家のことがまるで出来ていないことを心配した弟からの提案で、
家政婦を依頼することにした一人暮らしのOLー。
しかし、ある日”嫌な上司”が姿を消したことから
不安を感じ始めるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
相変わらず、家政婦・綾は不愛想だー。
いつも淡々と仕事をこなし、
空き時間にはスマホをいじって何かを見ているー
何を見ているのかは分からないがー、
スマホを見ている間も、ほとんど無表情だー。
「ーーーーー」
結局”赤坂部長”は、消息不明のままとなり、
後任の部長が配属されたー
親族により、捜索願も出されたというがー、
それでも赤坂部長の行方は分からないままだったー。
「ーー”綾ちゃんは、何も関係してないよねー?”」
心の中でそんなことを考える美香ー。
本人の前では”綾さん”と呼んでいるもののー
心の中ではいつも、綾ちゃんと呼んでいる美香ー。
初対面の日のイメージからそう呼んでいるのが、
今の綾はまるで別人ー
やっぱり、初対面の日は本契約の前だったし、
意識的に愛想よく振る舞ってたー
そういうことなのだろうかー。
「ーお久しぶりですー」
「ー!」
美香が表情を歪めるー。
「ーーあ、おはようございますー」
振り返った美香は、そのことを悟られないように振り返ると、
そこには近所に存在する別のアパートの住人・桧山の姿があったー。
桧山は以前、美香に告白してきたことがあり、
美香はそれを振ったー。
振られたあとも、桧山は特に何かをしてきているわけでは
ないものの、美香からすると少し気まずい感じがしていて、
正直、あまり会いたくないのも事実だったー
ここ最近”綾”が家政婦として家にやってきてくれるようになってから
桧山と鉢合わせする機会はなくなっていたものの、
今日、久しぶりに桧山とこうして”遭遇”してしまったのだー。
「実は昨日まで会社の出張で留守にしてましてー」
笑いながら言う桧山ー
「そ、そうなんですねー…」
美香は、愛想笑いを浮かべながらも、早くこの場所から
解放されたいと思いつつ、
話を続けるー
だが、その話は長続きせずに、すぐに桧山は
「お仕事の前でしたねー呼び止めてしまって申し訳ありません」と
礼儀正しく頭を下げて、そのまま家の方に戻って行ったー。
彼自身にも仕事があるー。
もうすぐ出社しなくてはならず、そのための準備をするためにー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会社の同僚・菜月に彼氏が出来たー。
菜月は有頂天になったのか、
急に”性格が悪く”なったー。
少なくとも美香はそう感じたー
「ー美香も早く彼氏つくったほうがいいよ」
そんなことを言い出す菜月に対してうんざりしながらー、
帰宅した美香は思わずそのことを愚痴ってしまうー。
綾は片付けをしながら、無言で美香の言うことを聞いていたがー
やがて、赤坂部長のことを愚痴ってた時以来に酒を飲みー
酔いつぶれた美香を見て、表情を歪めたー
「ーー…何なんだこいつはー」
綾はそう呟くー。
一見真面目で可愛い感じの美香ー
だけど、どこか抜けていて、家に帰ってくるとだらしないし、
何とも言えない危うさがあるー
何だか放っておけないようなー
そんな、言葉には言い表せないような魅力があるー
”ー最初は、そんなつもりじゃなかったのにな”
綾はそう呟くと、酔いつぶれて眠っている美香を見てー
美香にそのままキスをしたー
綾にキスをされたことに、当然気付かない美香ー。
「ーお前のこと、好きになっちまったぜー」
綾は低い声でそう呟くと、そのまま闇の中に姿を消したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーえっ…」
美香は表情を歪めるー
”同僚の菜月”が行方不明になったー
美香はすぐに、赤坂部長が消えた時のことを思い出しー、
また、”自分が綾ちゃんに愚痴を言った翌日のこと”であると思い出すー。
「ーーー…」
恐怖を感じる美香ー
”あ、あの人、本当に家政婦だよねー?”
と、そんな不安を覚えるー。
その日の帰り道ー
また偶然、”桧山”と出くわしたー。
桧山も仕事帰りだったのか
話しかけてくることはなく、会釈だけで終わったー
だが、美香は”あの人ー、わたしの行きと帰りに時間を合わせてるようなー…?”と
強い不安を覚えながら家に帰宅したー
桧山とは”妙に遭遇する”ー
今も、やっぱりあの人はわたしのことをー…
そんなことを思いながら、
仕事をしている綾のほうを見つめたー
”もしかしたらー?”
