他人の姿を勝手に使い、婚活を繰り返した翔子。
やがて、翔子は”理想の相手”を見つけて
ついにその相手からプロポーズされたものの…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”理想の相手”である孝之と出会ってから
翔子は変わったー。
それは”性格面”だー。
翔子は、見ず知らずの美人に変身する前から
その性格は”かなり難がある”性格で、
自己中心かつワガママ、何でも他人のせいにする性格から、
大学卒業後の会社でもそれが原因で会社にいられなくなり、
さらには自分よりも先に結婚した友達に対して
攻撃的な言動を繰り返して疎遠になるなど、
散々な状況だったー。
見ず知らずの美人に変身したあとも同じだったー。
性格の悪さを露呈し、
それが原因で相手との関係が絶たれたこともあったし、
そもそも最初から相手の男を見下すような言動を
取っていることもあったー。
しかしー、孝之と出会ってから、
翔子は変わったー
翔子は孝之に対して真剣に恋をして
”この人に好かれたい”と、そう思ったー。
それ故か、翔子は”自分の醜い本性”を隠して
必死に”良い人”であろうとし続けー、
翔子は変わったー
その結果ー、
孝之からプロポーズされて、翔子は夢にまで見た結婚を
勝ち取ったのだったー。
「ー♪~~~」
嬉しそうに微笑む翔子ー。
入籍の日も、結婚式の日も近付いているー。
ただ、翔子には”呼べる友達”がいないー。
そのことは、孝之にも上手く理由をつけて説明してあるし、
孝之は”そんなこと気にしなくていいさ”と、言ってくれたー。
”翔子の友人”も、数少ないながらいるにはいるー。
が、”この姿”では会うことはできないし、
呼ぶこともできないー。
”これが、ほんとうのわたしー…
誰にも、邪魔はさせないー”
翔子は、自分の姿を鏡で見つめながら呟くー。
元は、”見ず知らずの他人”の姿だが、
翔子は”他人に変身する力”を持つ指輪で、
その姿に変身して、ここまでやってきたー。
もう、”この姿”が、わたしであり、
元のわたしは、わたしではないのだー
「ーわたしは…この姿で幸せを手に入れるー」
翔子は、決意したかのようにそう呟くと、
ふと、スマホのほうを見つめるー。
最近孝之は忙しいらしく、
プロポーズされる前よりも話せる機会が大幅に減っているのは
少し気がかりだったー。
それでも、翔子は今、幸せの絶頂にいるー。
”他人の姿”でー。
だがーーーー
”結婚を目前にして”
最悪の事態が起きたー。
「ーー翔子ー」
数日ぶりに会った孝之が、申し訳なさそうに
「仕事の予定が続いちゃってー…本当に、ごめん」と、
最近、なかなか会えずに連絡も少ないことをまずは詫びるー。
「ーーううんー。孝之が忙しいのは知ってるし、全然大丈夫」
翔子は穏やかな口調でそう言い放つと、
孝之が、少し困惑した表情を浮かべながら
「そういえばさー」と、スマホを取り出し、
ある画面を掲示したー。
「ーーーこれ、翔子だよね?」
孝之がそう言いながら、見せて来たスマホにはー
”ツイッターのアカウント”が表示されているー
「ーーえ?」
翔子は困惑するー。
そこにはー
”翔子そっくりの女”の、自撮りツイートが表示されているー
「ーーーー!!!!!」
翔子は目を見開くー。
”他人の空似”では言い逃れできないほどに、
”よく”似ているー。
”こ、これはー…”
翔子は震えながら、その写真を見つめるー。
このアカウントの持ち主はきっとー…
翔子があの時、変身した”見ず知らずの女”ー
お互いに何の接点もなかったからこそ、
これまで、”勝手に変身した側”である翔子も、
”勝手に変身されて自分の姿を使われている”相手も、
関わることはなかったし、
お互いに相手の存在を知らないままここまで来たー。
だがー
”え…っていうか、何でこの女ー”わたしの姿を真似”してるの?”
