下校中ー。
とある少女が、不気味な寄生虫に”寄生”されてしまったー。
しかし、彼女はなんとか完全に支配されることを
免れてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”今日は文化祭の準備で遅くなっちゃったなぁ…”
高校2年生の片倉 千絵(かたくら ちえ)は、
そんなことを思いながら
帰り道を歩いていたー。
千絵は、穏やかな優しいタイプの女子生徒で
友達の数もそれなりの人数いて、
学校での人間関係も良好な日々を送っているー。
ただ、自分で”こう”だと決めたことは絶対に
曲げない一面もあり、
過去に一度だけ、その性格が災いして友達と
大喧嘩になったこともあったー
そんな千絵が、いつも下校中に通る道の一つ、
少し木々の生い茂った一帯を歩いている
最中のことだったー
「ー!」
千絵が、ふと、足元に何かがあることに気付いて
足を止めるー
「ーーー…なにこれ…?」
不思議そうに首を傾げる千絵ー。
足元の物体が、少しうねうねと波打つようにして
動いているー。
もしも千絵が”虫嫌い”だったら、
この時点で気持ち悪いと感じて慌ててこの場を
立ち去ったかもしれないー。
しかし、特に虫嫌いではない千絵は、
少し不思議そうに”足元でうねうねしている何か”を
見つめたー
「ーーー蛇…?」
少し暗いこともあって、一瞬、蛇かとも思ったー。
だがー、蛇にしてはサイズが小さいー。
その場にしゃがんで、その謎の生き物を見つめる
千絵は「ミミズ…それともナメクジ?」と、首を傾げるー。
ミミズにしてはちょっと大きい気がするー
ナメクジにしてはちょっと細長い気がするし、
にゅるにゅるしすぎているような気がするー
「ーー何だろう…?」
流石に、得体の知れないこの生き物を触る気にはならずー
首を傾げながら千絵がそんな風に呟くー。
「ーまぁ、いっかー…
踏む前に気付いてよかったー」
心優しい千絵は、そんなことを呟いて立ち上がろうとした
その時だったー
「ーーー!?」
突然、その”謎の生き物”が、千絵に向かって
飛び跳ねたのだー
「えっ!?!?」
慌てて払いのけようとする千絵ー。
だが、頬のあたりに付着したその生き物は、
千絵の顔の上を動き始めるー
「ーーひっ!?なにっ!?」
特別虫嫌いではない千絵からしても、
いきなりくっつかれれば、驚くー。
驚きの表情を浮かべながら、
”それ”を振り払おうとする千絵ー。
しかし、その謎の生き物は思ったり早くー
そのままー、千絵の耳の方に移動してー
耳の中に入り始めたー
「ちょっ!?えっ!?ちょっとまって!こらっ!」
千絵がそう叫ぶもー、
謎の生き物はそのまま千絵の中に入り込みーーー
千絵はズキッ!という今まで感じたことのない衝撃を感じてー
そのまま意識を失ったー
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーーー」
しゃがみ込んだまましばらく固まっていた千絵が、
ゆらゆらと立ち上がると、
そのまま歩き出すー。
「えへ… えへぇ…♡」
完全にイってしまっている目つきで、涎を垂らしながら
そう呟くと、千絵はピクピク震えながらー
「人間の…記憶ーーー」と、小声で何度も何度も
呟き始めるー
千絵が見かけた謎の生き物はー
”寄生虫”だったー。
何らかの突然変異で生まれたのか、
それとも地球の外からやってきたのかー、
あるいは誰かが人工的に作り出したものなのかー、
それは分からないー。
しかし、その寄生虫は人間の脳の部分にまで到達して、
その人間を支配する力を持っていたー。
千絵を支配した寄生虫は、千絵の脳から
千絵が持っている記憶を引き出し始めるー。
「ーー…この人間の名前は…片倉千絵ー…
じょしこうせいー
かよっているこうこうはー」
ロボットのように自分の個人情報を口にする千絵ー
「ー人間の記憶ーーーすごいー
人間の言葉ーすごいー…」
千絵の脳から記憶を急速に読み取っている寄生虫はー
次第に人間らしい言語、人間らしい動きを
身に着けていきー、
家の近くに到着した時にはー
完全に”人間らしさを持つ千絵”に戻っていたー
「ただいま~」
「おかえりなさい~」
”千絵”として何食わぬ顔で帰宅するー。
千絵の記憶を完全に読み取った寄生虫は、
あっという間に”人間の生活”を理解し、
さらに、千絵として振る舞うことも
できるようになっていたー
部屋に入ると、鞄を放り投げて、
我慢できない、という様子で
服を乱暴に脱ぎ始める千絵ー
「うへへへへへ…♡ げへへへへへへっ♡」
欲望に身を任せて両胸を両手で揉み始める千絵ー。
嬉しそうに顔を真っ赤にしながら
膝をついて、甘い息を吐き出しながら
何度も何度も両胸を揉むー。
「ーーーうへっ…ひひひっ♡」
やがて、下着姿になろうと、さらに服を脱ぎ捨てようとした
その時だったー
「ーーっっ」
千絵が、突然表情を歪めるー
「ーーーーーえ…」
千絵の表情が、欲望に歪んだ表情から、
途端にいつもの千絵の表情に戻っていくー
”あ?”
