<入れ替わり>やっぱり俺の身体 返して下さい①~人生の逆転~

”やっぱり俺の身体 返して下さい!”

「入れ替わり」で
女子大生の身体を奪った男ー。

しかし彼は数週間後、
そう叫びながら、姿を現したのだー

・・・・・・・・・・・・・・・

「やっぱり俺の身体ー 返して下さいー!」

一人の女子大生が冴えないおじさんの前で
土下座しながら、そう叫んでいるー

周囲からすれば、何が起きているのか
全く理解できない異様な光景ー

大学に通う
高梨 菜々美(たかなし ななみ)ー

その可愛らしい容姿とはまるで別人のように、
土下座しながら
「俺の身体、返して下さい!ごめんなさい!」と叫んでいるー

そして、その反対側に立っているのがー
中年の冴えないおじさんー、
堀沢 洋太(ほりざわ ようた)ー。

洋太は困惑した表情を浮かべているー

この二人はー
そうー、2週間ほど前に”入れ替わって”しまっていたー。

とー
言っても、事故ではないー

洋太が偶然手に入れた”入れ替わり薬”を使って
菜々美の身体を奪ったのだー

”どうせつまらない人生”
そう思っていた洋太は、入れ替わり薬を手に入れてすぐに
”可愛い子と入れ替わって人生を謳歌する”ことを思いついたー

そして、色々と物色した末に、
この菜々美の身体を奪ったのだー

しかし、2週間が経過した今、
菜々美(洋太)は”元・自分の身体”に土下座をしながら
”身体を返して下さい!”と叫んでいるー。

傍から見れば、とても異様な光景ー

洋太側が”身体を奪った”形の入れ替わりー

冴えないおっさんー…そんな風貌の洋太の身体に
女子大生が魅力を感じるとは思えないし、
洋太には地位も、金も、何もないー

そんな洋太の身体を、菜々美が喜んで使うはずもなくー
入れ替わった直後は、事実、必死に”わたしの身体を返して下さい!”と
叫んでいたー

だがーー

「ーお断りしますー」
洋太(菜々美)は”元に戻ること”を拒んだー。

「な、な、何でー…!?」
菜々美(洋太)がそう言うと、
洋太(菜々美)は「とにかく、元に戻りたくありません」と
淡々と答えたー

「ーーー……」
歯ぎしりをする菜々美(洋太)ー

土下座をしながら
菜々美(洋太)は心の中で思うー

”くそっ!何故だー!”
とー。

”どうして、こうなったー…!?”

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3週間前ー

洋太は、いつものように”つまらない人生”を送っていたー

30代後半ー
年齢よりも老けて見える洋太は
とっくに”中年のおじさん”と言えるような、
そんな生活を送っていたー

バイトを終えて、帰路につくー
ボロいアパートで独り暮らしの洋太ー。

洋太には、家族はないー。
両親は既に他界しているし、
妻はいない。彼女もいないー。

それを望んだわけではないー。
だが、容姿に恵まれず、性格も良くなかった洋太に
そんな相手ができるわけがなかったー

その上、プライドも高く
”婚活など閉店時間間際のスーパーのようなものしか並んでいない”と
豪語し、自分のことを棚に上げて、見下すような発言をしていたため
アドバイスする友達もいなくなり、やがて友達も失ったー

現在は”生涯独身なら、バイトで十分”と、
フリーター生活・アパート暮らしをしていたものの、
最近では”金のなさ”から、趣味も十分に楽しめず
不満ばかり漏らす日々が続いていたー。

今日も、スーパーで半額になった弁当を手に、
ふらふらと歩くー。

”閉店時間間際のスーパー”と、婚活を馬鹿にしていた洋太自身が
閉店時間間際のスーパーで弁当を買うという皮肉な光景ー。

今日も帰宅してネットを眺めー
節電のために毛布にくるまり、
電気も消してパソコンを見つめながら
1日を終えたー。

休日にも、特にすることがなくー
街中をふらふらと歩き、本屋で本を立ち読みしたー。

俺の人生はこのまま終わるんだろうな、などと思いつつ、
どうせ当たりもしない宝くじを買いー、
スーパーでストロングゼロと、焼き鳥の缶詰を買いー、
そして、家を整理していたら出て来たトレカをカード屋に売却ー
買取金額の50円を握りしめて、お店を出たー

自販機でコーヒーを買おうとして
財布を覗くー。

だが、値上げされたのか少し前より
コーヒーの価格が10円上がっているのを見て、
ちょうど10円足りなかった洋太は
「調子こいて値上げしてんじゃねーぞ!タコ!」と、
自販機を蹴り飛ばしたー

