”復讐者”と呼ばれる謎の憑依人に
身体を貸してしまった元妻ー。
彼女の復讐心は、日に日に増幅し、
その行動はさらにエスカレートしていくー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーはははー
それが”今のお前の身体”か?」
笑いながらやってきたのは、
黒いウレタンマスクを身に着けた優しそうな目つきの男ー。
「ーーーククーそうだともー。
美人だろ?」
”復讐者”の異名を持つ憑依人に、
身体を支配された状態の和美が笑いながらそう言うと、
「ーーそれにしても、お前は悪趣味だよな」と、
ティーカップに注がれた紅茶を飲みながら
相手の男が笑うー。
「ーー”復讐心”に染まった人間ほど、
美しいものはこの世にないー。
俺は、ただそれが見たいだけだー」
和美が笑いながらそう言うとー、
「復讐を手助けしてるようなツラしちゃってー、
本当は、復讐心に染まる女を見て、悦に浸ってるだけだろ?」
相手の男が、ウレタンマスクをつけ直しながらそう言うと、
「ーーまぁなー」
と、和美は笑うー。
”復讐者”を異名を持つ憑依人はー、
人が”復讐心”に染まり、復讐鬼になる姿を見て、
楽しんでいるー。
復讐心に囚われた人間特有の”脳が妙に活性化した状態”ー
その身体で味わう快感がたまらないのだー。
「へへー趣味が悪いねぇ”復讐者”さんはー」
ウレタンマスクの男がそう言うと、
「ーーお前に言われたくはないなー”復縁屋”」
と、相手の憑依人の異名を口にしたー。
二人は、同じ時期に憑依薬を手に入れた
”憑依仲間ー”
以降、こうして時々会っては情報交換をしたり、
最近の憑依について話し合ったりしているー。
「ーーまぁ、性癖なんて十人十色ー。
他人がとやかく言うことじゃないー
特に、僕らのような”憑依”を楽しむ者は、尚更だー」
”復縁屋”がそう言うと、
復讐者は笑みを浮かべながら立ち上がったー。
「ーでは、俺はそろそろ行くよー。
この女が”復讐”したくて身体がウズウズしてるからな」
和美がそう言うと、
復縁屋は「エロイこと言うねぇ」と、笑うー。
そして、
立ち去ろうとする和美に対して、
呆れ顔で言葉を口にしたー。
「”復讐”を終えたあとは、また”いつもの”やるんだろ?」
”復縁屋”がイスに座ったままそう呟くと、
和美は笑みを浮かべながら立ち止まって、
静かに呟いたー
「”もちろん”」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーふふふふふふふふふふふ…」
元夫・雄平の母親である茂子が自宅で
自殺したと聞かされて、
和美は狂ったように笑っていたー
「あはは、あいつ、死んだんだって!あははははははっ!」
和美は嬉しそうに笑うと、
歪んだ笑みを浮かべたままー、
「復讐が上手く行ってるのは、ぜ~んぶ、あなたのおかげ!
本当に、本当にありがとう!」と、
ペンダントに向かって叫ぶー。
”ーククク、でも、まだ終わりじゃないだろう?”
ペンダントの中に宿っている状態の”復讐者”が
そう囁くと、和美は「もちろん」と、笑うー。
「ーわたしの復讐心はこんなものじゃ消えないし
満足できないー。
雄平も、あの泥棒女も、みんなみんな地獄に突き落としてやらなくちゃ」
そう呟くと、和美はクスクスと笑うー。
復讐心が、さらにさらに増幅されていくー。
和美にはもはや”復讐”のこと以外、何も考えられなくなっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー…あの女、おかしいよー」
浮気相手の梓が怯えた様子で言うー。
雄平は、母親が自殺してしまったことで、
真っ青な表情を浮かべているー。
ここ数日は、食べ物も喉を通らないほどだー。
「ーー…くそっ…あいつー」
雄平は歯ぎしりをするー。
まさか、こんなことになるとは思っていなかったー。
和美の性格で、こんなことをしてくるとは思っていなかったー。
警察にも相談したものの、
なかなか”直接的”に暴力を振るわれたりしているわけではないため、
すぐには動いてもらえずに、
精神的に雄平も梓もギリギリのところまで追い込まれていたー。
「逃げようー」
雄平が呟くー。
「えっ…?」
戸惑う梓ー。
「ー遠くに引っ越しして、あいつから逃げよう!
