とある平和な王国ー
しかし、ある日、事件は起きたー
それは”交流のあった隣国”が一夜にして
滅んだのだー
謎の事態に”次はわたしたちが狙われるかもしれない”と、
備えを始める王国ー。
しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とある世界に存在する国家・ウラヌス国。
”交易”に力を入れている国家で、
豊かな資源や農作物、魔道を利用した技術提供などを行いー、
他国との繋がりを何よりも大事にしているその国家ー
”ウラヌス国との交易なくして、繁栄はない”と
言われるほどに世界にとって重要な国家であり、
事実、ウラヌス国は他国の大きな支えになっていたー。
「ーーーありがとうございます」
隣国・プルート国の女王・ヘレナがそう言うと、
「いえー…父上もいつもヘレナ様には感謝していますー」
と、ウラヌス国の王女・アレクサンドラが微笑むー。
「ーー様だなんてー…
いつものようにヘレナでいいですよー」
隣国、ということもあり、
プルート国の女王・ヘレナと、ウラヌス国の王女・アレクサンドラは
幼馴染のような間柄で、公私ともに親しいー。
だが、先月、プルート国の国王であったヘレナの父親が高齢のため、
病で夜を去りー、
ヘレナが若くして王ー…女王の座を継いだことで、
アレクサンドラはヘレナのことを気遣っていたー。
「ーでも、そういうわけにはいきませんしー」
アレクサンドラがそう言うと、
ヘレナは「女王になったと言ってもー…人間の中身まで変わるわけではありませんしー」と、
少し恥ずかしそうに言葉を口にしてからー
「それにー」と、言葉を付け加えるー
「ー王宮でも、みんなわたしを気遣っているのが分かってー
ちょっと、窮屈な気分でー」
立場が”女王”になったことで、今まで以上に周囲から
気を遣われているのが分かり、ヘレナは息が詰まりそうな、
そんな思いをしていたー
”そんなに気遣わなくていいのに”
とー。
「ーーふふ…」
アレクサンドラは少しだけ笑うと、
「わたしも、いつかヘレナ様ー…いえ、ヘレナのように
女王になったりしたらー…そういう風に思うのかもしれませんね」
と、微笑みながら言い放つー
「ーーその時はー…
お互い、仲良くやっていきましょう」
ヘレナがそう言うと、
アレクサンドラが笑うー。
プルート国女王就任のあいさつに伺ったヘレナは、
アレクサンドラとの対談を終えると、
そのまま帰路についたー。
だがー
プルート国に帰還したその日ー、
ヘレナは、聞かされるー。
アレクサンドラの国ー
ウラヌス国に起こった恐ろしい出来事をー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーえっ…?」
ヘレナ姫は、思わず驚いて声を上げるー。
「信じがたいことですが、事実のようですー」
プルート国の騎士団長・オスカルがそう報告すると、
ヘレナ姫は「嘘…」と、呆然とした表情を浮かべるー。
騎士・オスカルから報告された恐ろしい出来事ー
それはー
隣国であるウラヌス国が、昨夜、一晩にして”滅亡”したというのだー
「いったい、どこの国がそんなことをー!?」
ヘレナ姫は表情を歪めるー
昨日ー
ウラヌス国に足を運び、
幼馴染でもある王女・アレクサンドラと話をしたばりだー。
夕方にはウラヌス国を出て、夜にはプルート国に帰還したため
その後のことは分からないもののー
夕方、ウラヌス国を出る時には、特に何の異変もなかったはずだー。
「ーそれがー…今の時点では不明ですー
”未知の侵略者”としか言いようがありません」
「アレクサンドラはー…?」
幼馴染でもある王女の身を案じるヘレナ。
だがー、
オスカルは首を横に振りながら言うー。
「王宮内でご遺体となって発見されたそうですー。
何者かに、乱暴された形跡があったとかー」
オスカルがそう言うと、ヘレナ姫は「アレクサンドラ…」と、
呆然とした表情を浮かべるー
「ーーー」
ヘレナ姫は、幼馴染の死にショックを受けながらも、
「ーウラヌスが陥落したということはー」と、
冷静になって女王としての務めを果たそうとするー。
まだ若くー、年相応の振る舞いを見せることはあるもののー、
ヘレナはとても聡明で、優れた判断能力を持っているー。
今も、そうー
幼馴染の死ー、隣国が一夜にして崩壊ー、
そんな事実を前にして、激しく動揺しているはずなのに、
ヘレナ姫はすぐに判断した
「ーここ、プルートが狙われる可能性も十分にあります」
忠誠心の厚い騎士団と、
恵まれた地形による堅牢な防御ー、
前国王による民への施しによって実現した豊かな暮らしー
プルート国は、そんな国だー。
民と、王国、その強い信頼関係は、
他のどの国よりも負けないと思うー。
「ーーー防備を固めー、騎士団の皆さんも警戒にあたって下さいー」
ヘレナ姫が、ただちにプルート国の防備と警戒態勢を固めるように指示をすると、
騎士団長のオスカルは「はっ!既に取り掛かっております」と、
力強く返事をしたー
立ち去っていくオスカルを見つめながら
ヘレナ姫は思うー
”いったい、どこの国がウラヌスをー…?”
