隣国が一夜にして滅亡ー。
憑依により、次々と国家が崩壊していく中ー、
プルート王国は対策を迫られる…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔導国家サターン王国の実質上の指導者
枢機卿・カリストと魔導水晶を用い、会話するヘレナ姫ー
”単刀直入にお伺いしましょうー
ヘレナ姫は、我々をお疑いということでよろしいですかな?”
言葉遣いは丁寧だが、
冷たい目と、鋭い眼光を感じさせる枢機卿・カリストー。
ヘレナ姫はゴクリと唾を飲み込みながらー
「分かりましたー
単刀直入にお伺いします」
と、答えるー。
”呪術のようなものを用いた侵略ではないか”
大臣のヨゼフの発言から、
ヘレナ姫は”可能性があるとすれば”と
魔導国家サターン王国と、話をしー、
”探りを入れようと”していたー
だが、枢機卿カリストには、それはお見通しでー、
”我々を疑っているのか?”という意味のことを
言われてしまったのだー
「ーーサターン王国は、何も関与していないー
そういうことで、よろしいでしょうか?」
ヘレナ姫がそう尋ねるー
言う時は言わなければいけないー
それが女王として必要な資質の一つだー。
”もちろんー我々は何も関与しておりませんー。
確かに、ヘレナ姫の言う”呪術による侵略”の可能性は
考えられるでしょうー
だが、しかしー
我々にそれをするメリットがあるとお思いか?”
枢機卿・カリストが言うー。
確かに、魔導国家サターンは、周辺国との関係も良好でー
侵略したところで、大きなメリットはないように思えるー。
その後の話し合いも平行線でー、
ひとまず”お互いに異変があったらすぐに情報共有を行う”
ということで一致したー。
”ーー貴国も、くれぐれも油断なさらぬようー”
枢機卿・カリストのそんな最後の言葉が引っ掛かるー
”もしもー…
サターン王国の仕業ならー
わたしたちはー…”
今夜、狙われる可能性が高いー
そう考え、騎士団長のオスカルを呼び出し、
事情を説明するー
「ご安心ください、姫様ー
姫様のためなら、私はどんな敵であろうと
打ち払う覚悟ですー」
オスカルは警備体制の強化や、
呪術への対応協議などをヘレナ姫に報告し、
頭を下げてそのまま立ち去って行ったー。
深夜ー
ヘレナ姫は一睡もせず、王宮内ー
王国内の様子を注意深く見守ったー
しかしー
その日の夜ー、
壊滅したのはーーー…
”魔導国家サターン王国”だったー
枢機卿のカリストは自害ー、
重鎮や、国民に至るまで、すべてが死亡していたー
「ーーー…!!」
サターン王国壊滅の知らせを大臣のヨゼフから
聞かされたヘレナ姫は表情を歪めるー
サターン王国が壊滅したということは、
サターン王国が仕掛けていたわけではない、ということになるー。
ヘレナ姫はすぐに緊急で残る三国での会談を要請ー、
魔導水晶を用いて、ヴィーナス王国とマーズ王国の2国と
会談を行ったー
「ーーあんたが、仕掛けてるんじゃないの!?」
マーズ王国の姫がヒステリックに叫ぶー
ヘレナと同年齢ぐらいの若い女王だがー、
とても子供っぽく、悪い意味で、ヘレナ姫はこの女王が苦手だったー
「いえ、わたしたちは、そんなー」
ヘレナ姫が否定するー
「落ち着いて下さい、二人ともー」
”女神”の異名を持つヴィーナス王国の女王が言うー。
「ー今夜ー、わたくしたち三国のいずれかが狙われる可能性が高いですー。
常に情報を共有し、全力で警戒を行いましょう」
ヴィーナス王国の女王の言葉に、マーズ王国女王が
「絶対、あいつが犯人だし!」と、叫ぶー。
弁明に追われるヘレナ姫ー。
しかしー、
自分も昨日、”サターン王国”を疑った身ー…。
うしろめたさから、あまりマーズ王国の女王に反論できないのもまた、事実だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
”助けて!お願い!助けて!”
緊急通信が入ったー
マーズ王国からー…
”謀反ー…そこら中で謀反が!何なのこれ!?
もう!!!何なのよ!”
マーズ王国の姫が、必死に叫ぶー
「落ち着いて下さい!状況はー!?
