一夜で壊滅した隣国・ウラヌス国ー。
その裏には”憑依の影”がー。
しかし…憑依の存在に未だ気付けていない
プルート国は防備を固めることだけに集中していたー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーえっ!?」
表情を歪めるヘレナ姫ー
プルート王国に再び衝撃が走ったー。
隣国・ウラヌス国に続き、
ウラヌス国に面していた王国の一つ、
事実上の鎖国状態にあった”ジュピター王国”も
壊滅したというのだー。
”情報は確かですー。先ほど、わたくしが派遣した
魔道部隊が確認しましたー”
女神をして崇められている
ヴィーナス王国の女王がそう呟くー。
水晶玉による魔導通信を行いながら
ヘレナ姫は、恐怖すら感じたー
ウラヌス王国と、ジュピター王国が続けて壊滅したー
”敵”は確実に、他の国家を壊滅させようとしているー。
どこの国家がそんなことを仕掛けているのかー。
”ジュピターは、酷い有様でしたー”
ヴィーナス王国の女王がそう呟くー。
「ーー生存者はー…?」
ヘレナ姫が確認すると、
ヴィーナス王国の女王は”0です”と、悲しそうに答えたー
「ーーオスカルー」
魔導通信を終えて、騎士・オスカルと大臣たちを呼び出したヘレナは
”未知の侵略”に備えた防備の更なる強化と
徹底的な情報収集を指示したー。
「ーー敵は、”通常の方法”とは異なる方法で他国を攻撃している
可能性がありますー
あらゆる可能性をシミュレーションして、対応にあたって下さい」
ヘレナ姫が言うと、
大臣のヨゼフが「かしこまりましたー」と、頭を下げるー。
”何かー”
何か、得体の知れない力による侵略が行われている気がするー。
ヘレナ姫は、そう思いつつ、自身も強い警戒心を持って
今一度、王国を守ることを決意したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ククククー」
憑依部隊を指揮する謎の呪術師は笑みを浮かべるー。
”最初に壊滅させたウラヌス王国”の時のことを思い出すー
「ーーうっ…」
ヘレナ姫と親しかった王女のアレクサンドラがビクンと震えるー
にやりと笑みを浮かべるアレクサンドラー
「ー姫様ー…どうかなされましたか?」
近くにいたメイドが、不安そうにそう呟くと
「いいえ」と、低い声で呟くアレクサンドラ。
そしてー、
「少し、お父様に急用ができましたー」
と、憑依されたアレクサンドラは、父親の元に向かうー。
「ーー国王様は、現在お休みになられておりますー」
だがー、時間は既に深夜ー
憑依されたアレクサンドラが
国王である父親の元を訪れようとすると、
警備の騎士がアレクサンドラを止めたー
「ーーいいから、どきなさいー
王女命令よ!」
いつものアレクサンドラとは別人のような雰囲気で、
強引にその騎士をどかすとー、
父親の部屋に入るアレクサンドラー
「ーークククククー」
憑依部隊を指揮する呪術師のリーダーは、
いつもー
必ず”まずはお楽しみ”をするー。
本格的な侵略は、お楽しみのあとだー
寝ている父親に近付くと、
アレクサンドラは不気味な笑みを浮かべながら
父親を起こすー
「お父様ー」
と、優しく囁きながらー
「ーーー?」
父親が目を覚ますー
娘のアレクサンドラの姿が目に入り、何も知らない父親は
「アレクサンドラー…?」と、呟くー
だがーアレクサンドラの様子がおかしいー。
「ーふふふふふ…♡」
父親を起こしたアレクサンドラが、両胸を揉みながら笑みを浮かべているー
「ーーー…?な、なにをしておるー?」
父が、不安そうにそう呟くと、
アレクサンドラは突然、ナイフを取り出して、
父親の首を斬りつけたー
「はぅっ!?!?」
起き上がったばかりの父親がその場に倒れ込むー
「ーーふふふふふふふふ♡
はぁ~~~♡ いい顔っ♡」
興奮した様子で倒れ込んだ父親に近付くと、
アレクサンドラは笑みを浮かべたー
「ーわたし、早く”女王”になりたいのー
だから、父上にはサッサと死んでもらいたくてー」
ニヤニヤしながらそう言い放つアレクサンドラー
「あ、あ、アレクサンドラー…!」
苦しみながら声を上げる国王ー。
「ーーークククー…父上は、もういらないの♡」
残酷な笑みを浮かべるアレクサンドラを見てー
”娘が憑依されている”とは知らない父は、
絶望の表情を浮かべるー
”あぁ、いいー いいぞー いいー…!
