<憑依>バカ息子を救うため②~横暴~

事件を起こした息子を救うためー
そして、政治家としての自分の立場を守るために、
”憑依薬”を息子に与えた父ー。

しかし、美少女の身体を手に入れた”息子”は、
父の意に反して、好き放題していくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーねぇ、お金ちょうだい♡」
奈緒美が、学校の廊下で、
大人しそうな男子生徒に壁ドンをしながら
笑みを浮かべているー。

「え……え…」
おどおどした男子生徒がそう呟くと、
「ーじゃあ、わたしにエッチなことしたってー
 みんな言いふらしちゃおっかな?」と、
悪魔のように囁く奈緒美ー

「で…でもー…そ、それはー藤崎さんがー…」
男子生徒が怯えながら言うと、
「あァ?」と、奈緒美が可愛い顔を引きつらせて、
脅すような声を出すー。

「ーわたしはどうせ童貞のお前のために
 色々してやったんだろうがー。

 なんだその態度は?
 あ???」

奈緒美がそう言うと、その男子はすっかりとビビッてしまって、
そのまま持っていたお金を全て奈緒美に差し出したー

「ーんだよー全然持ってねぇじゃんー」
奈緒美はそれだけ言うと、
「ま、いっかー。これからもよろしく」とだけ言いながら
そのまま立ち去っていくー。

”奈緒美の豹変”ー
それは、すぐに学校中でも話題になったー。

先生に逆らい、横暴な態度を取りー、柄の悪い男子とつるみー、
身体の関係も何人とも持っているー
そんな、悪い噂ー。

それにー…
女子に対して妙にスキンシップをしてくるようになったこともー

「ーー奈緒美!」
奈緒美の友人、美香(みか)が、そんな様子を見かねて、
昼休みに校舎裏でくつろいでいた奈緒美を見つけて
声をかけるー。

「あ?ーーあァー美香ちゃん」
奈緒美は吸っていた煙草を隠す様子もなく、
箱を取り出すと「美香ちゃんも、吸う?」と、
煙草を差し出すー

「ふざけないで」
美香はそう言い放つと、奈緒美のほうを見つめて
「最近、何かあったの?」と、心配そうに尋ねるー。

「ーーなにかって?」
奈緒美は煙を吐き出しながらそう言うと、
「ーーーとぼけないで!最近の奈緒美、明らかに変だよ!」と、
美香が強い口調で言い放つー。

「ーー変?」
問い詰められて困っているー…と、言うよりかは
今、この状況を楽しんでいるかのような雰囲気で笑う奈緒美ー。

「ーー自分でも分かってるでしょ!
 そんな風に煙草を吸ったり、授業も急に不真面目に受けるようになったしー
 そのー……男子と色々なことをしてるって噂もあるし!」

美香がそう言うと、
奈緒美は笑いながら「ーこれが本当のわたしだから!」と、
嬉しそうに言い放つー

だが、その言葉にムッとした美香が、奈緒美の手から
煙草を取り上げてそれを地面に投げ捨てると、
強い口調で言い放ったー

「ねぇ!奈緒美!本当にどうしちゃったの!?
 自分のしてること、分かってるの!?!?
 何があったのか知らないけど、自暴自棄になってるようにしか
 見えないよ!」

美香が悲しそうにそう叫ぶー

「ークククー自暴自棄…ねぇ」
奈緒美は思わず笑ってしまうー。

まぁ”バカども”に憑依のことなんて分かるはずがないー。
周りから見れば、この女が自暴自棄になって
おかしくなったようにしか見えない、かー。

奈緒美に憑依している正信はそう思いながら
美香のほうに、鋭い視線を向けるー

「な、な、なによー…」
美香も、そんな奈緒美の視線に困惑して
少し引くような態度を見せると、
奈緒美は美香に顔を近づけて囁いたー

「お前みたいな気の強い女ー好きだよ」
とー。

「ーえっ!?」
美香がビクッとして、悪寒のようなものを感じるとー、
奈緒美はそのまま「わたしの彼女にならない?」と、
ふざけた口調で言い放つー

がーー
心配して声をかけたのに、まともに聞く様子もない
奈緒美に腹を立てた美香は、奈緒美の頬に咄嗟にビンタを食らわせたー

「ーーっっ」
ビンタされた奈緒美が少し驚いたような表情を浮かべるー。

「わたしは奈緒美のこと心配してるのに!
 …そういう態度するんだったら、もういいよ!
 いつまでもそうやって、自暴自棄になってなよ!」

美香はそう言い放つと、涙目でそのまま立ち去っていくー。

一人残された奈緒美は「あぁ、いいねいいねー」と、
ボソボソと呟きながら、笑みを浮かべたー。

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夜ー。

正信が元々よく遊んでいた”ワル仲間”と
ゲームセンターで騒いでいた奈緒美ー。

もちろんーその”ワル仲間”には
自分が正信だとは伝えておらずー
”美少女”の身体を利用して、
すぐに仲間に入り込むと、
まるで”姫”のように扱われながら
悦に浸る日々を送っていたー。