とー。
ウラヌス国は決して”戦力”的に強大な国家ではなかったー。
だが、それでも一夜にして滅亡するほど脆弱ではないしー、
各王国との繋がりがあるために、ウラヌス国が攻められた場合、
必ず手を差し伸べようとする国家もあるはずだー。
それに、ウラヌスには
”王宮親衛隊”と呼ばれる少数精鋭の騎士団もいたはずだー。
それが一晩で崩壊するなど、あり得ないー。
ウラヌスを一夜で攻め、滅ぼすことができたとすれば、
ウラヌスと隣接している4つの国のどこかのはずー。
ヘレナ姫自身が統治するプルート国は関わっていないため
可能性があるとすれば残り三国ー。
”騎士大国”とも呼べるほどに
世界最強の騎士団を抱えている国家
”ネプチューン王国”
他国との関りを望まず、事実上の鎖国状態にある
”ジュピター王国”
女王を女神として崇め、独特な文化を持つ
砂漠中心の国家
”ヴィーナス王国”
壊滅したウラヌスと隣接していたのは
女王ヘレナが統治するプルート王国と合わせて
その4国だけだー
一晩でウラヌスを壊滅させることが出来たのであればー
ネプチューン、ジュピター、ヴィーナス…
このいずれかである可能性は高いー
その他にも
植物と自然にあふれた”マーキュリー王国”や、
魔道国家”サターン王国”、
医療技術が他国よりも飛躍的に発展している”マーズ王国”
が存在しているがー、
それらの国家がウラヌスに侵略するとなると、
ウラヌスと隣接している
プルート、ネプチューン、ジュピター、ヴィーナスの
いずれかを通過する必要があり、
とてもではないが、一晩でウラヌスを壊滅させることなど
できるはずもないー。
「ーーアレクサンドラー…」
ウラヌス国とは特に親しかったプルート国ー。
ヘレナは頭を抱えるようにして、
困惑のため息を吐き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー我が騎士団が、理由もなく他国に攻め入ることはないー」
”カイザー”の異名を持つネプチューン王国皇帝が言うー。
「ーーわたくしたちも、同様ですー」
独自の文化を持つヴィーナス王国の女王が言うー。
”映像なしで”という条件で
鎖国状態にあるジュピター王国も会議に参加しー、
魔法技術による”オンライン会議”が行われていたー。
ヴィーナス王国の魔法により、水晶玉にヘレナ含む、
4国の代表が映し出されているー
しかし、壊滅したウラヌスと隣接する他の3国は
いずれも、ウラヌスの壊滅への関与を否定したー。
「ーー失礼ながら女王ー。
あなたではないのか?」
カイザーの異名を持つネプチューン王国皇帝が言うー。
「ーーえ…?」
ヘレナが困惑の表情を浮かべると、
水晶玉に映し出された”カイザー”が鋭い目つきで、
こちらを見つめて来るー
”水晶玉越し”でも分かる猛者のオーラ。
”カイザー”の異名を持つネプチューン王国皇帝は、
自身も騎士として最強クラスの力を持っているー。
「ーあなたはウラヌスの王女と仲が良かったはずー
あのウラヌス王国が何の抵抗もできないまま
全滅するなどとは、とてもではないが”普通の侵略”では
不可能だー。
仮に我が王国が攻め入ったとしても1日で陥落させ、
さらにはほぼ無抵抗と思われる状況で壊滅させるなど、
できるはずもないー」
ネプチューン王国皇帝の言葉に、
映像なしのジュピター王国の国王も
”それは確かに一理ありますな”と、声だけで呟いたー
しかし、ヘレナはすぐに否定するー
「わたしたち、プルート王国は何も関与しておりませんー」
とー。
「ーウラヌス王国を滅ぼすメリットがわたしたちに
