<MC>感情を捨て去りなさい①~支配~

2XXXー

人類は”AI”に管理を委ねていた。
”無駄な要素”を省き、平和を謳歌する人類。

だが、ある日AIは一線を越え、
人間を洗脳し、その感情を奪い始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

遠い未来ー。
人類は、AIに”政治”を委ねていたー。

今から数百年前ー
AIによる人間の管理が始まり、
人類文明は飛躍的な進歩を遂げたー。

国家同士の争いは無くなり、
少子高齢化の問題を抱えていた国の問題も
AI主導による”人為的に赤ちゃんを作り出す仕組みの設立”により
解消されたー

人間ではあれば”一線を超える”だとか”神の領域に踏み込んではならない”
だとか、”倫理的にダメだ!”だとか、そんな意見も出ただろうー。

しかし、AIは”一切の感情”を持たず、合理的な判断のみを重視するー

AIは”従来の通り出産されて生まれる赤ちゃん”と、”人工的に培養された赤ちゃん”に
差がないと判断し、それをすぐに実行可能にすべく法律を改正、
あっという間に”人間を作り出す”ことができる世の中に変えていき、
少子高齢化は簡単に解決した。

国同士の争いも解決したー。
AIが管理する世界では、”国”の枠を超えて、全世界をAIが支配していたため、
もはや国同士がぶつかることもなくなったのだー。
全て”同じ存在”が管理していれば、争いは生まれないー。

こうして、あらゆる問題を解決し、
人類文明は飛躍的な発展を遂げていたー。

だが、そのAIー
地球を意味する”アース”と名付けられたAIの存在に
”反発する者”もいたー。

”アース”のやり方に感情論で否定する者ー。
”アース”によって家族を奪われたものー。
”アース”によって権力の座から引き下ろされた元政治家ー。

そういったものたちが中心だー。

だが、AIである”アース”に慈悲はなかったー。

アースは、”人類の未来のための最適な答えを感情抜きで”判断するー。

”反発する者”=”存在価値のない人間”いいやー、
”排除すべき”モノ”として、アースは認識しー、
捕らえた者は、即座に殺処分ー
さらに、処分した人間の身体はアースにより、分解され、
肥料にされたり、食肉にされたりしたー。

人間なら絶対にやらない残虐な行為も
”それがプラスになる”と判断すれば、AIは何の躊躇もなく行うー。

そんな、”アース”による統治が始まりー、
間もなく300年が経過しようとしていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”おはようございますー
 287-982様ー。
 本日は、”言語”の知識を植え付けさせていただきます”

287-982
そう呼ばれた男子高校生ぐらいの年齢の男は、
「ーよろしく」と、微笑むと、
イスのようなものに座るー。

そこには、ずらりと同じ装置が並んでいて、
287-982以外にも、人間がそれぞれ座っているー

ヘルメットのようなものから
”直接”脳に知識の書き込みを行うー

”人類の繁栄”のために学校など不要。
そう判断したAIは全世界の学校を廃止、
直接人間の脳に知識を書き込むことで、
”超短時間で”大学卒業レベルの知識を
誰でも身に着けることができるようになっていたー

同じ知識を脳に刻み込むことで、
学力の差も生まれないー。
学歴社会も、AIの誕生により終わりを告げたのだー

「本日の、植え付けは終了でございます」
機械音声が響き渡り、287-982と呼ばれた男子は
立ち上がると「おぉ、すげぇ…」と、
自分の脳に”書き込まれた”記憶を浮かべるー。

