いつものように、社員たちが忙しく働いていたとあるオフィスー。
しかし、ある日突然、
オフィスごと”異世界”に飛ばされてしまったー
しかも、その異世界には
”人を皮にする謎の生物”が徘徊していた…!
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パソコンやスマホ向けのアプリなどの開発や販売、
新技術の開発などを主な事業としている
その会社では、今日も社員たちが忙しそうに働いていたー
そんな会社の多数存在する部署の一つー、
営業や、PR、広報関連などを担うこの部署では、
今日もいつものような時間が流れていたー。
「ーー来月配信開始の例のアプリの資料はもう完成したかな?」
優しそうな雰囲気の眼鏡をかけたおじさんー
この部署の部長・北川(きたがわ)がそう社員に確認すると、
眼鏡をかけた無表情の女性社員・涼子(りょうこ)が
「えぇ。もう完成してますー」と呟いたー。
涼子は30代前半の女性社員ー。
まるでマシーンのように無表情に、かつ的確に仕事をこなすため
”実はお仕事アンドロイドなのではないか”という謎の噂が立っているー。
そんな彼女は今日も恐ろしいスピードでキーボード入力を終えて、
必要な書類を完成させていたー。
「ーはぁ、いつもすごいねぇ」
隣にいるやる気のなさそうなおじさん社員・三田村(みたむら)が
そんな涼子を横目で見つめながら笑うー。
「三田村ー、君はいつもさぼりすぎだ」
北川部長がそう言うと、三田村は「へいへい」と言いながら
パソコンに向かって作業を再開するー。
時計の針は、17時目前を示していて、
まもなく”定時”を迎える時間ー
このオフィスで働く社員の何人かは
帰る時間を強く意識し始めた時間だー。
「ーーあ、わたしやっておきますよ!はい!」
20代後半の女性社員・高坂 香苗(こうさか かなえ)が、
新入社員からのお願いにも嫌な顔一つせず答えるー。
香苗はとても真面目な性格で優しくー
先輩たちからは可愛がられー、
面倒見も非常に良いことから後輩たちからは慕われているー。
自分のことよりも、他人を優先するー
そんな感じの子だったー
そんな、社員たちがいつものように17時を迎えようとしたその
目前のことだったー
「ーーーーー」
時計を確認しながら、笑みを浮かべた鋭い目つきの男が
「それでは、俺は失礼しますよ」と、
北川部長に向かって言葉を呟くー
どこか影のある、寡黙な30代後半の男性社員・倉木 泰明(くらき やすあき)ー
彼が、不気味な笑みを浮かべながら、
エレベーターの方に向かおうとしたその時だったー
「ーーーー!?!?!?!?!?」
泰明が表情を歪めるー
何かー
巨大なタービンが音を立てているようなー
そんな”謎の騒音”が聞こえ始めたー
「なんだ?」
北川部長もー、他の社員たちもすぐにその”おかしな音”に気付くー
「ぶ、部長ーあれ、なんだ!?」
やる気のないおじさん社員・三田村が窓の外を見て叫ぶー
謎の光が、オフィス全体を包み込み始めるー
”青白い謎の光ー”
明らかに普通ではないその状況にー
社員たちの中には悲鳴を上げたり、
「なんだよこれ!?」と、戸惑いの声をあげたりするものが次第に増えていくー
「ーーーーーー!!!!」
そしてーー
その光が、あり得ないほどの光を放ちーーーーー
その場にいた社員たちの意識は吹き飛んだー
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー…う……」
”帰りたいなぁ”
そんな風に思いながら働いていた若手女性社員の中里 美雪(なかざと みゆき)が、
意識を取り戻すー
美雪も、あのオフィスで働いていた人間の一人で、
17時になったからそろそろタイミングを見計らって帰ろ~!、などと考えている最中だった。
「ーーー…あ…あれ…わたし…」
美雪が、身体を起こすとー
そこは”いつものオフィス”だったー
時計の針は、17時30分あたりを示しているー。
確か、謎の光に包まれて意識を失う直前に時計を見た時は、
17時5分を過ぎたところだったー
大体30分近く意識を失っていた、ということだろうかー
「ーーー……せ、先輩ー」
美雪が、ふと近くに倒れていた面倒見の良い先輩女性、香苗に気付き、
声を掛けると、香苗も「う…」と、意識を取り戻して
周囲を見渡したー
「な…何が起きたの?」
香苗がそう言葉を口にするー
しかし、美雪自身も、たった今、目を覚ましたばかりで、
状況を把握することは出来ていないー。
「ーーおいおい…なんだこりゃ…」
ふと、声が聞こえたー。
窓の方に視線を向けると”窓の外に立っている”
男性社員・三田村と北川部長の姿が見えたー。
「ーえっ!?」
美雪は思わず変な声を出してしまうー
それもそのはずー
美雪が勤務している部署は”4階”に存在していたー
4階の窓の外に、何故北川部長たちが立っているのかー、と思いー、
慌てた様子で、
「えっ!?部長!?は、早まっちゃだめですよ!」と、叫ぶー
少し天然な美雪の言葉に、北川部長は
「おー…中里ー、無事だったかー」と、安心した様子で振り返ったー
「ぶ、無事だったか!じゃないですよ!
