”バレンタインデーをかき乱してやろう”
変身能力を手に入れた”モテない男子生徒”が、
バレンタインデー当日を大混乱に陥れるー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”バレンタインデーなんか消えてしまえ”
モテない男子高校生・川島 孝彦(かわしま たかひこ)が、
不満そうにスマホを使って、ネット上にそんな書き込みをするー。
彼ー、孝彦は”とにかくモテない”ー
自分の性格にも問題があるのかもしれないがー、
とにかくモテず、
しかも、それを孝彦自身も気にしていて、
あまりのモテなさに、高校に入った頃から性格が歪んでしまっていたー。
バレンタインデーに対する憎しみをネット上に
異様な回数、書き込んでいく孝彦ー
友人からは”別に気にしなくていいじゃないか”と、
言われているものの、
孝彦は、気にすることをやめることもできず、
今日もバレンタインデーに対する憎しみを強く、強く、募らせていた。
だがーー
「ーーおやおやー。荒れてますねー」
ー!?!?!?
自分の部屋で、”他の人間”の声がしたことで、驚きー、
振り返ると、そこには、見知らぬ優男風の男が笑みを浮かべたー
「ーおっと、そんなに驚かなくても大丈夫ですー
私は”ナイト” 怪しいモノではありませんー」
ナイトと名乗る優男がそう呟くと、
孝彦はすぐに「い、いや!あ、怪しすぎるよ!」と、反論したー。
「はは、確かにー」
ナイトを名乗る優男も、孝彦の言葉を認めて
少し笑いながら頷くー。
「ーでも、あなたに敵意はありませんー
安心してくださいー」
そう言い放つとナイトは手袋をはめた両手を上に挙げて、
敵意がないことを示したー
「ーひ、人の家に勝手に入り込んでおいてー
な、何なんだー…」
孝彦がそう言うと、
”ナイト”を名乗る男は「バレンタインデー、お嫌いのようですね?」と、
笑みを浮かべたー
「あぁ、嫌いさ」
孝彦がそう言い放つと、ナイトは静かに頷きながら
「ーもし、君にバレンタインデーを壊す力があったら?」と、
笑みを浮かべるー。
「ーー…バ、バレンタインデーをこわすー…?」
呆然とする孝彦ー
そんな孝彦の目の前で、突然ナイトは、チラッと横を見るとー
突然ーーー
孝彦の”母親”の姿に変身したー
「うわっ!?お母さん!?」
びっくりして、変な声を出してしまう孝彦ー
「ーいいえ、あなたの母親ではありませんー
私が、あなたの母親に変身しているだけですー」
孝彦の母親の姿になった”ナイト”が母親の声でそう呟くと
孝彦は「マ…マ…マジでー?」と、困惑の表情を浮かべたー
ふと、”実はお母さんによるドッキリなのではないか”と思った
孝彦は「じ、じゃあー僕の前で…そのー…も、揉んでみてよ」と、
母親の姿をしたナイトに対して言い放つー
ナイトは笑みを浮かべると、
「ーこれで、満足ですか?」と母親の姿のまま両胸を揉み始めたー。
「お…お母さんがこんなことするはずないー」
孝彦はそう言うと、すぐに笑みを浮かべながら「す…すげぇ…!」と
声をあげたー
「この力があればー
君が大嫌いな、バレンタインデーをこわすことができるはずですー
どんな風に使えば、バレンタインデーを荒らすことができるかどうかはー
高校生の君になら、頭を使えば分かりますよね?」
ナイトが、母親の姿から元の姿に戻りながらそう言うと、
「ーーま、まさか、僕にその力をくれるのかー?」と、
孝彦は少し目を輝かせたー。
「ーーえぇ。そのためにここに来たのですから」
ナイトがそう言うと、孝彦は一瞬、躊躇いのような表情を見せるー
「で、でも…そ、それって…その…犯罪とか…悪いことなんじゃー?」
孝彦がそう言い放つー
「ー”法律”的には他人に変身すること自体は問題ありませんー
あとは、そうー使い方次第ですね」
ナイトの言葉に、
孝彦はさらに困惑するー
「どうして、僕にー…?
