<憑依>ポゼッションシミュレーター①~新ゲーム~

”他人に憑依する”

そんな夢を実現するシミュレーションゲームが
ついに登場したー。

憑依の夢を疑似的にとは言え、叶えることのできる
そのゲーム。
しかし、そのゲームには大きな秘密があったー。

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「ーポゼッションシミュレーター?」

男子大学生の柴山 翔貴(しばやま しょうき)は、
そんな言葉を口にしたー

「そうそう~!
 翔貴、こういうの興味ありそうだと思って~!

 ゲームとか、よくやるじゃん?
 最先端技術のゲームとか、興奮するんじゃない?」

彼女の梨穂(りほ)が朝から騒がしく、
そんな言葉を呟くー

「なんだよ今日はー
 朝からご機嫌だなぁ」

翔貴は苦笑いしながら、そんな梨穂の話を聞くー。

”ポゼッション・シミュレーター”

他人への”憑依”を体験することが出来る
新感覚ゲーム…

現在はまだ試作段階であるものの、
新世代のVR技術を用いて実現した”夢のようなゲーム”で
本当に他人の身体に憑依したような感覚を味わうことが
できるー

そんな風に梨穂の持つスマホには表示されているー

「ーーー…いやぁ…流石にこれは大げさだろ~」
翔貴が苦笑いしながら言うー。

「ーえ~?でもでもほら、見て!
 実際に憑依した感覚を味わうこともできちゃうんだって!
 人間の感覚まで再現してるみたいだしー」

梨穂がワクワクした様子でそんな言葉を口にすると、
翔貴は「感覚まで再現は流石に嘘だろー」と、笑うー。

「ーいや、あれかー?
 マッサージ機みたいのに座って、ぶるぶるぶるぶる とかするのか?」

翔貴がそんな言葉を口にするー。

「う~~~~ん」
あまり乗り気じゃない翔貴ー。

だが、梨穂の話を聞いているうちに、
だんだんと、何となく興味が湧いてきて、
「じゃあー…今度の土曜日、言ってみるか」と言葉を口にしたー。

梨穂は笑いながら「うんうん!感想聞かせてね!」と、
楽しそうな口調で言葉を口にするー

「って、俺一人で行くの!?てっきりデートかとー」
翔貴がそう言うと、
梨穂は「土曜日はー予定があって…!ごめんね!」と、
悪戯っぽく微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日ー

「ーーーー…つい、流れで一人で着ちまったー」

翔貴は、ため息をつきながら
”ポゼッション・シミュレーター”なる次世代ゲームを
体験できる会場にやってきていたー。

そこそこの数の人が集まっているー

…が、混雑というわけでもなく、
何となく微妙なー
そんな感じの人の集まり方だったー

「あ、あのー…!」

ふいに、背後から声を掛けられて振り返ると、
そこには大人しそうな眼鏡の女性の姿があったー。

年齢は同じぐらいに見える大学生か、社会人になったばかりかー
あるいは大人びた高校生か、そのあたりだろうー

「え?俺ですか?」
そんなことを考えながら、翔貴が反応すると、
「あ、き、急に声をかけてごめんなさいー」と、
眼鏡の女子が、困惑の表情を浮かべるー。

「ーーーーポゼッション…シミュレーターの体験に来た方ですよね…?」
眼鏡の女性の言葉に、翔貴は「あ、はいー…君も?」と、聞き返すー。

「はいー…あ、ごめんなさいー」

眼鏡の女性はそう言うと、
自己紹介を簡単に済ませるー。

”大野 美恵(おおの みえ)”

翔貴の予想通り、彼女は大学生で、
大学は違う様子ようだったが、友達から誘われて
この会場にやってきたのだと言うー。

翔貴に声をかけたのは
”会場のどこに行けば良いのか分からなくなって
 一番話しかけやすそうな人に声をかけたー”
とのことだったー。

「あ、え~っと、確かー…あっちの方だったかなー…」
と、集合場所に指定されている場所を指さす翔貴ー

「ーーありがとうございますー」
美恵は頭を下げると、少し緊張した様子で、
「友達も来る予定だったんですけど、体調不良で来れなくなっちゃって
 わたし一人にー」と、言葉を続けたー。

