<皮>俺が試着したいのはお前だよ~欲望編~(前編)

洋品店で欲望の限りを尽くした男ー…

彼の欲望はまだ終わっていなかったー。

”試着男”の恐怖、ふたたび…!

※「俺が試着したいのはお前だよ」の後日談デス!
先に本編をご覧ください!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

佐々本 満男(ささもと みつお)ー
彼は”人を皮にすることができるマチ針”を持っていたー。

そのマチ針を使い、
気に入った人間を皮にし、その姿で生活したり、
欲望の限りを尽くしたりを繰り返していたー。

ある日、洋品店をホームレスのような風貌で訪れた満男は
その店内で、若い女性店員の真由梨(まゆり)、
ギャルっぽい風貌の帆乃(ほの)、
店長の明子(あきこ)を皮にして、
欲望の限りを尽くしたー

だが、その店内にいた女性刑事・みどりによって
その正体を見破られた挙句、皮にしていた明子ごと銃撃を受け負傷ー
なんとか、みどりを皮にして支配しようとするも、失敗し、
最後は咄嗟にみどりが放った銃弾に撃たれて
そのまま息絶えたー

…はずだったー

がー、
”着られた人間は、着た人間そのものになってしまうー”

そんな力が”皮”にはあったー。

それまで満男は、一度皮にして支配した人間を
”元に戻したこと”はなく、
ハサミで切り刻んでゴミに出すなどして、そのまま処分していたー

だから、そんな力があるとは知らなかったのだー。

”死んだ”
そう思った満男

しかし、満男は真由梨に、帆乃に、明子になってー
”三人の俺”がいるような、そんな状態になって、蘇ったー。

満男になった三人は、同じ場所に集まると、
同じような邪悪な笑みを浮かべながらー
あることを話し始めたー

「よぉ ”俺”ー」

三人が、笑いながら挨拶を交わすー。

真由梨も、帆乃も、明子も、それぞれが
邪悪な笑みを浮かべているー

優しそうな雰囲気だった麻由里も、ギャルっぽい帆乃も、
スタイルの良い女店長の明子もー
現在は全員”満男”と化していたー

「ーーへへへへ…こんな形で助かるとはな」
帆乃が、ドサッとソファーに広がりながら
だらしなく足を広げると、笑みを浮かべながら言うー

「へへーまぁ”オリジナル”の俺は死んじまったんだよな?」
明子がタイツの上から足を触りながら言うと、
真由梨は「でもまぁ、ちゃんとこうして”俺の記憶”は引き継いでいるんだからよー」
と、自分の頭をつつきながら笑ったー。

”満男”は死んだー。
だが、真由梨・帆乃・明子の3人がー
満男そのものと化したー。

厳密に言えば、今、ここにいる三人は
満男そのものではないー。

”満男の人格・記憶・思考を完全に受け継いだ”ものたちだー。

だがー
”死んだ時”までその記憶はハッキリと残っているー

満男であって、満男でない存在ー
それが、この三人だったー。

「ーーーこれからどうする?」
ニヤニヤしながら帆乃が言うと、
明子は「まずは…」と笑みを浮かべながら、
「ー三人で朝までお楽しみに決まってるよなぁ…?」と、
邪悪な笑みを浮かべるー

「へへへへへ…早速、”わたしたち”の身体を
 じ~っくりレビューしちゃおうぜ」
真由梨が言うと、残りの二人も嬉しそうに頷きながら、

三人は一睡もせずに、理性を捨てた獣の如く
欲望の限りを尽くしたー

翌日ー

「ーそういえばさ、”俺の葬式”行われるみたいだぜ?」
明子がスマホをいじりながら言うと、
「ーホントかよ?」と、ギャル風の帆乃が笑いながら言うー。

「へ~…じゃあ、俺たち三人で行ってみるか?」
真由梨のそんな言葉に、
帆乃はゲラゲラ笑いながら「自分の葬式に出るって、すげぇ新鮮だな!」と、
興奮した様子で自分の髪をくるくると触り始めるー

