家から出る麗ー
「ーーーーへぇー、僕が誘惑しても、乗ってこないなんてー」
家から出た麗は、ウレタンマスクを身に着けると、
マスクの位置を調節しながらそう呟くー
「ーーなかなか強敵だなー
ま、それなら仕方ないー
僕の”復縁屋”としての本気を見せてやるとするかー」
第2段階の”誘”も失敗したー。
ならばー、残るは”圧”のみー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
竜太郎が帰宅しようとしていると、
突然、背後から声を掛けられたー。
「ーーーちょっと、話があるんだけど」
振り返ると、そこには
いつもとは違うー、
高圧的な雰囲気の麗がいたー
ウレタンマスクで口元は隠れているが
その目には、いつもと違う、邪悪な気配が漂っていたー。
「ーー今度は何だよー…」
流石にうんざりとしてきた竜太郎は
ため息をつくと、
麗は竜太郎に近付きながら、静かに囁いたー。
”この女を死なせたくないだろ?”
とー。
「ーー…え?」
竜太郎は、意味不明な麗の言葉に、
表情を歪めるー
「ーな、何を言ってー…?
ま、まさか今度は自殺するとか言い出すんじゃないだろうなー?」
戸惑いながら、竜太郎が小声でそんな反応をすると、
「ーーいいから、ついて来いよー全部教えてやるから」と、
麗は小声で囁いたー
「ーーーー…」
竜太郎は表情を歪めながらも、仕方がなく麗についていくー
”クククー来た来たー”
麗に憑依している復縁屋は笑みを浮かべるー。
復縁屋は”憑依した人間の記憶”を簡単に読み取ることができるー。
それ故に”麗として”生活することは簡単だしー、
”竜太郎に対して”どんな圧力”を掛ければ、言いなりになるか”
それも、麗の記憶を分析すれば、簡単に理解できるー。
第3段階ー”圧”は、
復縁相手に対して”脅し”を行い、
力づくで復縁させる、というものだー。
脅しの方法は”憑依した人間の記憶”から読み取って
相手に応じた方法を用いるー。
ある者には、”家族の命はないぞ”と脅したりー
ある者には、”陰険な嫌がらせ”を繰り返したりー、
色々な手段をこれまでにも使ってきたー。
だがー、今回の竜太郎相手には
”これ”が一番だろうー。
”これ以上、麗を我慢させることはできないー”
そんな、不器用な配慮から、別れた竜太郎には
”これ”が一番効くー。
「ーー!」
人の気配のない廃墟痴態にやってくると、
麗は自分の首筋に持っていたナイフを突きつけたー
「ーー!?!?」
竜太郎は表情を歪めるー
「ークククーこの女に死んでほしくないだろ?」
麗が自分にナイフを突きつけながら笑うー。
何を言っているのか、全く分からないー
「や、やめろ!麗!早まるな!」
竜太郎が慌てた様子で叫ぶー。
「ーークククー
残念ー。別にこの女は早まっていないー。
今、この女の身体は”僕”が借りている状態だからなー」
麗がそう言い放つと、竜太郎は「ど…どういうことだ…?」と、
困惑の表情を浮かべるー。
「ーよ~し…
じゃあ、見せてやろうー」
麗はそう言うと、突然「うっ…」と、呻いて
その場に倒れ込んだー。
麗の身体から、煙のようなものが出て来て、
それが実体化するー…
「ーーお前の”元カノ”は、僕が”憑依”して
身体を借りている状態だー」
顔を隠すためか”口元”までしか実体化していない状態でー、
男が笑みを浮かべるー。
「ーーおおっと、勘違いするなよー
お前に振られたことを病んで、この彼女は
僕に”依頼”してきたんだー
別に、勝手に身体を奪ったわけじゃないー…」
復縁屋がそう呟くー。
竜太郎は目の前で起きている
”あまりにも現実離れした光景”に混乱しながら、
瞳を震わせるとー、
「う…麗から出ていけ!」と叫ぶー。
実際に”麗の身体から抜け出す”場面を
見せ付けられてしまっては、
”憑依”という非現実的なことでも、信じざるを得ないー。
「ーそれは、お前次第ー
それに僕は”復縁したい”という彼女の依頼を受けて、
彼女に憑依しているんだー。
”依頼”を成し遂げるまでは、お前の元カノはー、
解放しないー」
そんな言葉を口にすると、”復縁屋”は、
再び麗の横にいきー、
耳元にフッ、と息を吹きかけてー
そのまま麗の身体に入っていくー
「ーふふふふー」
よろよろと立ち上がった麗が、再び自分にナイフを突きつけるー
「さぁ、どうするー?
