<憑依>騒音ーノイズー②~苦痛~(完)

念願の憑依薬を手に入れて
好みの子に憑依した男。

しかし、憑依した相手の意識は消えず、
脳内でおしゃべりを続けられてしまい、
彼は逆に困惑するー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”何言ってるの?さっさとわたしの身体から
 出ていきなさいよー”

晴美の意識がそう呟くー。

「い、いや、ふざけてるんじゃねぇよー
 本気で言ってるんだー
 …くそっ…何で出れないんだー!?」

晴美に憑依した修三は困惑するー。

確か、出品者の愛染とやらは、
憑依した状態から抜け出すことも可能だと
説明していたはずー。

それが、どうしてー

”あのさ、そういう猿芝居っていうのかな?
 そういうのいいからー
 早くわたしの身体から出て行ってくれる?

 出て行ってくれないなら早くコンビニで
 今日発売のプリンと、あとー”

「ーあぁうるさいうるさい!黙れ!」
晴美の声で叫ぶ修三ー。

このままだと気が狂いそうだー。

元々修三は”騒音”がすぐに気になってしまうタイプでー
学生時代に教室で周囲がギャーギャーと騒いでいるのも嫌いだったし、
大人になってから工事現場に怒鳴り込んだり、
公園で遊んでいる子供たちに説教したりしたのもそのためだー。

そんな修三からすると、今の状況は我慢ならない状況だったー。

周囲が突然”黙れ”と一人で叫んだ女子高生を見て
”完全にヤバい奴”と言いたげな表情を浮かべているー。

”ちょっと!勝手に人の身体に入ってきて失礼すぎるでしょ!
 だいたい何でわたしなの!?  
 わたしが何かした? それとも実はあんた、わたしの知り合いか何か?

 ちょっと!黙ってないで返事ぐらいしなさいよ!”

「ーーーー」
晴美の意識を無視して、修三は必死に晴美の身体から出る方法を考えるー。

そして、それを何とか実行しようとするも、全く晴美の身体から
出ることは出来ないー。

”ちょっと!!!!あの~~~!聞いてる~~~
 お~~~~~~~~~~~~~~~い!!!”

大声で叫ぶ晴美の意識ー

「あぁ…うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」
頭を抱えながら、その場にしゃがみ込んでしまう晴美になった修三ー

周囲は、”突然頭を抱えてしゃがみ込んだ女子高生”を見て、
困惑するー

ついに見かねたおばあちゃんが「だいじょうぶ?」と声をかけて来るー

「あぁあああああ!うるさい!」
晴美を支配した修三はそれだけ叫ぶと、
そのまま走り去るー。

”あ!ちょっと!今のひどすぎ!
 すぐに引き返してあのおばあさんに謝って!”

「ーうるさい!」
晴美の身体を勝手に走らせてそう叫ぶ修三ー

だが、”勝手にわたしの身体に憑依とか、
よく分かんないことして、何なのコイツ?”と腹を立てた晴美はー

”あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!”
と、
大声で叫び始めたー

「ーー!!!」
晴美になった修三は走るのをやめて、耳を塞ぐー。

だが、”晴美の意識の声”は別に外から聞こえているわけではないー。
脳から直接響き渡る、そんな言葉ー。

それ故に、耳を塞ごうと、何をしようと
その音が小さくなることはないー。

”あああああああああああああああああ!!!!”
晴美の意識がものすごい煩さで叫び続けるー

たまらず、晴美を支配した修三は
「わかった!わかった!もうやめてくれ!」と、悲鳴に似た叫び声を
あげると、晴美の意識は
”じゃあ、早くおばあさんに謝って”と、怒りの口調で言うー。

「ーーく…く…」
晴美の身体で修三は悔しそうに歯ぎしりをするー。

しかしー、
再び晴美の意識が大声で”あああああー!!!”と、叫び始めたため、
修三はついに観念して、おばあさんの元に戻り謝罪ー、
その後、晴美に言われた通りコンビニに行き、
晴美が欲しがっていたスイーツを買いー、
そのまま家に帰宅したー。

「ーー疲れたー」
頭を抱えながら部屋に座り込む晴美ー

”疲れた、は、わたしのセリフなんだけど!?
 というかホント、早く出て行ってよ!”

その言葉に、修三は晴美の口で答えるー。

「出ていけるもんなら、もう出て行ってるよ!
 本当に出ていけないんだ!」

半分涙目だったー
このままのペースでおしゃべりをされたら気が狂ってしまうー

”はぁ?そういう嘘、やめてほしいんだけど!
 わたしの中に勝手に入ってきて、そういうことされると、本当にむかつく!”

