<憑依>悪魔に身を捧げた元カノ①~復縁屋~

考え方の違いから彼女に”別れ”を告げた
男子大学生。

しかし、彼女は想像以上にショックを受けてしまい、
自暴自棄な状態のまま”復縁屋”を名乗る怪しげな憑依人に
”復縁”のお願いをしてしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーごめんなー。
 麗(うらら)が悪いんじゃなくてー…
 どうしても、俺の中で”恋愛”の優先順位が低いっていうかー…
 このままだと、麗に悲しい思いをさせちゃうだろうしー、
 ちゃんと、ハッキリさせないといけないと思ってー」

男子大学生の塩原 竜太郎(しおばら りゅうたろう)が、
申し訳なさそうに言葉を口にするー。

”変なところに真面目すぎる”と、よく友達から言われる竜太郎は、
数か月前から、同じ大学に通う
黒崎 麗(くろさき うらら)と付き合っていたー。

優しい性格の竜太郎は、麗のことをとても大事にしていたし、
麗も、そんな竜太郎のことが好きだったー。

しかし、付き合いを続けるうちに、
互いにすれ違いが生じたー。

それはー、
”恋愛に対する考え方の違い”

竜太郎は麗のことを大事にはしているものの、
趣味やプライベート、同性の友達との時間
そういったものも”同等”に大切にするタイプー。
つまり、恋愛の優先順位が特別高いわけではないー。

一方の麗は、そういったものよりも、何よりも恋愛を優先するタイプー。

その考え方の違いが、すれ違いを生み、
麗に我慢させることが多くなりつつあったことに、
”真面目すぎる”と言われてしまうことも多い竜太郎は
いつも、申し訳ない、と思い続けていたー。

麗からすれば、”竜太郎は浮気しているわけじゃないし、そういう性格だと分かってるから”と、
全然我慢することは問題なかったものの、
竜太郎側が”このままじゃいけない”と、今日、別れを切りだしたのだったー。

「ーー俺みたいなやつじゃなくて、
 もっと恋愛をちゃんと大事にしてくれる人が
 麗にはふさわしいよー」

竜太郎が申し訳なさそうにそう言葉を口にするー。

”麗のために”
自分の中での恋愛の優先度を上げようと頑張ってみたこともあったー。
でも、やっぱりそれはできなかったー。
自分の中での”恋愛”に対する優先順位の低さは
恐らくこの先も直らないー。

だが、それではこの先も麗に永遠に我慢
させることになってしまうー。

麗のことが好きだからこそ、
麗には幸せになって欲しいー。

竜太郎はその一心で、寂しい気持ちを押さえながら
別れを告げていたー
それが正しいのか、正しくないのかは、竜太郎には分からなかったー。

「ーーそっかー…」
麗がそう呟くー。

そしてー
色々話をした末にー、
「それなら、仕方ないねー
 今までありがとうー」と、麗は悲しそうに言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人は別れたー。

竜太郎も、麗も、その後は”普通”に生活しているようにー、
”そう”見えたー。

しかしーー
麗は竜太郎の想像以上にショックを受けていてー
大学の外ではー、
何もする気力が起きないほどに、落ち込んでいたー

気付けばー
”彼氏と復縁”のようなワードばかりを検索していて、
ご飯を食べるのも忘れてしまうぐらいの重症っぷりだー。

そしてーー
そんな麗は”見つけて”しまったー

”恋人と別れたあなたを必ず”復縁”させますー”

そう、書かれた謎のサイトをー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

麗は”復縁屋”と名乗る謎の人物の事務所にやってきていたー。

普段の麗であれば
”なんだか怪しいし、やめておこうかな”と、思えたかもしれないー。

しかし、今の麗にそんな冷静な判断能力はなかったー。

”竜太郎に対する未練”ばかりが、麗の中で膨らんでいたー。

「ーなるほどー話は分かりましたー」
黒いウレタンマスクを身に着けた優しそうな雰囲気の青年ー…
”復縁屋”の異名を持つ男がそう呟くー。

「ーでは、その塩原 竜太郎さんと”復縁したい”とー、
 そういうことですねー」
ティーカップに注いだ紅茶を、マスクを外しながら
時々口に運びながら、麗の話を聞いた復縁屋は、
「”復縁”の方法については後程説明しますがー」と、
費用的な話や、注意事項などを、
ありきたりな同意書のようなものを見せながら
丁寧に説明するー。

