憑依を現実さながらのVR空間で疑似体験できる
”ポゼッション・シミュレーター”
そんなゲームの体験会を終えた彼。
しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー」
ゲームの体験会を終えた翔貴は、
簡単なアンケートにその場で回答していたー
”ポゼッション・シミュレーター”は、
まだ正式に商品化されているわけではないー。
今日、この体験会も、
”商品化”のためのテストが名目だ。
翔貴は自分の感想を交えつつ、
率直な気持ちを記入していくー。
心底、このポゼッション・シミュレーターなるゲームが
実際に発売されて欲しいー、と、そう願いながらー。
商品化されずに、このまま終わってしまうとすればー
それは実に惜しいことだし、勿体ない。
「ーーすごかったですねー」
アンケートを書き終えると、
体験会開始前に、翔貴に話しかけて来た眼鏡の女子・美恵が
声をかけて来たー
「ーーーあ、あぁ、ホント、すごかったですよねー」
翔貴が笑いながらそう言うと、
そのまま少し、二人で雑談をしてー、
ポゼッションシミュレーターの体験会場を後にしたー。
「ーーじゃあ、俺はここで」
しばらくして、帰り道が別々の方向になったタイミングで
翔貴は頭を下げて、そのまま歩いていくー。
一人になってからも翔貴は
”ポゼッション・シミュレーター”のことを思い出しながら
「あ~…ホント、ゾクゾクしたなぁ…」と、
少しだけ笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「クククーどうだい?」
ニヤニヤしながら背後からやってきた女性ー。
真鍋主任が振り返ると、
「ククー…”転送”は終わったようだな」と、
笑みを浮かべたー。
”ポゼッション・シミュレーター”の真の目的は
”ゲーム”ではないー。
ポゼッションシミュレーターという作品は
あくまでも”本当の目的”を果たすためのものに過ぎないー
その本当の目的とは”転送”ー。
ポゼッションシミュレーターを開発したグループは
”高齢の老人たち”ばかりで構成されたグループ。
彼らはー
元々”ゲーム開発企業”でもないし、”ゲームの開発”を目指していたわけでもないー
目指していたモノはー
”不老不死”ー
簡単に言えば”何とかこの世界でまだ生きる方法はないのかどうか”
そんな研究をしているグループだったー。
”生”に異常なまでに執着するこの老人たちが思いついた方法が
”自分の精神や記憶、そのすべてを他人の身体に流し込み”ー
憑依と呼べる状態を、現実で引き起こそう、とそういうものだったー
霊体ではなく、自分をデータに変換し、そのデータを相手に流し込むことで
”憑依”を現実で実現しようとしたのだー
フィクションのように、流石に幽霊になって、相手の身体に飛び込むことは
不可能だったが、”その人間の中身をデータにして転送する技術”は
生み出すことに成功したー。
これが、現実で実現可能な”憑依”だー。
だがーー
問題が生じたー。
それはー
”転送先の身体”にも、元々の人間の精神が宿っていることー。
老人たちが、身体を奪おうと、相手の身体に意識を転送しても
”元々あった意識”によって、逆に飲み込まれたり、消滅させられたりしてしまう
ケースが相次いだー
これにより、何名もの仲間が”消滅”したー。
後から身体に入る側の方が”弱い”のだー。
だがー
精神転送技術を応用して、
この老人たちはあることを思いついたー
それが”ポゼッション・シミュレーター”だったー。
VR空間に飛ばすゲームをプレイさせることで
身体を無防備な状態にさせー、
さらにはその世界の中で”憑依”という快楽を味合わせて
精神をリラックス状態にさせることで、
”身も心も無防備な状態”にするー。
そしてー…
その隙に現実世界で”身体を欲する老人たち”が、
”ポゼッションシミュレーターをプレイ中の身も心も無防備な状態の人間”に
自分の精神を転送するー。
そうすることでー、
元々の意識に邪魔されることなくー
身体を完全に支配することが出来るのだー。