ため息をついて帰宅する洋太ー

だがー
その日の夜のことだったー

時に目的もなく、ネットサーフィンをしていたところー
”入れ替わり薬”なるものを発見したのはー。

「ーーーーーーーーーー」
洋太は、それを見つめるー

「ーーー…」
今月の給料を全て銀行から下ろし、
数少ない貯金を全てかき集めー
家にあるグッズ類や本、ゲームなどを全て売り払えば
ギリギリ買えるであろうそんな価格設定ー。

洋太は”入れ替わりってー…よく見る”わたしたち、入れ替わってる~!?”って
やつだよなー”と、頭の中で考え込むー。

もしー
もしも、そんなことが本当にできるのであれば
人生、大逆転できるー

いつの間にかつまらない人生になってしまった
自分の人生を一気に変えることができるー

「へへ…JKかJDあたりになればー
 人生、一気に大逆転だぜー」

洋太は、そんなことを呟きながら
ふと我に返るー。

「ーーまぁ…入れ替わりなんて、できるはずもないんだけどなー」
そう呟いて、偶然見つけたそのサイトを閉じようとしたー

だがーーー

”いや、待てよ?”
と、その手を止めるー

もし、もしもこれが”偽物”であったとしてもー
詐欺だったとしても
洋太に今更失うものなんてあるだろうかー。

いや、ないー

それよりもー
もしーもしも…これが”本物”だったらー?

洋太の人生は一気に大逆転だー
何もかもが、変わるー

「ーーーーーー…」
洋太はしばらくの間、パソコンとにらめっこを続けると、
やがてー”買うか”と、全ての財産を投げうってー
入れ替わり薬を手に入れたー

そしてーー
入れ替わり薬が数日後に届いたー

高校や大学の周辺をウロウロしてー
”可愛い子”を探すー

いやー、正式に言えば”奪う身体”を探すー。

その結果ー
見つけたのが、菜々美の身体だったー

2回分送られてきた入れ替わり薬のうちの1本を飲みー
菜々美に近付く洋太ー

そして、背後から突然菜々美にキスをしてー
洋太は菜々美の身体を奪ったー

「ーーー…え…?」
困惑する洋太(菜々美)ー

菜々美(洋太)は、
洋太になった菜々美の目の前でニヤニヤしながら
自分のものになった胸を揉んで見せると
「今日からこの身体は俺のものだー!」
と、嬉しそうに、可愛い声で宣言したー

「え…ど、どういうことですかー…?」
突然身体を入れ替えられて困惑している様子の
洋太(菜々美)ー。

当然の反応と言えるその反応を見ながら
菜々美(洋太)は優越感に浸りー、
そして、ニヤリと笑うー。

「へへへ…だからぁ…このエロくて可愛い身体は
 俺のものなんだよー

 君にはーそうー
 俺のその小汚い何のとりえもない身体を
 代わりにやるよー

 へへへへー」

菜々美(洋太)の満足そうな笑顔ー

洋太(菜々美)はようやく
”わたしの身体を奪われてしまった”という
現在の状況を理解し
「わ、わたしの身体ー返して下さい!」と叫ぶー。

だがーー
菜々美(洋太)が”はい、そうですかー”などと言うはずもなくー
胸を触りながらー
「あんま騒ぐなよー?」と、笑みを浮かべるー。

「ー!?」
洋太(菜々美)が、叫び声を上げたことでー、
人の注目を集めてしまったことに気付くー

「この状況ー
 変なおっさんが女子大生に絡んでいるようにしか見えないぜ?

 俺の言ってる意味、分かるよな?」

菜々美(洋太)の邪悪な言葉ー。

「そ…そんなー…わ、わたしーーー」
洋太(菜々美)が呆然としながら
洋太のー
”新しい自分の身体”を見つめるー

「ーと、とにかく返して下さい!」
洋太(菜々美)の言葉に、
菜々美(洋太)は「きゃ~~~~~!」とわざとらしく悲鳴を上げるー

「ーー!!」

これ以上はどうすることもできないー
このまま”わたしの身体を返して”と叫べばー
こっちが不審者として逮捕されてしまうかもしれないー

そう思った洋太(菜々美)は
泣きそうになりながらも「ーーわたしの身体…絶対に返してもらいますから!」と、叫ぶー。

それでも、ニヤニヤと勝ち誇った表情の菜々美(洋太)ー

女子大生と怪しい風貌のおっさんー。

わざと、小汚い格好でここまで来たのかと思ってしまうぐらい、
外出には適さない格好の洋太ー。
恐らく、最初から入れ替わったあとのことも想定してのことなのだろうー。

今、この状況で
「怪しい風貌のおっさん」になってしまった菜々美が”わたしの身体を返して”と
洋太の身体で叫びー、
「女子大生」になった洋太が”なんのことですかぁ?やめて下さい!”と、
わざと悲鳴をあげればー