麗は、そんな説明を聞きながら、安堵していたー。
費用も、探偵だとかそういうものよりも安いし、
”復縁屋”を名乗る男の雰囲気も、優しそうで信頼できる感じだー。

説明を一通り終えると、復縁屋は、
”それで、復縁の方法ですがー”と、
ノートパソコンを麗の方に向けるー。

そこにはー

”願”
”誘”
”圧”

と、書かれていたー。

「ーー願・誘・圧ー。
 復縁は、この3段階に分けて行っていきますー。

 第1段階で相手と復縁できればそれでよしー。
 ダメなら次の段階へと進んでいくー
 
 もちろん、それぞれのステップのやり方は
 僕がお教えしますので、黒崎さんは
 何も心配する必要はありません」

”復縁屋”はそう呟きながら笑うー。

「ーー最初はまず”素直に気持ちをぶつける”ことー
 黒崎さんは、”別れたくない”という気持ちを
 相手のー、塩原竜太郎さんにちゃんと伝えましたか?」

”復縁屋”の言葉に「いえ…」と、少し申し訳なさそうに言葉を
口にする麗ー。

つい、別れを告げられて、その場で”別れたくない”と言える雰囲気ではなく
そのまま別れてしまったー

「ははー、そういう人も結構多いんですよー。
 僕の姉もーーー… いや、失礼ー。
 別れたくないのに、その気持ちを素直にぶつけることができないー。
 だから、僕がそのお手伝いをしますー
 これが”願”ですねー」

復縁屋はそれだけ言うと、残りの2つについても説明するー

”誘”とは、ご褒美で釣ることー。
”圧”とは、復縁の圧力をかけることー。

その言葉に、麗は不安そうに質問するー

「あのー…危ないこととか…悪いこととかー…そういうことはー」
とー、呟くと、復縁屋は苦笑したー。

「ーはははー、そんなことはしません
 ”法律を犯すようなこと”はしませんー。
 
 黒崎さんが”嫌”と思う方法は使いませんしー、
 イヤとおっしゃられた場合、僕は別の方法を模索しますから
 心配はいりませんー」

復縁屋の言葉に、麗はようやく頷くと、
”同意書”にサインをしー、現金一括で、復縁屋に
”復縁料”を支払ったー

「確かにー。受け取りました」
お金の確認を終えると復縁屋は、
立ち上がって、麗のほうを見つめるー

「ーでは、”復縁”のための具体的な方法ですがー」

そう言うと、麗の横まで近づいていきー
突然、麗の耳元で「ふっ」と、息を吹きかけたー

「ーひぅっ!?!?」

その瞬間ー、
”復縁屋”の姿が消えて、麗がビクッと震えるー

「ーーーーー」
しばらく呆然としていた麗ー

しかし、やがて目の輝きを取り戻すと、
麗はニヤリと笑みを浮かべたー

「ーでは、始めましょう、黒崎麗さんー
 ”復縁”のための物語をー」

”復縁屋”はー
相手の耳に息を吹きかけて憑依する方法を用いる
憑依人ー。

麗の身体と精神を一瞬にして支配しー、
そして、”麗”として立ち上がるー

「ーはい、復縁のやり方は全て”復縁屋”にお任せしますー」
麗の身体で、そう呟く”復縁屋”ー

「ーー分かりました。では、僕に全て”委任”ということですねー」
続けて”麗”の身体で”自分のセリフ”を口にすると、
ニヤッと笑みを浮かべるー

”一人二役”で、
勝手に”委任”の許可を貰った”復縁屋”は、
”復縁”のための行動を始めるのだったー

”まずは、”願”からー”

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

麗に呼び出された竜太郎は
首を傾げながらも、麗が待つ場所にやってきていたー。

「ーー麗ー、ごめんー先生に呼び止められて
 少し遅くなったー」

竜太郎がそんな言葉を口にしながら、
麗のほうを見つめると、
麗は少し申し訳なさそうに笑いながら言葉を口にしたー

「ー竜太郎ーあのさー…
 わたし…やっぱり、別れたくないー…!

