”洗脳”されたことにより
仲良し姉妹が、互いに憎しみ合うように
なってしまったー…
さらにエスカレートしていく姉妹の運命は?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーちょっと!?何これ!?」
翌朝ー
妹の瀬奈が叫ぶー
瀬奈の部屋に置かれていたー
”高校の制服”が、ボロボロに引き裂かれていたのだー。
「ーーふふふふふふ…
大変なことになっちゃったね~~~?」
姉の直美が、ニヤニヤしながら瀬奈の部屋の前を通り、
そう呟くと、部屋の中から瀬奈が叫んだー
「これ!あんたがやったの!?」
とー。
直美は「さぁ~?しらな~い!」と、挑発的に微笑むと、
そのまま立ち去っていくー
その態度にカッとなった瀬奈は、部屋から飛び出して
階段を降りようとしていた直美を背後から突き飛ばすー
「きゃっ!?!?」
驚く直美ー。
直美はそのままバランスを崩して
階段を転がり落ちるように、
1階まで転落してしまうー。
「ーあはっ…あははははは!いい気味!」
姉が階段を転がり落ちても、嬉しそうに笑う瀬奈ー
やがて、1階にいた母親の久恵もそれに気づき、
「ちょっと!?直美!」と、階段を転がり落ちた直美に近付くー
直美は身体を打ち付けながらも、
大怪我を何とか免れていたー。
しかしー、
その怒りと憎しみはさらに膨れ上がるー
「ー…ちょっと!!痛いんだけど!!!!」
直美が、母親を振り払って、2階にいる瀬奈の方に向かって行くー
直美と瀬奈が罵り合うー。
2階の廊下で、殴る・蹴るの本気の喧嘩に発展してしまいー、
久恵が必死に止めに入るー。
しかし、止めに入った久恵も無視して、
2人の喧嘩は続くー
「ーーふざけんなよ!妹の癖に生意気なんだよ!」
姉の直美が、今まで聞いたこともないような怒りの口調で
怒鳴り声を上げているー
「ーあんたこそ…!わたしに嫉妬してー!
あんたなんか死んじゃえばいいのに!」
瀬奈が直美のことを廊下に押し倒すと、上に乗って
何度も何度も直美をグーで殴りつけるー
直美の唇から血が出てもお構いなしの瀬奈を、
背後から母親の久恵が必死に止めるとー
瀬奈は「死んじゃえ!!!」と、叫びながら
直美のほうを見つめたー
「あんたこそー…死ねばいいのに!」
直美はそれだけ言うと、唇の血を気にする素振りを
見せながら、そのまま大学の方に向かったー
なおも乱暴な言葉を吐く瀬奈ー
そんな瀬奈に対して母の久恵は
「瀬奈!!!!」と、流石に怒った口調で叫ぶと、
「ーーー何があったの!ちゃんと聞かせて!」と、
瀬奈を叱りつけたー
「ーー…お、お母さんー…」
”洗脳”されているとは言えー、
母親に対する感情は別に操作されていない瀬奈は、
直美が出かけたこともあり、ようやく落ち着くと、
「ーーーお母さんには、関係ないよー…」とだけ呟いてからー
「それより、あの嫉妬女に、わたしの制服がー」と、
自分の制服がボロボロにされたことを
母の久恵に伝えたー。
「ーーねぇ、何で最近、お姉ちゃんと喧嘩ばかりしてるの!」
久恵が制服の状態を確認しながらそう言うと、
瀬奈は一瞬戸惑ったような様子を見せたものの
「全部、あの嫉妬女が悪いんだからー」と、呟くー
”お姉ちゃんのことを嫉妬女と呼ぶなんてー”と、
久恵が思いながら
「何があったのか分からないけどー、そういう呼び方はやめなさいー」と、伝えるー。
「ーでも!!!」
瀬奈が反論してくるー
けれどー、久恵は負けじと
「そんな呼び方したら、お姉ちゃんだってカッとなるでしょー。
お姉ちゃんにも、よく言っておくから!」と、瀬奈を落ち着かせようとするー
瀬奈は不満そうに「あの女が悪いのにー」と、苛立ちを見せるも、
”お母さんの言葉”ということで「ーーは~い…」と、拗ねた様子で
渋々頷いたー。
”無駄無駄”ー
キズナ芸術家の龍之介は笑みを浮かべながら
その様子をモニタリングしていたー。
「一度落ち着いたとしても、再び相手を見れば
憎しみが膨れ上がるー
二人の絆はボロボロに引き裂かれて、散るー
そう、桜のようにー」
桜が散る様子を撮影した動画を、
隣のモニターで再生しながら笑みを浮かべる龍之介ー
だがー
その日の夕方ー
龍之介が想定していなかったことが起きたー
”ごめんなさいー”
洗脳した人間の”視界”を受信する特殊な技術で、
モニターに映し出した映像から、そんな声が流れ出るー
”は?今更なに?”