あいつは…普通じゃない!」
雄平の言葉に、梓は戸惑いながらも、
お互いに仕事も失ってどうすることも出来ない状況だったからかー、
梓は雄平についていくことに決めー、
数日後ー、雄平と梓は逃げるようにして姿を消したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー許せないー…許せない…!許せない!!!」
壁を拳をで殴りつけながら
怒りの声を上げる和美ー。
”クククー荒れているな”
和美に憑依している”復讐者”が笑いながら
和美に語り掛けるー。
「ー雄平も、あの泥棒女も、逃げたのよ!
これが怒らずにいられる!?」
和美は、荒い息をしながら
怒りからか、まるで別人のように表情を歪めているー。
”ーーだったら、俺が何とかしてやろう
そのための”復讐者”だからなー”
復讐者が言うー。
”お前の身体を使えば、
やつらの逃げた場所など、いくらでも調べることができる
どうするかね?”
復讐者の言葉に、和美は少しだけ戸惑いの表情を浮かべるー
「ーー身体を…」
それが意味することは分かっているー。
自分の身体を売るようなことは、これまでにしたことのない和美は戸惑うー。
だがー
ペンダントから黒い霧のようなものが噴き出してー、
和美の憎しみはさらに増幅されていくー
「ーーーわかったー…
わたしの身体なんて、どうなったっていいー
あの二人に復讐するためなら、わたしはなんだってするー」
憎しみに支配された和美がそう言うと、
”復讐者”は、笑みを浮かべながら和美の身体を乗っ取りー
その日の夜から、夜の町で、和美は男遊びを繰り返したー。
”復讐者”は和美の身体を完全に支配し、
欲望の限りを尽くしー、
和美として何人もの男を虜にしたー。
その”ついで”に、身体を使って
雄平と梓が逃げた行先を、調べ上げたー。
どうやら、かなり北に引っ越しをしたようだー。
「ーーーーーー!!!」
1か月近くが経過しー、
和美が正気を取り戻すと、
和美は戸惑いの表情を浮かべながらー、
「それで、あの二人は見つかったの?と、
”ペンダント”の方に引っ込んだ”復讐者”に確認するー
”もちろんだともー。
やつらの居場所は調べておいたー。
机を見ろ”
和美は、自分の姿が、
今まで見たこともないような”妖艶な”格好になっていることに気付くも、
それに反応することなく、
夢中になって”元夫”たちが逃げた場所を見つけたー。
「もう逃がさないーククー…もう、絶対にー」
和美が不気味な笑みを浮かべるー。
この1か月ー
復讐者は和美を完全に乗っ取り続けて、
数えきれないほどの男と関係を持ったー。
そしてー
その間にも、和美の身体にはペンダントを通じて
強い憎しみと復讐心がさらに増幅し続けていたー。
”クククーで、どうするんだ?”
復讐者が問いかけると、和美は笑みを浮かべたー
「決まってるじゃないー。
ーーー殺すのよ」
和美が強い口調でそう言い放つー
”クククー、それは犯罪だぞ?”
