卒業間近のタイミングで
身体を入れ替えられてしまった少女…。
あれから半年ー
変わり果てた自分を前に、それでも元に戻ろうとする彼女の運命はー?
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結局、昨日は”香織”を見つけることはできなかったー。
あのクラブのような店にいた卓也という若者から、
”香織が行きそうな場所”を教えてもらったが
結局、ゲームセンターにも、バーにも、他の場所にも
香織(修二)の姿はなかったー。
卓也という男が本当のことを言っているのかどうかも分からないー。
だが、他に手がかりがないのも事実ー。
”来月のシフトはこんな感じでお願いできますか?”
契約社員として働く勤務先の上司から、
そんなメッセージが届いているのに気づくー
修二(香織)は、それを確認して、
”大丈夫ですー宜しくお願いします”と、返事を送ろうとするー。
だがー
「ーーー!!!」
ふと、”真面目に来月の予定”を考えていた自分に
少し愕然とするー…
”もう、わたしは来月ーー…元の身体に戻っているのにー”
そう、苦笑いする修二(香織)ー
来月のシフトのことなんて、もう真剣に考える必要はないのにー
つい、この身体で来月の予定を考えてしまったー
「ーーーごめんなさいー」
そう、呟く修二(香織)ー
バイトを始めて、短期間で契約社員にしてもらってー、
職場の上司には本当に世話になっているー
元に戻る、ということは
それを裏切る、ということー。
この修二という男が、元に戻ったあと
”そのままわたしの職場”で働き続けてくれるとは到底思えないし、
恐らくそれはしないだろうー。
「ーーー…でもー…」
修二(香織)は、
”別人のようになってしまった自分”を思い出すー。
穢れてしまった自分を思い出すー。
それでもーー
それでも、わたしは元に戻りたいー。
修二(香織)は、決意するかのようにグッと拳を握りしめるー。
わたしの身体ー
わたしの人生ー
それを、取り戻さなくちゃいけないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーみんな元気~?」
笑いながら、今日も香織(修二)が派手な服装で
ゲームセンターに入って来るー。
ハートの形をした派手なピアスや、
アクセサリーをぶら下げながら、
大胆に生足を晒したミニスカート姿で、
イスに座ると、すぐに煙草を口に咥えながら、
仲間と色々話し始めたー
「ーお、そうだ雅美ー」
このクラブの仲間たちの前で名乗っている名前が雅美ー。
その名前で、仲間の卓也がいつものように声をかけると、
香織(修二)は「あ!卓也!今夜、わたしとヤッちゃう?」と、笑みを浮かべたー
「うぉぉ!?マジか!やったぜ!」
卓也は嬉しそうにそう言いながら、
香織(修二)のほうを見つめるー
本当に可愛いー
こんな魔性の女になら、破滅させられてもいい、と、卓也は思うー。
「あ」
ふと、卓也は昨日のことを思い出すー。
「あのおっさん、また雅美のこと探してたぜ?
昨日、会わなかったか?」
卓也がそんな言葉を口にすると、
香織(修二)は「え~?会ってないけど?」と、自分の胸を揉みながら
ニヤニヤと笑みを浮かべたー
「ーおいおい、当たり前のように揉むなよー
男からすりゃ、そういう姿をみるだけで興奮するんだぜ?」
卓也が呆れ顔で言うと、
「だって気持ちイイんだもん」と、香織(修二)は笑うー
「ははは、どんだけ性欲強いんだよお前はー」
卓也はそんな言葉を口にすると、
突然、クラブの入口で大きな音がしたー
「あん?」
卓也が振り返るー。
笑みを浮かべていた香織(修二)も表情を歪めるー。
入口にはー
柄の悪い男たちとーー
昨日ー暴走族たちと共に香織(修二)が罠にはめて
金を巻き上げたおじさんが立っていたー。
「ーーへへへー昨日は世話になったなぁ、姉ちゃんー」
優しそうな雰囲気のおじさんが邪悪な笑みを浮かべるー。
「ーーーな、なによ」
香織(修二)がそう言い放つと、
おじさんは笑みを浮かべるー
昨日ー、香織(修二)と、クラブにいる仲間とは別グループの
遊び相手である暴走族が香織(修二)の色仕掛けで金を奪った相手のおじさんは、
”一般人”ではなかったー
気の弱そうな穏やかな風貌であったもののー、
彼はこの辺り一帯で暗躍しているワルの集まりー、銀狼(ぎんろう)の
上層部の男ー。
本人に”喧嘩”の実力は皆無であるものの、
銀狼のリーダーの血縁者であることから、銀狼構成員を動かすことが
できる力を持っているのだー。
「銀狼って知ってる?」
おじさんが微笑むー。
「ーぎんろう?ふふっー…
なに?老人の集まりか何か?」
挑発的に笑う香織(修二)ー
だが、隣にいた卓也は青ざめていたー
「お、おい…雅美ー
ぎ、銀狼はヤバいー」
とー。
小声で”銀狼”について告げるー。
犯罪にも手を染めている危険な集団だー。
それを聞いた香織(修二)は少し顔色を変えるー
「ーあいつらはー?」
”昨日”一緒にいた暴走族のことを問う香織(修二)ー
