長期の出張で数か月留守だった父親が
久しぶりに帰ってくることになった。
しかし、帰って来たのは父親ではなく、
美少女だった…!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ?父さん、今日帰って来るんだったっけ?」
大学生の長男・哲真(てつま)が
母親の美佐江(みさえ)にそう確認すると、
母・美佐江は時計を確認してから
「そうそうー、お昼すぎにはこっちに到着できるみたいだから、
2時ぐらいかな」と、返事をしたー。
哲真の妹で高校生の寧々(ねね)は
「お土産楽しみ~!」と、足をバタバタさせながら
一人笑っているー。
「はははー、お土産があるとは限らないだろ~?」
哲真が言うと、寧々は「あるよ~!絶対ある!」と、
哲真に言い返すー。
今日ー
幸原家は、長期の出張で数か月間家を留守にしていた
父・浩二(こうじ)が帰宅することになっていたー。
だがーーー
♪~~
インターホンが鳴るー。
「あ、帰って来たみたい」
妹の寧々がそう言いながらインターホンの方に向かって行くー。
寧々は年頃の少女だが、
父親との関係性は悪くなく、
よく父親に甘えては何かを買ってもらったりしているー。
兄の哲真は”父さんを金づるにしてるだけじゃ…?”と時々思ったりも
するものの、妹の真意はともかく、
家族仲は悪くはないー。
「ーーー」
しかし、応答した寧々は玄関の扉を開けることなく、
キッチンの方にいた母・美佐江と、兄である哲真の方に
戻って来たー
「あれ?父さんじゃなかったのか?」
哲真が言うと、寧々は頷くー
「ーうん…お、お父さんだって言ってるんだけどー…そのー」
と、困惑した様子の寧々ー。
「?」
哲真は首を傾げながら母・美佐江のほうを見つめると、
「ーん?どういうこと?」と、
妹・寧々の方に視線をずらして、
首を傾げたー
「ーわ、わかんない…と、とにかくちょっと来て」
寧々の戸惑った表情を見て、哲真は今一度首を傾げると、
そのまま寧々と共にインターホンの方に向かったー
そして、インターホンの画面を確認すると
そこには可愛らしい美少女が立っていたー。
年齢はー、そう、寧々とあまり変わらないようにも見えるー。
「ーえ?誰?友達?」
隣にいる寧々のほうを見ながら哲真がそう確認すると
寧々は「し、知らない子ー」と、首を横に振るー
「学校では見たことないしーそれにー」
と、インターホンのボタンを押して
外に立つ美少女と話せる状態にしてから
哲真のほうを見る寧々ー。
”お兄ちゃんが話をしてみて”と言わんばかりの仕草に、
哲真は「あの…どういったご用件でしょうか?」と、
とりあえず無難な言葉を口にするー
するとー
外の美少女は見た目と、その可愛らしい声に
似合わぬ言葉を口にしたー
”お~!哲真!俺だよ、久しぶりだな!
こんな姿だけど、俺、父さんなんだ!
信じてくれ”
可愛らしい美少女が父親を名乗っているー
哲真は思わずプっ、と笑ってしまうとー、
「あ、あのーあのですねー
さすがにちょっとそれは無理があると思うのですけど~…
ご用件は?訪問販売か何かですか?」
と、哲真が呆れ笑いを浮かべながら言うー
大方ー、
”今日、出張から帰ってくる父親がいる家族”を狙った
何か悪質なセールスか何かだろうー
こんな可愛い子を使っている時点で、
怪しすぎるー。
”っていうか、詐欺をするにしてももうちょっと
マシな方法あるだろー?
せめて似てるおっさん使うとかさ”
哲真がそう思っていると、
”本当に父さんなんだ!信じてくれ!”と、
外にいる美少女が叫んだー
「ーーーあ~~~…いや」
哲真が頭をかきながら、横にいる寧々と目を合わせると、
寧々と共に困り果てたような表情を浮かべたー
「お兄ちゃん!ファイト!」
小声でそう呟く寧々ー
完全に任せっきりかー、と思いながらも
寧々にいいところを見せよう、などとお兄ちゃんらしいことを
思いながら、再びインターホンのボタンを押すー。
「あの、すみませんけどー、
父はまだ帰ってきてませんのでー
それにー
あなたがこっちの立場だとして、
急に父親がそんな姿で帰ってきたら”はいそうですか”って
玄関開けますか?開けないですよねー?
