<他者変身>わたしだらけの街②~遭遇~

”わたしと同じ顔の子がいる…?”

そんな違和感を感じ始めた彩夏。

やがてー…
街中に”自分”が溢れることにー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーな…なんでー…
 どういうこと…?」

帰宅後、彩夏は困惑していたー。

偶然、街中ですれ違った二人組の女子ー。
その二人は、”二人とも”彩夏と同じ顔だったー。

”似ている”とか、そういうレベルではないー
あれは”わたし”だったー。

髪型は違ったけれど、確かにー…

「ーー…あんなに似てる顔の人が
 二人もいるなんてー…あり得るのかな…?」
彩夏は一人、不安そうにそんなことを呟くと
”また、莉々に勘違いされちゃいそうで嫌だなぁ…”と、
頭の中で考えるー。

けれどー…彩夏はまだ、それほどこのことを
重く考えてはいなかったー。

”よくいる顔”であるが故に、
”わたしと似てるなぁ”と思うような子は
これまでにも見たことがあるし、
彩夏にとっては日常茶飯事だったからだー。

がー…
”今回”は訳が違ったー。

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数日後ー。

「ーー彩夏」
親友の莉々が、彩夏に声をかけて来るー。

「ーあ、莉々ー」
彩夏が、莉々のほうを見ると、
莉々はスマホを手に、”これ、どういうこと?”と、
写真を見せて来たー

「え…」
彩夏は困惑するー。

その写真には、いかにも下心丸出しな笑みを浮かべている
小太りなおじさんと、派手な格好の”彩夏”らしき子が写っているー。

「ーえ~っと…なにこれ?」
彩夏がこの前と同じように首をかしげると、
莉々は「昨日の夜!彩夏、この男の人とホテルから出て来たけど、
これは何?」と、不愉快そうに言葉を口にしたー。

「ーーーえ~~~…昨日の夜は~
 家でのんびりしてたけどー」

図らずも、この前と同じようなやり取りになるー。

だが、莉々は大きくため息をつくと、
「彩夏さー…あんまり夜遊びとか、しない方がいいよ?」
と、”これは彩夏”と決めつけたような口調で言葉を口にするー

「だ、だから、この前の時もそうだけど、わたしじゃないんだってば!」
彩夏が少しムッとして言うと、
莉々もムッとした表情を浮かべて、
「この前みたく嘘つかれないように、写真撮っておいたもん!」
と、莉々はもう一度スマホの写真を見せ付けて来るー。

まるで夜の仕事をしているかのような格好の
”彩夏”そっくりの女ー。

確かにそっくりどころじゃなくて、”わたし自身”にも見えるー。

彩夏は戸惑いながら、
「ーなんか、この辺に”わたしそっくり”の人がいるみたいでー」と、
この前見かけた二人組のことを思い出しながら言うー。

だが、莉々は笑いながら
「ー確かに彩夏に似てる子は結構いるけどさー
 さすがに”似てる子”と”彩夏”を見間違えたりしないよ?」
と、言葉を口にするー。

にこにこしながら、スマホの写真を今一度見返す莉々ー。

「うん。ほら。どう見ても彩夏じゃんー。
 何これ?
 こういうこと、してるの?」

笑いながらそう言い放つ莉々ー。
顔は笑っているが、明らかにピリピリしたムードが漂っているー

「ーーーわ…わ…わたしじゃないんだってば!信じてよ!」
彩夏がそう叫ぶと、莉々は「ふ~ん」と、何度か頷くと
「わかった。わかった。それならいいよ」と、
ニコニコしながらスマホをしまうと、
「ーな~んか、ムカつくね?友達に嘘つかれるの」と、
にっこり微笑んで、そのまま立ち去って行ってしまったー。

「あ~~~…もうー」
一人残された彩夏はため息をつくー。

莉々は、拗ねると笑いながら、結構きついことを言ってくるし
しばらく機嫌も直らないー。
これは、仲直りに当分時間がかかりそうだー、と
思いつつも、彩夏は不安そうな表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

