バレンタインデーを壊すため、
授かった変身能力でクラスを混乱に陥れていく男子生徒…
やがて、大混乱の1日は、午後を迎えるー。
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孝彦はクラスの様子を見つめながらも
笑みを浮かべていたー。
あの後も、変身能力を使って
存分にバレンタインデーをかき乱した。
”大嫌い”なバレンタインデーをこんな風にすることができて
孝彦は満足していたー
”あの人がくれたこの力…本当に最高だなー
僕みたいなやつでもー
こんなことができるなんてー”
孝彦はそう思いながら、
クラスの様子を引き続き見つめるー
怒っている生徒もいれば
泣いている生徒も、
落ち込んでいる生徒もいるー。
予め用意した”恐ろしいほどに不味いチョコ”を、
女子の一人に変身して男子に渡したり、
また別の女子に変身して、クラスの大人しい男子生徒を
昼食に突入する直前のタイミングで呼び出してー
”告白なんかするわけないじゃーん!”と揶揄ったり、
クラスの可愛らしい女子に変身して
友達から貰ったチョコを”わざと下品に食べて”周囲をドン引きさせたりしたー。
そしてーー
「ーふむふむふむー」
昼休みに突入し、大人しい性格の女子生徒・静香(しずか)の姿に変身すると、
本物の静香が、提出物を提出するため、職員室の方に向かったのを見て、
笑みを浮かべたー。
クラスメイトの会話を”盗み聞き”することが得意な孝彦はー
お得意の”盗み聞き”によって、どうやら今日、静香は”好きな人”に告白する
つもりであることを知ったー
だが、大人しい性格の静香は、なかなかその決心がつかずー、
どうやら告白は放課後にするようだー。
しかしー
”告白なんかして、リア充が一人増えるなんてー…
僕がそんな未来は壊してやるぞ”
静香に変身した孝彦がそう心の中で呟きながら
教室に入ると、
そのまま静香の机を漁り始めるー。
周囲から見れば”静香が静香の机を漁っている”状態ー。
周囲は別に不思議に思わないー。
やがて、静香が放課後に好きな人に渡す予定の
”本命チョコ”を見つけると、静香姿の孝彦は
ニヤリと笑みを浮かべながら
早速”行動”を開始したー。
本命チョコを手に、教室の外に出る静香姿の孝彦ー
そしてー、使われていない演劇部の部室に移動するとー
それをペロペロと舐めるようにして、食べ始めたー
「えへへへー
本命チョコを勝手に食べてやるぞ!」
静香姿の孝彦は「何がバレンタインデーだ!」と呟きながら
静香が放課後に渡す予定だった本命チョコを食べ終えるー。
そして、満足そうに包み紙をゴミ箱に捨てると
「ごちそうさま」と、呟きながら変身を解除したー
教室に戻ると、既に静香は”本命チョコ”がなくなっていることに気付き、
焦った様子で、色々な場所を探していたー
”どんなに探してももう見つからないよー
そのチョコは僕の胃袋の中にあるんだから”
孝彦は満足そうにそう呟いていると、
クラスメイトの麻奈美が「…ねぇ、ちょっといい?」と、声をかけて来たー
「えっ…」
孝彦は途端に、まともな返事もできなくなって麻奈美のほうを見つめるー。
元々、大人しい性格の孝彦は、ほとんど女子に話しかけられることもないー。
そのため、急にオドオドした様子を見せると、
「い、い、い、いいけどー」と、挙動不審な返事をしたー
麻奈美に言われて場所を変える孝彦ー
孝彦は今日の朝、麻奈美の姿で学級委員長の肇を誘惑して、
肇の評判を陥れているー。
ついでに、麻奈美自身も、周囲から変な目で見られてしまう羽目になったー
”そのことに気付かれたとかないよな?”と思いつつも、
麻奈美と共に、人があまり来ない廊下にやってくると、
麻奈美が口を開いたー
「ーーー川島くんーーーーーだよね?」
麻奈美の言葉に、
孝彦は「えっ…!?えっ…!?あっ…」と、意味不明な返事をするー
そんな、孝彦の明らかな動揺を見て取ると、
「どういうこと?」と、麻奈美は呟いたー。
麻奈美はー
”孝彦の変身”に気付いたわけではない。
だがー
”あること”に気付いていたー。
それはー、
クラスのおしゃべりな女子・美海が
”貰ったチョコを自ら踏みつぶした”あのときー
美海に変身した孝彦は黒板に
”バレンタインデーなんて壊れてしまえ”
と、そう書いたー。
その字がー”孝彦の筆跡”だったのだー。
”美海が孝彦の字を書いた”
そんなことを疑問に思い、麻奈美は孝彦に確認していたー
「今日さー…朝から変なことばっかり起こってるじゃないー?