この女と”復縁”するか?」
麗が自分の首筋につきつけたナイフに力を込めるー
「復縁すれば、”依頼は完了”だからー、
僕はこの女から大人しく抜けるさー。
だがー、
復縁を拒むならー
”この女”がどうなるかー」
麗がそこまで言うと、
竜太郎はたまらず「わ、わ、分かった!俺も別に麗が嫌いになったわけじゃないんだ!」と
叫びながら、復縁を約束する言葉を口にするー
「ただ、俺の中で恋愛の優先順位が低くて、
このまま付き合い続けたら彼女を傷つけてしまうんじゃないかって心配でー」
必死にそんな風に理由を口にする竜太郎ー。
「ーーその結果が”これ”だー。
この女は、僕のようなーそう、”悪魔”に身を売ったー
残念な結果になってしまったなー? ククー」
ウレタンマスクを身に着けた麗が
マスク越しにも分かるようにニヤリと笑ったー。
「ーーこ、こんなことーー…う、麗は望んでるのか!」
竜太郎は思わず叫ぶー。
”復縁”を望んでいるのだとしても、
麗がこんな手段を望むとは思えないー。
「ーーいいやーこの女が望んでるのは”復縁”だけだー。
やり方は、僕が勝手に決めているー」
麗はそう言うと「でも、安心して貰っていいー」と、笑みを浮かべるー。
「ー記憶は”上手く”調整しておくからー」
麗がそう言うと、竜太郎は「なんだってー…?」と、困惑の表情を浮かべながら
笑みを浮かべている麗のほうを見つめるー。
「ーお前は、ただ自然に復縁を受け入れたー、
そんな振る舞いをしていればそれでいい」
麗の脅すような口調に、竜太郎は震えながら
「ーーと、とにかく、またやり直すからー…う、麗を解放してくれ!」と、
必死に叫んだー。
”ククー僕の見立て通りー”
復縁屋は内心で笑うー。
麗の記憶から読み取った、竜太郎の性格ならば
麗自身を人質にするような形で”圧”を掛ければ屈すると見立てていたが
その通りだったー。
やり方は、”相手”によって変えるー。
場合によっては、相手本人の命を脅かしたり、家族を脅かしたりー、
方法は色々あるが、今回はこれで十分だろうー。
「ーーでは”復縁”するんだな?」
麗がそう言うと、
竜太郎「約束するー」と、嘆願するように言葉を口にしたー。
「ーククーでは、僕の役目は終わったー。
明日、この女は解放するー。
これからも”彼氏と彼女”として、仲良くするんだぞ?」
麗がそれだけ言うと、
竜太郎は戸惑いの表情を浮かべたー
「おっとー、もしも”すぐに別れる”ようなことがあればー
僕がいつでもこの女に憑依できることを忘れるなよ?」
ナイフを自分の首につきつけながら満面の笑みを浮かべる麗ー。
そんな光景を見て、
竜太郎は「わかった…!わかったから!」と、必死に叫ぶー。
「ーー”復縁”完了ー」
ニヤッと笑みを浮かべた麗は、静かにそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「本当に、ありがとうございましたー」
翌日ー
麗は”復縁屋”の事務所で解放されていたー。
しかしー
麗の”記憶”は、復縁屋によって”調整”され、
麗の中では”復縁屋のアドバイスを受けながら”
竜太郎にお願いして、そのまま竜太郎が首を縦に振ったー、という
記憶に書き換えられているー
「ーーいえいえ、例には及びませんー。これが仕事ですから」
”復縁屋”を名乗る青年はウレタンマスクをいじりながら、
そう呟いて微笑むー。
「ーーおかげで、また竜太郎と一緒に過ごしていくことができそうですー」
