<入れ替わり>人間嫌いの小説家がアイドルに!?②~異業種~

人間嫌いの小説家が、
女子大生アイドルと入れ替わってしまったー…

戸惑う二人の運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「~~~~~」
小説家・美彩のアシスタントを務める涼子と、
アイドル・綾乃のマネージャーを務める和義が
二人で状況の確認と今後の対応を話し合っている中、

美彩(綾乃)と綾乃(美彩)は気まずい状況に置かれていたー

”ー何て話したらいいか、分からないー…”
アイドル・綾乃になった小説家の美彩は、
人間嫌いかつ、人前に出るのも苦手、その上で人見知りであったため
”自分の身体”を目の前に何を話していいか分からなかったー。

”な、なんかわたし…嫌われてる?”

一方の、美彩になった綾乃は、
綾乃(美彩)の態度がとてもそっけないことで、
嫌われているのかな?とか、
”もしかしてこんな状況になったこと、わたしのせいだと思われてるのかな?”とか
色々な不安を感じながら時間を過ごしていたー

「あー、あの!」
気まずい沈黙に耐えかねた美彩(綾乃)が言葉を口にするー

アイドル・綾乃は、小さい頃から明るい性格で、
人前に出るのも得意で、目立ちたがり屋でもあったー。
そんな綾乃にとって、アイドルは相性ばっちりで、
ファンとの交流や、ファンサービスも積極的に楽しんでいたー

マネージャーの和義もため息をついてしまうほどに、
ファンサービス熱心で、逆に注意されてしまったこともあるほどだー。

「ーーーはい」
綾乃(美彩)が、いつも明るい表情を浮かべている綾乃の顔を
暗い表情に染めながら答えるー

「あ、あのーわたしは、水嶋 綾乃と言いますー
 一応アイドルをやっているのでー
 もしかしたらご存じかもしれないですけどー…」

美彩(綾乃)が、美彩の口から出ているとは思えないほどに
ハキハキと言葉を口にすると、
綾乃(美彩)は「知らない」と、だけ答えたー

別に悪意を持って言い放ったわけではなかったのだが、
あまりに不愛想すぎて、美彩(綾乃)からすれば、
何となく嫌な気持ちを覚えるー。

「ーーあーー…あははー
 え、えっとー…あなたは…」
美彩(綾乃)はなおも、綾乃(美彩)に声をかけるー。

「ーーえ?」
綾乃(美彩)が、困惑しながら美彩(綾乃)のほうを見つめるー

「あ、いえー
 あなたのお名前はー…?
 何でか分からないですけど、こうして入れ替わっちゃったわけですしー
 まず自己紹介を済ませて置いた方が良いと思ってー」

美彩(綾乃)がそう言葉を口にするー。

”人に名前を聞くならまず自分から”なんて言われないためにも
先に自己紹介も済ませて置いたー。

だがー
綾乃(美彩)は表情を歪めるー

”ど、どうしようー”

美彩は”女性作家だとバレると色々面倒臭そう”という理由で
”島 三郎”を名乗って、小説家として活動しているー

大ヒット作家とまではいかないが、それなりに売れているため
もしかしたらこの綾乃という子も、”島 三郎”は知っているかもしれない。

だがーさすがにその名を名乗るわけにはいかないし、
かと言って、本名を名乗るのも気が引けるー。

そんなことを考えているとー
「美彩ちゃん!それに、水嶋さん!」
と、美彩のアシスタントの涼子が、
綾乃のマネージャー・和義と共に近付いてきたー。

「ーーひとまず、二人とも
 お互いのフリをして生活を続けるってことでいいかなー?
 こっちのマネージャーさんとも話がついたからー」

涼子のそんな提案に、
二人とも「えぇっ!?」と、声をあげるー。

「あ、勝手に決めちゃってごめんねー
 マネージャーさんと一緒に
 ”相手のフリをしながら生活していく”のと、
 ”自分の生活を相手の身体で続ける”のと、
 ”入れ替わりのことを公表して活動する”のとー
 色々なパターンを考えたんだけどー…」

涼子はそう言うと、
マネージャーの和義が補足する。

入れ替わりの公表はー、
リスクが高すぎるという点。
世間が大混乱するだろうし、身内であっても
信じない人間もいるかもしれない。
だから、入れ替わりは事情を知る最小限の人間だけの秘密にしておいた方が
良いー、そんな判断を下した

