小さい頃からよくしてくれたおじさんが
経営する居酒屋に立ち寄ったOLー。
しかし、そんな中、
酔っぱらった見知らぬ男と身体を入れ替えられてしまい…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー…」
見知らぬ男・栄一の身体になってしまった勝美は
不安の表情を浮かべながら、
昨日立ち寄った居酒屋に向かうー。
だが、武彦の経営する居酒屋は
夕方からー。
まだお店が開いている時間ではなく、
入口の扉は固く閉ざされていたー。
「ーーー……す、すみませんー
誰か、誰かいませんかー」
困惑の表情を浮かべたまま
扉をノックする栄一(勝美)ー
昨日、泥酔状態の栄一の身体になってしまった勝美は
”入れ替わった”ところまでは覚えていても、
その後のことは全く覚えていない状態だったー。
”わたし”は今、何をしてるのー?
そんな不安も膨らんでいくー
昨日の入れ替わった直後の微かな記憶を思い出すー
”わたし”は、笑っていたー。
勝美になった栄一が、
笑っていたのだー。
悪意に満ちた笑みを、その顔に浮かべてー
「ーーはぁ…おじさんのお店開くの、
まだあと数時間あるしー…
どうしよう」
栄一(勝美)が途方に暮れるー。
こうしている間にも
この人に、変なことをされているかもしれないー。
そう思っただけで、不安があふれ出しそうになりー、
今すぐにでも”何とかしなくちゃ”と、いう思いが
強まっていくー。
「ーーーはぁ」
しかし、お店が開いていない以上は仕方がないー。
とにかく、思い当たるところに連絡をしたり、
思い当たるところに足を運んで
”わたし”を探すしかないー。
栄一(勝美)がそんな風に思いながら、
とぼとぼと、その場から離れようとしたその時だったー。
「ーーあんたー」
声がして、栄一(勝美)が顔を上げるー。
「ーーあ、お、おじさん…!」
店の準備に来たのかー、
理由は分からなかったが、
偶然、店主の武彦と鉢合わせした栄一(勝美)ー。
しかしーー
「お前…どのツラ下げてここに来たんだ!」
武彦が敵意を剥き出しにして、
栄一(勝美)に対してそう言い放つー。
当然と言えば当然の反応だー。
武彦からしてみれば、
”小さい頃からよく知る勝美”に
いきなりキスをした相手にしか見えないのだからー。
「ーーーあ、え、えっと、ま、待ってくださいー。
わ、わたし、わたしなんですー」
栄一(勝美)が慌てて言うと、
武彦の表情はさらに険しくなっていくー
「ーーー…な、何を言ってるんだー
まさかまた勝美ちゃんに何かするつもりじゃー」
武彦がそんな言葉を吐き出すー。
「ち、違うんですー…お、おじさん!本当にわたしー…
わたしが勝美なんです!
身体がこの人と入れ替わってしまってー」
栄一(勝美)がそう叫ぶー。
「ーーーーーーまだ酔ってるのかー?
いい加減にしろ」
うんざりした様子で武彦はそう言いながら、
店の準備のためだろうかー。
店の入り口の鍵を開けると、
そのまま店内に入っていくー。
「ーおじさん…!お願い…助けて!」
栄一(勝美)がなおもそう叫ぶが、
武彦はため息をつきながら、
栄一(勝美)のほうを見つめると、
「ーーー俺にも我慢の限界があるー。
警察を呼ばれたくなければ、とっとと帰るんだな」と、
不機嫌そうに言い放ったー。
「ーーー…」
栄一(勝美)は、そんな武彦の言葉に
困惑の表情を浮かべながらも、
ふと、テーブル席の一つが目に入り、
そこに勝手に座ったー
「ーおい、まだ準備中だぞ!」
武彦がうんざりとした様子で叫ぶー。
だが、栄一(勝美)は、気に留める様子もなく
”ある言葉”を口にしたー。
「ーーここ、覚えてます?」
とー。
少し顔を赤らめながらー。
「ーあん?」
武彦が店の準備をしながら、表情を歪めると、
栄一(勝美)はさらに言葉を続けたー。
「ーここ、わたしが小さい頃にトイレが我慢できなくなって
お漏らししちゃった座席ですー」
栄一(勝美)の言葉に、
武彦は少し驚いたような表情を浮かべるー。
「ーーー…」
恥ずかしそうにしながら栄一(勝美)は、
「ーー”トイレ行きたかった”って泣いて、おじさんにも
親にも迷惑をかけちゃったことー…今でもよく覚えてます」と、
そう言葉を続ける。
そうー、
栄一になってしまった勝美は、
”勝美と家族ぐらいしか知らないであろうこと”を口にしたのだー。
