<他者変身>いつの間にかわたしが婚約者!?①~祝福~

彼女はー
いつの間にか知らない男の”婚約者”になっていたー。

突然の出来事に困惑する彼女ー。

そして彼女は
”誰かが勝手にわたしの姿で婚約した”と、いうことを知ってしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーあ、そうそうーおめでとうー」

「ーーーは?」
大学を卒業して就職ー
最初の1年間を乗り越えて、社会人2年目になったOLー、
森坂 円香(もりさか まどか)は、思わず変な声を出したー

久しぶりに会った学生時代の友人、清野 美姫(きよの みき)が、
おかしなことを口にしたからだー

「ーおめでとうって、何がー?」
円香は思わずそう聞き返すー

”そうそう おめでとう”なんて言われるようなことを
何もした覚えがないのだー

「え??何がってー、決まってるじゃんー」
美姫が、飲み物を口に運びながらそう呟くと、
とんでもない言葉を口にしたー

「ー婚約!したんでしょ!
 照れなくたっていいじゃない」

美姫の言葉に、
円香は思わず「えっ!?」と、困惑して
食べようとしていたスイーツをポロリと落としてしまったー

「ーこ、こ、こ、こ、婚約!?誰が?」
円香が混乱しながらそう言い返すと、
美姫が「え??だ、誰ってー…円香しかいないでしょ?」と
美姫の方も混乱した様子で言葉を口にしたー

「え…ちょ、ちょっとまって!意味が分かんないけど!」
円香は慌ててそう叫ぶー

「誰かと勘違いしてない?」
とー。

そうー
円香は”婚約”などしていないー。
婚約どころか、今は彼氏もいないー
いったい、彼氏もいないのに誰と結婚すると言うのかー。

二次元のイケメンと婚約したつもりもないし、
学生時代の友人・美姫が何を言っているのか
サッパリ理解することが出来ないー。

「ー勘違いなんてするわけないでしょ~」
美姫は笑いながら、「ーえ?円香こそ、わたしを揶揄ってない?」と、
苦笑いして、スマホを操作し始めるー

「ーーーーー」
円香はサッパリ意味が分からず、美姫がスマホで何を見せてくれるのか、と
思いながらそれを待つー。

すると、美姫は”とんでもない写真”を表示して、
それを円香に見せて来たー

「ーーーは…はぁっ!?」
思わず変な声を出してしまう美姫ー

そこにはー
髪の薄い眼鏡をかけた、小太りのおじさんー
30代か40代ぐらいだろうかー。

モテるとか何だとか、そういうことからは
ほど遠そうなおじさんとーーー

”笑顔でツーショット”の円香の写真が映し出されていたー

二人の指には婚約指輪がはめられているー

「ーいやいやいやいやいやいやいや
 ないないないないないないないない」
円香は慌ててそれを否定すると、
「っていうかわたし、彼氏もいないし、
 今、結婚とか全然考えていないし、
 それに、このおじさん誰?知らないけどー」
と、そんな言葉を口にするー

「ーーーーあはは、面白い冗談だねー」
美姫はそう言いながら笑うと、
「冗談じゃないんだけど!」と、円香は
ムキになって言い返したー

”自分の知らないところで、勝手に誰かと婚約したことになっている”
そんな状況に、円香は混乱しながら
「悪質すぎるんだけど… わたしの写真、勝手に誰かが合成したんでしょ」と
ため息をつくー。

円香の反応に、流石に戸惑ったのか、美姫も少し表情を曇らせながら
スマホをもう一度円香に見せるー

”過去のわたしの写真を知らないおじさんに合成された”
そんな風にも一瞬思ったけれど、
よく見てみると”身に覚えのない”写真だー。

過去にこんなポーズで写真を撮った記憶はないー
婚約指輪は合成できるとしてもー
こんなに”自然な形”でー。

そう思っていると
美姫は「ーあ、フェイスブックに動画も上げてたじゃん」と、
スマホを再び手にして操作を始めるー

「フェイスブック!?やってないけど!」
円香がツッコミを入れるー

円香がやっているSNSは
ツイッターとインスタグラムだけだー。
あと、ツイッターがどうこう言われている時に作ったきり
そのまま放置しているマストドンとかいうSNS-。