翔子は強い不満を覚えるー。
翔子は、この”見ず知らずの女”に変身したあと、
髪型やメイク、服装の趣向などを”自分好み”に変えたー。
そのためー
”そのまま”なら、だいぶ見た目の雰囲気は”本物”とは違う状態に
なっていたはずなのだー。
だが、ツイッターに載っているその”本物”の写真はー
”今の翔子”にそっくりだったー。
最悪の偶然ー。
翔子が変身した相手は、
翔子に勝手に自分の姿を使われていることを知らないままー
”たまたま”、今の翔子と”同じような”髪型や雰囲気に変えていたのだー。
「ーー(な、なんなのこの女…!わたしの髪型を真似して!)」
逆ギレのようなことを内心で思う翔子ー。
そもそも、翔子が”偽物”で、このツイッターに写真をツイートしている方が
”本物”なのだから、相手がどんな髪型に変えようと自由だー。
しかし、翔子からしてみれば気に入らないー。
「ーーそれとー」
さらに、孝之が別のツイートを表示するー。
「結構頻繁にこういうイベント出てるみたいだけどー…
あぁ、いや、イベントに出るのは全然いいんだけどー
その…浮気とか、大丈夫だよな…?」
孝之が少し困惑した様子で聞いてくるー。
”翔子が変身した見ず知らずの女”は、
どうやら同人活動やコスプレなどが好きなようで
そういうイベントに出ている写真や
”オフ会”のようなイベントに出ている写真もツイートされていたー
(妙に綺麗だと思ったけどー…こういう趣味のある人だったなんてー)
元々”そう”だったのか、翔子が勝手にこの見ず知らずの女に
変身した後からなのかは分からない。
けれど、いずれにせよ、”勝手に他人の姿に変身して生きて行こうとしている”
翔子からしてみれば厄介極まりなかったー。
翔子は困惑するー。
「ーーーー………」
孝之のほうを見つめー
必死に言い訳を考えるー
一瞬”これはわたしじゃないよ”と、とぼける案も考えたー
だが、明らかに同一人物と分かる写真だー。
仮に疑いを強められて”本物”に会いに行かれれば大変なことになるー。
”いえ…でも、わたしと本物が二人同時に同じ場所にいればー
”他人の空似”の設定にできるかもー”
翔子はそんなことも考えるー。
”自分はあくまでも翔子である”と主張しー、
”たまたまそっくりなだけだ”と、言い張れば
何とかやり過ごせるかもしれないー。
”これはわたしじゃない”と言い張り、この女ー”寧々”と書かれた
アカウントの持ち主と実際に接触するー。
”翔子”と”寧々”
例え同じ顔をしていても、
”翔子が寧々の姿を勝手に使っている”とさえバレなければー
”たまたまそっくりさん”だと言い張ればー
「ーーーー」
しかし、翔子は”リスクが高すぎる”と内心で思うー。
もしも”わたし”の過去を調べられたらー?
学生時代や、変身する前と”全く容姿が違う”と気づかれたらー?
変身能力を知られたらー?
”孝之と別れることになるかもしれない”
そう思った翔子はー
「う、う、浮気なんてするわけないじゃんー」と、
曖昧な返事をしてしまうー。
幸い、孝之によれば
「まぁ、確かにそういう感じはないからいいけどさー」と笑うと、
「その言葉が聞けてよかったー」と、半信半疑のような口ぶりで頷いたー。
翔子は一人、家に帰宅すると
慌てて”寧々”とやらのアカウントを確認するー。
自撮り写真が非常に多いー
コスプレをかなり楽しんでいる様子だー。
”こいつ、邪魔ー”
翔子は逆ギレ気味にそう呟くと、
”悪魔の計画”を思いついてしまうー。
”こいつを、消しちゃえばいいんだー”
そんな、計画をー。
”わたしの邪魔をするやつは、許さないからー”
翔子は、”今の自分の姿”の元となった人物であろう”寧々”に
接触して、寧々を始末することを画策し始めてしまうー。
”そう、わたしにはこの指輪があるー
わたしの幸せを邪魔するやつは、許さないからー”
完全な逆ギレー
翔子の性格は決して”良くなった”わけではないー
孝之の前では猫を被っていただけー。
本質のー
”何でも他人のせいにする性格”は、
治っていないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”わたしの、孝之との幸せな人生はジャマさせないー”
このまま翔子と同じ姿を持つ”寧々”が
コスプレの写真やオフ会の写真をツイートし続ければ、
その寧々と同じ姿の翔子は、孝之からあらぬ疑いを
かけられてしまうかもしれないー。
翔子は、”自分が勝手に他人の姿に変身した”にも関わらず
”わたしの姿で勝手なことしないで”と、逆ギレー
寧々を始末する計画を実行に移したー。
ツイートから、寧々がアニメ系の同人イベントに参加することを
突き止めた今日ー、
その帰り道に寧々を襲撃して、始末しようと考えた翔子ー。
だが、当然それでは翔子が殺人犯になってしまうー。
”元の姿”で罪を犯せば翔子が容疑者になるし、
寧々の姿で罪を犯せば、もうその姿で行動は出来ず、
孝之との結婚もできなくなってしまうー。
どっちの”姿”でも罪は犯せないー。
けれどー…
翔子は、その辺にいた”いかにも柄の悪そうなギャル”に変身して
笑みを浮かべたー
”さらに別人の姿を使って罪を犯せばいいー”
とー。
そしてー
”例の指輪”は遺体相手でも”変身”できることを翔子は知っているー
説明書の使用例に”あの人ともう一度会いたい”という使用例が
書かれていたからだー。
つまりー、
見ず知らずのギャルの姿で寧々を始末しー、
その後、人目につかない場所に寧々の遺体を運び、
寧々に変身した上で寧々を廃棄するーー
山奥まで寧々を運ぶ方法も、既に確保してあるー。
にやりと笑みを浮かべるギャル姿の翔子ー。
”わたしは、孝之と幸せになるのー”
そう思っているとー
寧々が姿を現したー。
”来た”
オフ会帰りだろうかー
少し酔っているようにも見えるー。
”ーーーさよならー ”わたしの偽物” ”ー
自分が偽物なのにそんな自分勝手なことを呟きー
ロープを手に、寧々に背後から近づくーーー
”今よ!!!”