だから、色々気になってー…」
麻奈美はそう言うと、
”美海が孝彦の字を書いたこと”を口にして、孝彦本人に確認したー
「い、い、いや、し、し、知らないよー
ぼ、僕の字を、他の子が書いたって急に言われてもー
たまたま、似てただけじゃないかなー」
孝彦は汗をたらたら流しながらそう呟くー。
けれどー
麻奈美は言うー。
孝彦の字は特徴的で、他にああいう書き方をする子はあまりいないー、と。
去年ー生徒会の選挙管理委員を一緒にやった時に
”珍しい字を書く子だなぁ…”と思ったのが強く印象に残っていて
すぐに分かったー、と。
”ハ”が、妙に直線になっていて「ll」のような書き方になっていることや、
”ン”が、妙に線の角度がおかしくて「ソ」のようになっていることー
これは、典型的な孝彦の癖だと、麻奈美は言うー。
「どうして、美海ちゃんが、川島くんの字を書いたのか、どうしても気になってー」
麻奈美がそう言うー。
孝彦は「たまたま似てただけだよっ!」と、慌てて反論するー
まさか”変身”とは思っていない麻奈美はー
それ以上追求することが出来ずに困惑するー。
”ーくそっー何なんだよー
確かにこいつ、よく人のこと見てるけどさー”
孝彦は心の中で強い焦りを感じるー
”もしかして、もう僕の変身のこと、バレてるんじゃ”
と、いう不安が膨らむー
麻奈美を何とか誤魔化すと、
孝彦は焦った様子で部室に駆け込むー
そしてー
早速麻奈美の姿に変身したー
麻奈美の姿のまま、教室に行きー、
突然、教室内で怒鳴り声をあげて暴れ始めたー
”僕のこと、バレるわけにはいかないー”
そのことで、いっぱいだったー。
麻奈美を何とか”排除しないと”と、いうことしか
考えられなくなったー
「ま、麻奈美ちゃん!?」
困惑するクラスメイトたちを無視して
”麻奈美の姿”のまま、教室内で暴れまわりー、
イスを放り投げて教室の窓を破壊ー、
さらには手当たり次第、生徒にも暴力を振るったー
だがーーー
”元の姿”に戻ろうと教室を飛び出したところで、
”本物の麻奈美”と遭遇してしまったー
「ーー!」
「ーー!!!」
”僕のことを疑ってる”
そんな彼女に見られてしまったのは最悪だー。
咄嗟に、麻奈美姿の孝彦は、顔を背けるー。
だが、やはり麻奈美は気づいていたー
「えっ!?待って!なんでわたしがもう一人いるの?」
と、腕を掴んでくる本物の麻奈美ー
”ぼ、ぼ、ぼ、僕はーバレ、バレるわけにはーー”
”バレる恐怖”に支配された麻奈美姿の孝彦はー
”女子”相手に暴力を振るったー
麻奈美の姿のまま、麻奈美の顔面にパンチをすると、
悲鳴を上げて泣き出す麻奈美を無視して、
部室に駆け込むー
部室で慌てて変身を解除してー
ガタガタと身体を震わせる孝彦ー
「僕はー僕は、僕は、僕は僕はー」
”バレたくない”という想いが爆発するー
バレたらー
父親にも、母親にも怒られるだろうし、
クラスではもう立場も何もかもを失うー
それだけじゃない、最悪の場合ー…
学校にいられなくなる可能性もー
やがてー
5時間目を知らせるチャイムがなると、
深呼吸して、平然とした表情で教室に戻ったー
教室は大分片付いてはいたものの散らかっていて、
先生が割れた窓ガラスの確認をしていたー
麻奈美の姿はないー
”暴れた張本人”として、生徒指導室にでも
連れていかれたのだろうー。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
荒い息を吐きながら、笑みを浮かべる孝彦ー
危ないところだったー
だが、もう十分にバレンタインデーを滅茶苦茶にすることが出来たー。
ホッとしたような笑みを浮かべながら
孝彦は
”クラスのバレンタインデー”が滅茶苦茶になったことを実感し、
充実した笑みを浮かべたー。
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学校での1日が終わるー。
心無しか、下校していくクラスメイトたちの表情は
疲れているように見えたー
「ーーーーー」
ザッ…
背後から気配を感じ、振り返ると、
そこには例の優男がいたー
「ーどうでしたか?”その力”で、存分に楽しめましたか?」
孝彦に力を授けた”ナイト”がそう言うと、
孝彦は「う、うんー最高だったよ」と、満面の笑みを浮かべたー。
「ーー少し、話、いいですか?」
ナイトのそんな言葉に、孝彦は頷くと、
近くの路地裏に入っていくナイト。
一瞬、躊躇ったのを見透かしたかのように
「安心してくださいー。この奥に仲間が待ち構えていて
いきなりあなたを誘拐してーなんてことはしませんよー
ただ、話をするだけです」と、ナイトは笑うー。
「ーーあは…お見通しかぁ…」
孝彦は照れくさそうに言うと、
ナイトと共に路地裏に入りー
変身能力でやったことを色々聞かれー、
それを答えたー。