朝早く、玄関のインターホンが鳴るー。

”誰だろう?”と思いつつ、
応答すると、やってきたのは
二人組の警察官だったー。

「ーー朝早くにすみませんね」
警察官の一人がうすら笑いを浮かべながら言うー。

彩夏は眠そうにしながら「いえ…」と、言葉を口にすると
「何かあったんですか?」と、警察官に尋ねたー。

すると、警察官は「昨日の20時頃、何をどこにいらっしゃいましたか?」と、
言葉を口にしたー。

「え?あ~はい、昨日はバイトが22時まであったので、バイト先にいましたよ」
彩夏がそう答えるー。

昨日はバイト先の喫茶店で22時までバイトをしていたため、
家にはいなかったー。

「なるほどー。それを証明できる人はいますか?」
もう一人の警察官が聞いてくるー。

「ーはい。店長と、あと三木(みき)さんも一緒だったのでー」
彩夏がそう答えると、少し不審そうな表情を浮かべて
「あの…何でそんなことをー?」を、警察官に確認するー。

「あぁ、いやー
 昨日ねー…駅前のリサイクルショップで強盗事件があって、
 君に良く似た子が監視カメラに映ってたものだからー」

既にニュースでも報じられているからか、
警察官は素直にそう答えると、
その映像らしきものを見せて来たー

「ーーー!!!」
彩夏は困惑するー

「ーわ、わたし!バイトしてました!
 お店に監視カメラもあるはずなので
 わたしがバイト先にいたことは分かると思います!」

”勘違いで逮捕なんかされたらたまったものじゃない”
そう思った彩夏は少しムキになってそう叫ぶー。

すると、警察官にバイト先を聞かれたために
場所と名前、連絡先を答えるー。

すぐに、警察官が彩夏のバイト先に確認を取りー、
彩夏には”アリバイ”があることが明らかになったため、
それ以上、彩夏が追求されることはなかったー。

がー…

その日の夜もー
”彩夏の姿をした人間”による犯行が起きたー。

今度は、ラブホテルでこの辺り一帯にも進出している
裏社会組織の一つ”銀狼”の構成員が遺体となって発見された事件ー

その男と一緒にホテルに入って行ったのが”彩夏”だったのだと言うー。

だが、彩夏は今日もバイトだったため、
再び”アリバイ”が成立したー。

しかしーーー

その次の日のことだったー。

大学の友達から”彩夏、炎上してるよ”と、
連絡が入ったのだー。

”意味が分からない”と、彩夏がその友達に聞くと、
友達が”今朝、ネットに彩夏の動画が”と、
その動画のページを教えてくれたー

慌てて彩夏はその動画を確認するー。

するとー

”ふざけんじゃねぇよ!おら!謝れよ!”
コンビニの店員にクレームをつける女の動画ー

そこに映っているのはー
”彩夏”だったー。

店員に何らかの難癖をつけた”彩夏”をー
たまたま店にいた他の客が撮影した動画のようだったー

だがー
彩夏にこんなことをした記憶はないー

「な、何なのこれ…!?」
彩夏は思わず一人で叫んでしまうー。

「ーーこ、こんなこと、わたし、してない!」

けれどー
ネット上では、既に”この女の正体”とー、
彩夏の個人情報が晒されていたー。

友達から、バイト先からー、大学から電話が入るー。

「ーわたしじゃないんです!」と説明しても信じて貰えないー。

彩夏は困惑しながら家から飛び出し、
すぐに大学に向かうー。

がーー

「ーー!!!!」

一人ー、
またひとりーーー

”彩夏”と同じ顔をした女とすれ違ったのだー

「ーーちょ、ちょっと!」
彩夏は、そのうちの一人にたまらず声をかけたー。

「ーーあなたは、誰ですか!?」
とー。

「ーーーえ?ーーーーー」
振り返った”彩夏と同じ姿の女”は、ニヤリと笑みを浮かべるとー
「もしかしてお前”本物”ー?」と、
彩夏を指差しながら笑ったー

「ーーーーほ…ほんもの?」
彩夏は首を傾げるー。

”自分と同じ顔の女”が何を言っているのか、まるで理解できなかったー
”ほんもの”とは一体どういう意味なのかー。

「い、言ってる意味がわかりませんー!
 あなたが…あなたがコンビニで騒いだんですよね!?」

炎上している動画のことを言い放ち、
彩夏は”おかげでわたし、迷惑してるんですよ!”と、
怒りの形相で叫ぶー。

だがー、”彩夏そっくりの女”は笑いながら首を横に振ったー

「あぁ、それは横田(よこた)だよー。俺じゃない」
とー。

「ーーお、俺?? よ、横田ー? 誰?」
彩夏の頭の上に?がたくさん浮かぶー。

なぜ、目の前に”わたし”と同じ姿の人間がいるのかー。
