<他者変身>偽りの婚活①~他人の姿~

容姿に恵まれず婚活に苦しんでいた彼女…。

しかしある日、彼女は
”他人に変身する力”を手に入れて、
その力で”婚活”を有利に進めていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…」
ギリッと、歯ぎしりをしながら、
何かを見つめている女ー。

彼女は、先月、30歳の誕生日を迎えー
強い焦りを感じていたー。

照本 翔子(てるもと しょうこ)は、
昔から結婚願望が強く、
20代のうちに絶対結婚する!と、
学生時代にもいつも叫んでいたー。

だが、翔子は容姿に恵まれずー、
更には性格にも難がありー、
その性格の面が災いして大学卒業後に就職した企業でも失敗し、
現在はフリーターとして働きながら
一人暮らしをしているー。

そのため、婚活も上手く行かない状態が続いていたー。

その最大の原因は”何でも他人のせいにする性格”かつ
ワガママな性格であることーーなのだが、
当の本人には、それを認めるつもりも、改善するつもりもなく
婚活が上手く行かないのは必然的、と言えたー。

しかし、プライドも高い翔子は
”婚活スタッフと相手の男たちのせい”と決めつけて
半ば逆ギレ気味に婚活を続けていたー。

怒りの形相で髪を掻きむしる翔子ー。
最近は、ストレスからか、暴食をすることも多く、
体型にもそれなりの影響が出ている状態ー。

少し前には、結婚が決まった友達に対して
”わたしに対する当てつけ?
 そっかそっかー。離婚する呪いをかけてあげる!”
と、言い放ち、絶縁されたー。

彼女の性格はますます歪んでいくばかりだったし、
このままでは、奇跡が起きて白馬の王子様が絵本から
飛び出してくるようなことが起きない限り、
彼女はこのまま生涯独身となるのだろうー。

”まぁまぁ、結婚は30歳までにしないといけないなんて
 ルールはないんだし、
 そもそも、必ず結婚しないといけないなんてこともないでしょ?
 焦りすぎちゃダメだってばー”

同じく独身の友達・藤江(ふじえ)からそんなLINEが届くー。
藤江は”遊び歩いている独身女性”という感じで、
とてもキラキラした日常を送っていて、
”結婚は特に考えていない”と、豪語しているー。

だがー
そんな藤江に対してもきつく当たるぐらいに、
今の翔子には余裕がなかった。

”あんたはのんきでいいよね”

そんな嫌味の返事を返すと、
翔子はため息をつきながら、
また”お断り”の通知を見て、歯ぎしりをするー。

婚活が上手く行かないー。

どうして、この世には”見る目がないやつら”が、多いのだろうー。
わたしが結婚してあげると言っているんだからー、
素直に喜べばいいのにー。

翔子は、本気でそんなことを思いながら、
もう一度、ため息をついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”どんな他人にも変身することができる”
”究極の美貌を一発で、あなたのものに”

「ーーーー…」

数日後、”婚活の秘訣”や”婚活 上手く行く方法”などなど、
ネット上で婚活について検索を繰り返していた
翔子は、そんな記述がなされているサイトを見つけたー。

「ーーなにこれ」
翔子は、そう呟きながらそのサイトを見つめるー。

”他人に変身することができる”
そんな謳い文句で販売されている指輪。

「ーーー……」
翔子は、興味深そうにそのサイトの解説を読んでいくー。

もちろん、人間が他人に変身できるわけなどない。
そんなことも分からないような人間ではないし、
翔子も失笑しながら
それを見つめていたー。

もし、もしも本当に他人に変身する力があれば、
どんな可愛い姿にだって慣れるし、
自分には”ない”美貌を手に入れることができれば
婚活なんて、簡単にクリアできるはずー。

翔子はそんなことを思いながら
サイトの説明を読み終えると、
「ー嘘が下手すぎー。他の人に変身できるなんて、そもそも騙す気ないでしょ」
と、呆れ顔で笑うー。

だがー、
指輪のデザインは気に入ったー。

シンプルな感じではあるものの、
赤い宝石のようなものが埋め込まれていて、
とても綺麗だー。
もちろん、この宝石も何か高価なものではなくて
大したものではないのだろうけれどーー