ぶ、部長ー、ど、どうして空中に浮かんでるんですか?!」
美雪が叫ぶと、北川部長の横にいた三田村が
「美雪ちゃん」と苦笑いしながら足元を指さしたー
北川部長と三田村が窓の外に立っているためー
その場からは見えず、窓際の方に美雪と香苗が寄っていくとー…
「わっ!?えっ…?」
美雪は思わず変な声を出したー
”4階の窓の外”に立っていた北川部長と三田村の足元には
普通に”土の地面”があったのだー
「え…こ、これはどういうー…」
よく見ると、窓の外に広がっているのは
”いつも見るオフィス街”の景色ではなくー
木々が生い茂るー、少し幻想的な雰囲気もある”森”のような場所だったー
まるで、ジャングルの中のような音が響いているー。
「ーーえ……な、何が起きたんですか?」
美雪は訳も分からずに、首を傾げながら
そんな言葉を口にすると、
「俺たちにも分からねぇんだー」と、三田村が戸惑いの笑みを浮かべたー。
”オフィスの4階部分”だけが、別の場所に飛ばされてしまったのではないか、と
口にする北川部長ー。
しかし、三田村は笑いながら「んなワケあるかよー」と、首を横に振るー。
三田村と北川部長は出世に差はあれど、
同期であることから、互いによく親しそうに言葉を口にしているー。
「だが、エレベーターは動かないし、下に降りる階段も
途中から土で埋まっていて、それより下にはいけない」
北川部長のそんな言葉に、
頼れる先輩女性社員の香苗が「ーちょっと、電話かけてみますね」と、
オフィス内の内線から、別の部署に電話を掛けようとするー。
しかし、どの内線も繋がることはないまま、
時間ばかりが過ぎていくー
スマホも電波が全く聞いていない状態で
ネットを確認することも出来ないー。
「ーーダメですーどこにも繋がりません」
香苗がそう言いながら戻ってくると、
そうしている間に”無表情の女性社員”涼子と、
やる気のない無気力な男子社員・武三(たけぞう)が目を覚ましたー。
二人にも、状況を説明するー。
どうやら、オフィスの4階部分だけが”どこか別の場所に”
飛ばされてしまったのではないか、と主張する北川部長。
確かに”5階より上”も無くなっていて、
”4階だけに”異変が起きた可能性は高いー
天井はあるのだがー、
階段を登ろうとすると、”外”に出てしまいー、
外から見ると、土の上に4階部分だけがある状態ー
もしかしたら、3階より下は土の中に埋まっている
可能性も否定はできなかったが、
いずれにせよ、今の時点でそれを確認するのは
難しい状況であるのも確かだったー
「ーーーーー」
北川部長が、少し深呼吸をしてから安否を確認するー
謎の光に包まれた時点で
オフィスの4階にいた人間は全部で9人ー。
部長の北川 啓次郎(きたがわ けいじろう)
部長と同期のやる気のないおじさん、三田村 聡介(みたむら そうすけ)
入社2年目の若手女性社員、中里 美雪(なかざと みゆき)
20代後半の頼れる先輩女性、高坂 香苗(こうさか かなえ)
どこか影のある30代後半の男性社員、倉木 泰明(くらき やすあき)
眼鏡をかけた無表情の女性社員、大久保 涼子(おおくぼ りょうこ)
やる気のない無気力な若手男性社員、鹿島 武三(かじま たけぞう)
気さくなおばさん社員、茂木 文江(もぎ ふみえ)
入社3年目のギャル、西森 恵美(にしもり めぐみ)
この9人が、謎の光に包まれたオフィスの中にいたー。
北川部長の部署で働く社員はそれだけではなかったが、
外回りに行っていた人間や、
その日は休みだった出勤、
偶然、そのタイミングで4階にいなかった社員などは難を逃れー
結果的にはこの9人が巻き込まれるに至っていたー。
現在ー
この場にいるのは北川部長、同期の三田村、
それと美雪、香苗、涼子、武三の6人だー。
残りの三人に関しては北川部長が目覚める前に
既にこの場からは姿を消していたのだと言うー。
「目覚めた時、こんなメモが置かれていたー」
