自分から入れ替わり薬を使って
女子大生の身体を奪った男ー。
しかし彼は、数週間後、身体を返して欲しいと叫び、謝罪するー
身体を奪われた彼女の反応はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーお断りしますー」
洋太(菜々美)が”元に戻ること”を拒むー
入れ替わり薬は2本持っていたー。
1本は、菜々美と入れ替わる際に洋太が使用したが、
もう1本はまだ、洋太の家に残っているー。
購入した入れ替わり薬は2本セットになっていたため
もう1本、薬は残っているー
それを使うことができれば、元に戻ることはできるのだー。
「な、な、何でー…!?」
菜々美(洋太)がそう呟くー。
いや、理由は聞かずとも分かっているー
宝くじだー。
まだ入れ替わる前に
”どうせ当たらねぇだろ”と思いながら購入した宝くじが
1等ー…
見事、1億円当選を手にしていたからだー。
「とにかく、元に戻りたくありません」
そんな風に淡々と答える洋太(菜々美)ー
よく見ると”冴えないおっさん”という感じの風貌はそのままだがー
清潔感が増しているー
”自分が中身でなくなった途端”に少し清潔感が増している自分を見て
「くそっ 俺は中身が汚ねぇってことか?」と、不満を覚えるー。
「ーーあ、あんなに元に戻りたがってたじゃないかー」
菜々美(洋太)が土下座をしながら叫ぶー
おっさんの前で土下座する女子大生ー
周囲からはそうとしか見えない状況ー
人通りのない場所を選んだつもりだったがー
それでも、人の注目を集め始めていた。
「ーーー見られてますよ」
洋太(菜々美)が言うー。
菜々美(洋太)はようやく”土下座していることで周囲の視線を集めている”
この状況に気付いてハッとすると、
表情を歪めながら慌てて立ち上がったー。
「ーーと、とにかく、俺の身体ー…返して下さいー
本当に、申し訳ありませんでした」
菜々美(洋太)がペコリと頭を下げるー。
入れ替わった時の威勢はいったいどこに行ってしまったのか。
そう聞きたくなってしまうぐらいに
心底申し訳なさそうにしている菜々美(洋太)ー
「ーー嫌ですー」
洋太(菜々美)は首を振るー
”くそっー こいつ、やっぱり1億円当選に気付いてやがるー”
菜々美(洋太)は内心でそう呟くー。
”まぁ、机の上に置きっぱなしだったしー
当選番号は確かあの日の夜に発表だったからー
この女がそれを見てれば、1億円当たったことにも気づくもんなー”
菜々美(洋太)はそう考えながらも
「ーど、どうしてー?」と、質問をするー
あくまでも”宝くじ”のことは口にしないー。
「ーーわたしの身体で、どうせ酷いこと色々されたに決まってますー
だから、”何をされたかも分からない”身体に戻りたくありません!」
洋太(菜々美)がそう言い放つー
菜々美の方が宝くじの当選を本当に知っているのかは分からないがー
もし知っているのであれば洋太同様に宝くじの話題は
出すつもりは無さそうだー
”ーー…宝くじの券を置きっぱなしにしていたとは言えー
この女が当選番号なんて確認してない可能性も十分にあるー
ここはまだ、宝くじの話題は出すわけにはいかないー”
「ーな、な、何もしてないってー
え…えっと、そのーほら、大学にはちゃんと通ってるしー
バイトもちゃんと続けてるしー
心配せずに、元通りになりましょう!」
菜々美(洋太)がそう叫ぶー。
「ー本当ですか…?」
洋太(菜々美)の疑うような目ー。
だが、その反応にー
”もしかしたら宝くじのこと、気づいてないかも”と、洋太は
希望を抱き、
「ーほ、ほ、本当です!」と、叫ぶー
「ーーーーーーー」
”嘘つき”と言わんばかりの洋太(菜々美)の視線ー
”元自分”に、疑いの目で見られることに
なんだか妙に気持ち悪さを感じてしまった
菜々美(洋太)は
「あ…そ、そのー…部屋で一人エッチをしたり…コスプレしたりはし、しましたけどー
”まだ”他の人に知られるような変なことはーーし、してません」と、
言い放つー。
「ー正直ですねー…」
”軽蔑のまなざし”で見つめて来る洋太(菜々美)ー
「ーでも、やっぱり、元に戻るのはお断りします」
洋太(菜々美)の言葉に、
菜々美(洋太)は「い、いや…なんでだよ!?」と叫ぶー
「俺みたいなもうすぐ40のおっさんで、しかもイケメンじゃないし、
もう生涯独身確定だし、貯金もほとんどないし、
おまけに運動音痴だし、友達もほとんどいないし、
社会的地位もないやつの身体で、君は満足なのか!?」
菜々美(洋太)が顔を真っ赤にして叫ぶー
洋太(菜々美)は
”も、元々自分の身体なのに、そこまで言わなくてもー”と
内心で思いながらも話の続きを待つー
「ーお、俺の身体はーそう…ゴミだぞ!
