洋品店で、欲望の限りを尽くした
”試着男”ー。
試着男は確かに滅び去ったー。
けれど…
その”欲望の残り火”は、まだ暗躍していたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
真由梨、帆乃、明子の三人は
”満男の葬式”にやってきていたー。
”自分の死”に立ち会い、
思わず笑みを浮かべる三人ー
「ーークククククー」
真由梨がニヤニヤと笑みを浮かべるー
”自分の葬式”に出るなんて、
なんだか新鮮な気持ちだー。
「ーーへへ…まぁ、俺であって俺ではない”んだろうけどー
やっぱ、そうは思えねぇよな」
明子がやってきて、そう笑うー。
三人は”満男に皮にされて着られたこと”で、
思考も記憶も”満男そのもの”になってしまった状態ー
真由梨も、帆乃も、明子も
それぞれ”わたしの記憶”も残されてはいるものの、
満男の思考や記憶も受け継いでしまった今ー、
欲望のままに生きることしか考えられない状態になっていたー。
「ーー見れば見るほどムカつくよなぁ」
さらにギャル度の増した帆乃が”自分の遺体”を見つめながら
憎しみの言葉を呟くー
満男は”苦しそうな表情”を浮かべているー。
その表情を見る度にー
女性刑事・みどりに撃たれたあの瞬間を思い出すー。
「ーーーー…」
ギリッと歯ぎしりをする帆乃ー。
「ーほらほら、そんな顔してると、美人が台無しになるぜ~?」
明子が笑いながら言うと、帆乃は「ー分かってるよ」と
面倒臭そうに声をあげたー。
「ーーーーーー」
その会場にー
明子たち三人の”違和感”に気付いたみどりも
変装してやってきていたー
”何であの三人が、彼の葬式にー?”
みどりは、首を傾げるー。
三人と”満男”は、特に接点もなかったはずだー。
葬式に足を運ぶ理由など”何一つ”ないはずー。
それなのに、何故ー。
そしてー
先日、営業再開の準備をしていた洋品店で三人と会った時にも
みどりは、三人に”強い違和感”を感じていたー。
三人が、時折”全く同じリアクション”をしていたからだー。
「ーーーー」
”そんなはずない”
みどりは、心の中で満男のことを思い出すー
あの三人の”嫌らしく、粘りつくような視線”ーーー
あの時対峙した満男と同じだー。
何か、確証があるわけではないー。
強いて言うならば、”刑事の勘”だろうかー。
そんなものが、みどりに強い違和感を感じさせていたー。
”ありえないー
あの男は死んだはずー”
みどりは、あの時のことを確かに思い出すー。
みどりに追い詰められてもなお、
”マチ針”を使って、みどりを皮にしようとしていたあの男のことをー。
だが、みどりは咄嗟に引き金を引いたー
結果、満男は何度も何度もみどりに撃たれてー
「ー助けてくれええええ…死にたくねぇよおおおおお」
そして、死んだー。
確実に死んだ。遺体も確認したー。
満男が生きているなど、もう”あり得ない”ことだー。
あるはずがないー。
「気のせいだよ…ね」
みどりはそんなことを小声で囁きながらも
”なぜ”あの三人がこの場所に来ているのかー、
ということにさらに強い疑問を強めていくー。
「ーーーーー」
みどりは、明子・真由梨・帆乃の三人の様子を
引き続き観察していくー。
三人とも、妙に楽しそうにしていてー
時折”男”のような言葉を口走っているー。
どう考えても普通じゃないー。
空き時間に、ギャルの帆乃が会場の外に出ると、
明子・真由梨と一緒にキョロキョロしながら歩いていきー、
外で、立ったまま放尿し始めたー
「なっー…」
みどりは思わず呆然とするー
「あははははは~、まるで男みたいな仕草するの、
ホント興奮するなぁ…!
