<憑依>侵食される身体①~指輪~

その指輪には”悪意に満ちた魂”が封じ込められていたー。

そうとは知らずに、指輪を身に着けてしまった少女は、
次第に指輪に宿る意志に支配されていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーそ、そのー…
 全然、喜んでもらえないかもしれないけれどー」

今日は日曜日ー。
彼氏から”誕生日おめでとう”と、手渡されたのはー
指輪だったー。

「ーわっ!綺麗な指輪~!」
それを受け取った彼女・宮内 希美(みやうち のぞみ)が
嬉しそうに微笑むー

「でも、指輪なんて~」
笑いながら言う希海を見て、
彼氏の貝塚 隆司(かいづか たかし)は、不安そうな表情を浮かべるー。

奥手な隆司にとって、人生初めての彼女が希美だったー。

正直、どうして希美が自分のような人間に告白してくれたのかも
分からないー。

ただ単に、本が好きで、図書室でよく本を読んでいるうちに、
同じく図書室を利用することが多かった希美に話しかけられる機会が増えて、
そして、希美から告白された。

最初は確実に罰ゲームか何かで誰かに告白させられて
いるのだろうと思ったー。

けれど、あれから半年ー
今でも希美は、自分のような男子に対して
本当に嬉しそうに”彼女”として振る舞ってくれているー。

”さすがに半年も嫌な相手の彼女として振る舞い続ける
 罰ゲームなんてないよなー”

”僕の彼女として振る舞い続けてー
 何か得することが宮内さんにあると思えないしなー”

自分に対してあまり自信がない隆司は、
まだまだそんなネガティブな考えに至ってしまうことは
あったけれど、希美のことは、彼自身も好きだったし、
不器用ながら、こうして一生懸命、
希美のことを想っているー

「ご、ご、ごめんー
 そのー…彼女に誕生日プレゼントを渡すなんて経験、初めてだしー
 あ、いやー、そもそも、女の子に誕生日プレゼントを渡すこと自体
 初めてだったからー

 あーー家族は除いて、だけどー

 や、やっぱ、指輪なんて変…かな?」

隆司が恥ずかしそうにしながらそう言うと、
希美は「何だかプロポーズされてるみたいー」と笑いながら、
「ーでも、嬉しいー。ありがとう」と、指輪を早速はめて
微笑んで見せたー

”ーーーーーー”
一瞬、指輪をはめた指がドクンと、震えた気がしたー

「ー?」
希美は、一瞬、指を見つめたものの
特にそれを気にすることもなくー
「綺麗~!隆司くんから貰ったものって考えると
 何だかより綺麗に見える~!」などと、
嬉しそうに笑いながら指輪を見つめるー

「よ、喜んでもらえてよかったー」
隆司は少しだけホッとするー。

”彼女に誕生日プレゼントを渡すー”
正直、何をプレゼントすれば良いのかさっぱりわからなくて
困惑していた隆司ー。

色々ネットで調べたりー、
色々考えたりして
最終的にたどり着いたのが”指輪”だったー。

実際に渡す直前になって
”高校生なのに指輪なんて変だよな?”と、
後悔しながらも、今になってもう引き返すこともできず、
こうして指輪を誕生日プレゼントとして送ることになったー。

まぁ、その結果ー。

目の前で喜んでくれている希美を見つめながら
隆司は安堵の表情を浮かべるー

その結果ー、”失敗”ではなかったようで、
ホッとした気持ちと、
彼女に誕生日プレゼントを渡して喜んでもらえる、ということが
これほどうれしいことだと、その喜びを噛みしめながら
隆司は笑みを浮かべたー

「ーーあ、でも、学校に指輪はまずいかなぁ~」
笑う希美ー。

「確かにーはめてる子もいた気がするけどー
 先生たちには何か言われそうな気もするなぁ」

隆司がそんなことを呟くー

校則的にどうだったかは知らないー。
だが、確かに真面目な希美のイメージからは
かけ離れているかもしれないー

「ーそうだね~、学校では外していくけど、
 お家では大切にするね!」

希美がそう言いながら今一度指輪のほうを
嬉しそうに見つめるー。

「隆司くんー本当に、ありがとう!」

心底嬉しそうな希美ー

この笑顔が”演技”なわけがないー

付き合い始めてから半年経過しても、
未だにそんなことを思ってしまう自分に
少しうんざりしながらも、隆司は、
”宮内さんに喜んでもらえてよかったー”と、
心の底から喜びを感じるのだったー

