<寄生>寄生虫がうるさい②~喧嘩~(完)

謎の寄生虫に寄生されてしまった少女。

完全に支配されることは回避したものの、
寄生虫がうるさいし、
寄生虫が時々勝手に身体を動かすしー…
そんな状態が続き、彼女は困り果てていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「大好き!付き合って!」
寄生虫に身体を支配された千絵は、
突然そう叫びながら、クラスの男子・武夫(たけお)に
抱き着いてしまったー

「ーえっ!?えっ!?えっ!?」
顔を真っ赤にする武夫ー。

千絵はこの武夫のことがずっと好きだったものの、
武夫はあまり女子には興味が無さそうで、
男子とばかり仲良くしているタイプで、
千絵は”わたしがジャマになっちゃうといけないから”という理由と、
勇気が出ない、という理由から
武夫にはずっと告白せずにいたー。

が、武夫が好きだと知った寄生虫が、千絵の身体を乗っ取り、
大胆にも告白してしまったー

突然抱き着かれてー
胸も当たっているこの状況にドキドキしながら
顔を真っ赤にしている武夫ー。

”ち、ちょっと~~~~~!?!?!?何してんの!?”
身体を乗っ取られた千絵の意識も、顔を真っ赤にしながら
そう叫ぶとー、すぐに身体の主導権を取り返して
武夫から離れるー

千絵が身体の主導権を取り戻すと同時に、
千絵は顔を真っ赤にしながら
「ご、ご、ご、ごめんー」と、武夫から目を逸らすー

しかし、周囲は既にどよめいていて、
千絵の友達も、驚いた様子で口を開いているー。

「ーーえ、え~っと、これは…その」
千絵は”あいつ、あとで絶対にグルグルしまくってやるから”と、
心の中で激しい怒りの炎を燃やしながら、
恥ずかしすぎるこの状況を何とかしようと
頭をフル回転させるー。

だがー、その時だったー

「ーーい、いいよー…僕の方こそー…よろしくー」
背後にいた武夫が、ふとそんな言葉を口にしたー

「ーーえっ!?」
千絵がドキッとしながら振り返ると、武夫は恥ずかしそうに
しながらも
「急に驚いたけどー…僕なんかで良ければー」と、
”乗っ取られた千絵”の告白にOKの返事をしたのだったー

「えっ!?えっ!?えっ!?」
千絵が思わず驚いてあたふたすると、
武夫が少し自信なさげに、
「え…?これって、冗談とかじゃないよねー?」と、
千絵に聞き返してくるー。

寄生虫に乗っ取られて勝手に告白してしまったとは言えー、
千絵が武夫のことを好きなのは
紛れもない事実だー。

「ーーーえ……じ、冗談なんかじゃないよー…!
 あ、ありがとうー」

千絵も武夫も、周囲から孤立しているようなタイプでは
なかったためか、乗っ取られた千絵による大胆な告白を前にした
クラスメイトたちからも、その後祝福の言葉を
かけられたのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「勝手に!!ああいうことしちゃダメ!」
帰宅した千絵は怒りの形相で”中”にいる寄生虫に対して叫ぶー

”何だよ~お前のためにと思ってやったのにー
 ほら…人間って家を借りる時にお金払うだろー
 え~っと…家賃ってやつ?”
寄生虫が千絵の声で千絵の内側からそう言い放つー

「ーーまぁ…今回はうまく行ったみたいだから嬉しいけどー…」
千絵はそれだけ言うと、
寄生虫は”へへーじゃあこれからも俺がお前の助けにー”と、
調子に乗った口調で言い始めるー

「だ~め!ああいうこと繰り返してると絶対いつか失敗するから」
千絵が不機嫌そうにそう言うと、
”今日は俺がお風呂に入ってあげようかなあ~へへへ”と、
寄生虫がニヤニヤしているかのような口調で言い始めたー

「だ~め!!絶対変なことするし!身体は渡さないよ」
千絵がそう言いながらお風呂に向かうー。

千絵を乗っ取ろうとする寄生虫ー

「あ!乗っ取ろうとしてるね???絶対許さないから」
千絵が、”寄生虫が自分を乗っ取ろうとしている”ことに気付き、
気力でそれをブロックするー

”あ、おい!そりゃないだろ~!”
千絵を乗っ取るのを阻止された寄生虫が内側でそう叫ぶと、
”ずるいずるいずるいずるい”と内側から連呼し始めたー

「あ~もう、うるさいうるさいー。
 まるで子供みたいー」

千絵が嫌味っぽく言うー

”俺は人間で言えばまだ3歳だし、子供ですよ~だ!”
不貞腐れる寄生虫ー。

「ーっていうかそろそろ出てってよ」

”やだね”

