彼氏からプレゼントされた指輪に宿っていた
邪悪な魂ー。
指輪を介してその魂に支配されていく彼女の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー!!!!」
月曜日ー。
隆司から”指輪”を貰ってから
既に1週間以上が経過したー
意識を取り戻した希美は自分が身に覚えのない服を
着ているのに気づき、表情を歪めるー
パニックになりかけて、目から涙をこぼす希美ー。
「ーーー…わたし…どうしちゃったの…?」
日に日に、”何かがおかしい”と、思う気持ちが強まっているー。
記憶が飛んでいる時間が、多くなっているー
特に”昨日”ー
土曜日はほとんど記憶がなかったー。
そんな風に思いながらスマホを確認するとー、
希美は「えっ…!?」と、声をあげながら手を震わせたー
希美は”日曜日”だと思っていたー
が、スマホに表示されている曜日はー
”月曜日”ー
「ーう…嘘…な、なんでー…?」
指輪が怪しく光るー。
そう、”日曜日”の昨日ー、
希美は1日中、指輪に宿る魂に”支配”され続けていたのだー
そのため、希美は今日を日曜日だと認識していたー
「ーこ…この指輪ー…」
希美はついに、異変の元凶が指輪にあるのではないかと悟り、
指輪を見つめるー
今まで”なぜか”指輪のことが気にならなかったー。
指輪に宿る意識によって、思考にも若干の影響が出ているためだー。
しかし、”あまりに強い違和感と不安”が、”その影響”を上回りー
ついに、希美は”指輪を隆司に貰ってからわたしはおかしくなったー”と、
いうことに気付いたー
慌てて指輪を外そうとする希美ー
しかしー
”おいおいおいおいーそうはさせねぇぞ”
指輪の中に宿る意識は、既に”常に意識がハッキリとしている”状態にまで
覚醒していたー
最初はぼんやりとした自我だったが、今は明確に
”自分が何者なのか”も、思い出しているー
「ーーだ…誰!?」
希美は思わず声をあげるー。
その直後ー
指輪をはめている手が勝手に動きー
希美は、自分の手で自分の頬を殴りつけたー
「ーひっ!?!?」
怯える希美ー
”クククーあんまり”傷つける”ようなことはしたくねぇんだー
お前は俺の新しい器だからなー
だから、頼むぜ?大人しくしててくれよ”
どこから聞こえる男の声に、希美は「な、何なの!?誰!?」と
頭を抱えながら叫ぶー
”ーーククククー
俺が宿る指輪をプレゼントするなんてー
お前の彼氏も、悪い奴だなぁ ククー”
男が笑うー。
希美は「わたしから出てって!」と、叫ぶー。
けれど、そんな言葉で、指輪に封印された邪悪な魂が
”はいそうですか”などと言うわけがないー。
”お前の身体はもうすぐ完全に俺のものになるんだー
昨日1日、お楽しみをしすぎて、ちょっと消耗しすぎたようだがー
まぁ、お前を完全に支配するのも時間の問題さぁ”
封印されている男の言葉に、希美はガクガクと震えながら、
なんとか指輪を外そうとするー。
しかしー、指輪を外すことが出来ずー、
1階に駆け下りると、母親に向かって「これ…外して!」と叫ぶー
「え…」
首を傾げる母親ー
「ど、どうしたの?指にはまっちゃったの?」
事情を知らない母親がそう言うと、
希美は当然笑みを浮かべたー
「な~んちゃって♡ 外さなくていいよ ふふっ」
希美はそう言うと、そのまま部屋の方に戻っていくー
「ーーー!」
そしてー、希美が意識を取り戻すー。
”これ…外して”までしか記憶がないー。
希美は震えるー。
「ーーお願い…やめて…」
希美の嘆願するような言葉ー。
けれど、かつて悪事の限りを尽くした男が
そんな言葉で揺らぐことはないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
火曜日ー
隆司は希海の家を訪ねたー。
希美の停学は今日までー。
明日からは再び学校に復帰する予定だー。
「ーーー隆司…」
希美は暗い顔で疲れ果てた表情を浮かべているー。
「だ、大丈夫…?」
隆司がそう確認すると、希美は、
「ーーーわたしのこと、どうするつもりなの?」と、
悲しそうに言い放つー
「え…?」
隆司が首を傾げるー。
すると、希美は指輪をはめた指を見せながら、
「ーこんな指輪をわたしにプレゼントして、何のつもりなの!?」と、
泣きながら言い放つー
「ーーえ…ど、どういうこと…!?えっ!?」
隆司は意味がさっぱり分からずにそう言い放つー。
がー、直後、希美がニヤリと笑ったー
「ククククク…ふふふふふふふ… あはははははははっ」
面白そうに笑い続ける希美を見て、
隆司は恐怖すら感じたー。
停学になったことで、”宮内さん”がおかしくなってしまったのかー