親が心配するのも無視して、
欲望の限りを尽くしていた奈緒美のもとに
男がやってきたー。

「ーーーんだよ」
奈緒美が、ワル仲間から少し離れた場所で
その男のほうを見つめるー

やってきたのは、大物政治家であり、父親である紀之の”秘書”である男・磯島だー。

どうやら、磯島は”伝言”を伝えに来たようだー。

「ーあまり、やりすぎるな、とー、先生はそう仰ってますー」
父・紀之からの伝言を伝える磯島ー。

しかし、奈緒美は笑いながら
「磯島さんだって、こんな可愛い子になれば、分かるさー」と、
笑いながらそう言い放つー。

「ーあ、そうだー
 磯島さんも、ヤラせてあげようか?」

奈緒美がクスクス言いながらそう言うと、
秘書の磯島は「私は結構です」と、淡々と即答したー

「チッー、つまんない男」
奈緒美はそれだけ言うと、まぁいいや、と、言葉を続けるー

「親父に言っといてよ
 俺は俺のやりたいようにするーってさ」
と、奈緒美はそれだけ言うと、そのまま笑みを浮かべながら
ワル仲間の方に戻っていくー。

秘書の磯島は少し戸惑うような表情を浮かべながらも、
それ以上、奈緒美に声をかけることはなく、
そのまま立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお前は、気に入られているからなー」

奈緒美に憑依した正信の父親、紀之は
他の大物議員たちと会食をしていたー。

その中の一人、葉桐が笑みを浮かべながらそう言い放ったー

「いやいや、俺なんてとてもー」
紀之がそう言いながら首を振るー。

葉桐は、まるでサンタクロースのような
穏やかな雰囲気のおじいさん、という感じの議員だがー、
派閥を率いる大物議員の一人で、
優しそうなおじいさん、とも言えるような風貌の裏で
恐ろしい策謀を張り巡らせている策略家だー。

紀之は心の中で、そんな彼のことを”サタンクロース”と呼んでいるー。

「ーーーまぁ、でも、次期総理大臣は君しかいないよ。
 世間では私という者もいるが、
 私なんてとても器じゃない。」

葉桐がそう言いながら笑うー。

”あんたが次期総理になる気満々のくせにー”
そんな風に思いながら、紀之はそれを顔に出さずに
話を続けるー。

そして、会食が終わると、
息子の正信から連絡が入ったー

”親父ー ちょっと金貸してくんないかな?”

聞こえてくるのは可愛らしい声ー。
しかし、その内容は以前と変わらないー

「またか」
紀之が呆れ顔でそう言い放つと
”いいじゃんいいじゃん”と、奈緒美は悪びれる様子もなく、
言葉を呟くー

”いやぁ、ほら、この身体になってから
 ”俺の親父は菊池紀之だぞ!”ができなくなっちゃってさぁ
 色々不便なんだよ”

奈緒美のそんな言葉に、
紀之は「そういうことはやめろと以前から言ってるはずだ」と、
言葉を口にするー。

息子の正信が”憑依”してもなお、態度を改める気配が
ないところに少し腹を立てた紀之は
「ー今のお前にやれる金はない」と、言い放つー。

「ーそれにお前は今、高校生で親もいるはずだー。
 あんまり目立つようなことはするもんじゃない」

それだけ言い放つと、
奈緒美は紀之にも聞こえるように、大きく舌打ちをしたー

”あ~あ、そうかよ。
 でもさ、親父ー
 この身体なら、親父を破滅させることだってできるんだぜー?

 親父の仕事にとっては特にー
 俺みたいな女子高生と一緒にいたりしたら、やばいもんな?”

脅すような口調の奈緒美ー。

「ーな、なんだと…正信ーまさか…俺を脅すのか!?」
紀之は”信じられない”という様子でそう声を発すると、
奈緒美は”へへへ…どうするお父さん?”と、ふざけた口調で呟いたー。

「ーー正信ー…おまえー…」
呆然とする紀之ー。

怪物が、更なる怪物にー…
紀之は、そう思わずにはいられなかったー。

息子の正信のことは、今でも子として愛しているー。
だが、その愛が、正信をどんどん歪めてしまっているのではないかー。

そんな風に思わずにはいられないー。

”それにさー、親父が俺に色々してくれるのは、
 どうせ、”自分を守るため”だろ?”