そんなやり取りをしながら、千絵は髪を洗い始めるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからも、千絵と寄生虫の共同生活は続くー

最初の頃と違い、千絵も寄生虫との共同生活に慣れて来たのかー
”身体の主導権を急に奪われる”ことは
少なくなっていたー。

油断すると身体を乗っ取られてしまうものの、
内側から”言葉には言い表しがたいあの感覚”がしてきたときには
気を集中させて、それをブロックすることで、
身体を勝手に奪われることはなくなっていたー

「ーふふふ~もう好きにはさせないもんね~」
千絵が得意気な表情でそう言い放つと
寄生虫は”ちぇっ”と、不満そうに舌打ちしたー

「イヤならわたしから出て行けば~?」
千絵がそう言うと、
寄生虫は”居心地はいいからなぁ~”と、
未だに”千絵の身体から出ていく気ゼロ”な振る舞いを続けるー

それにーー

「ふひっ♡」
夜ー。千絵が寝静まった直後ー
千絵が起き上がりー、
ニヤニヤと胸を揉み始めるー

「えへへへへ~♡ 夜にこんなことされてるなんて、知らないだろうなぁ~」
乗っ取られた千絵は、そう言いながら
胸を夢中になって揉んだ後に、鏡の方に向かうと
鏡にキスをして、ペロペロとそれを舐め始めるー

「ふぅぅぅぅ♡ 人間の女はたまらないなぁ♡ げへへへ」
千絵とは思えないような歪んだ笑みを浮かべながら
寄生虫は今日も、千絵の身体でお楽しみを存分にーーーー…

…は、楽しまなかったー。

30分ちょっと経過すると、
律儀に身なりを整えて、
ベッドに向かう千絵ー。

「ーー千絵のやつが寝てても、身体が寝ないと
 身体が疲れちゃうからな」

それだけ言うと、丁寧にベッドに入って
そのまま眠り始めるー。

”千絵に怒られる”という気持ちも当然あるのだろうけれどー、
それよりも、その振る舞いからは”千絵を大事にしている”ような
様子も見受けられたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーあのさ」

千絵に寄生してから数か月が経過したー。
そんなある日、千絵は不満そうに言葉を口にするー

”ん?”
寄生虫が、千絵に声を掛けられて反応すると、
千絵は言ったー

「わたしが寝てる間、なんかしてるよね?」
その言葉に、寄生虫は
”ぎくぅ”と、声を上げるー

「ーーーあ~~やっぱり!どうせまたHなことしてるんでしょ!?
 最低!」

千絵がそう言い放つと、
寄生虫は”な、な、な、なにも、なにも、してないし!”と、
声を上げるー。

「ーぜ~ったいしてる!何回か、鏡に変なあとついてたもん!」
千絵が言うと、
寄生虫は”ギクギクッ!”と、声をあげるー

「ーわたしの身体で何してんの?」
千絵が怒ったような口調で言うと、寄生虫は慌てた様子で
千絵の人生を壊したり、傷つけることはしてないし、
するつもりはないと弁明したー。

「ーーで?何してるの?」
誤魔化すことは許さない、と言わんばかりの口調で
千絵が再度確認してくるー。

”は…はひっ…
 おっぱいを揉んだり、鏡にキスをしたりしてますー”

観念した寄生虫がそう言い放つー。

「ふん!」
千絵は怒ってしまったー

寄生虫は謝るも、千絵は何も口を利いてくれなくなってしまい、
寄生虫は困惑したー。

”寄生虫”は地中深くに生息していて、
ほとんど地上には顔を出さないー
かなり深くにいるため、人類にも認知されていなかったー。

そんな寄生虫の1匹が、偶然地上に迷い込んだのが、
この千絵に寄生した寄生虫だー。

最初は千絵を乗っ取ろうとしていたものの、
千絵と交流するうちに、寄生虫にとって、千絵は大事な存在となりつつあったー。

寄生虫の世界では、”他者との交流”はほとんどなく、事務的なやり取りのみー。

そんな彼ー、寄生虫にとって、千絵は”初めての友達”のような
存在でもあったー

がー、
そんな千絵が全く口を利いてくれなくなってしまいー
落ち込んだ寄生虫は、夜に千絵を乗っ取るのも、やめたー。

”ーーもうちょっとおしゃれすればいいのに”
”こうした方が可愛いんじゃないか?”
”彼氏も喜ぶと思うぞ”

寄生虫が”口うるさい”ことは変わらずー。

だが、完全に怒ってしまった千絵は
一切寄生虫のことを無視している状態が続いたー

「ふん」
千絵がそれだけ呟くと、
寄生虫は”悪かったー。悪かったよ”と、
繰り返し謝罪の言葉を口にするー

「ーなら消えて」
千絵が冷たい口調で言う。

千絵は優しい性格であるものの、
一度怒ってしまうと、徹底的に敵認定するタイプー。
”人間相手”に怒ることは、ほとんどないものの、
一度だけ、中学時代に友達の一人の酷い裏切りに激怒して、
それ以降、一切口を利かなくなったこともあったー。