すぐに救援をお送りします!」
ヘレナ姫が慌てて応答するー
しかしー、その直後、
マーズ王国の姫は狂ったように笑い始めたー
”あははははははっ!みんな、みんな死んじゃうの!
あはっ!あははははははっ!”
マーズ王国の姫の突然の豹変に驚くヘレナ姫ー
だがー、”憑依”などとは夢にも思っていないヘレナ姫は
マーズ王国女王の気が狂ったのではないかと
慌てて「落ち着いて下さい!!」と、叫ぶー
だが、マーズ王国女王は笑いながら
”わたし、死にまーす!”と、そのまま向こう側の魔導水晶を砕く音が聞こえてー
連絡は途絶えたー
「ーいったい…何が起きているの…?」
呆然とするしかできないヘレナ姫ー。
マーズ王国壊滅の知らせは、その翌朝だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー姫様!今すぐヴィーナス王国を攻めましょう!」
騎士たちの中から、そんな話が出始めるー
残るはもう、ヴィーナス王国しかないー
女王を女神と崇め、砂漠を中心とした国土に独特な
文化を持つ王国ー。
だがー、ヘレナ姫は「確信が持てない以上ー攻めることはできません」と
表情を歪めるー。
「しかし!もう我々とヴィーナス王国しかないのです!」
と、騎士が叫ぶー
大臣のヨゼフも、困惑した様子だー。
「ーー落ち着け!」
騎士団長のオスカルは必死に騎士たちを落ち着かせようとしているー
確かに、攻撃を主張する騎士たちの言い分も分かるー。
だがー、
”こんなに露骨なやり方”をするだろうかー。
ヴィーナス王国が仕掛けていたのであれば
今、プルートとヴィーナスしか残っていないこの状況は
”わたしたちが犯人ですよ”と言っているようなものだー
”ーーーーーー”
既に滅亡した国家の中に
”滅亡を偽装した国家があるー?”
そんな考えにもたどり着くヘレナ姫ー
「ーーー!」
騎士団長のオスカルが、何やら部下から耳打ちされると
「姫様ー…私は一旦失礼します」と慌てた様子で退出していくー
どよめく王宮内ー。
そしてー
騎士団長のオスカルから
残る”ヴィーナス王国”の壊滅を知らされたのは
その少し後のことだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
プルート王国以外、全ての国家が壊滅したー。
しかも、何故か最後のヴィーナス王国は昼間に壊滅ー。
そしてー
更に謎なのはーーー
「ーーどうしてーー」
ヘレナ姫は呟くー
既に、ヴィーナス王国が壊滅してから
1週間が経過したー
しかし、最後に残ったプルート王国は
”無事”なのだー。
ヘレナ姫はてっきり
ヴィーナス王国が壊滅した翌日には”わたしたちの番”だと
覚悟もしていたー
もちろん、王国を守り抜くために全力を尽くす気持ちは
あったものの、
他の国家が何もできぬまま壊滅していた以上ー、
自分たちもー、という覚悟はどこかにあったー。
だがー
翌日になっても、翌々日になってもー、
何も起きぬままー
ついに1週間が経過してしまったー
大臣ヨゼフと、騎士団長のオスカルの進言により
滅亡した他の国家の調査にあたりー、
資源などの回収も始まっているー。
”これじゃ、まるでわたしたちが侵略したみたいにー…”
ヘレナ姫は戸惑うー
しかし、もうそれを責めるものもいないー。
残っているのはプルート王国のみなのだからー
「ーーーーー」
ヘレナ姫は”あること”を考えながら
険しい表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーご苦労だったな」
男が笑みを浮かべると、
呪術師のリーダーが笑みを浮かべたー。
世界地図にはプルート王国以外、すべてにバツがついているー
「褒美を取らせよう」
男がそう言うと、呪術師のリーダーが「ありがとうございます」と
それを受け取るー。
憑依を行っていた謎の呪術師軍団ー。
彼らは”数十年前に禁忌の呪術師”として
辺境の地に追放された、一族の生き残りー
その一族に目をつけ、男が協力を依頼、
”はじめて、我らを人間として扱ってくれた”と、
呪術師集団は男の依頼に乗り、
男の命じるままに、憑依で各国を滅ぼしてきたー
呪術師のリーダーは、
「我らは一旦、故郷に戻りますー」と笑みを浮かべると
男は「分かったー。このことは決して口外は無用だー」と、
言い放つー。
「もちろんでございますー」
そんな言葉に、安心した表情を浮かべたその時だったー
”あなただったのですねー”
背後から、声が聞こえたー。
「ーー!!!!」
振り返る男ー
そこにはー、ヘレナ姫の姿があったー
「ーーあなたの仕業だったのですね…!