そんな晴美の言葉にカチンと来た修三は、
晴美の胸を揉み始めるー

「うるさいやつだ!この身体はもう俺のものなんだー!」
鏡の前で邪悪な笑みを浮かべながら
両胸を揉む晴美ー。

やがてー、指を舐めたり、髪のニオイを嗅いだりー、
スカートを触ってへらへら笑ったりー、
欲望の限りを尽くし始めるー。

がー

”変態!変態!変態!変態!変態変態変態変態!”
晴美が、変態を連呼し始めて、
さらには、大声で叫び声をあげたりしはじめるー

最初はそれを無視していた、晴美を支配した修三だったが
あまりの煩さに、欲望を楽しむどころではなくなり、
「もう黙ってろ!!!」と、叫んだー。

”ーー黙らない!あんたがわたしから出ていくまで、黙らない!”
晴美は、晴美で自分の身体を取り戻そうと必死だったー。

必死に言葉を吐き出し続ける晴美ー。

そんな、あまりにもうるさい晴美に、晴美の身体を支配しているはずの
修三は苦しみー、悲鳴を上げながら耳を塞ぎ、しゃがみ込むー。

けれど、そんなことをしても”無駄”ー。
脳から直接響き渡っている晴美の声を消すことは出来ずー、
耳を塞ごうと、何をしようと、どうすることもできなかったー

「あぁ、黙れ!だまれだまれだまれ!
 これ以上うるさくすると、お前の身体で暴れてやるぞ!」

脅すような口調で叫ぶ晴美を支配した修三ー。

だが、晴美の意識はー
強烈なカウンターを加えて来たー

”そんなことをしたら、わたしはもっともっと
 中で騒ぎ続けるよ!?
 わたしの身体で暴れても、わたしは消えないー!
 あんたが出てくまでずっとずっとずっと、
 あんたに話しかけ続けてやる!”

晴美の言葉に、晴美を支配している修三が気圧されるー

仮に、晴美の身体で暴れてもー
晴美の意識は確かに消えないだろうー。
それどころか、さらに騒ぎ出す可能性もあるー。

しかも、何をしても今のところ、自分が
晴美の声から逃れる方法は無さそうだー。

「ー…く、くそっ…!だったら!」
晴美の身体で修三が、ハサミを手にし、
自分の首筋に突き付けるー。

「ーーー黙らないと!…黙らないと、自殺させるぞ!」
そう叫ぶ晴美の身体ー。

これには、流石に晴美の意識も驚いた様子だったー。

がー

”そんなことしたら、あんたも死ぬんじゃない?”と、
晴美は、動揺を悟られないように、そう言い放つー。

その言葉にー
小心者でもある修三は完全にビビってしまったー。

カタカタとハサミが震えだすー。
やがて、ハサミをその場に落とすと、半泣きの状態で、
耳を塞ぎながら
「どうしてこんなことになったんだー…」と、呟くー

「うるさいーうるさいーうるさいーうるさいー…
 頼むから…!頼むから静かにしてくれ!」

そう呟く晴美を支配した修三ー。

だが、晴美の意識は
”静かにしてほしいなら出て行って”と言い放ったうえで
”もし、あんたがわたしの身体から出て行かないなら
 わたしの話し相手、あんたしかいないんだしー、
 永遠に喋り続けてやるから!”
と、きつい口調で言い放ったー。

けれどー
そう言われてもー
修三は”出ていくことができない”のだー。

どうすることもできないのだー。

元々学校でも”全然喋らなそうに見えるのに、うるさすぎ”と、
友達から笑われるぐらいにおしゃべりな晴美は、
ずっと修三に語り掛け続けたー。

彼女自身も”自分の身体を奪われている”という強い状況に
不安を感じていて、ずっと喋り続けているのは
その不安に自分が押しつぶされないようにするー…という意味合いも
無意識のうちにあったー。

そんな彼女には”喋り続けること”しかできなかったー

「あぁ…うるさい!うるさい!うるさい!もうやめてくれ!」
晴美の身体で叫ぶ修三ー。

このままだと、頭がおかしくなってしまうー。
そう思いながら「は、話を聞いてくれ!」と、叫んだー

”なによ?あんたが出ていく以外、わたしが静かにすることはないから!
 早くわたしの身体を返してよ!”