 この前は急に別れを切り出されて驚いちゃったけどー…
 後でゆっくり考えて見たら別れたくないって思ってー

 今からでもー…
 やっぱりまた彼女に戻れないかなー?」

麗がお願いするようなポーズをしながら、
竜太郎にそう言い放つー

「え…で、でもー」
竜太郎は戸惑うー
麗は、別れを受け入れてくれたのではなかったかー。

”ククククー”
麗に憑依している復縁屋は笑みを浮かべるー。

復縁屋は”憑依した相手の記憶”を完全に読むことができるー。
それ故に、麗本人に成りすますことは容易だー。

「ーーダメかなー?
 別に、竜太郎も、わたしも何か悪いことをしたわけじゃないんだしー…
 ね?おねがい?」

麗の言葉に、竜太郎は表情を歪めるー。

だがー、竜太郎の意思は固かったー。

「ーごめんー
 この前も言ったけど、俺の中でどうしても”彼女”の優先順位が
 上がらなくてー…
 
 ホントに、麗だからとかじゃないんだー
 上手く言えないけど、こんな俺とじゃ、俺もそうだし、
 麗にも辛い思いをさせちゃうからー…
 だからー…」

竜太郎が、上手く言い表せないような言葉を口にするー。

”自分の中で恋愛の優先順位”を上げようと頑張ったー。
でも、どうしてもそれは難しかったー。
麗だからではなく、相手が誰であったとしても、恐らくそうだっただろうー。

だが、それではこの先も麗にずっと辛い思いをさせてしまうー。

”自分は、恋愛には向いていない”
竜太郎は嫌と言うほど、それを実感したー。
だからこそ、麗のことは好きだけど、別れを告げたのだー。

これ以上、麗に我慢させないためにー

「ーわたしなら、大丈夫だからー。
 竜太郎の優先順位が低くても、それでいいからー」

なおも”お願い”する麗ー。
しかし、竜太郎は「ごめんー」と、頭を下げてその場を立ち去ったー。

「ーーー」
一人残された麗は少しだけ笑うー。

「ーふふー…”僕”も、”願”の段階で終わっちゃうとつまらないからなー…
 ちょうどいいやー」

まるでボクっ娘のような口調でそう呟くと、麗は
ウレタンマスクを手に、それを身に着けるー。

別に憑依にウレタンマスクが必要なわけではなかったが、
”復縁屋”の男の癖で、何となく身に付けずにはいられないー。

”いつもの”黒いウレタンマスクを身に着けた麗は
鋭い視線で「次はー”誘”だなー」と、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー相変わらず、楽しそうだなー」

”いつもの店”で、
同じ憑依仲間の”復讐者”の異名を持つ男と合流するー。

「ーーまぁねー
 憑依を最大限楽しみ、最大限利益にするのが僕の趣味だからなー」

麗は脚を組みながら、美味しそうに紅茶を飲むと
「この女の味覚には紅茶は合わないみたいだな」と、少し不満そうに呟いたー。

「ーで、今の”復縁”はどんな状況なんだー?」
”復讐者”がそう言うと、麗はウレタンマスクをつけ直しながら、言葉を口にしたー

「”願”は失敗ー。次は”誘”に進む段階だよ」
その言葉に、”復讐者”は苦笑いすると、

「で、”誘”が失敗したらー、”圧”に進むんだろー?
 あのヤベェ奴にー」

と、そう呟くー

「ーはは、ヤバいとは心外だなー
 僕は、ちゃんと依頼人の利益を守るし、約束も守るー

 けどー”復縁”のためにちょっと手洗いことをするだけだー」

麗はそう呟くと、マスク越しでも分かるように
不気味な笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー??」

翌日ー。
竜太郎は首をかしげていたー。

竜太郎が一人暮らしをする家に麗が突然やってきたのだー。

「ーー麗ー?話って?」
困惑しながら玄関の扉を開けると、
そこには胸元を見せ付けるような服装の麗が立っていたー。

「えっ!?なんか今日はー」
”いつもと全然違う”雰囲気の麗にびっくりして
そんな言葉をかけると同時に、麗は強引に家の中に入って来てー、
突然、竜太郎にキスをしたー。

「ーーねぇ…復縁しようよ…?」
甘い声で囁く麗ー。

そんな”別人のような麗”に、
竜太郎は思わずドキッとしてしまうのだったー…

②へ続く

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コメント

”復縁”を生業とする憑依人に憑依されてしまったお話ですネ~!

ちなみに、このお話に登場している”復縁屋”は、
先月に書いた復讐の元妻の③に先行登場しています~!
(当時もコメントでそれに触れました~!☆)
↑は、今回少しだけ登場した”復讐者”の憑依物語デス~!

特に、物語上に大きな繋がりはないので、
復讐の元妻を読んだことがなくても全然大丈夫なので
そこは安心してくださいネ~笑

話が少し逸れましたが、続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!

コメント

  1. TSマニア より:

    待ちに待った「復縁屋」ですネ!

    楽しみにしてました♪

    最後の圧はコワそうですネ汗