大学生の姉と、高校生の妹ー。
二人はいつも仲良しだったー。
しかし、そんな仲良し姉妹の絆を”破壊”しようとする悪意が
近付いていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーも~!お姉ちゃん!揶揄わないでよ~!」
顔を赤らめながら高校生の妹・瀬奈(せな)が笑いながら言うー。
そんな妹の反応を見て、
大学生の姉・直美(なおみ)は、
「ーいいじゃん~!クリスマス、一緒に過ごすんでしょ?」
と、揶揄うようにして言うー。
「ーーう…うん…まぁ…」
少し顔を赤らめながら答える瀬奈ー。
瀬奈には、数か月前に初めての彼氏ができたー。
そのため、クリスマスは一緒に過ごすのかと、姉の直美が
聞いていたのだー。
「ーーやっぱり!!
せっかくなんだし、楽しんできてね!」
姉の直美がそう言い放つと
妹の瀬奈は「うん!ありがとうお姉ちゃん!」と
穏やかな表情を浮かべたー
母親の久恵(ひさえ)が、そんな二人の様子を
台所で作業しながら見つめるー。
姉・直美と妹の瀬奈は小さい頃から
いつも仲良しだったー
それぞれ大学生・高校生になった今も、それは変わらないー。
姉の直美は明るく誰からでも頼られるようなお姉さんタイプー。
人を揶揄ったり、悪戯するような一面も併せ持つもののー
”引き際”と”超えてはならないライン”をしっかりと把握していて、
人を傷つけるようなことはしないー。
妹の瀬奈も明るいタイプで、周囲に甘えるような妹タイプ。
と、言っても男子に媚を売るようなタイプではなく、
同性の先輩からも可愛がられるようなタイプだー。
そんな二人は、
今までも、そしてこれからもきっと、
固い、姉妹の絆で結ばれ続けるー
はずだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
休日ー
久しぶりに姉の直美と妹の瀬奈の二人で
買い物に出かけていたー。
「ーー彼氏のクリスマスプレゼント選びって言われても~
わたし、彼氏いたことないよ!?」
笑いながら直美が言うー。
「お姉ちゃん、絶対モテると思うんだけどなぁ~」
瀬奈がそう言いながら、
彼氏の一樹(かずき)が喜びそうなものを探すー。
「ーう~ん…どうなんだろう~?」
姉の直美が微笑むー
直美は、容姿もとても整っていて、
穏やかな美人、という感じであるものの、
恋愛に対して積極的ではなくー、
”引き際”を、大事にしてしまうタイプ故か、
彼氏ができるまでに発展したことはなくー、
また男子の方も、直美が人気者すぎて、
”俺なんかじゃ”となってしまってー
なかなか恋愛方面は上手く行っていなかったー。
と、言っても、姉の直美自身は
今は”積極的に恋愛したい”というタイプではなくー、
特にそれを気にしておらず、
勉強と趣味に打ち込む日々を送っているー
友達自体は妹の瀬奈以上に多くー
交友関係自体はとても広いー。
「ーーお姉ちゃんが一緒にいると、安心するからー」
瀬奈が、”彼氏のクリスマスプレゼント選び”に
姉の直美を誘った理由をそう口にすると、
直美は「瀬奈は昔から、甘えん坊なんだから~」と笑いながらも
頼られたことを嬉しそうにしていたー。
彼氏のプレゼント選びを楽しそうにしながらー、
やがて、お昼になると偶然見かけた近くのスイーツ店に
二人で入っていくー
「ーーーーー」
そんな様子を、一人の男が見つめていたー。
”人間の絆は、芸術ー”
キズナ芸術家を名乗る怪しげな男、
松原 龍之介(まつばら りゅうのすけ)ー
「ーーー美しいー。美しいぞー」
龍之介は興奮しながら、
直美と瀬奈の姉妹を見つめるー。
彼は、”人と人の絆に芸術を見出し”
芸術家となった男ー。
スイーツ店の窓際に座った二人を
突然、画用紙を取り出し、描き始めるー。
「ーーおぉお…おぉぉぉぉ…」
学生時代、美術部に所属し続けた経験を活かしー、
直美と瀬奈の二人を綺麗に描くと、
「次は君たちで、芸術の花を咲かせることに決めたよー」と、
笑みを浮かべるー。
”桜”ー
桜が一番美しいのはいつだろうかー。
答えは、人によって違うだろうー。
桜が咲き始めた頃ー
桜が満開を迎えた頃ー
桜が吹雪となって散る頃ー
桜が枯れ木となった頃ー
美しいと感じるタイミングは
人によって違うー。
彼ー…龍之介は
”桜が散る瞬間”にこそ、一番の美しさを感じるし、ゾクゾクするー。
そう、キズナ芸術家を自称する彼が
一番”キズナ”に美しさを感じるのはー
その絆が引き裂かれる瞬間だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ーーーまたね~」
大学から出て来た姉の直美ー
その前に、突然キズナ芸術家・龍之介が姿を現すー
「ーー初めましてー」
龍之介がそう声を掛けると、
直美は少し警戒した様子で「…え…?あ、はいーはじめましてー」と
頭を下げるー。
「ーどちら様ですかー?」
直美が首を傾げながらそう言うと、
龍之介は笑みを浮かべながらー
直美のほうを見つめたー
そしてーーー
目を赤く光らせたー。
「ーーー!!!!」
その目を見つめた直美の目も一瞬、赤く光るー
「ーークククー
これから君は妹を憎むんだー。
妹の全てをー
いいね?」
龍之介がそう言うと、
直美は「はいーー…」と、頷くー
「妹ーー確か、瀬奈ちゃんだったかなー?