食べ物で例えるなら、賞味期限は切れてないけど腐ってしまったパン!
そんな身体じゃ、君は輝けない!
やっぱゴミボディは俺にこそお似合いなんだ!」
菜々美(洋太)は必死に叫んだー
自分の身体のことをボロクソに言ってでも
”1億円当選”の身体を取り戻したかったー
”そうー俺は1億円の男になったんだー!
だからはよその身体を返せ!”
そう思いながら、洋太(菜々美)のほうを見つめるとー
洋太(菜々美)は首を横に振ったー
「あまり何度も入れ替わるとー身体に悪いかなってー」
とー。
「悪くない悪くない悪くない!大丈夫!」
菜々美(洋太)は叫ぶー
だが、それでも首を縦に振らない洋太(菜々美)ー
”っていうか、こいつーーー”
洋太はついに我慢できなくなって叫んだー
そしてー菜々美は同時に叫ぶー
「ー宝くじ!!!!!!!当たったの知ってるんだろどうせ!」
「ーー宝くじ!!!!当たったのに気付いたから急に身体を返して!って言いに来たんでしょう?」
とー。
「ーーー…!」
お互いに表情を歪めるー
「ー返しませんよー」
洋太(菜々美)が冷たく言い放つー。
「ーか、金に目が眩んだのか!このろくでなし!」
そう叫ぶ菜々美(洋太)ー
「そ、それはあなたでしょ!?」
洋太(菜々美)が反論するー。
「わたしには病気の母親がいるんですー
このお金があればー
わたしはもう”娘”としてはお母さんに会えないかもだけどー
お母さんを助けることもできますー」
洋太(菜々美)の言葉に、菜々美(洋太)は
「ふ、ふざけるな!宝くじの1億円は俺のものだぞ!」と、
必死に叫ぶー。
「ーいいえ。わたしのものですー
あなたが勝手に身体を入れ替えたんですからー」
洋太(菜々美)が堂々と言い放つー
「くっ… く…ふ、ふざけるなーー!
ふざけるなふざけるなふざけるな!」
菜々美(洋太)が顔を鬼のように歪めると
「ーこのままここで服を脱ぎ捨てて、
お前の身体を社会的に殺してやってもいいんだぞ!」と、
胸を触りながら叫ぶー。
だがー
洋太(菜々美)の返事はあっさりとしていたー
「ご自由にどうぞー」
とー
「なに?」
菜々美(洋太)が表情を歪めるー。
「だってー
今、そんなことをされたら困るのは
わたしじゃなくて、わたしの身体を”盗んだ”あなたのほうですしー」
洋太(菜々美)はそう言いながら笑うー。
言葉の節々に、
”勝手に身体を奪われた”ことに対する
怒りのようなものも、感じ取ることが出来るー。
「ーー…くっ……くそっ」
確かにその通りだー。
菜々美(洋太)が仮に今、服を全部脱いで
菜々美の身体を社会的に抹殺してもー
社会的に死ぬのは、菜々美の身体を使っている自分の方だー
1億円も失い”可愛い女子大生”という立場も失いー、
全てを失ってしまうー。
「ーーーーー」
ギリッと歯ぎしりをする菜々美(洋太)ー
”くそっー…この女、やっぱすんなり首を縦には振らないかー”
「ーーー」
今の状況で、”キャー!”みたいなことをしても、
洋太になった菜々美が”身体を取り戻すこと”を望んでいない以上、
それもあまり意味がないしー
万が一、”洋太”の身体が犯罪者扱いされてしまったらー
宝くじの当選金どころではなくなってしまうー
”くー…圧倒的不利なのは、俺の方かー”
こうなったらー…
と、菜々美(洋太)は、もう一度入れ替わり薬を購入して、
また強引に身体を入れ替えるかー?と
考え始めるー。
「ーーーく…くそっ…わかったー…」
菜々美(洋太)は歯ぎしりをしながら引き下がると、
洋太(菜々美)に背を向けて、そのまま歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそっ!くそっ!くそっ!