”本人”でなければ、分からないぐらいのー
具体的なー
しかも”絶対に他人に話したくないような黒歴史”
「お、おいー…ま、まさか本当にー?」
困惑の表情を浮かべる武彦ー
「本当に、勝美ちゃんなのかー?」
その言葉に、栄一(勝美)は泣きそうになりながら頷くと、
「おじさんー…わたし、どうすればいいですか?」と、
困り果てた表情を浮かべながら
武彦のほうを見つめたー。
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髪型を変えてー
髪の色を変えてー、
アクセサリーで雰囲気を変えてー
メイクも、服の雰囲気も変えたー
「ーふふっ… マジで別人だなー」
勝美(栄一)は笑みを浮かべるー。
「ー探しても無駄さー
お前の身体は俺好みにカスタムしたー
そう簡単に見つからねぇよ」
勝美(栄一)はそう呟くと
”俺好みの勝美”になった勝美の姿を見て
笑みを浮かべるー
「ーーへへ…ま、これ以上この辺にいると
見つかるかもしれないからなー
そろそろ俺はーー
いやーー
わたしは遠くに行っちゃおっかな♡」
勝美(栄一)は、言葉遣いで遊びながら
嬉しそうに興奮混じりの笑みを浮かべるとー
そのまま、その場所から移動を始めたー。
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「ーーーーありがとうございますー」
栄一(勝美)は、武彦から
”いつものパフェ”を出してもらって、
安心した様子でそう言葉を口にしたー
「しかしまさか、勝美ちゃんとその男が入れ替わってたなんてー…
まんまと騙されてしまったー
本当にすまんー」
武彦は悔しそうに呟くー。
栄一(勝美)の話を総合すると、
二人は昨日、キスをした時点で既に入れ替わっていて、
その後、勝美が店を出た時点では、既に勝美の中身は
勝美ではなかったことになるー。
”「だ、大丈夫ですー おじさんー」
「ーいや、でも」
「たぶんこの人、酔いつぶれてるだけだと思いますしー」
「ーーごめんな、勝美ちゃんー
後はこっちで何とかしておくから」
「ありがとうございます」”
そんな会話をしたー。
確かに、妙に、急に余所余所しく、慌てて出て行ったような気はしたー。
動揺していたのだろう、と
思っていたものの、
実際には既に勝美は入れ替わっていたのだー
「くそっ!あの野郎ー
勝美ちゃんをこんな目に遭わせるなんてー」
武彦がそう言葉を口にしていると、
栄一(勝美)がパフェを食べる手を止めたー
栄一(勝美)が表情を歪めているのを見て、
武彦が「ー大丈夫か?」と、不安そうに言葉を口にすると、
栄一(勝美)は戸惑いながら言葉を口にしたー
「なんか…いつもと”味”が違ってー」
とー。
「味?」
武彦はそう言いながら
「ごめんごめんー急だったから、何か間違えたかも」と、言いながら
パフェを手に取り、味見をするー。
だが、味は間違いなく、いつも自分が作るパフェ
そのものだったー
「ーーあれ…いつもと変わらないなー」
武彦はそこまで言うと、
栄一になった勝美のほうを見てハッとしたー
「ーー…あ、勝美ちゃんー
もしかして”身体”が違うからじゃないか?」
とー。
「ーえ」
栄一(勝美)が、困惑した表情を浮かべるー。
武彦は、そんな栄一(勝美)に対して
「いやほら、人間って一人ひとり味覚が違うだろ?」と、
言葉を続けるー。
「ーーだから今の勝美ちゃんは、そいつの味覚なんじゃないかって」
武彦がそう言うと、
栄一(勝美)は「あ……たしかにー」と、頷くー。
そうー
栄一は甘い物が嫌いだったー。
その味覚を持つ身体になったため、
”いつものように”パフェを美味しく感じないのだー。
「ーーー…すみませんー…せっかく作ってくれたのにー」
栄一(勝美)が申し訳なさそうに言うと、
武彦は「とにかく、身体を取り戻す方法、探さないとな」と、
神妙な雰囲気にならないように、明るくそう言葉を口にしたー。
「ーーーー」
負けず嫌いな一面もある栄一(勝美)は
少しムッとして、またパフェを食べ始めるー。
店主の武彦にムッとしたわけではないー。
”この身体の元の持ち主”
つまり、栄一にムッとしているのだー。
「ーおいおいー、無理しなくていいんだぞ?」
武彦が笑いながら言うと、
栄一(勝美)はますますパフェを食べる速度が上がっていくー