寄生虫も、そんな千絵の逆鱗に触れてしまったー。

”~~~~~…”
寄生虫は黙り込んでしまうー。

今日はー
ある意味寄生虫のおかげで付き合うことができた、
彼氏の武夫とのデート。

寄生虫と好みは違うものの、おしゃれをした千絵が
楽しそうに出かけていきー、
武夫とぎこちないデートを楽しむー

千絵も武夫も恋人ができるのが初めてで、
これがそんな二人の初めてのデートだったためー
とても、ぎこちない雰囲気ではあったものの、
二人はそれなりに楽しい時間を過ごしたー。

デートが終わり、千絵が帰路につくー

だが、その時だったー

「ーーえへへへへへ…可愛いじゃんー」
背後から、気味の悪い声がしたー。

「え?」
千絵が振り返ると、そこには
最近この地域で出没している不審者の男がいたー

「な、なんですか…?」
千絵が聞き返すと、不審者の男は
「えへへへーちょっと遊ぼうよー」と、ニヤニヤしながら近づいて来たー

咄嗟に逃げる千絵ー。

だが、千絵は壁際に追い込まれてしまうー。

「ちょ…や…やめてー」
そんな千絵に、男はハンカチを取り出しー、
何か薬品を塗ってあったのか、それを嗅がされた千絵は
その場にぐったり倒れ込んでしまうー

「ぐへへへへー好き放題させてもらうぜ」
不審者が笑みを浮かべるー

”ーーーーー…!”
しかしー、その時だったー

キッ、と鋭い目つきで千絵が目を覚ますー

「ーーえっ!?」
不審者の男は驚くー

「ーな、なんで、ね、眠らせたはずー!?」
驚きの表情を浮かべる男に、
寄生虫が身体の主導権を握った千絵は
「汚い手で触るんじゃねぇ!」と、男に対して言い放つー

「なっ…えっ!?」
唖然とする男に詰め寄り、千絵が男の腕を掴むとー
壁際に叩きつけて、男の真横の壁に足を叩きつけると、
足で壁ドンのような状態で
男に言い放ったー

「ーー少しでも触れてみろー。絶対に許さないからな」
千絵はそれだけ言うと、不審者の男は気圧されたのか
ぷるぷると震えているー。

やがてー、騒ぎを聞きつけたのか
パトロール中の警官が駆け付け、千絵を乗っ取った寄生虫は事情を説明ー
不審者の男はそのまま連行されたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーう……」

目を覚ますと、そこは自宅だったー

千絵は「あれ…?わたしー…?」と首を傾げるー

”ーーーーー…”
寄生虫は、また、勝手に身体を乗っ取ったことを怒られると思い、
沈黙していたー。

しかしー
千絵はそんな寄生虫に対して言葉を投げかけるー。

「ーーー…助けてくれたの?」
とー。

”ーーーーー…ま、まぁ…
 また…勝手に乗っ取って悪かったー”

寄生虫が申し訳なさそうにそう言うと、
千絵は少し間を置いてから、

「ありがとうー」
と、感謝の言葉を口にしたー

”え…”
寄生虫が少しだけ驚くー

「ーーーー約束守るなら、別にわたしの中にいてもいいよ」
千絵が、少し恥ずかしそうにそれだけ言うと、
寄生虫は”え…ほ、ホントかー?”と、嬉しそうに言葉を口にするー

「ーでも、わたしの身体を使いたいときは
 緊急時以外、必ず確認してからにしてよね!
 寝てる間に勝手なことしたら許さないから」

千絵がそんな言葉を口にすると、
寄生虫は、千絵との約束を守ることを、改めて誓い、
千絵にお礼の言葉を口にしたー

「ーーー変な寄生虫ー…」
千絵は困惑しながらそう言うと、
「まぁ…でも、いつまで一緒にいるつもりか分からないケドー
 とりあえず、よろしくねー」と、
寄生虫に対して、そんな言葉を投げかけたー。

”こちらこそーよろしく”
”早速だけど、今日の夜少しだけ身体をー”

「却下」

千絵は、即答で寄生虫の申し出を断ると、
少し間を置いてから、
「でも、変なことをしないなら、考えてあげる」と、
優しく微笑みながら、言葉を口にしたー。

おわり

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コメント

寄生虫と共生するお話でした~!

私の寄生モノの中では
珍しく悪意のあまりなさそうなタイプの
寄生虫でしたネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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