そんな、邪な感情が生まれるー。
”ーーだーだめだよーそんなことー”
美香は、自分の心の中で自分にそう言い聞かせるー
赤坂部長と菜月が消えたー
もし、もしもそれがー
”綾ちゃん”の仕業だったらー?
今日、ここで”桧山”のことを口にすればー
明日には”桧山”はー…
そう思いながら、美香は”そんなことしちゃだめ”と、
自分で自分に言い聞かせるもーーー
ついに理性でそれを押さえることが出来ずー
「ーあ、あの…綾さんー悩みがあって」と、
桧山のことを”相談”してしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の夜ー。
今日は美香の家に行く予定のない日ー。
勤務日を増やしたとはいえ、1週間に7日間、美香の家に行くわけではないー
ピキッー
”綾”の中から出て来る男ー
その男はーーー
”傷害事件を起こして逃亡中”の犯人だったー
「ーなんか最近物騒だよねぇ~」
「ー美香は、一人暮らしなんだし、こういうの、気を付けた方がいいよー」
”綾”に家政婦をお願いする直前ー
同僚の菜月が、美香にそんな言葉を口にしながら
スマホのニュースを見せて来ていたー
そのニュースとなった事件を引き起こして逃亡中の男ー
それが、家政婦・綾を”乗っ取った”男の正体ー。
逃亡中で追い詰められた男は、
事件を起こす前に入手していた”人を皮にする注射器”を使いー
「それでは、来週からよろしくお願いしま~す!」
明るく挨拶をしながら、美香の家から出て来る”綾”に目をつけたー
綾が初対面の時だけ明るくー
それ以降は別人のように無表情な感じに変わったのはー
”中身”が違っているからー
「ーーー」
男は、美香の家から出て来た綾を尾行したー。
そして、人通りの少ない通りに入ったところでー
「ーお前の身体ー…身を隠すために借りるぞー」
と、男は、綾の首筋に注射器を打ち込んだー
「ひっ…!? え…」
綾が異変に気付いた時にはもう遅くー
綾はそのまま”皮”にされてしまいー
逃亡中の男に着られて、そのまま”乗っ取られて”しまったー。
最初は”他人の身体に潜んで”身を隠すためだったー。
だが、”綾”として表向き家政婦として活動する中ー
美香の、真面目で優しいけれど、どこか天然でだらしのない姿を見てー
綾を乗っ取った男は、次第に美香に惹かれてしまったー
やがてー、”こいつを守ってやりたい”と
思う様になりー
赤坂部長や菜月のことを聞いた時には
二人を皮にして、そのまま廃棄処分する形で処分したー。
そして、今日ー
「ーー俺は、お前に惚れたぜー」
綾はそう言いながらー、
桧山の家の前にやってきていたー。
桧山が出てくるのを待ちー
出て来た桧山に声をかけるー
「ーーはい?」
桧山が首を傾げるー
彼はーーー
美香に告白して断られたあと、
すっぱりと諦めて、それ以上何もする気は全くなかったー
美香とよく鉢合わせするのは
”出勤時間と退社時間が偶然似ているため”で、
桧山自身は、何の悪意もなく、ごく普通の一般人だー。
突然、綾に声を掛けられてー
理由も分からないまま、家の壁に叩きつけられー
そのまま注射器を打ち込まれた桧山は
”只々災難”として言いようのないようなー
悲劇に巻き込まれたー
皮にされた桧山は、そのまま切り刻まれてゴミ袋に入れられー
もう、二度と発見されることはないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーねぇ、アイツも気に入らない!」
「ねぇ、わたし、お金が欲しい!」
「ねぇ、あのネックレスが欲しい!」
美香は、壊れたー。
”家政婦の綾ちゃんが何でも夢を叶えてくれる”
そう思い込み始めてー、
そのお願いはエスカレートし始めたー
だが、美香に惚れてしまった”綾を乗っ取った男”は、
次々とその願いを叶えていくー
「ーーすごい~~!綾ちゃん、ホントにすごいよ!