「ーははは…やっぱ身体が変わっても勝美ちゃんは勝美ちゃんだなぁ
昔からそうだー」
と、懐かしそうに笑う武彦ー
やがて、パフェを食べ終えると、
「今度は、わたしの身体で、ちゃんとおじさんのパフェを
美味しく食べたいですー」と、言葉を口にしたー。
「ーーーはは、そうだな。
まずは身体を取り戻さないとな」
武彦がそう言うと、
栄一(勝美)は、ふと、そわそわしながら
周囲を見渡したー
「ん?どうした?勝美ちゃんー」
武彦もそれに気づき、そう反応を示すと、
栄一(勝美)は少し恥ずかしそうに言葉を続けたー。
「あ…あの…
お…お手洗いに行きたくなっちゃったんですけどー」
その言葉に、
武彦は「ト、トイレかい?」と、困惑するー。
トイレはお店にあるー。
だがー、武彦は栄一(勝美)が何故戸惑っているのかを
理解したー
「ーーど、ど、どうすればー…
こ、この人の…その… 触りたくないしー」
栄一(勝美)が気味悪そうに言うと、
武彦は「で、で、でも、漏らすわけにはいかないだろ?」と、
困り果てた様子で言うー。
「うわぁ~~…いやだ~…最悪ー」
栄一(勝美)が、愚痴を口にしながら
トイレの方に向かうー。
「ーーー………」
トイレの前に立つ栄一(勝美)ー
しかし、正直”立ってする”なんて、考えつかないー。
いつも、当たり前のように座って、
当たり前のようにトイレを済ませて来たー。
男の人は、どんな感じで、トイレを済ませているのかー
絵面では知っていても
実際に立って用を済ませたことのない栄一(勝美)は
困惑していたー。
「ーーーー…お、お、おじさん!男の人って座ってもできるんですよね!?」
栄一(勝美)がトイレから顔を出してそう叫ぶと、
武彦は「大丈夫だけど、女性とは感覚が違うかもしれん!」と、返事を返すー。
正直、男である武彦には、
”女性として座ったこと”などないから、
感覚的な部分は分からないし、
女である勝美には、男の人の身体で、いつもと同じように
トイレを済ませられるのかどうかも、イマイチ想像が出来なかったー
「ひぇぇ…」
栄一(勝美)は、ズボンを下ろして露わになった
栄一のそれを見て、悪寒を覚えるー。
勝美からしてみれば、トイレの床に直接手を触れるぐらいの
気持ち悪さだー。
「ーーー……」
しかし、無情にも栄一の身体の尿意はさらに膨れ上がっていき、
もはや、それに抗うことも難しい状態になりつつあるー。
「ーーんっ…」
目を閉じて、栄一(勝美)は、栄一のソレに触るー。
びくっとして手を離してしまうも、
もうどうにもできないー
「あぁ…もうー…嫌だー」
そんなきおとを呟きながら栄一(勝美)は、
どうやって済ませれば良いのかもイマイチ分からないまま、
栄一としてトイレを済ませたー。
”出る時の感触”もやっぱり違ったー。
できればー
もう、栄一としてトイレに行きたくないー。
そう思いながらトイレから出ると、
何度も何度も水道で自分の手を洗い始めたー
「はははー…まぁ…気持ちは分からないでもないかー」
武彦は、そんな栄一(勝美)の姿を見つめながら
少しだけ苦笑いすると、
「ーーさて…」
と、栄一(勝美)の方に向かって声をかけるー。
「ー勝美ちゃんの身体、どうにかして、取り戻さないとな」
その言葉に、栄一(勝美)も頷くー。
だが、栄一は常連客でもなんでもないし、
武彦もその素性を知らないー。
勝美になった栄一が”どこ”にいるのかも分からない状態ー。
「ーーー……そうは言っても、どうすればー?」
途方に暮れる栄一(勝美)を見て
武彦も困惑の表情を浮かべたー。
<後編>へ続く
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コメント
土曜日枠のお話なので
続きはまた来週デス~!
最終回の次回では
どんなことが起きるのか、
ぜひ楽しみにしていて下さいネ~!
今日もありがとうございました~!
コメント
武彦おじさんが理解してくれたのはいいですけど…
勝美は無事に自分のカラダを見つけることができるのか…
自分のカラダに戻ることができるのか…
まったく先が読めませんっ!
来週の土曜日が待ち遠しいのデスぅ~~~っ★
お話へのコメントありがとうございます~!☆
次回がついに最終回ですネ~!☆
無事に自分の身体を見つけてハッピーエンドか、
それともバッドエンドか、
ドキドキしながら待っていて下さいネ~!