千絵の中から、声が聞こえたー。
「ー!?!?!?」
千絵がバッと背後を振り返るも、
そこには誰もいないー。
「ーーー…え…わ、わたしー…?」
千絵の記憶は”下校中”の時点から飛んでいるー。
文化祭の準備でいつもより下校が遅くなってー
それでー
”ーーあ、あれ…なんで?なんでだー?”
千絵の中から”千絵の声”が聞こえるー
「ーーえ…な、なに…?」
千絵が再び聞こえた声に怯えた様子で
周囲をキョロキョロすると、
”な、なんで人間の意識が戻ったんだー?”と、
寄生虫の声が聞こえたー
しかし、寄生虫は本来は発声することが出来ない存在ー。
それ故か、脳の中に”千絵の声”で、寄生虫の言葉が
響き渡っていたー
「ーーえ…あ、あなた…誰!?」
千絵が周囲を見回しながら聞こえて来る”謎の声”に
向かって声をかけるー
”ーーだ、誰ってー?
俺はー…え~っと”
千絵の記憶から身に着けた知識を元に、寄生虫は言うー。
”そう!お前たちの言うー寄生虫ってやつだー
お前に寄生して、お前を乗っ取ったのにー
あれ?おかしいなー”
妙に軽い調子で、悪びれる様子もなく言い放つ寄生虫ー。
その言葉に、千絵は自分の意識が飛ぶ直前に見た光景を
鮮明に思い出すー。
”そうだーミミズみたいなー変な生き物が
飛び掛かってきて、それからー”
千絵がそんなことを考えていると
”ーこの身体はもう俺のものなんだから!
なんで意識が戻ったんだ!?
ほら、早く、続き…もっとおっぱい揉ませてくれよ”と
寄生虫が言い放ったー。
千絵自身の声でそんな言葉を言われるうんざりするー。
千絵はそう思いながら
「ーだ、誰があなたなんかに!
わたしの身体を勝手に使わないで」と、
不満そうに言葉を口にしたー
「ーあなたが何なのか知らないけど、早くわたしから出て行って」
千絵がため息をつきながら、そう呟くとー
突然、両手が勝手に動き始めてー
自分の両胸を揉み始めたー
「ちょっ!?あっ… こ、こらっ!やめなさい!」
千絵が気持ちよくなってしまいながらそう叫ぶとー、
寄生虫は”えへへへへへへー”と、千絵の中で笑い始めるー
「こらーーー!!!!そういうことしちゃダメ!」
千絵は勝手に動く手を、強引に自分の意志の強さで動かすと、
胸から手を放して、
”自分の中にいるのだという寄生虫”に対して言い放つー
「わたしの身体を勝手に動かしちゃだめ!
と、いうか本当にあなた何なの?