「ーーーえへへへ…まさか儂が眼鏡っ娘になれるなんてのぉ…ふひひひひ」
”美恵”を支配した老人が、ニヤニヤしながら、自分の胸を
顔を真っ赤にしながら揉みまくるー。
「ーおいおい、そんな興奮してるとその女の身体が壊れるかもしれないぞ?」
真鍋主任が笑いながら言うと、
美恵は「うるさいわ!まずはエロいことするんじゃ!」と叫びながら、
近くの台で角オナを始めてしまうー。
「ーークク、あんたは元々エロジジイだったから仕方ないなー」
真鍋主任はそう呟くと、
ポゼッションシミュレーターを”プレイ中”の、残り一人の脳波を見つめるー。
”ポゼッションシミュレーター”というゲームで人をおびき寄せー
ゲームをプレイさせることで、身体と精神を無防備な状態に落とし込みー
その隙に、老人たちが現実世界で身体を乗っ取るー。
それが、真鍋主任たちの計画ー
”真鍋主任”の身体も、そうして過去に乗っ取ったものだー
「ーーー……ん?」
真鍋主任が表情を歪めるー
”ポゼッションシミュレーター”をプレイ中の残り一人の人間の脳波に
いきなり緊張感が走ったー。
「ーー気付いたか?」
真鍋主任が戸惑いながら声をあげると、
角オナ中の美恵に向かって
「おい!そいつを”シャットダウン”しろ!」と、
叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーおかしい」
翔貴は表情を歪めていたー。
そう思いながら、ポゼッションシミュレーターの会場へと戻るー
”何かが”
おかしいー。
その”何か”が、何なのかは分からないー。
だが、翔貴はポゼッションシミュレーターの会場に戻っていたー。
”直感”
と、でも言うべきだろうかー。
帰宅した翔貴は
”違和感”に気付いたー。
翔貴が元々警戒心の強いタイプだったことや、
夜、寝つきが悪いことー、
色々な要因が重なったのかもしれないー。
だがー翔貴は”気づいた”
”俺はまだ”現実世界”に戻っていないのではないかー”
とー。
そうーー
翔貴は”一度も”現実世界に戻っていないー。
途中で質問するために”離脱”した時も
体験会が終わったあとの”現実世界”もー。
ここはー
”現実世界を完全に再現したゲームの世界の中”
現実に戻ったと思っていた翔貴だったが、
”まだ”翔貴はゲームの中にいるのだー
ゲームの中で
”ポゼッションシミュレーターから出て、現実風の場面に戻った”
だけだったのだー。
翔貴は叫ぶー
「どうなってるんですか!!!
”これ”まだ現実世界じゃないですよね!
何か変だー!」
だが、返事はないー。
仕方なく、会場まで戻ってくると、
そこにいた”真鍋主任”に声をかけたー。
「ーーー…どういうことですかー」
翔貴が言うー。
クスッと笑う真鍋主任ー。
「ーー俺、まだ”現実”に戻ってませんよねー?
”ここ”現実に見えますけど、VR空間ですよね?」
翔貴が言うと、
真鍋主任は拍手をし始めたー
「ーすごい!気付いたのは、あなたが初めてです!」
とー。
翔貴が表情を歪めるー。
「そうですー
ここはまだ”ポゼッションシミュレーター”の中ー。
途中であなたが離脱した時も、
体験会終了後も、あなたは”ゲームの中で、ゲームの外に出た場面”に
移動しただけです」
真鍋主任がそう言うと、
翔貴は「…ど、どういうことなんですか!なら現実に戻してください!」と叫ぶー。
「ーーー」
真鍋主任は笑みを浮かべながら呟くー。
「あなたの脳波が完全にリラックスするまで待っていたのですがー
残念ながらあなたはー、完全にリラックスしないタイプの人みたいですね」
その言葉に、
翔貴は「どういうことだー…?確かに寝付きは悪いけどー」と、言葉を口にすると、
真鍋主任は自分たち”老人会”の目的を話し始めたー
若い人間を誘い込み、精神をリラックスさせ、その隙に自分たちの精神を
若者の身体に移し、その身体を奪うという邪悪な目的をー
「ー既に、他のプレイヤーの皆さんの身体は
わしらが貰ったー」
真鍋主任が本性を現して笑みを浮かべるー
「お…お前…!ふ、ふざけるな!俺をここから出せ!