オスカル…!!!!!!」
ヘレナ姫が言うと、呪術師と結託して各国を壊滅させていた男ー
騎士団長のオスカルは笑みを浮かべたー。
「ーひ、姫様ー
これはー…」
オスカルが言うと、ヘレナ姫は
”内部に黒幕がいるのではないかと、オスカルを含めた全重鎮の調査をしていた”
ことを告げたー。
「ーはは、これはこれはー」
オスカルが首を振ると、
「いいですか、姫様ー」と、笑みを浮かべたー
「これは、姫様と我が王国のためですー。
ご覧くださいー
我が国以外は全て滅亡ー
そして、有り余るほどの資源と領土を我々は手に入れたー。
これで、我がプルート王国は今後、何百年、いいえ、何千年の
繁栄を謳歌することができるー」
騎士団長オスカルの言葉に、ヘレナ姫は「なんてことを…!」と叫ぶー
「あなたと、王国のためなのです!姫様!!!
我々プルート王国は年々資源が減っていたー
このままではいずれ、我が王国は衰退するー!
だからこそ、この素晴らしい力を持つものたちと共に
他国を根絶やしにしたのです!
これで我々は何百年、何千年と繁栄できるのです!
騎士団長オスカルがそう叫ぶと、
ヘレナ姫は「許されることではありません」と呟くー
「いいえ、許されますよー
滅んだ国の人間は全員死にましたー
我々を恨む者も、憎む者もおりませんー。
申し上げたでしょう?姫様ー。心配はいらないと。
姫様は何も心配せずにーこの王国をー」
オスカルがそこまで言うとヘレナ姫は
オスカルの言葉を遮ったー。
「オスカル!!!!
あなたは自分がしたことの恐ろしさが、分からないのですか!!!?」
憑依で国中の人間を一斉に死なせるなど、
悪魔の所業だー
ヘレナ姫は、オスカルにその気持ちを吐き出しー
「わたしはー、いいえープルート王国はあなたたちを許しませんー」と、
言い放ったー
「姫様ー…すべてはあなたと王国のためですー
どうあっても、理解していただけませんか?」
騎士団長・オスカルが悲しそうに言うー
「ー理解など、できるはずもありません」
ヘレナ姫がそう言うと、
オスカルは深くため息をついたー
「ー私はあなたを尊敬していますー
今までも、今も、そしてこれからもー
ですがー」
オスカルはそこまで言うと、呪術師のリーダーのほうを見たー。
「ーーお前が”姫”になれー」
そう呟きながらー
「ー!?」
ヘレナ姫が驚くー
「理解していただけないのであれば、仕方ありませんー
この者を姫様に憑依させますー」
オスカルがそう言うと、
ヘレナ姫は護身用に持っていた剣を握りー
「オスカル!!!!」と、叫んだー
しかしー
オスカルの元にたどり着くよりも先にー
呪術師のリーダーが霊体となりー、
ヘレナ姫に”憑依”したー
「うっ…」
びくっと震えて、オスカルのほうを悲しそうに見つめたあとー
すぐに、ヘレナ姫はニヤリと笑みを浮かべたー
「ーーククククー…まさか、追放された一族の出である私が
お姫様になるとはー」
邪悪な笑みを浮かべながらヘレナ姫が笑うとー、
オスカルは「姫様のためにー、と思っていたが理解していただけないならば
仕方がないー。これからは、お前が姫様だ」と、笑みを浮かべたー
ヘレナ姫はニヤッと笑うと、
「共に謳歌しようー、永遠の繁栄をー」と、呟くオスカルのほうを見て、
静かに、不気味な笑みを浮かべながら頷いたー。
おわり
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コメント
崩壊の真相でした~!★
でも、いつか騎士団長も呪術師に裏切られそうな気も
してしまいますネ~笑
お読み下さりありがとうございました~!
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