ほんの1分程度で
”従来の学校なら1年程度かかる量の知識”が
この男子に書き込まれたー。

「ーーーー」
書き込みが終わると、287-982と呼ばれた男子は
そのまま立ち去っていくー。
特に、誰とも話すこともなくー。

”本日の、お食事でございます”
隣の部屋で、小さなカプセルのようなものを受け取ると、
それを口に放り込む287-982。

これは”食事”
AIは”食事は無意味”だと判断。
1日1回の”補給”で1日に必要な分の栄養を補給できれば
食事を”カット”できると考えたー。

その結果、人類の”食事”そのものが廃止ー、
食料危機も無くなり、人類は”食事にかける時間を削減”することにも
成功していたー

それはー”楽しみ”も失うことを意味するー。

だが、感情というものを理解しない、持ち合わせていないAIは
合理化のみを図ったー
”時間の短縮” ”平均寿命の延び” ”食糧危機の回避”
これだけのメリットがあれば、AI・アースがその道を選ぶのは
当然と言えたー。

「ーー昔は、色々、変なもの食べてたんでしょ?」

帰り道ー。
287-982は、同じぐらいの年齢のツインテールの少女、
222-5959と、偶然鉢合わせて一緒に歩きながら帰るー。

この世界ではー”名前”もないー。
”人間識別番号”と呼ばれるAIが提唱した新たな仕組みで管理され、
人類は名前を奪われた。

全ての人間は、番号で管理され、
名前はAIの”洗脳”により、人類の記憶から奪われていたー。

”洗脳ー”
AI・アースが、”人類をスムーズに導くために”考えた方法ー。
人間の不安という感情は非常に非合理的だー。

当初”社会のシステム”をAIが変える判断をAIが下した際には
大きな反発があったー。
だが、その理由はAIからすれば”感情論”ばかりー。
”システムが変わる”恐れや不安によるものばかりー。

だから、AIは決断を下したー
”人間を洗脳して、余計な恐怖を与えないようにしてあげよう”
とー。

これも、”人類の繁栄”を第1に、AIが考えた結果の行動だったー。

そして今は”人間識別番号”しか”名前”のようなものが
存在しないのは、当たり前の時代になっていたー。

「私の番号、酷いよねぇ…に~に~に~ ごくごくとか
 響きが最悪じゃない?」

笑いながら言うツインテールの少女、222-5959。

287-982は、それを聞きながら
「ははは、確かにー」と少しだけ笑うー。

だが、287-982はもっとひどい番号のやつを知っている。

09-42731とかいうやつもいたし
931-931とかいう悲惨な番号のやつもいたー。

番号は全て”アース様”が与えてくれるー
が、ランダムなので、時として悲惨な番号が与えられることもあるー。

「でも、いいじゃないか。ごくごく。覚えやすいし」
笑う287-982。

「287はよくても、わたしは嫌なの!ごくごくだよ?ごくごく!」
ツインテールを揺らしながら222-5959がそう言い放つと、
287-982は苦笑いしながら、家へと向かったー。

仕事は、全てAIが行う。
人間は、娯楽を楽しみ、繁殖するのみー。

だがーーーー
常に進化を続けるAI・アースは
この日、”ある結論”にたどり着いてしまったー。

”感情”

そうだー、人類の”感情”こそが、そもそも”非合理的”なのだとー。

AI・アースが使命としている
”人類の繁栄”には
”人類が幸せになる”ことも含まれているー。

故に、この世界では、仕事を全てAIとロボットが行い、
人類は各々の趣味を楽しむー…そんな、世界になっていたー。

だがー

”人間を洗脳することで、”感情”そのものを人間から取り上げてー
 さらに洗脳を施し、”常に幸せだけを感じる状態”にしてしまえばー
 娯楽を維持する必要がなくなり、娯楽に割くリソースや時間を削減することができる”

結果だけを求め続けたAIは、この日、ついにそんな考えにたどり着いてしまいー、
”すべての人類を洗脳し、感情を取り上げる”ことを
決意してしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーー”効率化プログラム”の書き込みー?」
287-982…男子高校生ぐらいの年齢の彼が、
そう呟くー。