復讐者が笑いながら言うー。
「ー構わないー。復讐が果たせるならー」
和美は、完全に正気を失っている目つきで、そう言い放つと
そのまま出かける準備を始めるー。
ふと、スマホが目に入るー。
スマホには、親友の小夜や、
和美自身の両親から心配する連絡がたくさん入っていたー。
しかし、それを見ても和美の憎しみは消えなかったー
「ーーどいつもこいつも、アイツの味方をしてー」
和美は不満そうにそう呟くと、
「わたしのことを分かってくれるのは、あなただけね」
と、自分の中にいる復讐者ー…
本当はー、その男が一番、和美を闇の道に引きずり込もうとしている悪魔なのにー、
今の和美はもう、そのことにも気付けなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーひっ!?!?ーか、和美ー!?」
数日後ー。
和美は、元夫の雄平の家を訪れていたー。
雄平と梓が、悲鳴を上げながら逃げようとするー。
「ー逃がさないー…」
和美は、そう呟くと、壁際に追い詰められた梓に向かって呟くー
「泥棒猫ー…絶対に、許さないー」
とー。
そして、和美がナイフを取り出したのを見て、
雄平は「お…おいっ!?」と、声を上げるー。
雄平の目の前で、”浮気相手”の梓が、
和美によって、動かぬ屍へと変わっていくー。
和美は笑いながら梓に”復讐”を果たしたー。
梓が動かなくなっても、まだ笑いながら梓を刺している和美を見て、
雄平は「う、うわああああああああああああ!」と、叫びながら
和美に突進するー
無我夢中で和美からナイフを取り上げてー、
和美を床に押し倒すー。
それでも、笑っている和美ー
完全にイカれているー、と雄平はそう思ったー。
「あんたが悪いの!あんたが悪いの!」
和美は笑いながらそう叫ぶー。
「ーーーわ、分かってる…分かってるけど…
こ、ここまで…ここまでするなんて!」
雄平が半泣きでそう叫ぶー。
だが、和美は隠し持っていたもう1本のナイフで
雄平の足を刺すと、
倒れ込んだ雄平にとどめを刺そうと、
笑いながら雄平に近付いて行ったー。
「ーーゆ、許してー」
雄平は、泣きべそをかきながら土下座していたー。
「ー許して、くださいー」
浮気が発覚して、逆ギレしてー、和美を殴りつけた雄平ー。
だが、その時の面影はもはやないー。
哀れで惨めな彼の姿が、そこにはあるー。
「ーーーー」
和美はふと、そんな”雄平の無様な姿”を見て、
ちょっとだけ、冷静になったー。
”わたしはーーー…”
自分の手が血で汚れているのを見て、瞳を震わせるー。
けれど、すぐに”憎しみ”が湧き上がってきて、
雄平にとどめを刺そうと笑みを浮かべるー。
「ーたすけて…お願いしますー」
雄平は、情けなく泣きながら
ガクガクと身体を震わせているー。
それを見た和美は、
「ーーわたしはーーーー」と、
迷いのような言葉を口にしたー
”クククー
迷いが出たか。まぁいい。最後は俺がやってやるー”
復讐者がそう言うと、
和美は「え…ちょっと待っー」と、叫ぶー
しかし、和美の意識は完全に乗っ取られー、
和美は不気味な笑みを浮かべながら、
雄平に対して言い放ったー
「なぁ、死ぬ前にこの女とヤろうぜ?」
和美がそう言うと、怯え切った雄平は、
震えながら和美に従ったー。
そしてーー
復讐者は和美の身体で雄平と散々楽しむとー、
最後に、雄平の息の根を止めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーークククー
人が復讐心に染まって転落していく姿は、
実に最高だー
今回もいい見世物を見せてもらったー」
和美はそう呟くと、
雄平と梓が倒れているその部屋で、
ペンダントのほうを見つめたー。
「ーー復讐が終われば、もうお前に興味はない」
和美はそれだけ言うと、
自分のペンダントのほうを見て、
その装飾を、自ら打ち砕いたーーー
「ーーーぁ…」
その場に倒れ込む和美ー
復讐者は和美から抜け出しー、
そのまま去っていくー。
やがてー
和美は正気を取り戻したー。
「ーーー…わ………わたし……」
和美は、自分のしてしまったことの恐ろしさー、
そして、自分のしてきたことの恐ろしさに気付き、
その場で震えるー。
復讐者が和美の中から出て行っただけではなく、