もし本物だと言うのならその証拠を見せて下さいー」
と、哲真は続けたー
”万が一”相手が本物の父さんである可能性も
0.1%ぐらいはあるかもしれない、と思っての言葉だー。
”まぁ、確かにそれもそうかー…”
外にいる美少女が困惑した表情でそう呟く。
哲真は返事も聞かずに
”お帰り下さい”と、言い放とうとするー。
しかし、その時だったー。
”哲真ー”
と、言葉を口にすると
外にいる美少女は突然、哲真の生年月日や血液型
好きな食べ物、嫌いな食べ物などの
個人情報を口にし始めたー
「ー!?」
会話を終了しようとしていた哲真は驚きの表情を浮かべるー
続いて、外にいる美少女は
妹の寧々の個人情報も口にし始めたー
さらには、哲真の小さい頃の誕生日プレゼントを口にしたり、
母親である美佐江の個人情報、美佐江との出会いなども
連続して口にしたー
「~~~~~~~…!」
哲真は、困惑の表情を浮かべながら
寧々のほうを見つめるー
寧々は小声で「ほ、本当にお父さんなんじゃ…?」と、
インターホンのモニターに映し出されている
美少女のほうを指さすー。
「い、いやいやいやーそんなわけあるか」
哲真も、モニターに映し出されている美少女を
再度確認するー。
いや、流石に無理があるー
この子が父さんの訳がないー。
父さんがどんなに金と時間をかけて女装しても
こうはならないだろうし、声まで完全に美少女…というかー、
可愛らしい声だー。
インターホンのモニターに映し出される映像を
何らかの方法で瞬時に加工しているー…
なんてことも考えられないー
「ーそ、そ、それは調べれば分かることでしょう?」
哲真はようやく応答ボタンを押すと、
外にいる美少女に向かってそう言い放つー。
会話が長いからだろうかー
キッチンの方にいた美佐江も
「大丈夫?何かあったの?」と、
心配そうに近付いてくるー。
妹の寧々が事情を説明すると、
美佐江は「えぇ…!?」と、戸惑いながら、
インターホンの映像を確認したー。
そこには確かに”美少女”がいるー。
”おいおいー小さい頃の誕生日プレゼントまで
調べることはできないだろ?
開けてくれー
事情を説明する”
美少女の言葉に、哲真は少し考えてからー
再び応答する。
「いやー…いや、あり得ないですねー
父さんはきっと、あと数時間で帰ってくるので、
どうかお帰り下さい」
哲真は最終的に
”この子は父さんではない”と判断して
そう言い放ったー。
どうしてうちの個人情報をこんなに知っているのかー、
それは分からなかったが
誕生日も好きな食べ物も調べようと思えば
調べられるかもしれないし、
それだけで”この美少女”が父さんであると信じることは
難しかったー。
今度こそ、インターホンでのやり取りを終了しようとすると、
”そうかそうか、なら仕方ないー”と、
少し不満そうな美少女の声が響き渡ったー。
”哲真ー、中学時代、数学のテストで10点取って
隠してたのを俺が見つけた時、黙ってあげておいたこと
忘れたか~?”
「ーーえっ!?」
哲真が顔を真っ赤にして、寧々と美佐江のほうを見るー。
美佐江が「え?え?何の話?」と、哲真のほうを見つめるー。
「ーーちょっ!おい!何でそんなこと知ってるんだー!」
慌てて叫ぶ哲真ー
すると、外にいる美少女は
”父さんだからに決まってるだろ~?”と、笑みを浮かべたー。
そして、さらに言葉を続けようとするー
”それと、お前が高校1年生の時ー、
寧々の制服をーー”
「ーーうわ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
そこまで言葉が聞こえて哲真が大声で叫び、
その言葉の続きをかき消すと、
「父さん!父さんおかえり!」と絶叫しながら慌てて玄関の方に
走って行ったー。
玄関の扉を開けると、
父・浩二とはまるで似ても似つかない美少女が
家の中へと入って来たー
「ーただいま」
浩二が可愛らしい声で言うー
「~~~~……~~~~お、おかえり?」
哲真は顔を赤らめながら目を逸らすと、
後から玄関の方にやってきた
母・美佐江と、妹・寧々も困惑の表情で
”父を名乗る美少女”を見つめたー。
「ーーそ、そ、そんな目で見るなよ」
父・浩二を名乗る美少女は恥ずかしそうにそう言うと、
「ーーど、どういうことなのか説明してくれる?」
と、美佐江に言われて、「もちろんー」と、頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
父・浩二を名乗る美少女は言うー。
長期出張の最中の休日に
一緒に出張に行った同僚と共に
近くの山にある洞窟を探検した際に
こうなってしまったのだとー。
「なんでそんなところに?」
哲真が言うと、
浩二を名乗る美少女は、
「立ち入り禁止になっているような場所じゃなかったし、
隠れた探検スポットとして、密かな人気のある場所だったからー
別にヤバいところに入って行ったわけじゃないんだー」と、
説明したー。
しかし、その中に地面が怪しく光っている場所があって、
その同僚と一緒に近付いたところ、床が突然発光、
気付いた時にはこうなってしまったのだと言うー。
「ーーえ~?
