兄のことを毛嫌いする妹。
ある日、兄はそんな妹を洗脳して、言いなりにしてしまうー。
しかも、彼は
”ただ洗脳するだけではつまらない”と、
洗脳した妹を時々”正気に戻して”感想を聞くという
悪趣味な行動に走り始めたー…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
笹谷 秀明(ささや ひであき)は、
大学帰りに立ち寄ったお店で、
散財したー。
正直、今月はもうお金を使いすぎているのだが、
それでも買わざるを得なかったー。
何故なら、大好きなアニメの美少女キャラの
フィギュアが偶然、大量に入荷していたからだー。
思わずその場で声を上げた秀明は、
4体のフィギュアを全て購入ー、
意気揚々と自宅へと向かっていたー。
”中古”とは言え、フィギュアの箱自体は
未開封の様子だったし、
それであれば問題ない。
フィギュアやおもちゃ系の商品は
”未開封”のまま売却されることも多いー。
”開封して飾る”主義の秀明からすれば、そういう人の存在は
とても助かる存在で、
いつもこうして中古のフィギュアを購入しては、
それを家に飾っていたー。
「まぁ、本当は新品買ってあげたいけどー…
金にも限界はあるからなー」
そう思いながら、ようやく自宅の前にたどり着き、
玄関の扉を開けるー。
「ただいま」
自宅に入ると同時に、淡々とそう呟くー。
だがー。
偶然、直前に帰宅していた高校生の妹・美晴(みはる)と
目が遭ってしまうー。
「ーは…なにそれ?」
美晴が、露骨に嫌悪感を丸出しにしながら言うー。
美晴の視線は、透明のレジ袋に入っている
美少女フィギュアの箱に釘付けになっているー。
「ーへへへへへー
あおいちゃんと、めいちゃんとーー、あとはー」
「そんなこと聞いてない!」
キャラクターの名前を説明し始めた秀明の言葉を遮るようにして、
美晴がそう叫ぶと、
秀明は「じゃあ、なんだよ?」と、不満そうに
美晴のほうを見つめるー。
「ーー”なんだよ”じゃない!
そんなもの、ヘラヘラしながら平気で持って帰ってくるなんて
おかしいんじゃないの?」
美晴のキツイ言葉に、秀明は
「し、趣味は人それぞれだろ!」と、反論するー。
兄・秀明と妹・美晴ー。
昔はそれなりに仲良しだったのだが、
秀明が高校生、美晴が中学生になったころぐらいから、
その間柄は険悪となり、
今では”最低”の間柄だったー。
こうして顔を合わせれば言い合いばかりー。
秀明は、アニメや美少女キャラなどを好む
インドア系の趣味を持つ男子大学生ー。
一方の美晴は、とにかく出かけるのが好きで、
友達も多く、おしゃれなタイプの女子高生ー。
二人は、性別だけではなく、
何から何まで正反対と言えたー。
それ故だろうか。
二人はこうして喧嘩ばかりしているー
「あんた、キモすぎ」
美晴が嫌悪感を隠そうともせずに呟くー。
「ーーーお、おい!フィギュア作った人に失礼だぞ!」
声を上げて反論する秀明ー。
「ー勘違いしないで。
キモイのはフィギュアじゃなくて、あんた」
美晴が睨むようにして言うと、
そのまま階段を上がっていくー。
「ーくっそ~~~!…好き放題言いやがって!」
美晴の背中に向かって指を立てる秀明。
大学の友達からは、”可愛い”などと言われるが、
秀明からすれば中身は最悪ー。
口も悪いし、
何より愛想もないー。
それでいて、高校では人気者だと言うのだから余計に腹が立つー。
秀明は、帰宅早々イヤな気分になりながら、
そのまま母親と少し雑談を交わすと、自分の部屋へと
戻って行ったー。
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夜ーーー
「ーーう~~~る~~~さ~~~い!」
妹の美晴が怒りの形相で部屋をノックしながら叫ぶー。
「うるさいのはお前だろ!」
秀明がそう叫び返すと、
妹の美晴は「エロいやつ、隣の部屋まで聞こえる音量で流すとか、超迷惑!」と、
怒りの言葉を口にするー。
ちょうど、秀明はHなゲームを遊んでいる最中で、
平気でそれなりのボリュームで遊んでいたー。
ついさっき、そういうシーンを見ていたため、
喘ぐような声が隣の部屋に聞こえたのだろうー。
「ーお前より色っぽいし、いいだろ!」
秀明が言い返すー。
「ーーホント、キモすぎ!常識もないし、あり得ない!」
妹の美晴が、部屋の外からそんな言葉を投げつけて来るー。
「ーーうるせー!お前なんかより二次元の妹の方がよっぽど可愛いし、
お前はもう黙ってろ!」
秀明が、そう反撃するー
「は~~~~????