あるとお思いですかー?」
ヘレナは友でもあったアレクサンドラの死を悲しみながら
目に涙を浮かべてそう言うと、
ネプチューン王国皇帝は黙り込んだー。
「ーそれも、確かにそうですね」
ヴィーナス王国女王がそう呟きー、
結局、壊滅したウラヌス王国に隣接する4か国による
話し合いでも、何も分かることはなかったー
「姫様」
騎士・オスカルがヘレナ姫に声を掛けるー
「今のところは何とも言えませんー」
ヘレナ姫が呟くー
他国を疑うことはしたくないー。
しかしー、
実際にウラヌス王国が一晩で壊滅した以上ー
”どこか”が手を下したのは間違いないー
「ーーーどの王国による仕業かも分かりませんー
防備を徹底的に固めて下さい」
ヘレナ姫の言葉に、騎士・オスカルは「はっ!」と、
頭を下げて、すぐに更なる態勢強化に向けて
行動を取り始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーークククーまずは上手く行きましたなー」
呪術師のような男が、笑みを浮かべるー。
「ーーあぁ…まさか、”このような方法”を使っているとは
誰も思うまいー」
男が笑みを浮かべると、
呪術師は「憑依ー」と、呟いたー
ウラヌス王国が一晩で壊滅したのはー
”謎の呪術師部隊”によるものー
呪術師たちは禁忌とされる”憑依”の力を身に着けており、
他人を乗っ取り、操ることができるのだー
その力を使い、ウラヌス王国の人間に次々と憑依ー
一晩にして、ウラヌス王国の全住人を”始末”したのだー
憑依による侵略ー
兵器を使う必要もー
騎士団を使う必要もないー
”無傷”でー、
こちらは”血を流すことも”なくー
相手の王国は滅びるのだー
しかもー
”憑依”を前に、人間は無力ー
どんなに防備を固めたところで、身体を乗っ取られてしまえば
何もできはしないー。
「ーーどうだった?王女アレクサンドラの身体はー?」
笑みを浮かべながら男が言うと、
呪術師は「ー始末するには、勿体ない身体でございましたー」と
下品な笑みを浮かべるー。
「クククー…そうだろうな」
男はそう呟くと、ニヤリと笑みを浮かべながらー
「ーーまぁ良いー
次だー」
と、世界地図を広げるー。
既に”バツ”がつけられているウラヌス王国ー
男は呪術師に向かって”次のターゲット”を指さしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
呪術師が、国王に憑依するー
国王が、住人たちを集めるように指示をするー
次々と王国の重鎮が、呪術師たちに憑依されー
その指示を下すー。
王宮前の広場に集められた民衆ー
それを取り囲むようにして、憑依された騎士たちが火を放つー
民衆が焼き殺されー、
生き延びた人間は、呪術師たちに憑依されて”自殺”しー、
残った騎士は、笑いながら自殺ー
憑依された国王はー
笑いながら滅びゆく自分の国を見つめー
王宮から飛び降りたー
残ったわずかな国民も、憑依されて根絶やしにされー
今日ー
”2つ目の王国”が壊滅したー
②へ続く
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コメント
憑依能力を侵略に使う悪い王国があったら…?を
元に考えたファンタジー系の憑依モノデス~!
一斉憑依で、一気に壊滅させられてしまう恐怖…
立ち向かう方法はあるのでしょうか~?
続きはまた次回デス~!
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