姉の直美の不機嫌そうな声ー
”だから…謝ってるの!”
続けて、瀬奈の不機嫌そうな声ー。
驚いて、龍之介はモニターのほうを凝視するー
モニターの先ー…
瀬奈と直美の家ではー
高校から帰宅した瀬奈がー、
直美に謝っていたー。
「ーーお母さんに言われてー気付いたのー…
あんたー…ううんー…お姉ちゃんとわたし…
ちょっと前まで、こんな風に喧嘩なんかしてなかったよねー…?」
瀬奈の言葉に、直美は瞳を震わせながら
「ま…まぁー…それは…そうだけど」
と、自分の記憶を辿りながら言葉を吐きだすー
「それなのに、急にこんなー…
何か…何かおかしいと思ってー」
瀬奈の言葉に、
直美は「おかしいのは、あんたでしょ」と、いらだちを露わにするー
「違う!!!」
瀬奈が叫んだー
「確かに、お姉ちゃんはおかしいー
けど、わたしもおかしいー
なんかー…何だかわからないけど、わたしたち、変だよ!」
瀬奈がそう叫ぶとー、
直美は瀬奈のことを睨みつけるー。
その時だったー
瀬奈の目から涙が零れ落ちるー。
お姉ちゃんのことは嫌いだし、憎いー
”今は”そう思ってるー
でも、少し前までそうじゃなかったー。
自分でもわからないけれどー
不安でいっぱいになった瀬奈は、目から涙をこぼしたー。
「ーーーせ、…瀬奈ー…?」
その涙を見て直美が少しだけ表情を緩めるー
母・久恵がその様子を心配そうに見つめていた
その時だったー
「ーーー…瀬奈ーーー泣かないでー」
直美が歩み寄り、瀬奈を抱きしめるー。
「ーーー確かにーーわたしたち、何か変だよねー…」
「ーーうんーー…何で…お姉ちゃんのこと、急にこんなにウザいって
思うようになっちゃったんだろうー…?」
「ーー…ーー分からないー…わたしも瀬奈を見るだけで
どうしてか分からないけどー、すごくイライラしてー…」
そんな、姉妹の会話ー
それをモニタリングしていたキズナ芸術家の龍之介は机を叩いたー
「くそっ!この姉妹の絆は”洗脳”よりも強いと言うのかー?」
これまでにも、色々な人間の”絆”を引き裂いてきたー。
だが、こんなことは初めてだー
元々の姉妹の絆が強すぎるのかもしれないー
しかし、今まで、数多くの絆を洗脳で無理やり引き裂いてきたー。
こんなことが、あるはずがー
龍之介が左手で顔の半分を覆いながら
モニターの”信じられない光景”を見つめるー
「あぁ…美しくない美しくない美しくない美しくない美しくない!!!
私が見たいのはこんな安っぽい姉妹の絆なんかじゃないんだよ!!
私は、人間の絆というものが、
目には見えない絆が、音を立てて崩れていくのを見たいんだよ!」
龍之介はそう叫ぶと、ハッとして、
笑みを浮かべたー
”そうだー…抵抗されればされるほどーこちらも燃えて来ると言うものー”
そう呟くと、龍之介は
精神を集中させーさらに”憎しみ”を増幅させるべく、
目を真っ赤に光らせたー。
眼球が真っ赤に染まりー
黒目から紫の光が放たれるー
「くぅぅぅぅぅぅぅ…私の全ての力を注ぎこんでー
お前たちの憎しみを増幅させてやるー」
そう叫ぶと、
モニターの先ー
離れた場所にいる直美と瀬奈の目が真っ赤に染まりー、一瞬、紫の色を発したー
すぐに元の色に戻る二人の目ー
「ーーーうざい…うざいうざいうざいうざいうざいうざいー」
妹を抱いていた直美が突然言葉を口走るー
「ーうざいうざいうざいうざいうざいうざい」
妹の瀬奈もそう叫び始めるー
「ーーせ、瀬奈ー…?直美ー?」
戸惑う母の久恵ー
すると、直美が突然、瀬奈の首を思いっきり絞め始めたー
「あっ… うっ…」
もがく瀬奈ー
直美は「あんたなんか…!お前なんか死ねばいいの!」
と、怒り狂った様子で叫ぶー
「ちょっと!!!!!直美!やめなさい!」
久恵が青ざめて叫ぶー
しかしー
直美は手を緩めないー
瀬奈が青ざめていくのが見えるー
本気で、妹を殺す気だー
そう思った久恵は、慌てて直美を引きはがそうとするー
だが、その隙をついた瀬奈が今度は机の花瓶を手にして、
それを直美の頭に叩きつけたー
「ぁ…」
直美が血を流しながら、ふらふらとよろめくー
「やめなさい!!!!やめなさい!!!!!!」
久恵が必死に叫ぶも、
今度は直美が台所の包丁を手にして叫ぶー
「ーーうざい!!!うざいんだよお前!!!!」
怒り狂った叫び声ー
瀬奈も罵声を上げて怒り狂っているー
”いいぞ!いいぞいいぞいいぞいいぞいいぞいいぞ!