そう思いつつ、商品自体の金額や、送料などを
見つめる翔子ー。

そして、少しだけ考え込むと、
「まぁ、ただの指輪だと思えばいいんだしー買っちゃお!」と、
今月の給料日も確認した上で、
その指輪を購入したのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーほ…本物じゃんー…!」
数日後ー…
翔子は、驚きのあまり、目を見開いていたー。

到着した”他人に変身できる”という指輪を
指にはめて、説明書に書かれている通りの
”他人に変身する方法”ー
「変身したい相手を見つめて、変身する自分をイメージする」
と、いうことを実際に試したー。

その結果ー、信じられないことにー
下の道を歩いている女子高生の姿に
自分も”変身”したのだー

「ーーす、すごっ…
 うわぁ…なにこれ…痩せてると…こんなに…?」

美少女の姿になった翔子は、
元々自分が着ていたぶかぶかの服を引きずりながら、
そのまま鏡の前に向かっていくー。

太っていた翔子が着ていた服はそのままに
スリムな感じの女子高生の姿に変身したためー
服も下着も何かもサイズが合っていないー。

だが、そんなことよりもー
何もかもが、感動的でー
翔子は夢中になって鏡でその姿を見つめたー

「うわぁ…肌も綺麗…
 やっぱり、30のわたしより、10代の子の方が
 綺麗に決まってるもんねー」

翔子はそう言いながら、
変身したその姿で、自分の頬を
嬉しそうに触るー。

”てっきり、偽物だと思ってたのにー”
そう思いながらも、他人に変身できる力とやらが
本物だと確信した翔子は、ニヤリと笑ったー

そして、自分の高校時代の制服を引っ張り出すと、
「ーうわぁ…着れるじゃん!すごっ!」と、嬉しそうにしながら
そのまま嬉々として出かけて行ったー。

”女子高生”としての外出ー。
しかも、本来の自分の姿ではなく、美少女としてのー。

意味もなく色々な場所に足を運びー
時折視線を感じたりして興奮するー。

コンビニの店員がー、いいや、周囲の人たちが
ちょっとだけいつもより優しい気がしたー。

優越感に浸りながら、翔子は
”これならー…いける!”と、笑みを浮かべながら、
そのまま意気揚々と帰宅したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー…ふふふふふ♡ 最高ー」

数か月後ー
翔子は、街中で”美人”を探して、
その姿に変身したー。

相手は、見ず知らずの女性だったが、
むしろその方が好都合だー。

その姿に変身した翔子は、
髪型を変えて、自分なりのメイクで
”元々のその相手”とは、大分違う雰囲気を作りー、
服装も自分好みにアレンジしー
さらには偽りの姿で、適当なプロフィールで婚活を開始したー。

元々、自分がやっていたところは、
”急に別人の容姿になった”ら、流石におかしいため、
退会して、今はSNSなど、”具体的なプロフィールなしでも大丈夫”なところで婚活を始めたー

「ーーーふふふふー
 すっごくたくさん人が寄ってくるー」

今まで一度も己の手に”美貌”を掴んだことがなかった翔子は
”美人”として、チヤホヤされる快感を味わい、有頂天になっていたー。

必死に婚活をやっていたのが、馬鹿らしくなるほどー。

イケメンからも声がかかるし、
それなりに金を持っている男からも声がかかるー。
今までの自分の人生はいったい何だったのか、
そう思ってしまうぐらいにー、
とっても愉快な日々は続くー。

だがー、
”勝手に他人の美貌”を使って婚活を楽しみ始めた翔子はー
その性格の悪さに、さらに磨きがかかりはじめていたー。

「ーーすみませんー。自分の顔、鏡で見たことありますか?」

「あなたみたいな人がわたしと結婚できると思ってたんですか?」

「ーその年収じゃー ふふっ、綺麗なわたしには釣り合いませんからー」

調子に乗って、男たちを振っていく翔子ー。
今まで”振られる側”だった翔子は、
立場が逆転したことで、完全に有頂天になってしまっていたー。

「ーふふふふ…わたしは付き合う男も、結婚する男も選び放題ー」
鏡を見つめながら”見ず知らずの他人の姿”で、笑みを浮かべる翔子ー。

見ず知らずの他人…と言っても
髪型も、メイクも、服装も変えているためにー、
”他人をベースとした自分”と、言ってもいいー。

「ーーーーはぁ……♡ 綺麗…」
自分の頬を触りながら嬉しそうに微笑む翔子ー。

性格の悪さにはますます磨きがかかっていきー、
美貌を手に入れたことで、
心穏やかにー…は、ならず、
周囲を見下す一面が、今まで以上にさらに、さらに、強くなってしまっていたー。

