<他者変身>いつの間にかわたしが婚約者!?③~末路~(完)

いつの間にか”知らないおじさん”と婚約していたー。

自分の姿を勝手に使われて
勝手に婚約されていた彼女の運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」

円香はため息をついたー。

ひとまず”勝手に婚約したことになっていた”
あのおじさんを振り切ることに成功したー

だが、あの恵三というおじさんは
完全に”騙された” ”裏切られた”と思っていて
頭に血が上っている状態だー。

しかも、恵三によれば、
”円香に変身した昌平”は、
恵三側の両親に挨拶を済ませており、
しかも、それなりに”交流”もしていたのだというー。

また、恵三の同じ趣味を持つ友人たちとも、
”円香に変身した昌平”が何度も会っていて、
恵三は”僕の友達も、親も、みんなお前に怒ってる!”と、
最後には捨て台詞を吐いていたー

”絶対に許さないからな!”
とー。

恵三と話した感じではー
恵三自身も、元々性格に難があるタイプの
人間なのかもしれないー。

しかしー、
恵三自身も”昌平に騙された被害者”であることは
円香にはよく分かっているー。

彼は彼で
本気で”偽物の円香”を愛していたのだろうー。

相当な金額の婚約指輪を、貯金を切り崩して買って
渡した、とも言っていたー。

彼の立場で考えてみればー
怒り狂うのも、分かる気がするー

「でもー…あれはわたしじゃないのにー」
円香は”円香に変身した昌平”のことを考えるー

”きっと、昌平がもう二度と関わらないって約束したのはー
 こうなることが分かっていたからー…”

円香は、そう理解したー。

「ーとにかく…あの人がもしもまた現れたらー……
 どうにか、しなくちゃー…」

円香はそう呟きながら、深く、ため息をついたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ありがとうー…大好きー”

婚約指輪を渡して、プロポーズした時の
”円香”を思い出す恵三ー

ずっとずっと、異性に縁がない生活を送って来た恵三ー。

結婚願望がないのであれば、
それは全然構わないー。
しかし、恵三の場合は、小さい頃からずっと結婚したかったー。

が、それは叶わずに30代に突入し、40代に突入してしまったー。

婚活も10年以上続けているー。
それでも、成果は出なかったー。

恵三自身ー
性格にも問題があって、それを直そうともしていないー。
だから、なかなか相手が見つからないのも仕方のないことではあったー。

”本来なら”
恵三はこのまま生涯独身で人生を終える運命だったのだろうー。

けれどー、
円香への復讐を目論む昌平が、”円香に変身して、婚約する相手”に
選んでしまったことで、彼の運命は変わってしまったー

”もう生涯独身だろう”と、諦めかけていた恵三の前に
まるで”ドラマのような展開”で、円香という存在が現れたのだー

嘘のように親しくなりー、
こんな自分を好きでいてくれる円香を、心の底から愛し、大切にしたー。

”はじめての彼女”を連れて行った時には、両親は泣いて喜んだー
婚約を報告した時も、両親は泣いて喜んだー。

友人たちは、祝福してくれたー

それなのにーーー

「くそがァ!」
恵三が、怒りに満ちた表情で壁を殴りつけたー。

騙していたのかー?
あの女は僕を騙していたのかー!

僕みたいなモテないおっさんを弄んでいたのかー!?

恵三は怒りに任せて壁を何度も何度も殴りつけるー。

母親に至っては、婚約が一方的に破棄されそうと
伝えると、体調を崩して寝込んでしまったー

父親は恵三同様に怒り狂っているー

「許せないー…!僕をあざ笑ってー
 あの女ー…!
 許せない!!!」

恵三の目には、”裏切られた”と思い込んだ
怒りの炎が宿っていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーえ…」

会社で、円香は信じられない言葉を耳にしたー

”円香が結婚するー”
そんな情報が会社に流れたのだー

「おめでとう」
「本当に、おめでとうー」
「ーおめでとうございますー」

祝福される円香ー

「えっ…ち、違いますー!
 わ、わたし結婚の予定なんてー!」

そう言い放つ円香ー

だが、周囲は本気に受け取ってくれずー、
混乱が広がっていくー

”昌平ー?それともあのおじさんー?”