もっと憎しみ合え!憎め!相手を憎めぇ!”
龍之介は、二人の視界をモニターに移しながら
自分の部屋の中で興奮した様子でモニターを見つめるー
その先では、直美が瀬奈に向かって包丁を振り回しているー
「あんたなんか、生まれなければよかったのに!」
直美が瀬奈を追い回すー
瀬奈は直美の持つ包丁から逃げ回りながら、
「ーーあんたこそ!」と叫ぶー。
やがて、直美が瀬奈を捕まえて、
本気で包丁を振りかざしー、
瀬奈の頬の部分に傷をつけるー
「いったぁぁぁ…」
頬を抑えながら瀬奈はさらに怒りを爆発させると、
「ーふざけんな!!!!!!!!!」と、
血のついた手で包丁を掴んで、それを近くに投げ飛ばすー。
棚の前で、取っ組み合いをしている二人を見て、
母親の久恵は泣きながらやめるように叫ぶも、
もはやその声は二人には届いていないー。
棚の上に飾られた笑顔の二人ー、
直美と瀬奈の写真が虚しく佇む中ー、
直美が瀬奈の頭を棚に叩きつけて、
倒れ込んだ瀬奈の上に乗って
何度も何度もビンタを繰り返しているー
「ー直美!!やめなさい!」
母・久恵が叫ぶー
「それ以上やったら、死んじゃう!」
久恵の言葉に、直美は「こんなやつ、死ねばいいのよ!」と、
怒りの形相で言い返すー。
しかしー
瀬奈はさっき投げ捨てた包丁が近くに落ちていることに気付いて
それを直美の腕に突き刺すと、
直美は悲鳴を上げて床を転がりまわったー
瀬奈が倒れ込んだ直美に包丁を突き刺そうとするー
その目は、もはや正気を失っているー
直美は「ーー妹の癖に…!と、怒りの形相で瀬奈を見つめるー。
そこに、もはや絆など、存在しなかったー
”素晴らしいー”
キズナ芸術家の龍之介は笑うー。
人の絆は、いとも簡単に壊れるー。
両親が毎日喧嘩を繰り返す家庭で生まれた龍之介は
”人間の絆など幻想”と、そう固く思い込んでいるー
少し、刺激をすれば、壊れるー。
そう、壊れるのだー。
そして、その壊れる様こそ、美しいー。
「ーーーくくくくくく…」
龍之介の”精神”は、とっくの昔に崩壊しているー
互いを憎しみ合いー、
最後にはー目の前で父親が母親を殺したー
その、時にー
「ーーー!!!!」
モニターを見つめながら龍之介は表情を歪めるー。
母親の悲鳴と姉妹の罵声を聞いてー通報を受けた警察官が
入り込んで来て、姉の直美を刺そうとしていた瀬奈が
取り押さえられるー。
その際に瀬奈が落とした包丁を拾って直美が
叫びながら瀬奈に突進ー
瀬奈を刺したあとにすぐに警察に取り押さえられてー
二人とも連行されたー
瀬奈も直美も助かったものの、
ずたずたに引き裂かれた絆はもう戻らないー
二人は、病院でも警察でも相手を罵倒する発言を繰り返しー、
母親の久恵は、二人の豹変に気を病んでしまったー。
”ーーーはぁぁぁ…素晴らしいものを見せてもらったよー”
そう呟くと、キズナ芸術家の龍之介は、
笑みを浮かべながら、数日前に見つけた
次のターゲットの写真を見つめながら
笑みを浮かべるー。
”わたしたち、ずっと友達だよー”
そんなことを言っていた三人組の仲良し高校生ー
「そうかそうか、ずっと友達かー」
キズナ芸術家・龍之介はニヤリと笑うー
「ーーーそんな絆を壊したらー
さぞ、ゾクゾクするだろうなー」
龍之介はそう呟くと、
壊れ切った姉妹がこの先どうなるのかを見届けることなくー
”次の遊び”を始めたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
「崩壊した姉妹編」なんて後日談も書けそうですネ~!
(※まだ未定デス!書くとは言ってません~ 書けそう★なだけデス~)
ここまでお読み下さりありがとうございました~!!
コメント