「ーへへ…
お前の仲間の暴走族は、今頃”沈んでる”よー」
おじさんはそう言うと、
「その女を捕まえろ!」と、部下たちに対してそう叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日もあのナイトクラブに行こうー。
修二(香織)はそう思いながら
出かける準備をするー。
”今日は”わたし”もいるかもしれないしー”
”「それでもお前は元に戻りたいのか?」”
あの男のその問いに、まだ答えていないー。
だが、今ならハッキリ言えるー
「それでもわたしは元に戻りたい」
とー。
もちろん、あの男が素直に応じるとは思えないー。
でも、入れ替わりを仕掛けたあの男なら
当然”元に戻る方法”も知っているはずー。
そう思ってナイトクラブに向かっていると、
ふと、電話が入ったー。
その番号はーー
”これ、わたしが使ってた番号ー…”
つまり、香織(修二)からの電話ー。
すぐにその電話に出ると
”身体を元に戻してやる!今から言う場所にすぐに来い!すぐにだ!”と、
荒い息で叫ぶ香織(修二)の声が響いて来たー。
「ど、どういうこと!?」
修二(香織)が確認するー。
だが、香織(修二)は、埠頭にある倉庫の一つを指定するとー
”うるせぇ!戻りたいなら早く来い!”と、香織の声で乱暴に
言葉を吐き出して、そのまま電話は切れてしまったー。
「ーーーー」
修二(香織)は困惑するー。
何かの罠だろうかー。
しかし、慌てた様子だったー。
そう思いながら、いつものナイトクラブの入口付近まで
やってきていた修二(香織)は
ナイトクラブに足を踏み入れるー
だがー
そこにはー
「ーーえ」
修二(香織)は困惑するー。
”香織(修二)の仲間たちだった男”が、全員、酷い怪我をして
倒れ込んでいるー
「ーー…あ、あんたー」
ふと、声が聞こえて振り返ると、
そこには傷だらけの卓也の姿もあったー
「こ、これは?!何があったの!?」
つい、おじさんとして振る舞うことを忘れて
修二(香織)がそう叫ぶとー
卓也は「ーーあいつが、やべぇー」と、苦しそうに声を上げたー。
「ーあいつ!?」
修二(香織)が聞き返すー。
その言葉に卓也は「ー雅美がー雅美がやべぇー…助けてやってくれ」と、
だけ、声を口にしたー。
雅美とは香織(修二)のことー。
卓也によれば”銀狼”というヤバい団体に連れ去られそうになってー、
香織(修二)は一人で逃げ出したというのだー。
修二(香織)はこの場を放っておくわけには行かず、
救急車の手配だけすると、
すぐにその場を離れて、指定された埠頭へと向かったー。
けれどー、その最中でふと思うー。
”悪さをして、ヤバい団体から命を狙われるようになってしまったわたし”ー
そんな”わたし”の身体に戻ったらー、わたしはー…?
ーと。
「ーーー…」
一瞬、立ち止まる修二(香織)ー
けれどー
それでも”自分の身体”を取り戻すために、
修二(香織)は走り出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーや、やめろ…やめてくれ…許してくれ!」
香織(修二)は悲鳴を上げていたー。
埠頭のような場所で、”銀狼”の構成員たちに囲まれ、
散々痛めつけられたり、身体を弄ばれたりしているー。
修二は元々、”ただのおじさん”でしかなくー、
美少女の身体を手に入れ、”女の身体”を武器に、
周囲を自分の思い通りにして、
調子に乗っていただけー。
”この身体があれば”
暴走族だろうと、ワルそうなやつらだろうと、
誰もが自分の言いなりになるー。
そんな環境に”たまたま”いただけー。
本当の恐怖を、香織(修二)は何も知らなかったー。
散々に身体を遊ばれて、香織(修二)は
泣きながら謝罪の言葉を口にするー。
「ーーち、調子に乗ってましたー
す、すみませんー 許して下さい!」
無様な姿を晒す香織(修二)に対して、
先日、香織(修二)の美人局に引っかかったおじさんは
笑みを浮かべたー。
「ーーお嬢ちゃんー
この世には”恐ろしいもの”がたくさんあるー
よく覚えておくんだな」
おじさんのそんな言葉ー
「ーーーー!!!」
ようやく、埠頭にたどり着いて物陰からその様子を見ていた
修二(香織)は、困惑するー
(え…ちょっと…わたしの身体で何してくれてるのー…)
呆然としながらも、流石に修二(香織)に”やめろ!”などと叫んで
この銀狼とかいうヤバいやつらを蹴散らす力はないー。
「け、警察に通報しなくちゃ」
修二(香織)は男たちに見つからないように、さらに距離を取ると、
そのまま警察に通報し始めるー。
警察への通報が終わりー、
程なくしてパトカーのサイレンが聞こえて来るー。
だがー、
その直後ー
「おい!やべぇ!」
「ーこの女はどうします?」
「ー突き落とせ!」
そんな言葉と共に、散々痛めつけられた香織(修二)は
そのまま埠頭から突き落とされー、水の中に転落するー
「ーー(ちょ、ちょっと!)」
みんなでわたしの身体を玩具にしないで!と、