”おぉ…”

そしてーーー
”喜び”を噛みしめているのはー
プレゼントを受け取った希美と、プレゼントを手渡した隆司だけではなかったー

”おぉ…おぉぉぉ…”

”そこにいた”第3者が歓喜の声をあげるー。

”第3者”と言っても、
その場には隆司と希美しかいないー。

周囲から見れば”そこにいる”人間は二人ー。
いいや、隆司と希美からしてみても、
その場にいる人間は”二人”のはずー。

しかしー
そこに”もう一人”いたのだー。

そうー
希美が隆司から”プレゼント”された指輪の中にー

”彼”はいたー

”おぉぉぉぉお……久しぶりの……感覚ーーー”

指輪の中で邪悪な笑みを浮かべた彼はー
久しぶりの”生身の感覚”にーー
たったー、指1本分の感覚にー
溢れんばかりの歓喜を感じてー
その喜びを噛みしめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くそっ…この俺様がー…!」

遠い昔ー
悪事の限りを尽くした邪悪な男がいたー。

だがー
悪は必ず滅びるー。

盗みもしたし、他人の命も奪ったし、
町娘を襲って欲望を満たしたりもしたー。

だが、王国を騒がせたその男はー
王宮から派遣された騎士の罠にはまりー
ついにその最後を迎えようとしていたー。

「ーー汝ー、悪の魂をこの指輪によって、浄化せんー」

その王国ではー、
”悪人の魂を指輪に封じ込める”ー
そんな風習があったー。

悪党の魂を指輪に封じ込めてー
その指輪を、王国の最果ての地に存在する峠から
海へと還すー。

”聖なる海”と呼ばれるその海に、指輪を葬ることによってー
悪党の魂は浄化され、
次の生を受けるその時には、”善なる心”を持って生まれ変わると、
そう言い伝えられてきたのだー。

だがー、
彼がー、その大悪党が指輪に封じ込められて間もなくー
王国内で内乱が起きたー。

その内乱により、王宮は炎上ー。
内乱により実権を握った宰相も、それから程なくして
混乱の隙を隣国によって攻められて”崩壊”したー。

歴史の教科書にも記されていないー
とある地方で起きた、大昔の話ー。

だがーーーー
聖なる海に還されることなくー
彼が封印された”指輪”は、気の遠くなるような長い時を経てー
現代の日本に存在していたー。

そうーーーー
”希美の指”にー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーその指輪どうしたの~?」

希美の母親が、指輪を身に着けて帰宅した娘を見て
そう言葉を口にすると、
希美は嬉しそうにその指を見せながら
「隆司くんが誕生日プレゼントにって」と、微笑むー。

隆司がいないこの場でも、
嬉しそうに指輪を見つめている希美ー。

希美自身、本当に隆司のことは好きでー、
隆司が心配しているような”罰ゲーム”とか
”実は何か悪だくみをしている”とか、
そのようなことは全くないー。

希美は心底ー
隆司のことが好きだったー。

理由は単純明快ー
”図書室で会う機会が多くなるうちに、読書好き同士、意気投合した”のと、
”本を読む隆司の姿が愛おしく思えた”からだー。

それ以上の理由はないー。

シンプルな理由で、隆司のことを好きになり、
そして、今も単純に”好きだから”希美は隆司と共にいるー。

「ー指輪なんて~、なんかすごいね~」
母親の言葉に、希美は「わたしもプロポーズみたい!って言っちゃった」と
笑いながら、「でも大事にする~」と、部屋の方に戻っていくー。

彼氏から貰った指輪ー

”それ”が、普通の指輪ではないことも知らずー
希美はその日1日、嬉しそうに指輪を何度も見つめるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝ー。