どっちかが、何かをしたに違いないー。
円香はそう思ったー

やがてー会社内では色々な噂が立つようになり、
円香は会社に行く時間が近づくと、吐き気を覚えるようになったー

精神的に追い詰められていく円香ー

「ーーー!!!」

”この、裏切り女”

家への嫌がらせも始まったー。

恵三サイドからすればー
円香は”男を弄び、婚約まで進んでからの、突然の婚約破棄”という
悪女状態ー

恵三の友人の一部が、過激な行動に出てしまったのだー。

「ーーーなんで…なんでわたしがこんな目に…!
 わたしは、何もしてないのに…!」

円香は一人、部屋の中で悲痛な叫び声をあげるー。
どうすることもできないー。
本当に、どうしてこんなことになってしまったのだろうー、と思いながらー。

高校時代に、昌平を振ったことが悪かったのかー。
いいや、そんなことはないー。
昌平の”小さなことも恨み続ける性格”には耐えきれなかったし、
円香は別れる時も嫌味な言い方はせず、
細心の注意を払って別れたはずー。

”勝手に恵三と婚約された件”についてもー
円香には何の責任もないはずだー。

円香は思うー。

”もう一度、あの人と会ってしっかり話をしよう”とー。

この前は逃げてしまったー。
”怖い”という思いが勝ってしまったからだー。

だが、あの人も被害者なんだー。

しっかり話をすればー

そう思った円香は、恵三のSNSにメッセージを送り、
恵三を呼び出したー。
偽円香のフェイスブックから辿り、
なんとか恵三を呼び出したのだー。

「ーーー…」
怒りに満ちた恵三の顔ー。

円香は臆することなく、カフェで恵三と対峙するとー、
恵三に対して、今一度全ての事実を話し始めたー。

だがー
恵三は「今ならまだ間に合うー。僕と結婚しろ!」と、
怒りの形相で叫んだー

「だから、わたしはー!」
円香が必死に叫ぶー。

出来る限りの”証拠”も突き付けるー

例えばフェイスブックに掲載されていた
”デートした”という日、
円香は残業をしていたー。

その証拠を突き付けるー。

それでも、恵三は信じてくれなかったー。

「そんなことない!あるはずがない!」と
泣きながら、そう叫んだー

”この人もー理解はしてくれているのかもしれないー”
円香は一瞬そんなことを思うー。

もし、自分が反対の立場だったらー?

やっとの思いで恋人が出来て、
やっとの思いで婚約してー
それが”はい偽物でした”となったらー?

そう、簡単に受け入れることはできるのだろうかー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結局、恵三は受け入れてくれずー、
職場にもいることができなくなってしまったー。

”実家の両親”にまで、婚約報告がいつの間にか行われてー
母親から”今日、恵三さんに会ったよ”などと
言われてしまったー

”どうして、あの人がわたしの実家を知ってるの!?”

困惑する円香ー

”田畑昌平”
円香は、元カレの昌平があれこれ仕組んでいるのだという
答えにたどり着いたー

昌平は”円香に近寄らない・何もしない”と約束したー

だが、彼の性格を考えると
”円香に近寄らず、円香に直接何もしていない”ーー

”だから俺は約束を破ってない”
とか、言い出すタイプなのだー

昌平が、見知らずおじさんー…恵三を間接的に煽り、
事態をさらに悪化させているー。

職場や実家に”婚約”のことが伝わったのも
恐らくは昌平のー。

円香は昌平にメッセージを送るー。

だが、応答はないー
既読もつかず、完全無視ー。

昌平に電話をしても、完全無視ー。

円香は友人の美姫から聞いていた昌平の家に乗り込むことを決意ー
翌日、昌平の家を訪れたー。

だが、部屋の電気がついているのに居留守を使う昌平ー

「もう!!」
そう思いながら、昌平の家の扉に手をかけるとー
鍵は開いたままだったー。

少し驚きながら、昌平の家の中に入るとーーー

そこにはーーー

「ーーひっ!?!?!?」
円香は思わず尻餅をついてしまったー

苦痛と恐怖を顔に滲ませながらー
血まみれで絶命している田畑昌平の姿が、そこにあったのだー

「ーーー…ひ…… な…な…なに…これ…」
あまりの恐怖にガクガク震えながら、円香はやっとの思いで、
警察に通報するのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

警察には”散々疑われた”がー、
死亡推定時刻に完全なアリバイがあったことで、円香は解放されたー

昌平が死んだー。
何故ー?

そんな風に思いながら帰宅するとー
家の中にーーー

”婚約者”のおじさんー
恵三がいたー。

「ーーーやぁ」
恵三が笑うー

「ひっ!?」
円香がビクッと震えるー。

”どうしてここにー?”