そう言いたくなったものの、身を隠すことを優先するー。
香織(修二)は大丈夫だろうかー。
そのまま沈んだりしないだろうかー。
直後、警察が駆け付け、逃げ遅れた銀狼の構成員らは
そのまま逮捕されるー。
修二(香織)は、慌てて香織(修二)が転落したことを告げるとー
警察官たちがすぐに溺れかけていた香織(修二)を見つけて、
そのまま彼女を救助したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー森澤くんにはいつも本当に助けられてるよ。
ありがとう」
上司の男がそう言葉を口にするー
「いえ、こちらこそありがとうございますー」
修二(香織)はそう呟くと、
契約社員として働く勤務先で、今日も仕事を続けていたー。
”これで、良かったのかなー…”
修二(香織)は自宅に戻りながら
そんなことを呟くー
いいや、良くはないー。
でも、結論から言うと”元に戻る”ことはできなかったー。
あのあと、病院に運び込まれた香織(修二)ー。
しかし、香織(修二)は、銀狼のメンバーに痛めつけられて
最後に、海に突き落とされる時に頭を打ち付けていて、
記憶に障害が残った状態になってしまったー。
今では、まともに会話することも出来ないー。
つまり、”元に戻る方法”を聞き出すこともできないのだー。
修二(香織)がそれとなく聞いてみても、
香織(修二)は意味不明な受け答えをするだけー。
最初はー
”猿芝居”をしているのかとも思ったー。
”記憶を失ったふりをして、誤魔化そうとしているのだと”
しかしー、医師の話や、警察の話、本人の話を総合すると
”本当に”そういう状態になっていてー、
当面退院も難しいという状態だったー
「ーはぁ…」
香織(修二)はため息をつくー。
けど、少なくとももう、あれで”香織”がこれ以上
悪さをしたり、香織の身体を悪用することはできなくなったとは思うー。
「ーーー職場に迷惑かけなくて済んだのは、よかったのかなー」
修二(香織)はため息をつくー。
正直、”元に戻りたい”という意思は強かったけれど、
同時に、元に戻ることで”修二”としてお世話になった職場に
迷惑をかけるかもしれないことや、
”散々滅茶苦茶にされた自分の身体”に戻ったあとに
待ち受けているであろう、色々な苦難を想像し、
頭を悩ませることもこの数日間、何度もあったー。
”自分の身体がこれ以上、悪用されることを阻止”したー。
それだけでも、よかったのかもしれないー
「ーーーー……あ~あ…人生20年以上無駄してるよね…わたし」
修二(香織)は、そう呟きながらも、
なんだか”ここ半年”の現状がこの先も維持されることに
少し安堵しているような感情があることにも気づき、
深々とため息をついたー
「ーなんか、思考がおじさん化してる気がするー」
とー。
もしー
もしも、いつの日か”元に戻る方法”が見つかったらー…。
まともに会話が出来ない状況になってしまった自分の身体にー
”それでも元に戻りたいのか?”と、言われたらー…
今はもう、”戻りたい”と言えるかどうか、
修二(香織)には分からなくなってしまったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
元に戻ることはできなかった複雑な気持ちのエンドに…☆
もしもこの先、ちゃんと動けるのかも分からない
ボロボロになった自分の身体に戻るチャンスが訪れたら…
皆様が修二(香織)の立場だったら、元に戻る選択をしますか~?それとも…?
お読み下さりありがとうございました~!☆
コメント
いくら自分の元の身体でも、元に戻りたいとはどうしても思えなくなる、どうしようもない状態はありますよね。
身体が麻痺状態になってまともに動けなかったりとか、入れ替わった相手が勝手に性転換手術しちゃったりとかだと、もう取り返しがつきませんから。
コメントありがとうございます~!☆
流石にこのお話のような状況になってしまったら、
私はもう、元には戻りたくないですネ~笑
難しい選択ですよネ( ;∀;)
かおりんも職場の上司にお世話になって良くしてくれたら…
自分はその赤い糸で時々、無名さんと入れ替わりたいのデス笑
無名さんのカラダで女の子入れ替わり検定3級取得するのデス笑
赤い糸の入手ルートも分からず、
今どこにあるのかも分からない状態なので、
香織(修二)が記憶を取り戻してくれない限り、
戻るのは大変そうですネ~…☆!
…3級!!☆
まずは女の子入れ替わり検定3級合格なのデスっ!笑
1級は浴衣でトイレもある難題なのデスっ!笑
恐ろしやぁ~★
1級は…
本番を行うのデス~(?)ぶるぶるぶる…笑
1級は本番ありなのですネっ!笑
確かに本番にも対応できないと笑
無名さんになって念入りに予習が必要ですネっ!笑
じゃあ浴衣は2級ですネっ!笑
女の子入れ替わり検定、大変ですけどやりがいがあるのデスっ★
良い大人にして「居酒屋の泥棒」楽しみにしてるのデスっ!笑
入れ替わり検定の道のりは長いのデス…!
居酒屋泥棒もぜひ楽しんでくださいネ~!