あんたなんか、画面に頭突っ込んで、そのまま二次元の世界に
行っちゃえばいいし!
とっとと三次元から消えて!」
美晴も反撃するー
こういう言い合いは、日常茶飯事ー。
秀明は確かに他人の迷惑を考えることができないタイプで、
自分勝手な性格の持ち主だし、
妹の美晴もワガママな性格の持ち主で、
人を馬鹿にするような発言は比較的多いー。
そんな二人が衝突すると、いつもこうなってしまうー。
「ふん!」
美晴は不満そうに兄の部屋の前で苛立ちを露わにすると、
「ーもう何度も何度も何度も何度も何度も
色々注意してるよね??
いい加減にしろっ!」と、扉を思いきり叩いたー。
「ーへへー、うるせぇノイズ野郎!」
秀明の暴言も続くー。
妹の美晴は、度々秀明の迷惑行為を指摘しているー。
確かに、この点においては兄の秀明に非があり、
隣の部屋に漏れる喘ぎ声もそうだし、
他にも色々な迷惑行為を繰り返しているー
トイレでお楽しみをして、それを流さずに放置していたこともあり、
美晴は、すっかりうんざりしているー。
そして、ついにその怒りが爆発してしまったー。
その翌日ー
「はっ…?」
帰宅した秀明は驚くー。
部屋にあったフィギュアやグッズの一部が無くなっているー
「は…????嘘だろー…?」
呆然とする秀明ー。
「ーー…おいおい…ふざけんじゃねぇ!」
秀明は、以前
”いい加減にしないとわたしもキレるから!”と妹に言われていたことを思い出すー
”あんたの部屋のもの、そのうち捨ててやるから!”とか、
そんなことを言っていたー。
それを思い出した秀明は、すぐに妹・美晴の部屋に飛び込んだー
「ーおい!クソ野郎!俺の部屋のもの、どこにやった!?」
秀明が叫ぶー
美晴は机に向かって勉強しながら、愛想なく「捨てた」と、だけ呟くー。
「す、す、す、捨てたぁ!?ふざけんなよテメェ!」
秀明が怒りの形相で叫ぶー。
振り返った美晴は「あんたがいけないんでしょ!」と、叫び返すー。
「いつもいつもいつも自分勝手なことばかりして、
迷惑ばっかりかけて、キモいことばっかして!」
美晴の反論に、カッとなった秀明は妹の頬を思いっきり叩いてしまうー。
叩かれた美晴は目に涙を浮かべながら
「ーーあんたなんか、消えてしまえ!」と、怒り狂った表情で叫んだー。
ここまで壊れてしまった兄と妹の絆は、もう修復できないー。
妹の美晴が、兄に叩かれたことを泣きながら母親に報告しー、
秀明は叱られたー。
グッズを捨てられたことも報告したものの、
秀明の”日頃の迷惑行為”には母親も頭を悩ませていて、
結局、そのまま叱られることになったー。
「ーーわたしも、美晴も、あなたの趣味に口出しをするつもりはないの。
でも、人に迷惑をかけることは、やめなさいー」
母親の言葉に、秀明は悲しそうな表情をしながらー
そのまま部屋へと戻ったー。
確かに、迷惑行為は多いー。
大学でも、友達から”お前は人のことを考えない”と、よく指摘されているぐらいで、
性格に問題があるのは事実なのだろうー。
だがーーー
「ーーー許せねぇー」
誰から指摘されようと、”反省”という言葉を知らない秀明は
怒りの形相で、ネットを見つめ始めたー
”妹への仕返しの方法”ーー
そんな言葉を何度も何度もネットで検索していくー。
そしてーーー
ついに、秀明は見つけてしまったー。
自分を毛嫌いする生意気な妹に対する”復讐”の方法をー
それがーー
”洗脳”だったー。
”人を洗脳する魔力を帯びた指輪”
それをはめて、相手に対して指を向けるだけで、
その相手を意のままにすることが、できるのだと言うー。
最初は”んなワケあるか!”と、秀明は自分でも思ったー。
だがー、
そのサイトに書かれていた説明やレビューを見ているうちに
”これはもしかすると本物なのではないか?”と、思い始めてー…
やがて、それを注文した。
もしも本当に、アイツを洗脳することができればー
最高の復讐になりそうだ、と、そう思いながらー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「ーなぁなぁ、美晴ー
お前、俺のことどう思ってる?」
ニヤニヤしながら秀明がそう言葉をかけるとー
美晴は不快そうに「は?」と言いながら振り返るー。
「ーへへへー俺のことどう思ってるか、って聞いてるんだよ」
秀明がそう言うと、
美晴は「な、何なの急に?キモすぎー」と、不快感を
露わにするー。
「ーーいいから教えてくれよ。
大好き・好き・普通・嫌い・大嫌いー
5択の中から選んでくれればー」
「ーーー答える必要なんてない。無回答」
美晴は5択の中から選ばずに
そう言い放つと、そのまま部屋の方に向かっていくー
「ーークククククー
あっそうー」
秀明はそう言いながら、笑みを浮かべるー。
そしてー
部屋の扉が閉じたのを見つめると、秀明はニヤッと笑ったー
秀明の手には、先ほど届いた指輪ー。
”マジかー”
秀明はそう言いながら、”人を洗脳する魔力を帯びた”指輪を見つめるー。
”これ、本物じゃねぇか…!”