そう思いながら
「”婚約者”だからねー。お母さんが合鍵を貸してくれたよ」
と、恵三が笑みを浮かべたー。

「ーー…な…なんであなたがここに…」
円香は震えるー

普通じゃないー
”勝手に人の家に入る”なんてーー

「ーーー!」
円香が、その表情に恐怖を浮かべるー

恵三が血のついたナイフを取り出したのだー

「ーーーーーーー」

円香は”殺される”と思ったー

元カレの田畑昌平を殺したのも、恵三なのだと咄嗟に理解したー。

恵三はナイフを手に、円香のほうをまっすぐ見つめるとーーー

「ーー君の言う通りだったー
 申し訳なかった!」

と、突然その場で土下座をしたー

「ー!?!?!?!?」
困惑する円香ー

「ーー君の言う通り、田畑とかいうやつが、
 君に変身してーー…僕を…僕を弄んでやがったー」

その言葉に、円香は戸惑いの表情を浮かべるー。

恵三は言うー。
先日、円香から、”変身”のことを聞かされた恵三は
そんなことあるはずがない、と思いつつも、
”田畑昌平”の家に乗り込んだー

昌平は留守だったため、昌平が帰宅するのを待ちー、
やがて、帰宅した昌平と接触するー。

そのまま家の中に押し入り、昌平に事実を問いただす恵三ー

最初、昌平はとぼけたー。
しかし、あまりにもしつこく恵三が繰り返し質問したためー
昌平は笑みを浮かべながら認めたのだー

「ーーうるさい奴だなー
 そうだよ、あれは俺だよー
 大体、お前みたいなおっさんが今更結婚できるわけないだろー?
 自分の姿、鏡で見て見ろよ」

昌平はそんなことを言いながら、
「分かったらさっさと出ていけー出ないと警察呼ぶぞ」と、笑うー。

それだも帰ろうとしない恵三に対して、
「鏡、持ってきてやろうか?」と、挑発的に、洗面台の方に置いてある
鏡を取りに行こうとしたその時だったー

恵三は隠し持っていたナイフで昌平に襲い掛かりー、
昌平はそのまま無残な屍を晒すことになったー。

全てを語った恵三は呟くー

「ーーーーあんなやつに騙されてー、
 一人浮かれてた僕が、馬鹿みたいだー

 ーーー」

恵三はそこまで言うと、
円香のほうを見たー

「ーーーーーー僕と、結婚してくれー」

涙目で円香にプロポーズをする恵三ー

だがー、円香からすれば
それを受け入れることは出来ないー

この人は”知らない”人なのだからー

「ーごめんなさいー」

お互いに”田畑昌平に騙された被害者同士”

けれどー
だからと言って”はいー結婚しましょう”と、
言うことはできないー

それにー
昌平に同情はできないとは言えー、
昌平の命を奪った恵三のやり方は、円香には理解できなかったー

「ーははは…そうだよなー…ははははー」
振られた恵三は笑みを浮かべながら呟くー

そしてー

「ー僕はもう、おしまいだー。
 僕はもう、人殺しだー…

 もう、僕はー」

と、言葉を呟くと、
恵三は突然ナイフを自分に向けたー

「ーちょっと!待って!」
円香は思わずそう叫ぶー。

だがー、恵三は自分を切り裂きー
その場で絶望の表情を浮かべながら絶命したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

数か月後ー

元カレ・昌平の死ー。
勝手に婚約者になっていた、恵三の死ー

どちらも、円香に責任はないー。

学生時代、昌平を振ったことも、
昌平の性格に問題があったためだし、
円香が浮気をしたわけでもないー

恵三の件も、円香が知らないうちに動いていたことで、
円香にはどうすることもできなかったー

けれどー

「ーーーー…はぁ…」
深々とため息をつく円香ー。

結局ー
職場に、実家に婚約の情報を流したのは昌平の方だったみたいだけどー、
昌平も恵三もいなくなってしまった以上ー、
”職場にいられなくなった状況”を覆すこともできずー、
復帰することもできなかったー

「ーーーーー…」
昌平の遺体が目に焼き付いて離れないー
目の前で死んだ恵三が目に焼き付いて離れないー

「ーーーはぁ……」
精神を病んでしまった円香ー。

実家に帰り、実家でふさぎ込む日々ー。

昌平によって植え付けられた強いトラウマと心の傷はー、
当分の間、消えてくれそうにはなかったー。

おわり

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コメント

他者変身のお話でした~!
自分の姿が勝手に使われて、知らないうちに
話が進んでいるのは、恐ろしいですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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