そしてー
三人は”今後”について話し合い始めるー。

”あのお店”は、今後も三人で続けることを決めー、
三人は誰か一人の家で”同居する”ことを決めたー。

”全員 俺”だし、同じ場所に揃っている方が
いつでも欲望の限りを尽くすことが出来るー

さらにー
近日中に行われる満男自身の”葬式”への出席ー

「ーーー…あとはー」
ご機嫌そうだった明子が表情を歪めながら言うー。

先程からずっと、太腿のあたりを手で触っていた明子が
太腿から手を放して怒りの形相を浮かべる。

「ーーーあのクソ女ー」
明子がそう呟くと、
真由梨と帆乃も反応を見せるー

”クソ女”とは、
あの日、洋品店で”試着”と”レビュー”を楽しんでいた
満男の”至福の時間”を台無しにした女性刑事・みどりのことだー

みどりに”撃たれた”時のことを思いだす三人ー

「ーあぁぁ~痛かったよなぁ~ホント」
真由梨が、”撃たれた”あたりを触りながら笑みを浮かべると
「復讐してやらなくちゃねぇ♡」と、ギャル風の帆乃が笑うー。

”三人の満男”が話し合った結果ー、
これからやるべきことは決まったー。

”自分の葬儀に出ること”
”三人で同居生活を始めること”
”明子たちのお店を”俺好み”に変えて続けること”

そしてー
”みどりへの復讐”

この4つだー。

「ーそうそう、”全員同じ”になっちゃつまらないからー、
 俺たちはこのまま”手に入れた身体”の長所を伸ばしていこうぜ?」

帆乃がそう言いながら
「俺はこれからも引き続きギャルでー」と、宣言すると、
明子は、魅力的な足をさらに魅力的にー、
真由梨は優しそうな、穏やかな雰囲気をさらに磨いていくことで、
三人の意見は一致したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

明子たちが満男に皮にされたことで、
休業状態にあった洋品店の営業を再開することに決めた三人ー

「ーーこういうのじゃなくてぇ、エロいのばっかり揃えるべきでしょ!」
真由梨が乱暴に”今まであった”商品を乱暴に放り投げていくー。

どちらかと言うと、上品な雰囲気漂うお店だったこのお店は、
”満男の欲望の巣”へと変わっていくー。

「ーーせっかくなんだから、店員のこいつらもエロい格好するべきじゃね?」
真由梨が胡坐をかきながら言うと、
帆乃は「当然だな!」と笑うー。

明子は”元々の明子の記憶”を元に、商品の発注を進めながら
ニヤニヤと笑みを浮かべているー。

だがー
その時だったー

「ーーー誰か来た」
帆乃が言うと、真由梨が「俺が出る」と、言いながら、
少しだけ開けてあるシャッターの隙間から
自動ドアをノックしている人物を確認するために
入口の方へと向かったー。

「ーーー…!」
真由梨が外を覗くと、
そこにはー”あの時”満男を”撃った”あの女性警官の姿があったー

真由梨は一瞬、鬼のような形相を浮かべたものの、
すぐに笑顔に戻りー
「あ、刑事さんー!大変お世話になりました~!」と
笑いながら自動ドアを開けるー

「ーーすみませんー急にお邪魔してー」
みどりが優しい笑顔で微笑むー。

”犯罪者”である満男と対峙した時とはまるで違う優しい雰囲気ー

「あ~~~!どうも~!」
明子も笑顔を浮かべながらみどりの方に近付いていくー

「あんな事件だったのでー
 皆さんがその後、何事もないかどうか、心配で」

みどりがそう言いながら微笑むー。

明子・帆乃・真由梨の三人は
満男に”皮”にされたー。
なんとか人間の姿に戻すことはできたもののー
”前代未聞”の出来事に三人にどのような影響が
出ているかも分からないー。