わたしの身体の中から出て行って!」
千絵がそれだけ言うと、
寄生虫は”いやだ”と、即答したー
「はぁ!?」
不満そうな千絵ー
”だって、人間の女の身体ー、エロいしさー”
寄生虫はさっき覚えたばかりの人間の言葉・知識を使って
内側から千絵の声で千絵に喋りかけるー
「ーーーちょっと!わたしの声で変なこと言うのもだめ!」
うんざりした様子の千絵に、
寄生虫は少し意地悪な気持になると、
”千絵の声”で、千絵の記憶から読み取った
卑猥な単語を次々と口にし始めたー。
「ーーあ、こら!ちょっと!!こらっ!!!」
千絵がそう叫びながら、慌てて耳を塞ぐー。
しかし、寄生虫は”千絵の中”にいるためー、
耳を塞いでも、その声が聞こえなくなることはなく、
逃れることの出来ない声が響いたー
「ーーー……むむむむむむむ…」
勝ち誇った様子で卑猥な言葉を脳の中で
叫び続ける寄生虫に対し、無性に腹が立ってきた千絵。
そんな千絵に対して、千絵に寄生した寄生虫は
笑いながら語り掛けるー
”え~っと、こういうの、そう”無駄なあがき”って言うのか?へへー
俺はお前の脳の中にいるからー
耳を塞いだって俺の声は聞こえるんだぜ~へへへっ
…っていうか、人間の”言葉”って言うの便利だなぁ…
お前に寄生したおかげで、こんな便利な知識も
学ぶことができたぜ~へへへっ”
その言葉に、千絵はムカッとして、
「ーーー…わたしの頭の中にいるって言ったね?」と、
クスッと笑いながら呟くー
”へ?”
「だったらこれはどう???」
千絵はそう言いながら、髪を振り乱しながら
首をぶんぶんと振り始めたー
”うぉっぁっ!?!?!?や、やめっ…!?!?!?”
寄生虫が、千絵の声で苦しそうな叫び声を上げるー
「ふふふふふふ~~やっぱり効果があるみたいね」
負けず嫌いなところもある千絵がそう言い放つと、
寄生虫は”目が…目がまわるぅぅぅ!やめろぉおお!”と、叫ぶー
「ーだったらーーー」
千絵は首を振るのをやめると「わたしから、出て行って」と、
言い放ったー
がーーー
「ー!?!?」
千絵の身体の自由が突然効かなくなり、
千絵が鏡の前で変なポーズをしたり、
蟹股になって下品なポーズと表情を浮かべたりし始めるー
”こ…こ、こらぁああああああああ!!!”
千絵はそう叫んで、気力で身体の主導権を取り戻すと、
再び首を振って反撃し始めたー
何をしても出ていく気のない寄生虫ー。
しかし、千絵の方も、身体の主導権を完全に奪われることなくー
そんな不毛な争いが続いたー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「学校で変なことしたら、グルグルの刑だからね」
千絵が不満そうに小声で言うー
”わ、分かったよ 学校では大人しくしてる”
昨日、散々グルグルされた寄生虫は怯えた様子で
そう言い放つー
学校に到着すると、千絵は寄生虫を無視して
いつも通り、学校で友達と話したり、
授業を受けたりするー。
”へ~お前、あの男子のこと好きなのか~”
友達との会話を聞いた寄生虫が
千絵の声で千絵に語り掛けるー
と…言っても、この声は他の人間には聞こえず、
千絵にだけ、聞こえている、そんな状態だ。
「ーーー」
それでも、千絵は無視をしながら、
友達との会話を続けるー
”お~い!お~~~~い!”
寄生虫は、そんな千絵に何度も声をかけるー
”何だよシカトかー?ならお前の身体を乗っ取ってー”
そう言い放つと、千絵が突然、頭をぺしっ!と叩いたー
「えっ!?」
千絵と話し中だった友達が首を傾げるー。
千絵は苦笑いしながら「あ、ううんー虫が止まった気がしてー」と
誤魔化すー。
そしてーー
次の休み時間にトイレに行くと
「ーわたしが独り言喋ってるって思われるでしょ!学校では
返事できない!いい?わかった??」と、怒りの口調で言い放つー。
”わ、わ、わかったーわかった!”
寄生虫は千絵の勢いに押されながらそう答えるー。
だがー、その後の体育の授業でも
”あの女子、エロくね?”
”うぉぉぉ、あの子にも寄生したい”
”っていうかお前、あの子より、胸小さいなぁ”
などなど、うるさすぎる寄生虫のトークは続いたー。
しかもーー
放課後ーーー
「ーー好き!」
千絵が、突然叫ぶー。
さっき、友達と話をしていた”好きな男子”に向かってー
”えっ!?ちょっ!?”
寄生虫に突然身体の主導権を奪われた千絵は驚くー
そして、乗っ取られた千絵は
ニコニコしながら、好きな男子に向かって
「大好き!付き合って!」と、抱き着いてしまったのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
寄生虫と共生(?)することになってしまうお話デス~!
少し前に書いた「騒音ーノイズー(憑依)」と同じで
内側から声が聞こえるタイプのお話ですが、
あのお話とは、内容は全然違うので、
楽しんでくださいネ~!
続きはまた明日デス~!
コメント