俺は絶対に…絶対に…心に隙なんか見せないぞ!」
翔貴がそう叫ぶと、
真鍋主任はクスッと笑うー。
「ーーそうーお前の身体は奪えそうにないー
だからー」
その言葉と共にー、
全てが”真っ暗”になったー
何も聞こえないー
何も見えないー
何も感じないー
「~~~~~~~~~ ~~~~~」
”おい、どうなってる!”
そう叫ぼうとしたー
だが、それすらできないー
翔貴は”完全な無”に幽閉され、
何もすることができなくなってしまったー。
「ーーーーーー」
現実世界ー
真鍋主任は”翔貴の脳波の停止”を確認したー。
「ーーこれをやると、脳に障害が残る可能性があるから
したくなかったがー
まぁ、仕方ないー。」
そう呟くと、”抜け殻”になった翔貴の身体に、老人の一人が
転送されるー。
真鍋主任は、”今回”も、順番待ちの老人が全員
若者の身体を乗っ取ったことを確認すると、
「お疲れ様でしたー」と、
若者を乗っ取った老人たちを見て、笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー」
美恵を乗っ取った老人は、美恵の身体で
若者の身体を、そして女の身体を堪能しつつ、
生活を送っていたー
「ふへへへへへへ…♡たまらん…」
美恵の身体で様々なコスプレを堪能して、
欲望の笑みを浮かべるー。
「うへへへへ…どんな服も似合うなんて…
うひひひひひ…新しいワシの身体は最高じゃな」
可愛い声で奇妙な言葉を口にするー
美恵の姿、美恵の声からは
到底似合いそうにない声ー
「ーーさて…まだ”順番待ち”のじいさんばあさんは
たくさんいるからなぁ…
ワシも新しい”身体”を一つぐらい見つけるかの」
美恵はそう呟くと、服を着替えて、
”普通の格好”で外に出かけていくー
”憑依待ち”の人間は、まだそれなりの数いるー。
何歳になっても”生に執着する人間”は
それなりの数、存在しているのだー。
そのためー
新しい身体を手に入れた人間は、
”その元々の身体の知り合い”を紹介し、
”ポゼッションシミュレーター体験会”に誘い込んでいるー。
「えへへへへー
この娘の記憶を読み取ってー」
少しうめき声をあげながら、美恵の記憶を
読み取っていくー
美恵の知り合いの中から
”ポゼッション・シミュレーター体験会”という言葉で
誘い込めそうな人間を探るー
「えへ…この幼馴染の男とか、行けそうだなー」
美恵の記憶の中から”誘えそうな”人を見つけー
美恵はその相手に接触を試みるー。
「へへー…無事に”新しい身体”手に入れたんだなー」
背後から女の声がして、美恵が振り返ると、
そこには翔貴の彼女である梨穂の姿があったー
「あー、あんたは…」
美恵が言うと、梨穂は”中身”の名前を名乗ったー
「ーククーこの身体でのJD生活ーたまんないぜ?」
梨穂はそう言いながらニヤニヤと笑みを浮かべるー
「へへーそういや、あんたも”誰か紹介”したのか?」
美恵の言葉に、梨穂は「あぁ、この女の”彼氏”をなー」と、笑うー。
翔貴は、彼女の梨穂から
”ポゼッションシミュレーター体験会”を紹介されて
それに参加してしまったー。
翔貴は気づいていなかったが梨穂は、翔貴にポゼッションシミュレーターを
紹介した時には既に身体を奪われていて、梨穂ではなくなっていたー
梨穂は翔貴よりも前に、弟から”ポゼッションシミュレーター体験会”を
紹介されて、憑依されてしまっていたのだー。
「なんだよ今日はー
朝からご機嫌だなぁ」
普段大人しい梨穂が妙にハイテンションだったー
翔貴もあの時、少しだけそんな違和感を抱いていたー
がー、そんなことに気付くはずもなくー
翔貴はポゼッションシミュレーターの餌食になってしまったー
「あ、そうだー今夜せっかくだし、”女の子同士”で楽しまない?」
梨穂が言うと、
「ーーえへへへ…いいねぇ」
と、美恵が邪悪な笑みを浮かべながら頷いたー
おわり
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コメント
ポゼッションシミュレーターの最終回でした~!☆
私の作品のゲームの世界が登場する系のお話は
なんだかバッドエンドが多いような…★笑
お読み下さりありがとうございました~!
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