そのため、みどりはこうして三人の様子を
見に来ていたのだったー

「ーー」
散らかっている店内を少し不思議そうに見つめるみどりー。

”綺麗に並んでいたはずの洋服”が見本のマネキンと共に
なぎ倒されているかの様子に、少しだけ不安を覚えるー

「あ」
明子がそれに気づくと、
「ーあの日、散らかった状態のままになっててー
 うふふふふ」と、わざとらしく笑みを浮かべたー

「ーーーそ、そうでしたかー?
 一度現場検証のあとに片付いていたと思いますが」

みどりがそう言うと、
すかさず帆乃が「あ、お店、この機に改装しようと思ってて~!」と
ギャルっぽい口調で言い放ったー。

「あ、なるほどー」
みどりがそう呟くー。

色々な話をするみどりと三人ー
話は、主にあの日の事件のことと、近況報告ー
三人の体調に異変はないかどうかー

「ーーあ~~~クソッ!あの女!」

トイレに行ってくる、と言い放って
トイレに移動した帆乃は、
髪を乱しながら、鏡を何度も何度も殴りつけていたー

”俺を殺したあの女”に対する恨みー。

ネイルを施した爪が輝くその手に、痣を作りながら
鏡をさらに殴りつけると、帆乃は、ふぅふぅと荒い息をしながら
何度も何度も舌打ちを繰り返すー

「ーあの女ーーーーー…許せねぇ」
帆乃が、その綺麗な顔が歪んでしまいそうなぐらいに
鬼のような形相を浮かべながら鏡を睨みつけるー

「ーおぉ…こわっ」
そんな顔を見てー、帆乃は我を取り戻すー。

「まるで今にも人を刺しちゃいそうな目のギャルー
 怖いなぁ へへー」

帆乃はそう呟くと、
「ー”前みたいに皮にすることはできないからな”」
と、悔しそうに呟いたー

もしも今ー、”三人になった”満男の手に、
”人を皮にするマチ針”があったのであればー、
今この場でのこのこと”欲望の巣”であるこのお店にやってきた
あのみどりとかいう刑事を”皮”にして
早速試着してやるところだったー

正義に突き動かされるその身体を試着してー
この店内で欲望と無様な姿を晒させてやるー。

だがー…
残念ながら、今はそれはできない。

何故なら満男本体がみどりに撃たれて死亡した際にー
”人を皮にするマチ針”は押収されてしまったからだー。

しかし”入手ルート”は度々変わっており、
それを突き止めるのにも時間がかかるー。

「ーこの場はやり過ごすしかねぇな」
トイレから戻った帆乃が、明子に小声で言うと、
明子も「あぁ」と頷いたー。

そのまま、女性刑事のみどりと会話を続ける三人ー

やがてー、みどりは満足したのか
「でも、皆さん元気そうでよかったですー」と、
優しく微笑むー。

「ーはいーこちらこそ、あなたのおかげで救われましたー」
真由梨が穏やかな口調で言うと、
みどりは時計を見てから「あ、わたし、そろそろ行きますね」と
立ち上がったー

「ーお店の営業再開を楽しみにしてます」
みどりが、社交辞令か、本音か、そんな言葉を口にすると、
真由梨、帆乃、明子の三人は笑みを浮かべながら
みどりが退店していくのを見つめー
外に出ていくと同時に鍵を閉めて、
三人で怒りの声をあげたー

「ーあの野郎!ふざけやがって!」
明子が怒り狂うー

三人とも、ため込んだストレスを発散するかのように、
店の中で自分の身体を弄び始めてー、
怒りの声と喘ぎ声をあげるー。

「ーあ~イライラする…今日はもう滅茶苦茶になっちまおうぜ」
帆乃が叫ぶと、残りの二人も狂ったように、欲望に身を投じたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…あの子たちー」

洋品店から外に出たみどりは、
少しだけ表情を歪めたー。

みどりは険しい表情を浮かべながら
真由梨、帆乃、明子の三人のことを思い出すー。

三人とも、すっかり元気になったように思えるー。

もう少し落ち込んでいるかと思ったがー、
予想以上に元気で、
三人の近況が心配で、わざわざ会いに来たみどりは
”最初は”安心したー。

しかしー、
三人と話をしているうちに、みどりは
”ある不安”を覚えたー。

それはー

”三人が何度も何度も何度も”全く同じリアクション”を
 していたこと”

だー。

もちろん、人間、同じリアクションになることもあるとは思うー。

けど、あの三人は
”何度も”、リアクションが同じだったー。

まるで”同じ人間”かのようにー。

死んだ満男のことを話している時は、
三人とも同時に歯ぎしりをしていたしー、
三人とも同じタイミングで小さく舌打ちもしていたー。

胸のあたりに”三人の視線”も同時に感じたー

他にも、話をしている最中に何度か
”三人が全く同じ反応”をした場面があったー。

一般人では気づかないかもしれないー。
けれど、刑事であるみどりの鋭い観察力は
それを見逃さなかったー

「ーーーーーーー」
みどりは、三人のことを心配そうに考えながら
お店のほうを振り返ったー

<後編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「俺が試着したいのはお前だよ」の後日談デス~!

”皮”にされた後の後遺症的な部分が中心になっていますが、
後編もぜひ楽しんでくださいネ~!

いつも通り、土曜日の枠のお話なので、
続きはまた来週の土曜日と、少しお待たせしてしまいますが、
楽しみにしていて下さい~!☆

コメント