なぜ、目の前にいる”わたし”は自分のことを「俺」と言っているのかー。
「横田」とは誰かー。

「ーーへへへー…まぁ、何も分からなくても仕方ないかー」
ニヤニヤしながら”目の前にいる”彩夏が笑みを浮かべるー。

本物の彩夏は困惑しながら
「ど…どういうこと…!?」と、声を上げると、
背後から別の女の声がしたー

「ーあれれ?それは誰だぁ?」
背後から現れたのもー”彩夏”だったー。

「ーーお、お前、横田?」
本物の彩夏と話していた方の彩夏の姿をした女が言うと、
「ーいや、僕は黄川田(きかわだ)だよ」と、苦笑いしなが言ったー

「ー分かんねぇよ!みんな同じ姿じゃ!
 判別用のシールでも貼っておこうぜ!」

「はははー、っていうか、そういう君こそ誰だよ!」

二人の彩夏がゲラゲラと笑うー。

「な…なに…どうなってるの?」
彩夏が困惑しながら呟くー。

だが、”二人の彩夏”は、
「ー全員、この姿で”色々悪さしてりゃ”誰が誰だか
 分からないし、警察も手を出せないだろ?」と、
ニヤリと笑うー。

「ーー何を言ってるの!?」
本物の彩夏からすればまるで意味が分からないこの状況ー。

そんな彩夏の反応を見て、
”黄川田”と呼ばれていた”彩夏と同じ姿”の女が笑みを浮かべたー。

「ー君には、同情するよー
 ”たまたま”あのゴーグルの餌食になっただけだからなー」

そう言い放つと、
そのまま二人は立ち去って行ったー。

「ーーーーー」
彩夏は、意を決してその二人を尾行したー。

まるで意味が分からないー。
”街中に”わたし”が増えているー?”

そう思いながら二人を尾行すると、
やってきたのは、街はずれにある廃工場でー

そこには、”彩夏と同じ姿の女”がたくさんいたー。

「ーーーー……!」
彩夏が表情を歪めるー

”自分”がクローンのようにたくさん存在するその光景は
恐ろしいものだったー。

「ーこれで、誰が誰だか分かりはしないー。
 警察も手出しのしようがないだろうー」

”彩夏”に変身している幹部らしき男が、
他の”彩夏”の姿をした者たちにそう告げるー。

この姿で悪さをしてー、
警察の手が及びそうになったら”変身”を解除するー。
さらにはー、この姿であれば女の快感を楽しむことまでできるー。

そんなことを”彩夏の姿”で口にする幹部の男ー。

本当は、色々な人間の姿に変身できれば
さらに色々な意味で悪用できたし、お楽しみもできたのだが、
変身ゴーグルが不良品だったため、黒霧工業のメンバーは
”彩夏”にしか変身することができなくなってしまったー。

「ーあ、そうだ、俺、このあと”約束”があるので、一旦元の姿に戻ります」

そう言うと、幹部の男が変身している彩夏が、
「おう」と、言いながら変身ゴーグルを手渡すー。

ゴーグルを装着して、解除スイッチを押すことで、変身を解除することができるのだー

「ーーー…ひっ……」
それを物陰から見ていた彩夏は思わずびっくりして、
後ずさった際に物音を立ててしまうー。

「ー!?」
”彩夏の偽物たち”が、一斉に彩夏のほうを振り向くー

咄嗟に逃げ始める彩夏ー。
あとを追いかけて来る偽物たちー

「ーーへへへへーなんだよ、尾行してきたのか?」
廃工場の階段付近で、さっきいた偽物の彩夏の一人が、彩夏の腕を掴むー。

「は、離して!」
泣き叫ぶようにして、”偽物”の腕を振り払うと、
バランスを崩した偽物が階段を転落していくー。

彩夏は、転落していく偽物を見つめながらも、
それを最後まで見ることなく、
黒霧工業のアジトになっている廃工場地帯から逃げようとするー

”わたしだらけー…
 なんでー?
 いったい、どうなってるのー!?”

そんなことを思いながら、走る彩夏ー。

がーー
目の前に”別の彩夏”が三人ほど姿を現しー、
邪悪な笑みを浮かべたー。

「ーー本物とヤるのも、楽しそうじゃね?」
偽物の一人が、そんな言葉を口にしながら
邪悪な笑みを浮かべるー。

彩夏は、あまりの恐怖に、
身体を動かすことすらできず、
その場に立ち尽くしたー

③へ続く

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コメント

気付いたら自分の偽物だらけに…☆
とっても恐ろしい状態なのデス…!

明日の最終回も、ぜひ楽しんでくださいネ~!
今日もありがとうございました~!

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