今度、放尿度のレビューでもするか!」
ゲラゲラ笑いながらそう言い放つ帆乃を見て、
みどりはさらに不安を強めていくー。
「ーーー」
そのまま飛び出して”何をしてるの!?”と
声を掛けようとすら思ったー
でも、それは思いとどまったー。
何故ならー
”まだ”確実な証拠がないからだー
”三人”の身に何かが起きているという絶対的な証拠を
手に入れない限りー、どうすることもできないー。
これまでの会話からー
あの三人は、少なくとも”今まで通り振る舞うこと”も、できる…
ということになるー
”三人”に何が起きているかは分からないー
でもー、少なくとも”普通”ではない気がするー
”確実な証拠を掴まないとー”
そう呟くみどりー
「ーーーーーー」
帆乃が、外で用を済ませ終えると、
ニヤニヤしながら、
「わたしのおしっこは美味しい~???」と、
かがんで、足元にあった草花に話しかけながら笑うー。
隣にいる明子もゲラゲラと笑っているー。
だが、その横に立っていた
真由梨は、チラッと背後に意識を集中させると
”あ~~…見られてるな”と、心の中で思いながら
一人、不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”自分の葬儀”は終わったー。
葬式が終わり、
三人は”お店”をリニューアルオープンさせたー。
明子たちが元々やっていたお店の意志を完全に無視しー、
Hなコスプレ衣装の各種を揃えたお店に変貌を遂げるー。
”美脚”の明子は、
その美脚を生かしてチャイナドレスを、
ギャルの帆乃は、
その雰囲気を生かしてギャルっぽさ前回のメイドの格好ー、
全体的にバランスの取れている真由梨は、
巫女服を着て、そのまま店内で接客をするー。
入り込んできた男性客を虜にして、
高いものを売り付けたりー、
チヤホヤされてゾクゾクしたりー、
時折、身体で遊んだりー
欲望の限りを尽くす三人ー
さらには、女性客がやってくると
”女同士なんだから、いいでしょう?”と、
身体を触ったり、
満男好みの格好をさせたりして、
ゾクゾクを楽しんでいるー。
みどりは、そんな三人の状況を”監視”しながらも
”踏み込めずに”いたー。
何故ならー
”確実な証拠”がないからー。
”満男によって何かされている”あるいは
”満男の影響でおかしくなっている”
そんな、確証を得られないからだー。
みどりは、知り合いの女性刑事に依頼して、
”一般客”のフリをして三人に探りを入れてもらったー
けれどー、やはり
真由梨も帆乃も、明子も”ボロ”を出さない状況は続きー、
打つ手はない状態だったー
だがーーー
「ーーやめて下さい!助けて!」
女性客の一人に、無理やりバニーガールの格好を着せて
ニヤニヤしている巫女服姿の真由梨ー
興奮を抑えきれずに、その客と”女同士のキス”をした真由梨の
行動はさらにエスカレート…
その女性客は悲鳴を上げたー
あまりに抵抗する客にカッとなったのか
真由梨は「うるせぇ!お前も試着すんぞ!」と、叫びながら
その客をグーで殴りつけたー
それを”監視”していたみどりは、
すかさず飛び出したー。
「ーーーやめなさい!」
店内に突入してそう叫ぶみどりー
「ー!」
真由梨が表情を歪めるー
バニーガールの服を着せられていた女性客が
悲鳴を上げながらみどりの方に駆け寄って来るー
チャイナドレスの明子と、メイド服の帆乃も
一瞬驚いたような顔をしていたものの、
「あ、刑事さん~!」と、すぐに笑みを振りまくー。
「ーーーーあなたを現行犯で逮捕しますー」
みどりにとっては”好機”だったー。
この三人のうちの一人を徹底的に調べるチャンスが出来たー
ニヤニヤしながら真由梨は「はぁ~い」と、呟くー。
本来ならー
警察に縁などなかったはずの真由梨ー。
しかし、満男に着られたことにより、
精神が満男そのものになってしまい、
もう、真由梨は元の自分を取り戻すことはできなかったー
”へへへへー”
真由梨が邪悪な笑みを浮かべるー
帆乃と、明子も同様だー。
そしてーー
帆乃の手には”あのマチ針”があったー。
そうー、
既に”三人の満男”は、
葬式のあと、あのマチ針を再び入手することに
成功していたのだー
「ーー”俺を殺した”復讐をしてやるー」
三人はみどりが”自ら”ここに踏み込んでくるのを
ずっと待っていたのだー
帆乃がメイド服を揺らしながら、みどりの背後から
ゆっくりと近づいていくー。
狂気の笑みを浮かべながら
「刑事さんの身体を試着しまぁ~~~す!」と、
マチ針をみどりの首筋に刺そうとしたー
だがーーー
「ーーー!!」
みどりが咄嗟に身体を動かして、
帆乃の顔面に拳を叩きつけるー。
マチ針を落として、その場に蹲る帆乃ー
「あ、あなたたちー…!