「なるほどなるほどー
お疲れ様でした」
ナイトはそう言うと、「いくつか、教えて差し上げましょう」と、
孝彦のほうを見て言い放ったー
「まずー
静香という子ー
”好きな人”に本命チョコを渡すー
そんな予定だったそうですねー。」
ナイトが言うと、孝彦は「あぁー。僕が食ってやったけど」と、笑うー。
すると、ナイトは失笑したー。
「その渡す相手、誰だったか、ご存じですか?」
「いや」
孝彦がすぐにそう言うと、
ナイトは続けたー
「あなたですよー」
とー。
「ーは?」
孝彦が表情を歪めるー
「あの静香という子が本命チョコを渡そうとしていた相手は
あなたです」
ナイトが堂々と断言すると、
孝彦は「え…い、いや、冗談きついよーそんなわけないってー
僕なんかがモテるわけー」と、言い放つー
だが、ナイトは首を振ったー
「残念ながら、事実なのですー」
とー。
青ざめる孝彦ー
自分は、人生初の本命チョコが貰えるはずだったのに、
それを台無しにー
「ーー麻奈美という子ー
あなたの正体に気付きかけたあの子はー
このあと、不登校になりますー
あなたがあの子の姿で暴れたために、あの子は二度と
これまでのように優しい笑顔を浮かべることはないー」
その言葉に、孝彦は震えるー。
「ーー学級委員長の肇という子は、”浮気”を疑われて
彼女に振られますー」
「ーあなたの親友の彼女・璃子という子はー、
あなたの親友に振られて自暴自棄になって
このあと、非行に走り始めますー」
そんな言葉に、孝彦は「な、な、なんなんだー
嘘をつくな!」と声を荒げるー
「そんなこと、あるわけがー!」
孝彦が叫ぶと、
ナイトはさらに続けたー。
「愛梨沙という子ー。
あなたが下剤入りのチョコを渡しましたね?
あの子が
このあと、どうなるか分かりますか?
プライドの高いあの子は、クラスメイトの前でお漏らしを
してしまったことから立ち直れずにー」
ナイトはそれだけ言うと、
「部屋で首を吊って、それはもう酷い有様で発見されますー」と、
淡々と呟いたー
「な、な、な、な、な、な、なんなんだー!
何でそんなことが分かるんだ!」
孝彦はそう叫ぶと、
”ナイト”は笑みを浮かべたー
「分かるのですよー
”我々”はー、過去から未来までー
人類の存在している時代を”行き来”しているのですからー」
ナイトの言葉に、
孝彦が真っ青になるー。
それと同時にー
「ー!?」
孝彦の手が、突然液体のようになって、溶け始めるー。
「ーー時間です」
ナイトは時計を見ながら呟くー。
「ー実験へのお付き合い、ありがとうございましたー」
それだけ言うと、立ち去ろうとするナイトー。
「えっ!?な、なんだこれー!?えっ!?」
手だけではなく、胴体も足も、あらゆる場所が
溶け始めて孝彦が悲鳴を上げると、
ナイトは振り返ったー。
「ーーーー”力”には代償があるー。
それだけのことー」
ナイトはそれだけ言うと、
スライムのように溶けて、そのまま地面に溶け去っていく
孝彦に背を向けて、そのまま立ち去って行ったー。
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AD0000-
AD0500-
AD1000-
AD1500-
AD2023-
AD2898-
様々な西暦が表示されているその部屋に”ナイト”が戻ってくると、
複数の人間のホログラム映像が表示されるー
妖艶な容姿の女王のような女”クィーン”
覆面で顔を隠した謎の男”ビショップ”
巨体の無邪気そうな雰囲気の男”ルーク”
「ーーーーおや、皆さんお揃いでしたかー」
戻って来たナイトが言うと、
クィーンが何か言葉を囁くー
「ーえぇ、やはり人間は”愚か”ですよー
今回も、”そう”でしたー」
ナイトがそれだけ呟くと、
笑みを浮かべながら西暦が大量に表示された立体映像のほうを見つめながら呟いたー
”人間は愚か”
故に、我々”闇.net”は存在するのだー
とー。
おわり
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コメント
今日はバレンタインデーデス~!☆
と、いうことで、
バレンタインデーを題材とした変身モノでした~!
お話の方は、
やりたい放題した結果、色々な人にとっての
バッドエンドになってしまいましたネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
良いバレンタインを~☆
コメント
憑依じゃないけど、前の告白をぶち壊しにする話に近い内容で面白かったです!
それにしても、みんなそれぞれ悲惨なことになってしまいましたね。
次に、また類似作やるなら、今度は入れ替わり物が見てみたいですねー。
コメントありがとうございます~!★
色々なものが壊れてしまいましたネ~!
来年のバレンタインに期待…デス★!