そのぐらいだー。

少なくとも、フェイスブックはやっていないー。

だが、美姫は「冬ぐらいから始めてたじゃんー」と、笑うと、
そのままに、”円香のフェイスブック”とされるアカウントを表示したー

「ちょ!ちょっと!何これ!」
呆然とする円香ー。
そこには”円香のフェイスブック”が表示されているー

個人情報の一部も記載されていてー
しかも、”写真”が、それなりの枚数掲載されているー。

「ーーこの写真…なに…?」
”円香のフェイスブック”とされるアカウントにはー
”いつの間にか勝手に婚約者”になっていた謎のおじさんとの
デート写真のようなものまで掲載されているー。

確かに、円香自身もツイッターやインスタグラムには
写真を上げたことがあるー。

それを拾われて悪用される可能性もなくは、ないー。
だが、この”円香のフェイスブック”とされるアカウントに
載っている写真は
”拾われた写真”ではないー。

”円香の記憶にない、円香の写真”だー。

「ど、どういうことー」
混乱する円香ー

”わたしに記憶のないわたしの写真”ー
それは一体どういうことなのかー

過去にSNSに上げた写真が使われているー
それであれば
確かに気持ち悪いけれどー、
どういうことなのか理解はできる。
単純に”わたしの写真を使われた”と、いうことだからだー。

だが、”わたしにも身に覚えのない写真”が、
使われているとなると、意味が分からないー
いつの間にかCGだか合成だかの技術は
ここまで進歩した、ということなのだろうかー

それともー

「ーーこ、これ、わたしのそっくりさんじゃないの?」
円香がそう言うー。

だが、美姫は「円香って名乗ってるけど?」と、
フェイスブックのプロフィールのところを
改めて見せるー。

そういえばーーー

少し前に”おめでとう!”と、別の友達からLINEが来たことを思い出すー

”何のこと?”と返事をしたもののー
友達が別の話題を始めてしまったため、
うやむやになったままだったー

「ーーこれ、わたしじゃないー」
円香がそう呟くと、美姫は「えぇ…?」と、困惑した表情を浮かべるー

美姫からすれば
純粋に”婚約した学生時代の友人”を祝福するために
今日、土曜日を利用して、円香を誘ったのだったが、
思わぬ展開に困惑していたー

「ーそ…そうだー…
 わたしが結婚するって話、誰から聞いたの?
 そのフェイスブック見たの?」

円香が気を取り直してそう確認するー
反応的に、美姫が仕組んだことではないー。
誰かの”悪質すぎる悪戯”ならば、
必ず黒幕がいるはずだー。

「ーえ…あ、わたしはー咲織(さおり)から、
 LINEで聞いたんだけどー」

美姫がそう言うー。

佐々松 咲織(ささまつ さおり)ー
同じく学生時代の友人の一人だー。

「ーーー咲織ー」
円香がその名前を口にするー。

咲織は、”仲良し”ではあったものの
酷く気分屋で、何度か喧嘩したこともあったー。

もしかしたら、そんな咲織に恨まれていたのかもしれないー。

そう思いながら、
美姫のほうを見ると、美姫は「ホントにこれ、円香じゃないの?」と
フェイスブックを表示した画面を指さすー。

「違うよ!こんなおじさん知らないし!」
円香とキスをしている写真まであって、
円香は吐き気を催すー。

”知らないおじさんとキスをしている”のもそうだし、
”キスした写真を平気で世界に晒す”のも円香からすれば
キツイことだったー。

「ーーわ、わかったー… うん…よく分からないけど…わかったー」
美姫が困惑しながら頷くー

円香は「なんか、巻き込んでごめんねー」と、
美姫に言葉を口にすると、
美姫は首を横に振ってから
「ーわたしこそ、なんか、ごめんねー」と、申し訳なさそうに言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・