それとも”やっぱり罰ゲームでの告白”だったのかー
そんな不安が浮かび上がってきてしまうー。
しかしー
指輪に支配された希美は”答え”を口にしたー
「ーありがとなー
お前のおかげでこの女は、俺のものだー」
希美が低い声で呟くー
「え……え????」
隆司は、もはや意味が分からず、完全に動揺している状態ー。
希美は指輪を見せながら
「ー”俺”はこの中に封印されていた存在ー」と、笑うー
「お前がこの女に”俺”をプレゼントしてくれたおかげでー
俺はこの女の身体を支配することができたー」
希美の言葉に、隆司は瞳を震わせながら
「な、な、なにを言って…?」と、やっとの思いで言葉を口にするー
だが、希美は玄関先で胸を揉むと、
「ーークククククーそういうわけだから、じゃあな」と、
そのまま玄関の扉を閉めたー
”指輪に宿っていた魂が、希美を支配した”
希美の言っていたことは、理解したー。
だが、そんなこと、現実にあるはずがー
「ーーーえ……ど、、ドッキリ…とか、そういうやつ…?」
隆司はそう思いつつも、希美の様子がここ最近、明らかに
おかしいことを思い出しつつ、
困惑の表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水曜日ー
学校に行く前に、隆司は、
近くのショッピングモールにある”アクセサリー屋”を
訪れていたー。
そこは、隆司が”希美にプレゼントした指輪を購入したお店”だったー
店主に、それとなく”指輪”について確認するー。
だが、どう考えても、店主の女性は困惑している様子で
”悪意を持って指輪を売った”ようには見えなかったー。
このお店はきっと何も関係はないー。
そうなるとーーー
隆司は、学校に到着すると、
ある生徒を呼び出していたー。
呼び出された相手ー、希美の親友の杏菜は
隆司が何かを言う前にー
「指輪のこと?」と、笑みを浮かべたー。
「な、何でそれをー…」
隆司がそう言うと、杏菜は笑みを浮かべるー
隆司はー
杏菜を疑ったわけではなくー
ただ単に”何か知っているかどうか”を聞こうとしただけー
しかし、杏菜の不気味な笑みはー
”杏菜が何かを知っている”ことを物語っていたー。
隆司が、希美にプレゼントした指輪はー、
希美の親友である杏菜のアドバイスを元に
”選んだ”指輪だー。
希美の誕生日が近づいて来てー、
”女子に何をプレゼントすればいいんだろう”と
悩んでいた隆司ー。
それを見透かしたかのように、杏菜は
”誕生日プレゼント、悩んでるんでしょ?”などと聞いてきたのだー
当然、隆司は頷いたー。
そして、”プレゼント探しを手伝ってくれる”という杏菜と共に
希美の誕生日の半月前に、一緒に買い物に出かけたのだー。
その際に、ショッピングモール内にあった小さなアクセサリー店に
入りー、杏菜が”これとかいいんじゃない?”と選んでくれたのが、
その指輪だったー。
「ーーーな、何か知ってるの…?」
隆司が不安そうにそう言うと、
杏菜は、笑みを浮かべながらポケットから何かを取り出したー
「ー!?」
隆司が表情を歪めるー。
杏菜が取り出したのは”指輪”ー。
「ーーあの日、貝塚くんがあのお店で買ったのは”この指輪”」
杏菜はそう言いながら
さらに言葉を続けるー
「貝塚くんが、希美にプレゼントする指輪を
わたしがすり替えたのー
わたしの家にあった”呪いの指輪”とー、ね」
杏菜の言葉に、
隆司は「…な、なんだって!?」と、叫ぶー。
あの日ー、”希美の誕生日プレゼント”を杏菜のアドバイスで
選んだ隆司ー。
隆司がお店で買った指輪は”普通の指輪”だったー。
しかし、一緒にいた杏菜が”わたしにも見せて~!”と、
その指輪を手渡された際にー、
自分が予め家から持ってきていた”呪いの指輪”と、
すり替えたのだー
隆司は、指輪になんて疎いだろうし
お店で”似てるもの”を買わせれば、すり替えても気づかないと、
そう踏んだのだー。
そして、案の定、隆司は気づかないまま
”呪いの指輪”を希美にプレゼントしてしまったのだー
「の、呪いの指輪って何なんだよー…!」
隆司が言うと、杏菜は笑ったー
「知らないけどーおじいちゃんがずっとそう言ってたのー。
絶対にはめちゃいけないってー。
希美さー、
わたしより成績もいいし、見た目も可愛いしー
おまけに彼氏も出来てー
一緒にいてムカつくのー
だからー、ちょっとお仕置きしてあげようと思ってー
で、希美に何か起きたの?」
微笑む杏菜ー。
杏菜が、”異変を感じている希美”の様子を心配してあげるような
素振りを見せていたのも
”希美が呪いの指輪でどう変化するか”を見たかったからー。
「ーーな、なんてことをー…!