残りの2パターン…
”自分の生活を相手の身体で続ける”に関してはー、
小説家である美彩の方は、綾乃の身体で小説の執筆を続けることはできるし、
アシスタントの涼子が、主に外とのやり取りをしている以上、
大きな問題はないと思うー。

しかし、アイドルである綾乃の方にとっては大問題で、
美彩の身体でアイドル活動を続ければ
当然入れ替わりはバレるし、
そもそも”身体が変わった”なんてことは、アイドルとしては
死を意味するようなものだー。

そこで、残る一つの方法しかないのだと、和義は説明するー

「ー神里先生には、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ないー」
小説家だからか、綾乃(美彩)に対してそう頭を下げる和義ー

「ーい、いえ…で、でも、わたしにアイドルなんて……」
綾乃(美彩)が不安そうに言うと、
和義は「私がサポートしますので、問題ないようにします」と
出来る限り負担にならないように約束したー

「~~~~~~~」
綾乃(美彩)は困惑しながら、涼子の方に駆け寄ると
「わたしにアイドルなんて、無理だよ!」と、
小声で叫ぶー

「で、でも、それしかないよー
 そうしないと、水嶋さんだけ大損害を受けることになっちゃうしー…
 元に戻れる方法が見つかるまで、頑張って!」

涼子の言葉に、綾乃(美彩)はなおも続けるー

「わたしが人間滅茶苦茶嫌いなの知ってるでしょ!?
 今だってもう帰って寝たいし!」

普段は無口な美彩が珍しく必死に色々言葉を口にするー

けれど、涼子は
「すぐ元に戻れる方法も見つけるから!」と、何とか説得するー

「って、わたしの小説はどうするの?
 あの子が書くの!?」

困惑する綾乃(美彩)ー

すると涼子は
”ちょうど連載が終わったばかりで、少し間があるし、
 しばらくはわたしの出番が多いからー、
 それまでに元に戻れれば大丈夫ー”
と、説明するー

それは、確かにそうかもしれないー
だが、戻れなかった場合はー

”ーーいざとなったら、わたしがしばらく代わりを務めることもできるからー
 美彩ちゃんのお話、大学時代からずっと読んできたんだもんー
 元に戻るのに時間が掛かったら、わたしが時間稼ぎで
 島三郎の作品として1個、短いお話出すから!”

涼子の言葉に、綾乃(美彩)は
「まぁ…涼子がそう言うならー」と、頷くー

流石に”綾乃としてアイドルをしながら”執筆活動をするのは無理があるー
綾乃の身体が過労で倒れかねないー

もしも、元に戻るのに時間がかかってしまった場合はー、
涼子に任せるしかないー。
流石にあのアイドルの子に小説が書けるとも思えないー。

「ーーーーー…ってー…わたしの素性、あのマネージャーにいったの?」

そう言えば、話の流れからー
アイドルのマネージャー・和義が、さっき”神里先生”と言っていたのが
引っかかったー。

つまりは、涼子が和義に”美彩の正体を話した”ことになるからだー

「だって、言わないわけにはいかないでしょー
 こっちは素性不明のままなんて、無理があるしー」
涼子が困惑しながら言うと、
綾乃(美彩)は「はぁ~~~~~」と、深くため息をつくと、
「人間と関わりたくないんだけどなぁ」と、不満そうに言葉を口にしたー。

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その日からー
二人は”お互いのフリ”をしながら
生活することになったー。

アシスタントの涼子と、マネージャーの和義が
それぞれ”元通りになる方法”を調べてくれることになっているー。

「ーーすごいですね…」
美彩(綾乃)がそう言うと、
涼子は「ーふふ、美彩はいつもここで一人で執筆を続けてるのー」と、
美彩のことを説明するー

「ーーわぁ………」
目をキラキラさせながら、美彩(綾乃)が周囲を見渡すー

「そうだ!アレだったら、”島 三郎”として
 一作品書いてみる?
 わたしが手直しはできるし、
 元に戻れるまで、時間がかかるかもしれないからー、
 その間ずっと、”島 三郎”が作品を出さないわけにはいかないしー」

涼子がそう提案すると、
美彩(綾乃)は「えっ!?いいんですか!?」と、目を輝かせたー。

美彩は人前に出ないー
そのため、綾乃は”美彩のフリ”をする必要がほとんどなく、
意外と快適な生活を送っていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー」
「ーーーーーーーーー」