”犯人”は、あっさりと判明したー

気分屋の咲織ー…
ではなく、
犯人はー”高校時代の円香の元カレ”
田畑 昌平(たばた しょうへい)だったー。

高校時代、円香はこの昌平という男と
数か月間付き合っていたー。

一見すると優しく気配りのできる好青年…
そんな感じだった昌平ー

しかし、付き合ってみると、小さなことも根に持つタイプで、
クラスメイトたちへの恨み言を毎日のように
円香に対して言い始め、
さらには円香の細かなミスも、何日経っても
ネチネチとずっと言い続けて来る性格に嫌気がさしてしまい、
円香から別れを告げたー。

円香が別れを告げた際には、
”ごめんー初めての彼女だったからどこまで本音をさらけ出していいのか、
 うまく距離感が掴めていなかった”と、反省の弁を口にし、
特にトラブルになることはなく、そのままお別れしたはずだったー。

その後、高校3年になってからはクラスが別になり、
特に接点もないまま卒業に至っているー。

その昌平が今でも繋がりのある男子や女子に
”円香の婚約”を噂として流し、
それが気分屋の咲織に伝わり、
気分屋の咲織と今も親しい美姫に伝わりー、
円香と親友の間柄で今も連絡を取り合っている美姫が、
円香本人に伝えた、と、そういう流れで
伝わってきたようだったー。

情報の出どころが田畑昌平とは言え、
彼が”円香のフェイスブック”や、
”出どころ不明の円香とおじさんのツーショット写真”を
作った犯人かは分からないー。

こればっかりは田畑昌平本人に確認してみる必要があるー。

円香はそう思いながら
嫌々と、田畑昌平に対してメッセージを送ったー。

今でも、”同じ連絡先”なのであれば
昌平と連絡が取れるはずだー。

昌平にメッセージを送った半日ほどが経過してー
ようやく、昌平から返事が戻って来たー。

どうやら、今も同じ連絡先だったようだー

社交辞令的な”久しぶり”の挨拶や、
”最近はどうしてる?”みたいなテンプレートのような
メッセージを添えたあとに、本題である
”わたしが婚約したって話ー、どこから聞いたの?”と、いう話を
送り付けたー。

”久しぶりー!円香のこと、今でも思い出すよー”
そんな返事と共に、昌平は
”そのことなら、会って話をしたいな”と、
書かれていたー

だがー
高校時代の元カレと久しぶりに会う、なんて
あまり気乗りはしないー。

そんな風に思いながら文章を読み進めると、

”フードコートとかで会う分には、周囲に人も
 たくさんいるし、安心だろ?”

と、そう付け加えられていたー。

昔から”表面上”は気配りもできる昌平はー
大人になっても、ちゃんと気配りは欠かさない性格のままのようだー。

そういう性格だからこそ、円香も最初は昌平と
付き合ってしまったことを、改めて自分自身で思い出すー。

”昌平は何か知ってる”
そう思った円香は昌平に、次の土曜日に会う約束をして、
そのまま連絡を終えたー。

「ーーーは~~~…なんなんだろう…」
円香はため息をつきながら、
自分がいきなり”知らないおじさん”の婚約者になってしまったことに
困惑の表情を浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日ー。

デパート内のフードコートで
田畑昌平と合流した円香ー

「久しぶりー
 はは、元気そうでよかったー」

昌平はそんな風に言うと、円香と共に着席して、
笑みを浮かべたー

円香は少し疲れた様子で
「それでー…”わたしの婚約のこと”何か知ってるの?」と、
本題を切り出すと、昌平は少し笑いながら
円香のほうを見つめたー

「あぁーあの写真は、俺が作った写真だよー
 フェイスブックもー」

あっさりと”俺が犯人だ”と言わんばかりの発言をする昌平ー

「えっ……!?」
何か言い訳をするわけでもなく、あっさりと自分が犯人だと
言い放った昌平を前に、円香は困惑することしかできなかったー。

②へ続く

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コメント

いつの間にか婚約者…☆!
恐ろしいですネ~!

次回はもっと大変なことに…!?☆

今日もお読み下さりありがとうございました~!

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