なんてことを!」
隆司は、杏菜に向かって、希美の身に起きていることを叫んだー
そして、そのまま学校の授業を受けずに学校を飛び出すー。
隆司は今までの人生で一番、一生懸命走ったー
”僕のせいでー、僕のせいで、宮内さんはー”
例え、仕組んだのが杏菜であったとしても、
そんな怪しい指輪をプレゼントしてしまったのは僕の責任ー
そう思いながらインターホンを必死に鳴らすとー
希美が笑みを浮かべながら出て来たー
「ーお前かー」
希美が笑うー
「この女の支配は、終わったー」
とー。
指輪を見せ付けながら挑発的に笑う希美ー
「ーー…!!!!!」
隆司は、無意識のうちに希美に突進したー。
こみあげて来る怒りと絶望、悲しみー
あらゆる負の感情が混ざり合った状態で、
自分でも何が、どうなっているのかもはや理解できなかったー。
身体が怒りに突き動かされて、勝手に動いたー
そんな感じすら覚えたー
玄関先で希美を倒しー、
希美の母親が困惑する中ー
暴れる希美の指から、無理やり指輪を外そうとするー
希美は、抵抗したー
「ーーテメェ!離れやがれ!」
怒鳴り声をあげる希美ー
隆司は、母親に向かって叫ぶー
「ーー宮内さんはーー!この指輪のせいで
何かに乗り移られてるんです!」
とー。
困惑する母親ー
だが、母親も”娘の異変”には気付いていたー。
それ故にー
隆司の行動を”何言ってるの!?”と制止するようなことはせずー
ただ、呆然とその光景を見つめたー。
「ーー!?」
指輪を無理やり外そうとする隆司ー
”ぐっー…”まだ”この女に俺の意識が完全に定着していないー!?”
指輪から希美に憑依している邪悪なる意志がそう心の中で叫ぶー
希美の身体は完全に支配したー
だが、希美を支配した男自身にも”計算外”があったー
それはまだ、”自分の魂”が希美の身体に完全に定着していなかったことー。
指輪を外せばー、自分自身が希美からはじき出されてしまうー
まだ、今はそんな状態であったことー
「ーーおい!待て!やめろ!おいっ!」
叫ぶ希美ー
しかしーー
隆司は希美の指から、指輪を取り上げてーー
それを希美の側からとにかく蹴り飛ばしたー
「ーーーぁ…」
希美がガクッと、その場で気絶するー
「ーー宮内さん!」
隆司は希美のことを心配しながら駆け寄ると、
希美の母親に対して”起きていた出来事”を知っている範囲で全て説明したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーこんな指輪ー」
土曜日ー
隆司は希美を乗っ取っていた意識が宿る”指輪”を
海まで足を運びー
放り投げたー
「ーーーもうーー誰も巻き込まれませんようにー」
隆司は祈るようにして、海に流れていくその指輪を見つめたー
日曜日ー
意識を失ったままだった希美が目を覚ますー
「ーーー本当に、ありがとうー」
希美が穏やかに笑うー
「ー僕のせいで、ごめんー」
隆司がそう言うと、希美は首を横に振りながら
「ーううんー隆司くんは悪くないよ」と、
穏やかな笑みを浮かべたー
希美をはめた杏菜は、”そこまで大事になるとは”思っていなかったのか、
希美が救出された翌日、学校に退学届を自ら提出して、
そのまま隆司たちの前から姿を消したー
”本当にごめんなさいー。こんなことになるとは思わなかった”
杏菜は、そう言っていたー。
どうやら”合わせる顔がない”という理由で、
違う学校に転校する道を模索しているようだったー。
「ーーーじゃあー、また」
隆司が入院中の希美に対してそう言うと、
「うんー」と、希美は頷くー
病室の外に出る隆司ー。
希美はじきに退院できるー
一時は、どうなることかと思ったけれどー。
よかったー、
そう、思いながらー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーふぅ…」
希美は安堵のため息をつくー。
”助かってよかったー”
そう、思わずにはいられないー
あのまま、指輪に宿る意識に支配されてしまっていたらー
わたしは、きっとー…
”死んだも同然”
そんな状況になってしまうところだったー
今一度、静かにため息をついた希美はー
ふと、自分の姿を鏡で見つめるー
「ーーーーなんか……」
希美は静かにそう呟くと
鏡を見ながら、不気味な笑みを浮かべたー
「なんかーーエロい♡」
とー。
そして、偶然病室のテレビで流れていた
殺人事件のニュースを見つめると
妙にゾクゾクと高揚する感情を覚えながらー
彼氏の隆司を”刺す”妄想をしながらー
無意識のうちに興奮しているのに気づいたー
「ーーえ…」
希美は一瞬困惑するー。
しかしー
”邪悪な意識に憑依されていた間”にー、
希美の脳は、その邪悪な思想に”強い影響”を受けてしまっていたー
邪悪な意志は、指輪と共に海に消えたー
けれどーー
「ーーーーくふふふふ…」
希美は、悪女のような笑みを浮かべながら
静かに鏡のほうを見つめたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
実はまだ憑依されていました~!パターンではなく、
支配されている間に強い影響を受けて歪んでしまったパターンの
結末でした~!☆
そのうち、大変なことが起きそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!!
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