ペンダントに宿っていた憎しみや復讐心も消え去ったことで、
和美は”復讐者”に憑依される前の状態に完全に戻ったー
「ーゆ…雄平ー…
ーーあ…ぁ…そ、そんなー」
倒れている雄平と梓を見て、和美は悲鳴を上げるー
「こ、ここまで…ここまでするつもりはなかったのにー
わたし…どうしてー」
”復讐者”に支配されていた間以外のことは当然覚えているし、
和美自身が、自分で”こうした”ことも当然覚えているー。
それでもー
憑依とペンダントにより植え付けられ、増幅させられていた
復讐心と憎しみが消えたことによって、
和美は急に興奮状態から覚めたような、そんな状態に陥っていたー
「ーーここまで…ここまでするつもりはなかったのにー…
ごめんなさいー…ごめんなさいー」
和美は泣きながら悲鳴を上げー、
その場でいつまでも泣き続けたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
”復讐したい相手がいるのー”
”復讐者”の異名を持つ憑依人の元に、また新たな依頼が舞い込むー。
「ほぅ。話を聞こうか」
復讐者がそう答えると、
相手は、自分の名や、復讐したい相手のことを口にしたー。
”数日前、わたしのお姉ちゃんが殺されたのー。
お姉ちゃんの彼氏の元妻にー。
そいつは逮捕されたけどー、逮捕なんかじゃ許せないー。
わたしがお姉ちゃんの仇を取るのー…
でもー……わたしだけじゃ、警察に逮捕されてるそいつ相手に
仇討ちできないー。
だからー…力を貸して”
その言葉を聞いて、”復讐者”は笑みを浮かべたー。
そうー
依頼人は、和美に殺された”梓”の妹ー。
詳しい事情は知らないまま、
”お姉ちゃんが殺された”と、和美に対して激しい怒りを抱いていて、
それで復讐者に連絡してきたのだー。
「ーーー分かったー。いいだろうー」
復讐者は笑みを浮かべるー。
また、復讐心に支配されて”全てを捨て去る”人間の闇を
覗くことができるー。
復讐心は時に連鎖するー。
復讐が復讐を生み、また新たな光景を見せてくれるー。
「ーククククー…
これだから復讐鬼に染まっていくやつを見るのはやめられないー」
復讐者はそう呟くと、また新たな欲望をその目に刻むため、
依頼人である梓の妹に”ペンダント”を送りつけたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
③の前半に登場した”復縁屋”は、
今後の作品に登場予定の憑依人デス~!
(※今回の作品の続編ということではありません~!
どっちか一つだけ読んでも問題ナシデス)
今回は”この先の作品に関係する描写”をあえて入れる
実験をしてみました~!
毎日書いているので、色々試すことも大事ですネ~(?)☆!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
今回のは、やっぱり恐ろしやぁ~~~っ!
でしたね( ;∀;)
まさかの復縁屋もちょっと登場でしたネ!
そのうち
復縁屋が主役の話しもできそうですネ!
話は変わりますが
無名さんのTwitterのほうも最近見てますよ(^-^)/
憑依空間、以外にも書かれてたんですネ!
無名さんは頑張り屋さんですネ!
感心してます☆
休める時はゆっくり休むのデス~☆
わわ!
ありがとうございます~!☆
ツイッターでもいつでも絡んでくださいネ~!☆
”復縁屋”が登場するお話は、
ツイッターで既にご紹介していて、6月に登場予定なので
楽しみにしていて下さいネ~笑
6月なんですねっ!
Twitterすみずみまで見てませんでしたm(._.)m
楽しみにしてます☆
ケータイ変わってからTwitterできなくなりました( ;∀;)
無名さんのTwitterのフォローワーさんも個性的で楽しいですよネ♪♪
いえいえ~☆
全然気にしないでください~☆
来月まで楽しみにしていて下さいネ~!☆
確かに機種が変わったりすると、
見れなくなっちゃったりもありますよネ~!
眺めるだけでもありがとうございます~~!☆!
Twitterの方見てると
また違う無名さん知れていいですよ(^o^)
これからも応援してますq(*・ω・*)pファイト!
笑~☆
ありがとうございます~!がんばります~!!