最強の家政婦さんだよね!」
派手なネックレスを身に着けた美香が
嬉しそうに笑うー。
「綾ちゃんのおかげで、会社も辞めることができたし、
本当にありがとう!」
美香の嬉しそうな顔ー。
綾は、そんな美香を無表情で見つめるー。
綾を乗っ取った男は、元々、
”逃亡犯として潜伏する場所が欲しかった”だけだー。
綾の姿が個人的に好みだったことや、
綾の生活環境・職業などから
色々潜伏には持ってこいだと思ったー。
最初は適当に家政婦のフリをして、
のんびりと過ごそうと思っていたが、
美香のちょっと天然で、家ではだらしないところに
惹かれてしまい、今に至るー。
”人を皮にする注射器”があれば、
美香のために金を持ってくることもたやすいー。
しかも、バレずに、だー。
だがー
「ーーねぇねぇ、次は100万円、なんてダメかな~?」
美香がにこにこしながら言う。
綾は少し表情を歪めると
「ー家政婦としてのわたしの仕事を超えています」と、
淡々と答えたー。
けれど、美香は「え~!ケチ!」と、少し怒りっぽく言い放つー。
どんどん傲慢にー
どんどん理性を失っているー
そんな風に見えるー
美香のような天然な子が、力を手に入れてしまうとー
善悪の区別もつかずに暴走してしまうのかもしれないー。
綾はため息をついたー。
「ーーー自分が何言ってるか、分かってます?」
とー。
美香は「えっ?何急にー!?えっ!?」と、
戸惑った様子を見せながら
「綾ちゃん、今までなんでもしてくれてたじゃん!」と、
困惑の表情を浮かべるー
「ーーーー…」
綾はため息をついて、”もういいです”と、だけ呟くと、
「今日は、帰ります」と、
そのまま言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
美香は弟の雄一と大喧嘩をしたー
「姉さん!この金!どこから出てるんだよ!?」
そう困惑する雄一。
姉の金の使い道がおかしいと悟り、
それを聞きに来たのだー。
「何でお姉ちゃんを疑うの!?
生意気なこと言わないで!
わたしより収入低い癖に!」
美香は変わってしまったー
”綾”には、それがなぜなのか分かってるー。
綾を乗っ取っている男は、心の中で呟くー
”この女がこうなったのは、俺のせいか”
と、そう心の中でー。
雄一が「逮捕されても俺は知らないからな!」と
美香に向かって叫びながらそのまま立ち去っていくー。
雄一が美香の家から出て行ったタイミング、
綾は深いため息をつくー。
「ーー雄一、いらないなぁ」
美香がそんな言葉を呟くー。
チラッと、綾のほうを見つめる雄一。
赤坂部長に同僚の菜月、近所の桧山ー、
”願えば”消えるー。
そう思った美香は、弟の雄一にまでその魔の手を
伸ばそうとしていたー
”この女ー…”
綾を乗っ取っている男も、それなりに悪事を重ねて来たー。
綾を乗っ取ったのもそうだし、美香の頼みを聞いて
さらに罪を重ねたー
だが、彼すら”今の美香”を見ると
”怪物”に見えるほどにー、今の美香は、おかしくなっていたー。
「ーーーー」
美香に対する好意ー…
そんな気持ちも完全に消え失せた綾は
立ち上がったー。
「ーーーもう、終わりにしよう」
とー。
「ーえ?」
振り返った美香は、
「どういうこと?わたしを捨てるの?
綾ちゃん、家政婦でしょ?
お金払ってるんだから、ちゃんとわたしの世話をー!」
と、声を荒げたー
だがーーー
綾は、そんな美香の手に、注射器を打ち込んだー
「え…」
驚く美香がー
空気が抜けるかのように”皮”になっていくー
驚きのまなざしを向けて来る美香ー。
綾は、美香が完全に皮になるまで、一瞬たりとも
目を逸らさなかったー。
そしてー
「もう、逃げるのに疲れたー」
と、呟いた綾はーー
”綾”を脱ぎー、
綾を乗っ取っていた男が姿を現すー
男は、深々とため息をつくと、
自分の首筋に”人を皮にする注射器”を打ち込んでー
”逃げるのに疲れ果てた”自らの人生にも終わりをもたらしたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
過激な家政婦の最終回でした~!☆
弟くんはギリギリセーフで助かりましたネ~笑
お読み下さりありがとうございました~!
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