娘を恨みながら、娘に裏切られたと思いながらー
色々な感情を抱き、弱っていくその顔ー
そしてーこの娘も被害者なのにー
父親から恨まれてー
濡れ衣を晴らす機会も与えられないこの女ー”
ゾクゾクしながらアレクサンドラは、
弱っていく父ー
”国王”を観察しー、
笑みを浮かべるー。
やがて、父親が死んだのを確認すると、
アレクサンドラは”やれ”と、他の呪術師たちに
指令を送ったー
一斉に憑依されるウラヌス王国の重鎮たちー
”緊急事態発生”
”緊急事態発生”
ウラヌス王国の国民たちに、王宮前に集まるように
指示が出されるー
深夜の突然の事態に驚く国民たちー
憑依された騎士によって、逆らう者はすぐに始末されたー
そしてー
民衆が王宮に集まるとー
民衆が”逃げることができないように”
騎士たちが、城下町周辺の出入り口を固めたー。
騎士たちは、全員憑依されているー。
”ーーーーー”
呪術師のリーダーも、自分の魂を”分裂”させてー
大勢の人間にまとめて憑依しているー
集まった民衆を見つめながら、
アレクサンドラは笑みを浮かべたー
「ーウラヌス王国は、今日で滅びますー」
両手を広げながら、高らかに宣言する
王女・アレクサンドラー
どよめく民衆たちー
「一緒に、炎に包まれましょうー うふっ♡」
意味不明な言葉と同時に、
王宮と城下町から一斉に火が上がるー。
逃げ惑う国民たちー
しかし、憑依されている騎士たちが
既に城下町を封鎖していてー
逃げることも叶わずー
焼き尽くされていくー
なんとか逃げた民も、憑依されて
その場で自殺してしまうー。
やがてー
燃え尽きていく民衆たちを見つめながら
アレクサンドラは狂ったように笑い続けたー
その目から、涙が零れ落ちるー
笑いすぎて涙が出たのかー
それともーーー
そのままー
アレクサンドラは炎に包まれた王宮で、
笑いながら焼き尽くされていくー
残った”憑依された騎士たち”は、
全員が笑いながら自殺してー
ウラヌス王国は一晩で壊滅したー
・・・・・・・・・・・・
”最初に壊滅させた”
ウラヌス王国のことを思い出しながら
満足そうに微笑んだ呪術師のリーダーは、
地図を見つめるー。
既に
”ウラヌス王国”と”ジュピター王国”は壊滅したー
次はーーー
・・・・・・・・・・・・
深夜ーーー
「ー姫様!緊急連絡です!」
大臣のヨゼフが、深夜、姫の寝室に駆け込んできたー
「ど、どうかしましたか?」
呆然とするヘレナ姫に、
”魔導通信”を行うための水晶玉を手渡すヨゼフー
するとそこにはー
騎士大国であるネプチューン王国の皇帝ーー
”カイザー”の異名を持つ男が映し出されていたー
”き、緊急連絡ー!
次々と王宮内で謀反が起こりー
収拾がつかない!”
あの”カイザー”が激しく憔悴しているー
「お、落ち着いて下さい!何が起きているのですか!」
ヘレナ姫が叫ぶと
”カイザー”は、”分からない!我が妻が突然、娘をー!”と、
混乱した様子で叫んだー
ヘレナ姫がすぐに応答しようとすると、
”火の手が!”という声と、悲鳴のような声ー
女の笑い声ー、爆発音ー
恐ろしい音が次々と聞こえて来たー
「ーー今すぐ救援をお送りします!」
ヘレナ姫がそれだけ叫ぶと、
”カイザー”からの通信は、既に途切れていたー。
「ーーす、すぐにネプチューン王国に騎士団を派遣してください」
ヘレナ姫がヨゼフにそう指示をしたもののー
プルート王国の救援がネプチューン王国にたどり着いた時にはー
既に、ネプチューン王国は焼け野原となっていたー。
「ーーーーそんなー」
その報告を聞いて落胆するヘレナ姫ー
”騎士大国”と呼ばれー
最強の騎士団を抱えるネプチューン王国ですら
一晩で壊滅したー
これは、明らかにおかしいー
もしー
もしも仮にー
ウラヌスやジュピターを武力を使い、一晩で滅ぼすことが出来るとすればー
可能性があるのは”ネプチューン”だけだったー
しかしー
そのネプチューンも一晩で滅んだー
あり得ないー
ネプチューン以上の戦力を持つ王国はないはずー。
絶対にー”普通の方法”ではないー。
何かが起きているー
「ーー」
緊急招集をかけたヘレナ姫は
騎士団長のオスカルや大臣のヨゼフらを前に、