学校にやってきた希美は、嬉しそうに
自分の指にはめられた指輪を見つめていたー

「ーーおはよ~」
希美の友達・杏菜(あんな)が、そんな希美に声をかけて来るー

「あ、おはよ~!」
希美が杏菜のほうを振り返ると、
杏菜が指輪のほうを見つめていることに、希美が気づくー。

「あ、これ?昨日、隆司くんから貰ったのー!」
嬉しそうに指を見せる希美ー。

杏菜は一瞬、何とも言えない表情を浮かべてからー、
「え、そ、そうなんだ~!」と言葉を口にしてから、
「学校にまで身に着けて来るなんてーなんだか意外」と、微笑むー。

「え…?あ~うんー」
希美は少しだけ自分でも違和感を感じるー

確かに、昨日、彼氏の隆司からこの指輪を貰った時には
”学校でこれをつけていると先生たちに何か言われそうだし、
 学校に行くときは外すね”と、自分自身が言ったことは
ちゃんと覚えているー。

だが、今朝ー、
目を覚まして指輪を外そうとした時に
何となく”外したくない”という思いが強まりー、
学校にもそのままやってきてしまったのだー

「ーー校則には確か、”指輪はダメ”とは書いてなかったしー」
希美が微笑みながら言うと、
杏菜は「確かに、それもそうだねー」と、笑ったー。

「~~~~~~~」
そんな会話に離れた場所にいた隆司は
恥ずかしそうに顔を赤らめていたー

「ー(み、宮内さん、指輪つけてきてるじゃん…!)」
とー。

”昨日は学校ではつけないって言ってたのにー”
そんなことを思いながらも、
”そんなに喜んでくれてたんだ”と、内心で
嬉しく思いながらも、何だか落ち着かないー

”あんなに喜んでくれるなら、
 やっぱり指輪をプレゼントしてよかったぁ…”

隆司はそんなことを思いながら、
嬉しそうな笑みを何度も何度も浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」
帰宅した希美ー。

部屋に入ると、希美の目が少しとろんとしたような目つきに変わるー。

「ーーーー…」
指輪をはめた自分の綺麗な指を見つめるとー
希美は、それを無表情で見つめながら
ペロリと舐め始めたー

自分の指をペロペロと舐める希美ー

やがて、希美は顔を赤らめながら
嬉しそうに指を繰り返し舐め始めるー

「ーーーー………くふふ…♡」
虚ろな目のまま、笑みをこぼす希美ー

だがーーー

「ーーーっ…!?」
希美は突然、我に返って、自分の指を舐めていたことに気付くー

「あ…あれ…今?」
我に返った希美は、慌てて自分の口から指を出すと、
困惑した表情を浮かべるー。

今、自分が何をしていたか、一瞬意識が飛んだようなー
そんな気がするー

「なんか今日…わたし、ぼーっとしてるようなー」
そんなことを思いながら、希美は
”疲れてるのかな”と、自分で自分の状況を考えるー

”そういえばー、前もこんなことあったようなー
 確か、あの時は風邪を引いてて
 次の日ぐらいから熱が出て来たんだったよねー”

希美はそんな風に考えるー。

確かに、以前、希美にはそういうことがあったー。
だから、そう考えるのは何も不自然なことではないー。

しかしー、
”今回”ばかりはそうではないー。

ピクッ、と指輪をはめた指が動くー

”クククククー…
 感じるー少しずつ…少しずつ…身体に馴染んできているのをー”

指輪の中に宿る邪悪な意志が、少しずつ希海に流れているー

全体のほんのわずかな”意志”が少しずつー
少しずつ、希美に流れているー。

やがて、希美はお風呂に入ろうとするー。

けれどー
指輪を見つめた希美は
”外したくない”と強く感じー、
指輪を外すことなく、そのまま浴室へと向かうー

髪や身体を洗い終えてー
入浴を始めた希美はー
急にニヤリと笑みを浮かべて、自分の胸を揉むとー
下品な笑みをその顔に浮かべたー。

②へ続く

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コメント

指輪を介して、ジワジワと支配されていく
ジワジワ系の憑依デス~!

明日以降もぜひ楽しんでくださいネ~!
今日もありがとうございました~!

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憑依<浸食される身体>

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