奈緒美が敵意を込めた口調で言うー。

「ーち、違う!俺はお前のためにー!」
紀之はそう叫ぶー。

いいやー。
確かに”自己保身”の意味も全くないと言えば嘘になるー。

しかし、それでも、正信のことを大事に思っていることも
嘘ではないー。

その想いを素直に伝えると、
奈緒美は笑ったー

”だったらさー、”可愛い子供”のためにお金、くれるよね?”
悪女のようなゾッとする口調ー。

紀之は困惑しながらも”わかったー”と答えて
秘書の磯島を通して、奈緒美に金を送金したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーへへへへへ…親父もチョロいぜ」
奈緒美は笑みを浮かべながら、金を手に、
夜遊びを繰り返すー。

”奈緒美の両親”は、突然おかしくなってしまった娘を前に
困惑し続けている状態ー

学校にも行かなくなり、夜遊びを繰り返す日々ー。

”元の正信”と何も変わらない、荒れ果てた生活ー

「ーーへへへへへー”わたし”の身体、最高だろ?
 ほら、もっと金をよこせよ」

自分の身体を武器に、遊び周りー、
金を稼ぎまわる日々ー。

”ヤバくなったら”
父親である紀之を頼り、
紀之の力で危機を乗り越えるー。

そんな日々を続けていくー。

奈緒美の面影は全く無くなりー、
大人しそうな奈緒美は、別人のように派手な見た目に変わってしまったー。

もう、街で同級生だった子がすれ違っても
それが奈緒美だと気付けないぐらいにー。

そんなある日ー

父の紀之は、自分の事務所にやってくると、
驚きの表情を浮かべたー。

”菊池紀之の息子が、女子高生に憑依!?”

そんな、週刊誌の記事が出回っていたのだー
ただちに、秘書の磯島に相談する紀之ー。

週刊誌の記事によれば”本人”がそう答えたのだと書かれているー。

「ーーーくそっー…想像以上のバカ息子だー」
紀之は頭を抱えるー。

まさか、”自分から”憑依のことを明かすなどとー。

「ーーご安心ください。
 ”憑依”なんて非現実的な話は
 週刊誌の絵空事で終わりますー。
 このまま相手にしない姿勢を貫きましょう。

 現実的なスキャンダルならともかく
 ”憑依している”なんて記事を鵜呑みにする読者は
 まずいないでしょう」

秘書・磯島のその言葉に、
戸惑いながらも頷く紀之ー。

そして、その日の夜ー。
”奈緒美”から、また連絡があったー

”親父ー、そろそろ金くれよ”
奈緒美が笑うー。

その言葉に、紀之は
「ーー自分が”憑依”してること、誰かに話したのか?」と
確認するー

しかし、奈緒美は笑いながら
”え?あ~~~、話したかもしれねぇけど、話してねぇかもー
 よく覚えてないや”と、ふざけた口調で答えるー。

「ーふざけるな…!」
紀之は、怒りを露わにするー。

「ー週刊誌にお前の記事が載った!
 もし、憑依が明るみに出れば
 せっかく自分の身体を捨てて殺人の罪を消したのに、
 また色々騒がれて
 お前も自由に過ごせなくなるんだぞ!

 せっかくー、せっかく
 他人の身体を奪わせてまで、
 お前を自由にしてやったのに!
 お前はその自由を捨てるのか!」

紀之がそう叫ぶと、
奈緒美は”チッ”と、舌打ちをしたー。

”うるせぇなー
 そん時はまた”違う身体”に移動すりゃいいだろ?
 あの薬、またよこせよ”

奈緒美が反抗的な態度を取るー

「なっ…」
紀之は思わず呆然としてしまうー。

”なんだよ?
 この女の身体がダメになったら、また別の女に憑依すりゃいい。
 それだけだろ?
 頭使えよ、親父ー”

奈緒美のその言葉に、紀之は
”息子は、完全に怪物になってしまった”と、
恐怖すら覚えたー。

「ーーひ、憑依薬は、そう簡単に手に入るものではー」
紀之がそう言い放つと、
”うるせぇな!手に入れろよ!次期総理大臣なんだろ?
 そのぐらい、やれよ!”
と、奈緒美が鬼のような口調で怒鳴りつけて来たー

”この身体を使って、親父を全力で破滅させてやることだって
 できるんだぞ!!
 あァ?”

女子高生相手と通話しているとは思えないぐらいに
恐ろしい声が響いてくるー。

紀之は「わ、わかったー、落ち着けー」と、
身体を震わせながらそう答えると、
憑依薬を入手しておくことを約束して、
そのまま電話を切ったー。

「ーーーー……」
電話を終えたあとも、紀之はイスに座ったまま、
憑依薬を渡したことで、息子がさらに横暴になってしまったことにー
恐怖と後悔を感じながら、
身体を小刻みに震わせ続けたー…。

③へ続く

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コメント

どんどんエスカレートしていく息子の行動…!

憑依薬を渡すべきではなかったですネ~…★!

次回が最終回デス~~~!!
今日もありがとうございました~!

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