ニヤリと邪悪な笑みを浮かべるー
笑わずにはいられないー。
既にー
秀明は美晴のことを洗脳していたのだー
指輪をはめて、
美晴に気付かれないように美晴を指さし、
”5択の質問をしたら、「ーーー答える必要なんてない。無回答」と
答えてそのまま部屋に向かう様に”
とー。
普段の美晴の性格的に、あの5択の質問をすれば
そういう言い方ではなく、完全無視か”嫌い”とハッキリ言われるか、
キモイと言われるかのどれかだー。
しかし、先ほど美晴は”秀明が心の中で指示した通り”の答えをしたー。
説明書によれば、相手を操り人形のようにするのも、
思想を書き換えるのも、自由自在で
色々な応用方法があるようだー。
「ーーへへへへへへ」
指輪をはめたまま、指をパチっとはじくことで、
相手を元に戻すことができるーとも書かれているー。
秀明は美空の部屋の前でパチっと指をはじいて、
そのまま美晴の部屋に勝手に入り込んだー
「ーー美晴ー」
秀明が突然部屋に入って来たことに、美晴は
「はぁっ!?!?!?勝手に入ってこないで!」と、
怒りの形相で叫ぶー。
「ーはははー
そんなこと言うなってー。
今日はお前にとっておきのプレゼントがあるんだー」
”この指輪は本物だ”
そう確信した秀明は、ニヤニヤと笑みを浮かべながら
美晴にそう言い放ったー。
「ーープレゼントー?いらない!出てけ!」
美晴が机にあった教科書を秀明の方に投げつけて来るー。
「ーまぁそう言うなって」
秀明はそれだけ言うと、
「お前に俺とキスする権利をやる」と、偉そうな口調で言い放ったー。
美晴はあまりの意味不明さに「はぁ!?!?」と大声で叫ぶー
「誰があんたみたいなキモイやつとキスなんてするわけ!?
キモすぎ!早く出てけ!消えて!」
美晴がそう叫ぶと同時にー
秀明は笑みを浮かべながら、美晴を指さししたー。
”お前は、俺のことが好きで好きでたまらない”
”キスしたくてたまらないー”
”でも、お前は俺の命令に絶対忠実ー”
そんなことを、念じながらー
「ーーー…!!」
美晴の表情が歪むー。
秀明はにやりと笑みを浮かべると、
「ーーーふ~ん…キスしたくないならいいよ
じゃあな」と、わざと冷たい口調で呟くー
「ま…ま…待って!」
美晴が秀明を呼び止めるー。
秀明は邪悪な笑みを浮かべながら立ち止まると、
「ー何?」と、あえて不愛想に言い返すー。
「ーき…キス… キス…したい!
あんたと…キスしたい!」
美晴のそんな言葉に、
秀明はニヤッと笑いながら「あんた?」と、不満そうに言うー。
「ー”お兄ちゃん”だろ?」
秀明がそう言い放つと、
美晴は「お…お兄ちゃん!わ、わたし、お兄ちゃんとキスしたいの!」と、叫ぶー
「はははははは」
秀明はゾクゾクしながら
”お兄ちゃんなんて呼ばれたの、何年ぶりだ?”と、
心の中で嬉しそうに叫ぶー。
「ーふ~ん…でもなぁ、お前、いつも生意気だからなぁ」
秀明はそう言うと、
「ーー俺に土下座して謝れよ」と、冷たく言い放ったー
美晴はすぐに土下座をすると「お兄ちゃん…ごめんなさい」と、
必死に謝り始めるー
”へへへへーー
いい気味だぜ”
秀明は勝ち誇った表情でそう心の中で呟くと、
「よ~し、じゃあ、たっぷりキスをさせてやろうー」と、
妹の美晴と何度も何度もキスをしたー
そしてーーー
”解除”
邪悪な笑みを浮かべる秀明ー。
「ーーえ」
美晴が呆然とするー
「ーーなぁ、美晴」
呆然としている美晴に秀明は声をかけるー。
「ー大嫌いなお兄ちゃんに洗脳された気分はどうだ?」
とー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
激しい罵り合いを繰り返す兄と妹の
洗脳物語デス~!
洗脳の力を手に入れてしまったお兄ちゃん…!
大変なことになりそうですネ~!
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