麗が改めてお礼の言葉を口にしー、
復縁屋が事務所の出口まで丁寧に案内するー
「ーそれでは、お幸せにー」
復縁屋は、立ち去る麗に頭を下げながらそう呟いたー。
「ーーふぅー」
麗が立ち去ったあと、事務所で一人になった”復縁屋”は、
ため息をつくー
「”法律を犯すようなこと”はしませんー。
黒崎さんが”嫌”と思う方法は使いませんしー、
イヤとおっしゃられた場合、僕は別の方法を模索しますから
心配はいりませんー」
依頼を受ける際に、麗にそんな言葉を口にしたー。
”約束”は守っているー
”憑依された麗は、イヤとは言わないー
だから”イヤ”と言われたことを無理にはやっていない”
しー、
”圧”をかけたのは”麗”だー。
”復縁屋”本人は法律を犯していないー。
「ーーまぁ…でも、あの彼氏のことなら大丈夫だろうなー」
復縁屋は少しだけ笑うー。
憑依能力を手に入れたあと、
どうして、こんなことを始めたのかー。
もちろん”利益”のためでもあるー。
”欲望”を楽しむためでもあるー。
憑依した相手の”記憶”を完全に読み取ることができる
復縁屋は”その記憶”も、カネに変える別のビジネスもしているー。
だがー、
一番はー
「ーー”失恋”は時に人を殺すからなー」
”復縁屋”は、ウレタンマスクの位置を手で調整しながら、
事務所の奥にあった”姉”の写真を見つめたー。
「ーー姉さんが、そうだったようにー」
彼の姉はー
”失恋”から立ち直れずに自殺したー。
”死ぬことないだろう!”と、言いたくなる気持ちもあったー。
だが、姉には耐えられない失恋だったのだろうー。
そんなー”姉”のような人を増やしたくないー。
”復縁屋”は、だからこそ”憑依”で復縁させるビジネスを始めたー。
”復縁屋”のような得体の知れない”悪魔”に縋るー
その時点で、その人は正常な判断能力を失っているー。
だからこそ、復縁屋は助けるー。
手段を択ばずに、依頼人の身体を借りて、復縁させるー。
「ーーまぁー、でもー
僕は自分の欲望のために”姉さんの死”を言い訳にしてるだけかもしれないなー」
”復縁屋”は、一人そう呟くと、
姉の写真を寂しそうに見つめながら、
また、次の”依頼人”がやってくる時間が近いことに気付き、
事務所の入り口の方へと歩いて行ったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依能力を使って、
無理矢理復縁させている男の物語でした~!☆
今日は雨が強い地域が多いので、
皆様も気を付けて下さいネ~!
お読み下さりありがとうございました!!
コメント
こういう「圧」だったんですネ!
恐ろしやぁ~~~っ!でした汗
復縁屋さんが復縁屋になったのは亡くなったお姉さんがキッカケだったんですネ( ;∀;)
欲望で憑依とかでなくお姉さんのような人を減らす目的もあるんですネ!
いつもありがとうございます~!☆★!
欲望のため、お金のため、そしてお姉さんのため…★
みたいな感じですネ~笑
100%全部が私利私欲ではないのデス…!
そうでしたっ!?
お金いただいてましたネ!
失恋して死にそうになっている人っていますよネ!
自分は失恋しても2、3日でケロッとしてるタイプなので前向き過ぎて周りに怒られたことありましたネ笑
もちろん毎回、本気でしたよ☆
終わりは始まりなのデス\(^o^)/笑
終わりは始まり…★
前向きな考えは素敵ですネ~!☆
復縁屋さんも、お金がないと
生活していくことはできないのデス…!