綾乃(美彩)は、むすっとした表情で、
「こんなの…聞いてない…」と、言葉を口にしたー

「ーすみませんー…どうしても、元々入っていた予定で
 キャンセルするわけにもいかずー」
マネージャーの和義は申し訳なさそうに頭を下げると、
綾乃(美彩)は「こ、こんな恥ずかしい服、よく着れますね!」と、
不満そうに言葉を漏らしたー。

特に露出度が高いわけでもなくー
よくあるアイドル系の衣装だったが、
美彩からしてみれば”恥ずかしい衣装”に他ならなかったー

「ー別にそこまで騒ぐほどの衣装ではない気がー」
和義が、少し呆れ顔で言うと、
「わたしにとっては騒ぐほどの衣装なんです!!!」と、
綾乃(美彩)は顔を赤らめながら叫んだー

「その上ーー 
 あ、あ、握手会なんてー

 わ、わたし…言っときますけど、人間嫌いなんで!」

むすっとしながら綾乃(美彩)が叫ぶー

「は~~~、知らない人の手を触るとか
 最悪」

ブツブツと一人呟く綾乃(美彩)ー

しかし、マネージャーの和義は、”そこを何とか!綾乃のために!”と、
必死にお願いを繰り返したー

「はぁ…早く元に戻れる方法、見つけて下さいよ」
ボソッと呟きながら綾乃(美彩)は
「言っときますけど、わたし、愛想よくニコニコとかできないんで」
と、不満そうに呟くー。

マネージャーの和義は少し戸惑いながらも
「笑顔とかも、無理ですか?」と、確認するー

すると、綾乃(美彩)は、
いつもは”笑顔が可愛い”タイプの綾乃の顔で、
奇妙な怖い感じの笑みを浮かべたー

わざとやっているわけではなく、
本当に美彩は笑うのが苦手だったー

「ーーー分かりました 結構です」
マネージャーの和義があっさりそう言うと、
「諦めるのはやっ!なんか逆にムカつくー」と、
小声で呟くと、綾乃(美彩)は、
「まぁ、握手するだけなら」と、ようやく重い腰を上げたー。

「ーーーありがとうございまーす」

「はーい どうもですー」

「どういたしましてー」

ファンたちと握手をしながら
無表情棒読み状態で、綾乃(美彩)が適当な言葉を繰り返すー

「ーーいつも応援してます!」
ファンの男が、綾乃(美彩)と握手をしながら
嬉しそうにそう言い放つー

「あっ、そーですかー はいー」
綾乃(美彩)がやる気無さそうにそう呟くと、
「ちょっとタイム」と、突然立ち上がって、
そのまま奥に戻り、
「あ~さっきのやつ、汚い」と、不満そうに
手を洗い始めるー

マネージャーの和義は「申し訳ありませんー少々お待ちください」と、
ファンたちに謝罪の言葉を口にするも、
握手会は大失敗ー

”今日の綾乃ちゃん、なんか滅茶苦茶不機嫌だったんだけど”

”あれ、ヤバいでしょ”

”ファンをないがしろにしている”

そんな不満がネット上に溢れ初めてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーできました~!どうですか!?どうですか?!」

一方、美彩(綾乃)は、
美彩の身体で小説を書き上げていたー

「一度、こういうの作って見たかったんですよ~」
笑いながら美彩(綾乃)が言うー。

「(美彩ちゃんの姿なのにー
 こんなニコニコだと違和感あるなぁ~)」

アシスタントの涼子は完成品の小説を見ながら
少しだけ表情を歪めるとー、
「ーーじ、じゃあー、これを島 三郎の短編作品として
 編集部に送ってみるね」と、笑みを浮かべたー

「はい!ありがとうございます~!」
嬉しそうな美彩(綾乃)ー

だがー
”島 三郎”の作品として、編集部に提出された作品に、
編集部は首を傾げたー。
涼子が何とかお願いして、その短編を世に放つことはできたものの、
ネット上では”島三郎に実は弟がいて、その弟の島四郎が代わりに執筆したんじゃないかと
思うぐらい、近代稀に見るクソ作品”などと評価されてしまう結果に終わってしまったー

アイドルが小説家に、
小説家がアイドルにー、
いきなり転身するなど、最初から無理だったのだー

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!☆
二人はどうなってしまうのでしょうか~?

今日もお読み下さりありがとうございました~!

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