「あ~~そうなんですね~」
翔貴はそんなことを言いながら、美恵と共に会場内の集合場所に
移動するー。

するとそこにはー
未来を感じさせるような装置がずらりと並んでいたー

恐らく”ポゼッションシミュレーター”はあれに
座って、ヘルメットのようなものを被る形で
プレイするのだろうー。

「ーーようこそー本日はポゼッションシミュレーター体験会に
 お集まりいただき、ありがとうございます」

そうこうしているうちにー、派手なパーティドレス姿の女性が
現れて、挨拶を始めるー。

「ーわたしは、ポゼッションシミュレーター開発主任の真鍋(まなべ)と
 申しますー」

真鍋主任がそう自己紹介を終えると、
「ここに並んでいる機械こそー
 今日、皆様に体験していただく、ポゼッションシミュレーターになりますー」と、
装置のほうを示しながら言葉を続けたー

妙に色っぽい声質の真鍋主任が、
そのまま説明を続けるー。

”ポゼッションシミュレーター”はVRを超えた体感型ゲーム。
この装置に座り、専用のヘルメットを着用することでー
”人間としての感覚”まで疑似体験することができるという
究極のシミュレーターゲーム

「世の中には色々なシミュレーターゲームがありますが、
 その中でも、わが社の”ポゼッションシミュレーター”は、
 全てのシミュレーターの中で”最も高い”リアリティを実現していますー」

真鍋主任によればー
身体の感覚はもちろん、何もかもを仮想世界で体験できるのだと言うー。

「ゲームをスタートすると、皆様は”幽霊”になった状態から
 スタートしますー
 そしてー、ゲーム内の好きなキャラクターに身体を重ねることで憑依ー、
 あとはその身体で好きなことをすることができますー。

 もちろんー、ゲーム内での憑依になりますので、
 実際の人間を乗っ取ったりしているわけではなくー、
 何も、そのあたりのことを、心配する必要はありませんー」

真鍋主任の言葉に
体験会参加者の一人がニヤニヤしながら「女に憑依してエロイこともできるってことか?」と、
堂々と欲望を剥き出しにするー

”あいつー…やべぇ奴だなー”
翔貴は、心の中でそう思うー。

説明をしている人間が、そもそも女性で、
この場に他の人間もたくさんいるのに、
堂々と”エロイことをしていいのか?”と質問するとはー

そんなことを思いながら、チラッと隣にいる美恵のほうを見ると、
美恵もやはりイヤそうな顔をしていたー

「えぇ。人間ができることなら何でもー。
 ゲームの世界なので、憑依した人間で犯罪を起こそうと、
 自ら命を絶とうと自由ですー

 もちろん、ゲーム内で死にかけたとしても、
 現実の皆様の身体には何の影響もなくー
 死んだらゲーム終了になるだけなので、ご安心くださいー」

真鍋主任がそこまで言うと、
男は「へへへーヤリまくってやるぜ」と、涎を垂らしながら笑うー。

ゲームの説明は続き、
一通り説明を終えると、真鍋主任は「それではー…順番に皆様をお呼びしますので、
指定の装置に座りー、ゲームの開始をお待ちください」と、
真鍋主任が言葉を口にしたー

「じゃあー…せっかくだから、楽しんで」
翔貴が言うと、「はい」と、美恵は少し笑いながら、指定された装置の方に
向かって行くー。

翔貴も、装置に座ると、
やがて、遊園地の乗り物かのように係員が順番に
ヘルメットのようなものを装着したー。

「それでは皆様ー
 良い憑依ライフをー。
 ゲームは2時間ほどで終了しますが、
 もしも途中で気分が悪くなった場合は、
 ゲーム内の各所に専用の端末がありますのでー
 そこから”離脱”コマンドを選択してくださいー」

真鍋主任の言葉に、
体験会参加者の一人が「もし、そのコマンドを押せる状況じゃなくなったら?」と
確認の言葉を口にするー

「先ほど説明した通り、ゲーム内で死んでしまっても
 ゲーム終了になるので、その場合も問題はありません」と、
説明を付け加えたー。

翔貴はゴクリと唾を飲み込むー

”憑依”の疑似体験ー。
憑依などに、特に興味があったわけではないがー、
だんだんと緊張してくるー。

確かに”現実さながら”のリアルさで、
憑依が体験できるとなれば、
これは凄いゲームだ。

”梨穂があんな風に勧めて来るのも分かるなー”
彼女の梨穂のことを思い出しながら、
梨穂も来れば良かったのにー、と思いつつも、
”いや、梨穂がいたら遠慮しちゃって色々楽しめないかもしれないしな”と、
心の中で思うー。

一通りの説明が終わり、
ヘルメットのようなものが機械音を放ち始めるー。

近未来を感じさせるような装置に横たわりー、
目を閉じると、
やがて、感覚が薄れてー
気付いた時にはー

”おぉっ!?”