晴美の意識がそう叫ぶー。

修三はたまらず、晴美の身体で
憑依するまでの経緯、今は本当に抜け出せないこと、
心の底から晴美の外に出たいことを説明するー

「ーお、お前の身体からは出ていくー
 こんな目に遭うなら、もう二度とお前には憑依しないー。
 約束するー
 だから、協力してほしいー
 お前の身体から、俺が抜け出す方法を探すのをー」

修三が、晴美の口でそう言うと、
晴美の意識は少しだけ間を置いて考えたー。

がー、
晴美からすれば
”そう言ってわたしの身体に居座るつもりじゃ?”とか、
”身体から抜ける方法を探すとか言って、実はわたしを消すつもりなんじゃ?”とか、
”もう一度憑依しないという言葉は信じられるのか”とか、
そういう疑問ばかりが浮かんだー

そもそも、何の接点もなかったはずなのに
”いきなり”憑依してくるようなやつだ。
憑依なんてことがあることにも驚きだけど、
とにかく、こんな男信用できないー。

それが、晴美の結論だったー

”嫌だー 何でわたしが手伝わなくちゃいけないの?
 さっさと身体を返しなさいよ!
 この泥棒!変態!不法侵入者!!!!”

手当たり次第罵声を浴びせて来る晴美の意識ー

晴美の意識は休むことなく、修三に罵声を浴びせ続けー、
大声で騒ぎ続けたー。

身体を乗っ取られて”何も”できず、
修三に語り掛けることしかできない晴美は、
休むことなく、ずっと騒ぎ続けるー

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!」
晴美の声で叫ぶ修三ー
両耳を塞ぎながら「やめてくれぇえええええ!」と、叫ぶー。

けれど、”脳の中”から直接響き渡る晴美の声は
”ノイズ”のように響き渡り続けー、
どうすることもできなかったー。

部屋に籠ったままの晴美を心配する両親ー。

そして翌日ー。
修三は、晴美のスマホを操作しながら
”自分の身体”が死亡したことをニュースで知ったー

小さく、”男の変死体発見”というニュースが
流れていたのだー。

憑依薬の出品者・愛染に連絡を取るもー
”ノークレーム・ノーリターンで”と冷たくあしらわれて
対応して貰うことはできなかったー。

やがてー
修三は、晴美の身体で何をする気にもなれずー、
ずっと続いている”晴美の意識のわめく声”に、疲れ果てていたー

”この身体から、逃げたいー”
それだけを願う修三ー。
疲れ切って、精神的に衰弱した修三はー
もう、晴美の身体で何かをする、という気力すら沸かなくなってしまったー。

”ちょっと!何もしないなら、わたしの身体返してよ!
 見たい配信もあるし、買い物にも行きたいし! 学校も!
 なに、さっきからずっと体育座りしてんのよ!
 ちょっと!ねぇ!

 黙ってないで何とかいいなさいよ!
 この泥棒変態!”

晴美は、憑依してからずっとこの調子だー。
あまりにも騒がしい声ー

修三は、この声から逃れたい一心で、
晴美の身体で目を閉じたー。

助けてくれー。
もう、何も聞きたくないー。

それだけを願いながら
精神的にすっかり参ってしまった修三はー
やがてーー

「ーー!?!?!?!?!?」
晴美が驚きの表情を浮かべるー。

突然ー
”身体”が動くようになったのだー

「ーーえっ!?う、動くー!?あれ!?や、やった!」
晴美がそう言いながらー
「もう2度わたしの身体に入らないで!」
と、周囲を見渡しながら叫んだー

当然、返事はないー

”ーーーーー!?”

だがー
修三は晴美の外に出て行ったわけではなかったー。

”晴美の中”にまだ存在しているー。

けれどー…
精神的に弱り切った修三に、もう何もすることは出来ずー、
身体の主導権も晴美に取り戻されてー、
その心の弱さからー、逆に自分自身が”憑依された側”のようにー
心の奥底に封じ込められてー
そのまま、消えてしまったー。

この日、憑依薬を悪用しようとした男は、
乗っ取った身体で大したことをすることもできないままー
事実上の”返り討ち”に遭ってしまったのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

耳鳴りが酷かった時に、
”逃れられない音”=”憑依したのに、ずっと脳内で騒ぎ続けられたら…?”…という感じに
思いついた作品ですネ~笑

一つネタが生まれたので、耳鳴りにも感謝デス!笑

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コメント

  1. 匿名 より:

    憑依被害者のまさかの逆転勝ちですね。

    ところで、自殺以外でも、家族に危害加えようとするとか、死なない程度に自傷するとか、もっと他の上手い脅し方をすれば、どうにか黙らせることも出来たのでは、という気がしますけどね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      今回は逆転できちゃいました~!☆

      彼(憑依した人)は小心者で神経質でもあるので、
      そんなことは出来ず、そのまま返り討ちにあってしまいました~笑
      憑依する人が上手な人なら、勝てたかもしれませんネ~!

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