くそくそくそくそくそくそくそ!!!」
帰宅した菜々美(洋太)は狂ったように
部屋の中で暴れまわり、
壁を叩き、床を叩き、冷蔵庫を叩いたー
やがて、自分の手が痛くなり、
あまりの怒りに髪をぐしゃぐしゃにしながら
怒りの叫び声をあげるー
「ーくそっ!!!あの1億円は俺のものだぞ!!!
くそっ!!!!!くそっ!!!!!
あの金に目が眩んだクソ女め!!!」
自分から入れ替わりを仕掛けたにも関わらず、
自分を被害者だと思い込み、叫ぶ菜々美(洋太)ー
「ーなんとか、身体を取り戻さなければー」
菜々美(洋太)は鬼のような形相で
パソコンを起動させると、
入れ替わり薬を購入したサイトを開こうとするー。
しかしー…
入れ替わり薬の表記がそのサイトから消えていたー
「ーおい…??? おい!入れ替わり薬はどうした!?
おい!!クソ!!この野郎!!」
パソコンに向かって叫ぶ菜々美(洋太)ー
可愛らしい顔つきが歪んでしまいそうなぐらいに
怖い表情をして、鬼のように叫び続けている
菜々美(洋太)ー
だがー
入れ替わり薬は、もうそのサイトでは
販売していないようでー、
どんなに探しても、その表記を見つけることはできなかったー
「う~~~~あぁあああああああああああああああっ!
俺の1億円!」
菜々美(洋太)は怒りに任せて自分の胸を揉みながら
何とか身体を取り戻す方法はないものかと考えるー
宝くじで1億円当選すると知ってたら
身体を入れ替えたりしなかったー…!
入れ替わり薬は既に手元にあったのだからー、
すぐに使う必要はないー。
仮に入れ替わるにしても
1億円を使いつくしたあとに入れ替われば良かったー
「ーーくそっ…」
ギリギリと歯ぎしりをしながら菜々美(洋太)は、
あまりのイライラに、爪をガリガリかじりながら、
呪文のように”俺の1億円…俺の1億円…”と、呟き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
菜々美(洋太)は、菜々美の身体で大学に行くこともせずに
”自分の身体を取り戻す方法”だけを考えていたー。
しかしー
なかなかうまくいかずー、
どうすることもできない状態が続くー
”洋太の家”に、菜々美の身体で忍び込んで
あと1本残っているはずの入れ替わり薬を奪いー
それで身体を強引に取り戻す計画を立てていたものの、
”入れ替わった状態”では、元・自分の部屋に忍び込むことも
難しいと実感させられ、実行できないままだったー。
だがーーー
そんな中、突然、洋太(菜々美)から、
菜々美のスマホに連絡が入るー
少し驚きながらも菜々美(洋太)がスマホを手に、
反応するとー
”あのー…”
と、洋太(菜々美)の声がしたー。
”ー昨日は元に戻ることを、お断りしましたけど、
やっぱり、冷静になって考えてみたらー…
お金より、わたしの人生の方が大事だと思ってー…
わたしの身体、返してもらえますか?”
洋太(菜々美)が電話の向こうでそう呟くー。
突然のことに、菜々美(洋太)は困惑しながらも
「ーーへ…へへ…わ、分かったー話を聞こう」と、
ニヤリと笑みを浮かべたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今度は菜々美側からの「身体をやっぱり返して下さい」…!?
最後はどうなってしまうのか、
ぜひ見届けて下さいネ~!
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