どっちが不利なのかー…
それは、数秒想像しただけでも、洋太(菜々美)には理解できるー

涙目でその場から一旦避難する洋太(菜々美)ー

「ーーーうそ…どうして…?」
路地に逃げ込んだ洋太(菜々美)は、
呆然と自分の手を見つめるー

「ーーーー身体が入れ替わるなんてー…
 そんなこと…本当に起きるなんて…」

そう、思わずにはいられないー。

洋太(菜々美)は
これからどうすれば良いのかも含め、
困惑することしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へへへっ!へへへへへへへっ!」

”まさか、本物だったとはー!”

半分賭けだったがー
まさか入れ替わり薬が本物で、
本当に入れ替わることができるとはー…!

感動のあまりニヤニヤしながら、
学生証を元にアパートに帰宅した菜々美(洋太)は
早速胸を揉みながら、鏡の前で色々な
色っぽいポーズを試したり、
菜々美の口で告白させたり、
卑猥な言葉を口にしてみたり、
わざと男言葉を口にしてみたりして、
激しくゾクゾクと興奮したー

鏡にキスを繰り返しー
髪をいじくりまわしてー
女としてのトイレとお風呂を堪能してー
いよいよエッチを楽しもうと、ニヤニヤしてー、
その日は1日中、ご飯を食べることも忘れて、
欲望の限りを尽くしたー

深夜になって日付が変わり、
ようやく”そういえばお腹が空いたな”と、気づくまで
欲望の時間は続いたー

「ーわたしは、菜々美…」
鏡の前でそう呟くー。

ただ、自分の名前を言っているだけなのに
ドキドキするー…

ニヤニヤが止まらないー
そう、思いつつー
菜々美(洋太)は「さて、少しは”勉強”するかなー」と、
笑みを浮かべながら
菜々美のスマホを見つめ始めたー

”指紋認証”ー

「へへっ…スマホの指紋認証も
 身体を奪っちまえばーちょろいもんだなー」

逆に暗証番号だったら解除できなかったー。
そう思いつつ、指紋認証を突破し、
スマホの中身を覗き始めるー。

LINEやメール、写真ー
色々な情報を見て
”明日から”菜々美として振る舞うための勉強をしていくー

もちろん、確実に”菜々美、変じゃない?”とは思われるだろうー。

だが、極力ー
必要な知識はあつめておいた方がいいー。

そう思いながら
菜々美(洋太)は、これから先も菜々美の身体で
欲望を楽しむために、”菜々美のこと”を勉強し始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

だがー
菜々美(洋太)は違和感を覚えたー。

”入れ替わった日”以降ー
洋太になった菜々美が”何も言ってこない”のだー。

何も言ってこないし、何もしてこないしー
姿を現すこともないー

「何でだー?あっさり、諦めたのか?」
困惑する菜々美(洋太)ー

てっきり、入れ替わり2日目以降も
”わたしの身体を返して!”と、喚くと思ってたー。

だが、そんなことはなくー
洋太(菜々美)は沈黙したままー

逆に、不気味だー

”まさか、自殺とかしてねぇよなー?
 まぁー…元に戻る気はないから、いいけどさー”

そう思いつつー
1日、また1日と経過していくー

そしてー
首を傾げながら、
ふと、ネットサーフィンをしている最中に
あるものが目に入ったー

それはーーーーー

”宝くじの当選番号”
だったー。

あの日ー

俺の人生はこのまま終わるんだろうな、などと思いつつ、
どうせ当たりもしない宝くじを買いー、
スーパーでストロングゼロと、焼き鳥の缶詰を買いー、
そして、家を整理していたら出て来たトレカをカード屋に売却ー
買取金額の50円を握りしめて、お店を出たー

そうー
あの時買った宝くじの1等が当選していたのだー

”どうせ当たらないだろう”と思い、当選番号が判明する日より前に
菜々美と入れ替わった洋太ー

確か、当選番号の判明は入れ替わった日の夜ー。

宝くじの券は確か机の上に置きっぱなしだったー。
菜々美が何も言ってこないのはー
もしかしてーーー

当選金額はー1億ーーー

「うぉおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?」
頭を抱える菜々美(洋輔)

そしてー

今に至る。

「やっぱり俺の身体ー 返して下さいー!」

菜々美(洋太)は、
洋太(菜々美)の前に自ら姿を現し、
土下座しながら、そう嘆願していたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

身体を返して欲しい理由はまさかの…!?

次回以降からが本番(?)ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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