でもさ、それなら”また”その場所に行けばいいんじゃない?」
妹の寧々がそう言うと、
浩二を名乗る美少女は首を横に振ったー
「いやー、俺もそう思ったんだけど、
そのあと、その場所に光はなくなっててー
元には戻れなかったんだー」
その言葉に、困惑する三人ー。
「ーーーーーなんて、いきなり言われても信じることはできないよな」
それだけ言うと、父・浩二を名乗る美少女は、
母と息子、娘、三人に向かって
”父”でなければ知らないようなことを次々と口にしたー
さっきのように”黒歴史”ではなく、
誕生日プレゼントや小さい頃に遊びに行った場所、
家族旅行の思い出など、そういった”黒くない歴史”の数々ー。
流石に”ここまでの話”を知っている人間は
父・浩二以外にはあり得ないー。
哲真も、寧々も、美佐江も、
”この可愛い子が父・浩二であると”納得せざるを得なかったー
「ーそうそうー映像もあるからー」
美少女になった父・浩二はそう言うと、
同僚と洞窟で撮影したというスマホの映像を見せて来たー
”おいおいー危ないぞ?”
父・浩二の声ー
確かに、洞窟の床が、水色のような謎の光を放っているー。
水の反射のようにも一瞬見えるが、
そうではない。
床そのものが輝いているー
浩二の同僚と思われる男がその光に近付いていくー
「うぉっ!?なんか光が強くー!?」
同僚の男がそう叫ぶと、
浩二が”えっ!?おい!離れろ!”と、言いながら
同僚の男に近付いていくー
その直後ー
映像も激しい光に包まれて、
スマホが激しく揺れるーーー
そしてーーー
”えっ!?なんだこれ!?えっ!?”と、
可愛い声がしてー
映像には、同僚の男の戸惑う表情が映し出されていたー。
同僚の男は、激しい光に包まれる前に、
父・浩二が突き飛ばしたためにー、
女体化を免れた様子が、この映像から見て取れるー
「ーーーーー」
”父親が美少女になった”
そんな、あり得ない現象に困惑する家族三人ー
「ーーま、まぁ、そんな顔するなってー
こんな姿になっちゃったけど、俺は元気だからー」
美少女姿の父・浩二は髪をいじりながらそう笑うー。
職場にも理解してもらうことができ、
とりあえず、出張終わりの休みが終わってから
再びいつも通り出勤することになっている、と
浩二は説明したー。
困惑する家族三人ー。
「慣れるまで時間はかかると思うケドー
ほら、40代の俺がまたこうして若くなれたんだしー
俺は全然落ち込んでないから」
美少女姿の浩二はそう言うと
”慣れるまで大変だと思うけど、よろしくな”
と、自分の部屋の方にいったん戻って行ったー
「ーーーー」
呆然とする三人。
そんな沈黙を、妹の寧々が破ったー。
「ねぇ、お兄ちゃんー」
寧々の言葉に、「ん?」と返事をする哲真ー
「さっきの話、詳しく聞かせて?」
にっこりと笑う寧々ー
”それと、お前が高校1年生の時ー、
寧々の制服をーー”
父・浩二がインターホンでの会話中に口にした言葉ー
哲真はそれを思い出して青ざめると、
「おっと、急用を思い出した!」と、
逃げるようにして自分の部屋の方に駆け込んでいったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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出張帰りの父親が女体化…!
色々大変なことになりそうですネ~!
続きはまた明日デス~!
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