こんな力を持つ君が…ぼ、僕にこんな力を渡すメリットが
思いつかないー」
孝彦は不安そうにそう言葉を口にしたー。
この”ナイト”を名乗る男が
”他人に変身する力”を孝彦に授けて
”何のメリットがあるというのか”
それが、全く理解できなかったー。
自分がナイトの立場に立ってみれば
もし、変身能力を渡すのであれば
”何か企んでいる”はずだー。
まさか、バレンタインデーをこわすためとは思えないし、
目の前にいるナイトを名乗る優男は、
正直、モテそうな見た目に見えるー。
「人類の未来を切り開くあらゆる新技術を開発するためー
その技術研究ー
そう言えば、信じてもらえますか?」
ナイトがそう言い放つと、孝彦はなおも不安そうな表情を浮かべたー
「ー何事にも臆病で、チキンのような人生を送りー
このままずっと、ネット上にバレンタインデーの悪口を
書き続けるー
誰も真剣に読んですらいない、そんな文章を書き続ける
人生を今後も送りたいのならー、私は別に止めませんー」
ナイトの丁寧な口調ながら挑発的な言葉にムッとする孝彦ー
「ひ、酷い言い方だな!」
孝彦が必死にそう言い放つと、
「君の未来が見えますねー」と、ナイトが笑いだすー
「?」
孝彦が”意味が分からない”と言いたげな表情でナイトを見つめると
「このままモテない自分を卑下したままおっさんになってー、
卑屈なオーラまみれのおっさんになる未来が、見えますよー」と、
ナイトが笑いながら言い放ったー
「ふ、ふ、ふざけるな!僕はそんな風にはならない!」
孝彦が怒りをあらわにするとー
「ならば、力を手にしなさいー」と、ナイトは笑みを浮かべるー
片手を光らせながら
「今一度問いますー
この力、欲しいですか?」と、笑うナイトー。
ゴクリと唾を飲み込みながら
ナイトの挑発に乗ってしまった孝彦は「ほしい」と、
力強く頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バレンタインデー当日ー。
孝彦は”手に入れた変身能力”で
学校のバレンタインデーを滅茶苦茶に破壊することを
目論んでいたー。
そのために、昨日はチョコも作ったー
「ーバレンタインデーなんて、壊してやるー」
そう言い放つと、早速孝彦は、学校に到着直後ー
クラスの”裏切り者”、重義(しげよし)の彼女・璃子(りこ)に変身したー。
「ーーすげぇ…」
璃子の姿になった孝彦はニヤニヤしながら
胸を少しだけ触るもー
すぐにドキッとして、”こんなことしてる場合じゃない”と
自分で自分に言い聞かせるー。
重義は孝彦と同じく”モテない仲間”だった男子生徒だー。
去年まで”バレンタインデーなんて燃えちまえ!”などと
いっしょに絶叫していた間柄だったが、
去年のクリスマスに璃子から告白されて、
そのまま交際を始めた”裏切り者”だー。
そして、今年のバレンタインデーは
”人生初の彼女がいるバレンタインデー”などと
舞い上がっていたー。
「ーー許せないー」
そんな重義に一方的に怒りを感じていた孝彦は、
その彼女である璃子に変身してー
早々に、重義を見つけ出して空き教室に移動させたー。
重義は毎日”妙に早い時間に登校する”ため、
まだ”本物の璃子”は学校に到着していないー。
変身するためにはー
”相手の姿”を見つめる必要があるー。
だが、昨日、”ナイト”は、部屋に飾ってあった
家族写真に写る”孝彦の母親”の姿を見て
孝彦の母親に変身したー
つまり、変身する場合ー
”写真”でも良いのだー。
”クラスの集合写真”を手に、
クラスの誰にでも変身できる状況を作り出した孝彦ー。
しかし、”その時の服”まで再現するためー
”学校の制服を着ている集合写真”は、とても好都合だったー。
「ーーー……ねぇ…し、し、重義ー」
”何となく”下の名前を呼ぶのに抵抗を感じて
少しぎこちない感じで璃子姿の孝彦は言い放つー。
”彼女から初めてチョコが貰える”
そんな風に思っているのか、重義は先ほどから
ニヤニヤしていて、浮かれているのが明らかに分かるー
「ーーこれ…ーー…」
”本命チョコを渡す時って、どんなセリフを言えばいいのか”
分からない孝彦は、璃子の姿のまま
ぎこちない言葉をやっとの思いで口にすると、
そのまま重義にチョコを手渡したー
「今…たべてみてー」
璃子の姿のまま、そう言うと、重義は「あ、あぁ!ありがとう!」と、
ものすごくドキドキした様子で顔を赤らめながら頷くー
「ーーー」
ニヤッとする璃子姿の孝彦ー