「この王国にも、崩壊が迫っていますー」と語るー。
他国との交易の結びつきが強いウラヌス王国だろうとー
鎖国していたジュピター王国だろうとー
最強の騎士団を抱えるネプチューン王国だろうと、
一晩で壊滅しているー
”敵”はどこであろうとお構いなしー。
そして、どんな力を持っていても、抵抗すらままならないー。
地形上、堅牢な守備を誇るここ、プルート王国であろうとー…
恐らくはー
「ー姫様、ご安心くださいー。我々が必ずや王国をお守りしますー」
強い忠誠心を持つ騎士団長・オスカルが自信満々にそう言い放つー
「心強いですー」
ヘレナ姫はそう言いながらも
「ですが、あの”ネプチューン”の騎士団も何も抵抗できないまま
全滅していますー
最大限、警戒してくださいー」と、
オスカルのほうを見て言い放つー。
不安そうな姫の表情を見て、悲しそうな表情を浮かべるオスカルー。
「ーーー呪術によるものかもしれませんな」
大臣のヨゼフが口を挟むー
「呪術?」
ヘレナ姫がそう言うと、ヨゼフは「はい」と頷くー
「3国の崩壊ー。
とてもじゃありませんが、通常の武力による侵攻では不可能ー
内乱が起きたにせよ、あまりにも壊滅が早すぎるー
しかしー
何らかの呪術であれば、そのようなことも
可能かもしれませんー」
ヨゼフの言葉に
騎士団長オスカルは「まさかー」と、首を振るー
だがー
何らかのー
狙った王国を壊滅させるほど強大な呪術があるのだとすればー、
それも確かに可能かもしれないー。
「ーーー…分かりました。その線も、調査をお願いします」
ヘレナ姫がそう言い放つと、ヨゼフは「はっ!」と頭を下げたー
”お父様ー”
死んだ父親ー前国王の写真を見つめながら、
ヘレナ姫は呟くー。
「必ず、この王国は守り抜いて見せますー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あははははははっ!
自然が、自然が燃えていくー!」
自然に恵まれたマーキュリー王国ー…
その女王、ミレイアが自ら
マーキュリー王国の中心に存在する”世界樹”と呼ばれる樹を燃やし、
大笑いしているー
”憑依”ー
一斉憑依による侵略の次の矛先はー
マーキュリー王国だったー
「ーふはははははははは!」
姫と共に笑う護衛たちー。
各所で憑依された騎士たちが、
国民の命を奪っていくー
逃げようとした市民は憑依されて自殺ー
役目を終えた騎士も憑依されたまま自ら命を絶ったー
「ん~~~~~~…心地いいー」
ゾクゾクしながら女王・ミレイアは笑うとー、
「わたしもそろそろ死んじゃおっかなぁ~♡」と笑いながら
自分に火をつけて、笑いながらその命を落としたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「マーキュリー王国まで…!」
ヘレナ姫は表情を歪めるー
残るはー
ここプルート王国と、
広大な砂漠が広がる、女王を女神として崇める国家・ヴィーナス王国、
医療技術の発展している、マーズ王国、
魔導国家、サターン王国ー…
他にいくつか小さな国家はあるものの、
残る主要国家はその4つしかないー。
しかも、連日王国が一つずつ壊滅しているー
”わたしたちがもし、最後だとしても残された時間は
あと1週間もないー”
ヘレナ姫は思うー。
それにー
恐らくは”この中に”首謀者がいるー。
そうなると、残りは実質3国しかないー。
「ーーサターン王国の枢機卿・カリスト殿に繋いでくださいー」
魔導水晶を使い、魔導国家サターン王国の実質上の権力者である
枢機卿・カリストと、連絡をつけるように大臣に指示をすると、
ヘレナ姫は険しい表情を浮かべたー
”呪術による侵略”
それができるとすればーーー
一番可能性が高いのはー、魔導国家サターン王国だー。
「ーーー…絶対にー…守りますーこの王国はー」
ヘレナ姫はそう決意を口にして、
魔導水晶に映し出された枢機卿・カリストの顔を見つめたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
滅んでいく周辺の王国…
果たして”憑依による侵略”に対抗する手段は
あるのでしょうか~?
今日もありがとうございました~!
コメント