当然、”容姿が別人のものになった”ことで、
今までやっていたバイトはやめて、新しいバイトに偽名で応募しー、
何とか引っ越しもして、別の場所で住み始めたー。

男からチヤホヤされて快感を覚えて、
そして、少しでも気に入らないところがあれば振っていくー。

何人もの男と会い、
”品定めをする側”の快感を味わい、
そして、振るー。

「こんなに可愛いわたしだもんー
 相手のスペックが完璧じゃなくちゃ、釣り合わないよね」

そう思いながらー、
婚活を続けること数か月ー。

ついに、翔子は”理想の相手”を見つけたー

相手は、少なくとも翔子から見ればイケメンで、
自分の趣味をベースに起業、年収も十分かつ、まだ20代中盤と若いー。

それでいて性格も穏やかで控えめ、
優しい性格だが、起業しただけあって芯は強いー。
そんな相手だったー。

「ーー翔子さんー
 今日も楽しかったよー」

もう何度目だろうかー。
そろそろ数えきれないぐらいの回数になってきたデート。

その男、津島 孝之(つしま たかゆき)が笑いながら
今日も楽しかった、と言葉を口にすると、
翔子は、嬉しそうに微笑んだー。

実際に会うところまで行った相手とは本名で婚活を続けているー。

理由は複数あるが、
偽名では結婚するときに必ず気付かれてしまうからだー。
顔が別人の顔でも、周囲に知り合いさえいなければ、
ひとまずは気付かれる心配はないー。

両親は既にこの世にいないし、
友達ともほぼ、疎遠ー。

”他人の姿で翔子と名乗っていても”
気付かれる心配は、ないのだー。

「ーーーわたしも、楽しかったですー」
翔子が、そんな言葉を孝之に言うと、
孝之は「はははーならよかった」と言いながら、
「あ、ちょっとごめん」と、スマホを手に、一旦翔子の元から離れて行くー。

「ーーーーー…~~~~」
孝之が誰かと話している間も、翔子は笑みを浮かべるー。

そして、自分の指にはめられた指輪を見つめるー。

”この指輪”は取るわけにはいかないー。

”他人に変身する力を持つ指輪”
だが、変身している最中にこれを外すと、
元の姿に戻ってしまうことは、翔子は
今のこの姿に変身する前に、色々試した際、
確認済みだー。

だから、翔子はこの指輪を
”大好きだったおじいちゃんの形見”という”設定”にしているー。

そうすればいつもはめていても、
そこまで不自然には思われないし、
相手がDV男でもない限り
”その指輪を外せ!!!”とは言われないだろうー

「ごめんごめんーお待たせ」
孝之が笑みを浮かべながら戻って来るー。

嬉しそうに微笑む翔子ー。

”偽りの”翔子と孝之の関係は、さらに親密になっていきー、
やがて翔子は、孝之から”プロポーズ”されて、
夢にまで見た”結婚”を現実のものとしたー

しかも、相手は翔子から見て”ハイスペック”ー

年収も同年代からすれば相当なものだー。
それでいて、親の力で金持ち、ということでもなく
自分の力で、小さなところから起業して
稼げるようになっただけあり、人間性も、収入に見合う実力も
兼ね備えているー。

翔子にとって、理想の相手ー
そんな相手との結婚を翔子は
”自分の姿ではない他人の姿”で、勝ち取ったのだったー。

けれどーーー…
その先に待っていたのはー…。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

見ず知らずの他人の姿に勝手に変身して、
婚活をするお話デス~!

プロポーズされて幸せ絶頂ですが、
不穏な気配が漂っていますネ~笑

続きはまた明日デス~!

PR
他者変身<偽りの婚活>
憑依空間NEO

コメント

タイトルとURLをコピーしました