北川部長がそう言いながら、
必死に外部に連絡を取ろうとしていた香苗たちに向かって
声をかけるー。
”わたしたちは、周辺の様子を確認してきます。
しばらくしたら戻ります”
この字は、おばさん社員・文江の字だー。
そこには、”恵美ちゃんも一緒に”と書かれているため、
おばさん社員の文江と、ギャルの恵美は一緒に行動していることになるー
「ーあっ!」
頼れる先輩女性社員・香苗が声をあげるー
電話の電源が切れてしまったのだー
「ーーー…先輩…?」
美雪が不安そうに言うと、香苗は
「ー…”電気”が通ってないみたいー」と、呟いたー
今まで社内電話が使えていたのは、バッテリーで動いていただけのようだったー。
「ーーーーーはぁ~~~~…」
深くため息をつく香苗ー
いつも優しくー、頼れる先輩という様子の香苗ー
20代後半ながらとてもしっかりしていて、頼りにされている彼女だが、
少し苛立ちのような様子が見えて、
美雪は不安になるー
状況が全く分からず困惑する中ー
幻想的な森のような場所の奥からーーー
人影が姿を現したー
「ーーあ、あれっ!」
無気力な若手の男子・武三がそれにいち早く気付き、
指を指すー
するとー
奥からおばさん社員の文江が走ってこちらに向かってきたー
「ーーー…も、茂木!?」
北川部長の同期・三田村が叫ぶと、
文江は「た、た、助けてー!」と、いつもの気さくな様子も
完全に失った状態でー、そう叫んだー
オフィス周辺にいる6人に一気に緊張感が走るー
そしてーーー
「ォォォォォォォォォォォォ」
と、いう、この世のものとは思えないような雄たけびがー
文江の後ろから聞こえて来たー
「ーお、落ち着け!何が起きてる!?」
北川部長がそう叫ぶとー
文江が突然「うっ」と声をあげたー
「ーーー!?」
北川部長や美雪ら6人が表情を曇らせるー
それと同時に、文江がドサッと膝をつきー
その奥ー
霧に包まれて見えなかった箇所からー
”人型のなにか”が、姿を現したー。
人間ではないー
が、普段見かける動物でもないー
植物と人間が混じったかのような、
言葉では形容しがたいー”なにか”
と、しか言いようがないそれが姿を現すー。
植物のツタのようなものが、文江の後頭部に
刺さっているように見えたーーー
「きゃあああああああああああああ!!!!!!」
いつも頼りになる先輩社員・香苗が、
今まで聞いたこともないような悲鳴をあげるー
そしてー、次の瞬間、文江がまるで”脱皮して脱ぎ捨てられた皮”のように、
ペラペラになって、地面に崩れ落ちるー
「ーお、おいっ…うそだろー?」
やる気のないおじさん社員・三田村が声をあげるー。
”謎の生命体に文江が殺された”
6人は、誰もがそう思ったー
だが、次の瞬間ー
さらに、衝撃が走ったー
人型の化け物が、皮になった文江を掴むと、
そのままそれを”着ぐるみのように”着こんだのだー
不気味に、引き伸ばされるようにしてー、
文江”だった”皮が、化け物に着られていくー。
そしてーーーー
”文江を着た”化け物はーおばさん社員の文江になったー
「ーーーあらぁ…そんなに怖い顔しちゃって…どうしたの?」
片方の瞳が、不気味に赤く染まるー。
「ーーー……な、、な、、なんなんだこれは…!」
呆然とする北川部長ー
やがてー
指の1本を植物のツタのようなものに変形させた
おばさん社員の文江がー
美雪ら6人の方に向かって、不気味な笑みを浮かべながら近づいて来たー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
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”人を皮にして乗っ取る”
そんな化け物が徘徊する異世界に飛ばされてしまった
9人の運命は…?
続きはまた次回デス~!
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