翔貴は”霊体”になって仮想空間の中にいたー。

「す…すげぇ…」
思わず翔貴は呟くー。

ゲームとは思えないほどの臨場感ー。
VR技術の応用とは言うが、
もはや自分がVR機器をつけている、という感覚もなく、
完全に”ゲームの中”に飛ばされたかのような、
そんな感覚を覚えるー。

”各プレイヤーの皆様は、それぞれ独立した世界でプレイを行っていますー
 将来的には他のプレイヤーと同じ世界で、プレイできるようにする予定ですが
 今日は体験になりますので、個々で好きなように、憑依を堪能してくださいー。

 憑依した後に何をしているのか、ということはわたしたち開発側も
 見ないようにしておりますので、
 安心して、好きなようにお楽しみくださいませー”

真鍋主任の説明が聞こえて来てー
翔貴は嬉しそうに周囲を見渡すー。

それぞれが別の世界でのプレイ、ということは
この世界にいる人間は全員ー
作られた人間ー、そうNPC(ノンプレイヤーキャラクター)ということだろうー

存分に憑依することが出来るー

「へへへへー」
他人の身体に憑依する、なんてことに興味はなかったけれどー
いざ、実際にできるとなると、ドキドキするー

「ーーー!」
可愛らしい女子高生二人組を見つける翔貴ー。

ドキドキしながら、その近くに寄っていくー。

二人には、本当に翔貴が見えていないようだー

「ーー…す、すごいー
 こ、この子たちにも憑依できるのかー」

翔貴はドキドキしながら、そのまま二人組の女子高生のうちの一人に
”憑依”しようとしたー。

だがー、
あまりにドキドキしてしまいー、
そして、悪いことをしているような気がしてしまいー、
それをすることはできなかったー

「な、何やってるんだ 俺ー…
 ゲー、ゲームのキャラなのにー」

翔貴はドキドキしながらそう呟くと、
近くを歩いていたサラリーマンの男の方に向かって
何故か憑依してしまったー

「うっー…」
サラリーマンの男がビクッと震えるー

「ほ、本当に憑依できてるー
 身体が自由に動くー」

同性同士とは言え、”異なる人間の身体”では
やはりあらゆる感覚が違うー。

そんな”違い”にドキドキしながら
「ーこ、声もー…す、すげぇ…」と表情を歪めるー。

”自分の口から、自分の声じゃない声が出るー”

その感覚は、とても新鮮なものだったー。

「ーーーー…」
緊張のあまり異性に憑依することが出来ず、
まずはサラリーマンの男に憑依してしまったがー
次こそはー…

「ーーー!」
一人で歩いている女子大生らしき子を見つけた翔貴は
”こ、今度こそー”と、
心の中で呟きながらサラリーマンの男から抜け出し、
その子の方に向かって行ったー

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「ーーーー」

現実世界ー

ポゼッション・シミュレーター体験会場では、
開発主任の女性・真鍋が
”全員が装置でちゃんと眠っていること”を確認したー。

今頃、VR空間で憑依を楽しんでいるに違いないー。

「ーーー早速準備に取り掛かれ」
真鍋主任は、高圧的な口調で、スタッフに指示をすると、
自分の胸を触りながら、不気味な笑みを浮かべたー

「ーーみなさんは、存分にポゼッション・シミュレーターを
 楽しんでなさいー」

と、低い声で呟きながらー

②へ続く

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コメント

今月最初のお話は、ポゼッション・シミュレーターデス~!

最近は、〇〇シミュレーターというゲームが
色々出ているみたいなので、
それをテーマにした憑依モノデス~笑

明日もぜひ楽しんでくださいネ~!

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