いったい…いったいどういうことなの!」
みどりが、三人に向かって叫ぶとー、
顔面を押さえながら、帆乃がよろよろと立ち上がったー
「へへへー
刑事さんー
この”洋服”たちは、全員”俺”になったんだー」
帆乃がニヤニヤしながら言うー。
「ーど、どういうことー?」
みどりは、呆然とすることしかできないー。
目の前にいる帆乃が言っている言葉の意味が分からないー
みどりが混乱する中、店長の明子が言うー。
「ーーわたしたち、”着られている”間に、
”俺”そのものになっちゃったってことですよぉ~」
明子が笑いながら自分の美脚を触るー。
「ーーそ、そんなことー…あるはずがー!」
さらに困惑するみどりー。
「ーーー…あ…あの…こ、これはー」
バニーガールの服を無理やり着せられた女性客が
怯えた表情でみどりを見つめるー
「だ、大丈夫よー
わたしの後ろに隠れててー」
みどりはそう言いながらー
明子・帆乃・真由梨の三人を見つめるー
三人とも、歪んだ笑みを浮かべていてー
正気とは思えないー
形成は逆転したー。
”何かある”とは思っていたー
けれど、三人が全員、”満男そのもの”になっているとはー
そこまでのことが起きているとは、みどりも思っていなかったー。
「ーーあ、あなたたちー…目を覚まして!」
みどりが思わず叫ぶー。
だが、真由梨はクスクスと笑うー
「”わたしたち”ちゃ~んと、元々の記憶も持ってますよ~?」
とー。
「ちゃ~んと、わたしが”真由梨”だってことも分かってますぅ~!
でもぉ~~…
へへへへー”俺として”生きることを選んだんだよ!」
ニヤニヤとしながら叫ぶ真由梨ー
”満男の欲望まみれの強い意志”の方が、
三人の元々の意識よりも勝ってしまったー
それ故に、三人は自分のことを覚えていながらも、
満男そのものに染まってしまったー。
「そうそう~!だって、ギャルっぽくておしゃれなあたしって
エロイじゃん?
だからせっかくなら”俺”としてた~っぷり、
”あたし”を可愛がってあげようと思ってー!」
帆乃がそう言い放つー。
明子も笑いながら
「ーこの美脚ー…んふふふ…興奮するぜ」と、
明子と満男が混じったような貴重な言葉遣いで話すー
みどりは「そ、そんなー…」と、
呆然とすることしかできないー
”元々の自分”のことを認識できているのにー、
それでも”満男”として欲望に生きる道を選ぶー
そんなこと、信じられないー。
みどりは「ーー…とにかく、あなたたちには一度警察に来てもらいます!」と
宣言するー
しかしー…
「ーーっていうかさ、あんた、馬鹿でしょ?」
帆乃があざ笑うようにして呟くー
「え…」
みどりが表情を歪めると、
明子が”補足”をしたー
「例のマチ針ー
俺たちが再び手に入れたということはー…」
その言葉に、
みどりがハッとして、背後を振り返るとー
”バニーガールの服”を無理やり着せられていた女性客が
邪悪な笑みを浮かべて、マチ針を、みどりの首筋に突き刺したー
「うっ…ぁ…」
瞳を震わせながら、その場に崩れ落ちていくみどりー
「えへへへへー”俺” 4人になっちゃったんだよ」
女性客が笑うー
この客は既に数日前に明子たち三人に皮にされて、
満男に染まった明子に着られて欲望の限りを尽くした上にー
既に明子らが調べ上げていた”人の姿に戻す方法”で、人間に戻されてー
明子らと同じように”満男の記憶と意思を持つ人間”になってしまっていたー
「ーーーあははははは!
あんたにも教えてあげる!
あたしたちが今、ど~んなに幸せか!
”俺になる”ってことがー
どんなに幸せなことかー!」
帆乃が笑いながら言うとー、
みどりは「やめ…て」と、ペラペラになりながら声を振り絞るー。
だがー
真由梨はそれをあざ笑いながら小さく囁いたー
「ーー次に意識が戻る時にはー”俺”になってるからさー
安心して、おやすみー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーーーー!」
”みどり”は目を覚ましたー
皮の状態から、元に戻されたみどりー。
「ーーわたしはー…」
みどりは、周囲をキョロキョロ見回しながらー
”あの男に汚染された人々”に皮にされたことを思い出すー。
そしてーー
「ーークククーわたしも”俺”になったぜー」
みどりは自分の胸を触りながら笑うー
「ーーーあぁ…あの子たちもこんな気分だったんだー…
へへへー
俺は今日からー…満男だぜ」
嬉しそうに笑みを浮かべると、
みどりは、洋品店に向かって歩き出すー。
”ほかの4人”と欲望の限りを尽くすためにー
試着男の”汚染”は着られていくー
”試着”して、お気に入りにならなかった”服”は破棄ー。
気に入った服は”俺”にするー
”俺”は増え続けるー。
これからもー、永遠に。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
「俺が試着したいのはお前だよ」の後日談でした~!☆
”皮にされたあとの影響”が中心でしたが
最後の方に皮そのものの要素もちょっとだけ…☆!
私自身も久しぶりにこの世界の続きを描けて
楽しいひと時でした~!
お読み下さりありがとうございました!
コメント