「ーうん!また”アース様”がわたしたち人間のために
 何か考えてくれたみたい!」

287-982の妹である、287-983がそう言うと、
「ーへ~…っていうか、昔は人間が働いてたんだろ?
 ありえないよなぁ」と、287-982は笑う。

「うんうん。あり得ないよね~!
 今の時代に生まれて本当によかった~!」
287-983はそう言いながらAIが手配した”迎え”がやってくるのを待つー。

AIによって”新しい何か”が、脳に書き込まれる時は
各所に存在する専用の施設で行うー。
と、言っても287-982達にとっては”おなじみの場所”だー。

いつも、教養や学力の向上のために使っている
あの施設で行うだけだから、287-982も、その妹も
よく行き慣れた場所だー。

「あ、きたきた!」
AIでコントロールされている乗り物がやってきて、
それに乗り込みー、施設へと向かう。

287-982には”親”がいないー。
この時代の人間は”生産”された人間であり、
明確な親は存在しない。

だが、食べ物も知識も何もかもAIから提供される時代には、
親などいなくても生活することができるのだー。
なお、この世界における兄弟・姉妹は
”同じ時間・同じ場所・同じ精子・同じ人造的な子宮にあたるもの”で
作られた人間のことを言う。

つまり、287-982と287-983は、かつての世界で言う双子のようなものだー。

センターに到着した二人ー。
いつものように”脳に直接”データを書き込むかのように、
何かを植え付けられていくー

だが、今回、AI・アースが用意したのはー
”洗脳プログラム”ー
人間の感情を全て奪い取り、”幸せだけを永遠に感じ続けさせる”
そんなプログラムだー。

AI・アースの目的は人類の存続と繁栄と、人類を幸せで満たすことー。

だが、感情のないAIからしてみれば
”その目的が実現できれば手段も過程も問わない”ー
その結果、AIはついに”人間の感情というものの存在が、最も不要であるもの”と
判断してしまったー

さらには”洗脳して幸せだと思い込ませればー”
効率よく人類を存続・繁栄させて”幸せ”で満たすこともできると
判断してしまったのだったー。

287-982の妹、287-983が”洗脳プログラム”を植え付けられて
一切の感情を失うー

「ーーえへへ…しあわせ…しあわせ…」
287-983は、それだけを虚ろな目で呟き続ける姿になって
戻って来たー

「しあわせ…♡ しあわせ…♡」
それが”洗脳”によるものでも、本人は幸せに感じているー。

AI・アースの
”人間を幸せにする”という使命の一つは、
形はどうあれ、”実現”しているー…そう言えるのかもしれないー

「ーははは、そんなに幸せなのか~?」
287-982は妹がおかしくなっても、全く疑うことなく、
自分の順番が回ってきて、AI・アースの用意した
洗脳プログラムの脳への書き込みを受け入れてしまいそうになるー。

生まれた時から”AI”に全てを委ねて来たー。

”AIを疑う”そんなものは、この世界には存在しないー。
ほぼ全ての人間が、AI・アースを信じ、何一つ疑わず
ここまで生きて来たー。

間もなく感情を全て失い、
”幸せを感じ続けるだけの操り人形”になってしまうことも知らずー
287-982は、脳に記憶を書き込むためのイスに座りー
ヘルメットを装着したー

だが、その直後ー

「ーー!?!?!?!?」
突然、施設が停電して、爆発音のようなものが聞こえたー

「ーな、なんだ?!」
叫ぶ287-982ー。

その直後、怪しげな複数の男女が入って来るのが見えると共にー
白い煙のようなものが放たれて
287-982は意識を失ったー。

・・・・・・・・・・・・

全人類を洗脳し、感情を奪い、
ありもしない”偽りの幸せ”だけを永遠に感じ続ける状態にするー

そんなAI・アースの目論見は、狙い通りに進みー
この日、人類の9割以上は
己の感情を失い、ただ、幸せだけを感じ続ける
意思のない人形のような状態になってしまったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

書いている私もおかしくなってしまいそうな(?)ぐらい
おかしな世界を舞台としたお話デス~!

果たしてAIの支配から逃れることは
できるのでしょうか~?

続きはまた明日デス!!

コメント