翔子は、ギャルの姿で寧々に襲い掛かったー
「ひっ!?」
突然、背後からロープで首を絞められて驚く寧々ー。
「ーー悪いけど、死んで!!」
翔子がそう叫ぶとー
寧々はうめき声を上げたーーー
さらに力を込める翔子ー。
がー、次の瞬間ー
信じられないことが起きたー
襲った相手…”寧々”が、突然変形してーー
明らかに危険な風貌のゴツイ男に変わったのだー
「ーーえっ!?!?!?」
「ーーテメェ…何をしやがる!」
男は首を絞められているロープを手で掴むと、それを簡単に取り除くー
あまりの怪力に、”ギャルの姿”をした翔子は、逆にロープごと
投げ飛ばされて路地裏の壁に激突するー
「ひっ…!?!?な…何なの…?」
呆然とする翔子ー
よく見るとー
その男の指には”翔子と同じ指輪”がはめられていたー。
「ーーー!!!」
翔子は表情を歪めるー
翔子が襲った寧々は
”翔子が変身した見ず知らずの女”本人ではなかったー
たまたま、翔子が変身した相手の”見ず知らずの女性”と同じ人物に
翔子が持つ指輪と同じ指輪で変身していた男だったのだー
「あなたも…そ、その指輪をー」
ギャルの姿のまま、翔子が震えながら言うと、
男は「あん?」と、言いながら翔子の指輪に気付くー
「へぇー、お前もそれの持ち主かー」
男はそれだけ言うと、
”たまたま見かけたエロい女に変身してコスプレ三昧してー
オタクどもの姫になって楽しんでいた”と、説明したー。
「ーー…ひ、人違いでしたー…
す、すみませんー」
翔子は泣きながら謝るー。
もちろん、この男が”翔子が変身した見ず知らずの女性”と同じ姿で、
ウロつくのは、翔子にとっては困るのだがー、
それどころではなかったー。
この男は明らかにヤバすぎるー
「ーーー…へへへー 謝らなくていいぜ。
お前はここで死ぬんだから」
男はニヤッと笑うー。
翔子は悲鳴を上げながら逃げようとするー。
だが、そんな翔子の腕を男は乱暴に掴んでー
「ー2個目の指輪、貰っておくか」と、笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー翔子…どこ行ったんだー…?」
婚約者の孝之は困惑するー。
翌日ー
翔子との連絡は途絶えたー。
孝之は、何が起きているのか全く分からないままー
2度と、翔子と連絡を取ることは出来ずー
”やっぱり、浮気してたのかな…”と、悲しそうな表情を浮かべたー
その日ー
駅前の路地裏では、”ギャル”の遺体が発見されたー。
警察はすぐに、近くの大学に通っていた女子大生の遺体と断定したものの、
その子は普通に大学に登校していて、警察は困惑したー。
当たり前だー。
その遺体は本人ではなく、”翔子が勝手に変身した”遺体なのだからー。
”変身したまま死ぬ”と、指輪を外してももう元には戻らないー。
他人の姿を勝手に使って婚活をしー、
挙句の果てに”本物”を殺そうと、
間違えて”本物ではない同じ指輪を持つ危険な男”に殺されるという
自業自得とも言える最後を遂げたのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーうん、ありがとう、また明日~!」
その頃ー
翔子や、コスプレを他人の姿で楽しむ男に”変身”されて、
自分の姿を勝手に使われている女性ー…菜緒(なお)は、
何も知らずに、今日もごく普通の生活を送っていたー。
彼女が”自分の姿を勝手に誰かに使われている”ことに
気付く日が来るのか、それとも来ないのかは、
今はまだ、誰にも分からないー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
他者変身を利用して婚活するお話でした~!☆
最終的には自滅してしまいましたネ~!
お読み下さりありがとうございました~~!
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