そのチョコにはー
”恐ろしいほどの量のわさび”が入っているー。
孝彦はお菓子を作ったり、小物を作ったりするのが趣味でー、
チョコをはじめ、色々なものを自分で作ることが出来るー
そんな趣味が生かされるような場面は
今まであまりなかったものの、
今日は、その趣味が存分に発揮される日だー。
バレンタインデーを”破壊”するために、
あらゆるチョコを準備してきたー
そのうちの一つが、これだー。
「ーーぐおおおおおおおおおおおおっっっ!?!?」
”わさび爆弾”とも言えるぐらいに大量のわさびを
盛り込んだチョコを食べて、顔を真っ赤にして
悲鳴をあげる重義ー
「ーー”裏切り者にふさわしい姿だなー”」
小声でそう呟くと、璃子姿の孝彦は
「ばーか!!あははっ!」と、
わざとらしく笑うと、そのままその部屋から飛び出して、
廊下の死角部分で、”自分の姿”に戻ったー。
”これで、喧嘩とか始まっちゃったら面白いなぁ~”
そんな風に思いながら、孝彦は”次”の姿に変身するー。
クラスの生徒会書記・麻奈美(まなみ)の姿に変身した孝彦は
”次”のターゲットを狙うー。
ターゲットは”真面目”という文字がそのまま歩いているようなー
そんな感じの、超がつくほどの真面目な男子生徒・肇(はじめ)ー。
肇は、学級委員長を務めていて、
イケメンで、真面目で、別のクラスにいる彼女ともとても仲がいいー。
だがー、
孝彦からすれば、それがつまらなかったー
いつもいつも正論まみれの彼を見ていると、
卑屈な自分が嫌になるからだー。
麻奈美の姿に変身した孝彦は、
肇がやってくるのを、昇降口付近の死角となっている部分で
待ち構えるー
「あっ」
ふと、”本物の麻奈美”が登校してきて、
慌てて身を隠すー。
”同じ姿の人間が2人いる”という状況がー
周囲に知られてしまうのは良くないし、
何より、本人に知られてしまうと色々大変そうなことに
なるかもしれないー。
冷や汗をかきながら身を隠していると、本物の麻奈美は
友達と雑談しながら、そのまま階段を上がって行ったー
「ふ~~~」
改めて、肇が来るのを待つ。
ちなみに、この麻奈美は、肇の彼女ではない。
クラスメイトというだけで、恐らくお互いに恋愛感情はないー。
しかしー
「あ、肇くん!」
麻奈美の姿をした孝彦は、肇がやってきたのを見て
そう声を掛けると、肇は少し驚いた様子で
「あ、おはようー」と、穏やかな笑みを浮かべたー
「ちょっと、お話があるんだけどーいいかなー?」
そう言って肇を誘うと、
今の時間帯は誰も使っていない生徒会室の中に肇を連れて来てー
麻奈美の姿をした孝彦は、深呼吸をしたー
”ーー人生初めてのキスが男なんてーアレだけど
でも、僕はやるんだ!
バレンタインをこわしてやるんだ!”
そう心の中で叫ぶとー
麻奈美姿の孝彦は”考えないように”して、肇にいきなりキスをしたー
「ー!?!?!?」
驚く肇ー
「ーわたし、肇くんのこと、好きなの!」
女子の姿をしているとは言え、女の子っぽいセリフを吐き出すのに
違和感を感じながらも、
そのまま勢いで押し切るー
肇は”僕には彼女がいるから!”などと、麻奈美姿の孝彦を
拒もうとしていたものの、
無理矢理抱き着いてキスをして、
そしてーーー
”その様子をこっそりと事前に生徒会室に置いていたスマホ”で
撮影したー
それをー
ネットに流すー。
”学級委員長の浮気”としてー
ニヤニヤしながらクラスの噂好きの子のSNSに
その動画を流すとー
他の生徒たちが登校してくる時間帯にはー
教室中で”肇の浮気”が話題になっていたー
「ち、ちがっ!こ、これはー」
肇が顔を真っ赤にして否定するー
麻奈美は”身に覚えのない”動画に困惑しているー。
一方、わさび入りチョコを食べさせられて死にそうになった重義は、
本物の璃子が本命チョコを渡してきたのを拒みー、
「もう引っかからないからな!」などと、不愉快そうな表情を浮かべるー
”いきなり”本命チョコを拒まれた本物の璃子は悲しそうな表情で
重義を見つめるー
「ーーへへへ…すごいやー」
孝彦の”変身能力”によって大混乱に陥るバレンタインデーは
まだ始まったばかりだったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
明後日がバレンタインデーなので、
今年もバレンタインモノを書いてみました~!
今回は変身系ですネ~!
最終回が当日になるように、ちょっぴり早めにスタートデス!
コメント