瀬奈ちゃんのこと、どう思うか言ってごらんー?」
龍之介がそう言うと、
直美は「瀬奈はー…ウザい妹ですー」と、答えるー
「そう。そうだよー
君は妹を憎んでいるー
その憎しみを徐々に強めていきなさいー」
「ーーはい」
直美が”洗脳”の術中に陥ったことを確認すると、
龍之介は笑みを浮かべながら立ち去っていくー
「あ、直美~!」
背後から直美に声を掛ける友達ー
「今の誰~?」
友達がそう言うと、振り返った直美は
いつものような笑顔を浮かべながら
「え、あ~、大学に用があったみたいで、
事務室の場所を聞かれて~」と、微笑むー。
「あ、なんだ~彼氏かと思った~!」
友達が言うと、直美は
「彼氏~?そんなまさか~!わたし、彼氏いないの知ってるでしょ~」と
笑いながらその友達と、いつものように歩き始めたー。
”ククククー
さて、次はー”
そのまま妹・瀬奈の高校に向かう龍之介ー。
今日は瀬奈が部活で遅くなることを調査済みであったため、
”先に”大学から出て来る姉の直美のほうを洗脳したー。
そして、次は妹の瀬奈だー。
だがー
「ーーーーーーー…」
龍之介は”今日”瀬奈を洗脳することを諦めたー。
何故ならー、彼氏の一樹とずっと一緒で、
瀬奈の家の前まで一樹が一緒に帰ってきたため、
”洗脳”するタイミングがなかったのだー。
「ー俺、明日は帰りに友達と買い物に行くからさー、
明日は一緒に帰れないかもー」
一樹がそんな言葉を口にしているのを聞いてー
”まぁいいー君の洗脳は明日にしてあげよう”と、
笑みを浮かべたー
今日はー”姉だけが妹を憎むー”
そんな環境でも、悪くないー。
キズナ芸術家・龍之介は笑みを浮かべながら
今日は姉の直美の方だけを洗脳して
そのまま立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーただいま~~!」
妹の瀬奈が帰宅すると、
姉の直美と母親の久恵がいつものように台所付近で雑談していたー
「あ、おかえりなさい」
母・久恵がそう返事をするー
「ーーー」
だが、姉の直美は露骨に不快そうな表情を浮かべると、
「ーー今日も遅かったね~」と、笑みを浮かべたー。
「ーーあ、うんー部活だったからー」
瀬奈が笑いながらそう言うと、
直美は「彼氏とヤッてたんじゃないの?」と、少し嫌味っぽく言うー。
「ーーえ…?いきなり何を言い出すのー…?」
瀬奈が戸惑いの表情を浮かべるー。
しかし、すぐにいつもの調子に戻って、
「違うよ~!
ほら、いつもの手芸部の活動で~」
と、そう答えると、
直美は「ふ~ん」と、呟いたー
「ーでも、今も彼氏と一緒だったよね?」
妙に突っかかって来る直美ー。
「ーーそ、そうだけどー…」
瀬奈が少し不安そうにそう返事をすると、
「そうやってさ、男子に媚を売ってさー、
楽しいわけ?」と、直美は棘々しさを前回に
瀬奈に言葉を投げかけるー
「ーそ、そんなことーしてないもん!」
瀬奈は頬を膨らませて、少し苛立った様子を見せるー
「ー彼氏がいないわたしへの自慢もいい加減にしてくれる?
そういうの、うざいんだけど」
直美はうんざりした様子で、少し乱暴に机を叩くと、
そのまま自分の部屋に向かってしまうー。
「えっ!?ちょっと!お姉ちゃんー!
わたし、自慢なんてしてないよ!
ねぇってば!」
部屋に向かう直美に対して慌てて言葉をかける瀬奈ー。
母親の久恵も困惑した様子を浮かべているー。
瀬奈が呼び止めても、直美は立ち止まることなく、
いつもより乱暴に部屋の扉を閉めて
そのまま部屋から出て来なくなってしまったー。
「ーーお、お姉ちゃんー…何かあったのかなー…?」
瀬奈が困惑した様子で呟くと、
母の久恵は「なにか嫌なことでもあったのかもねー…
しばらくそっとしておいてあげたら?」と、
そんな、アドバイスを送ったー。
やがて、晩御飯の時間になると、直美はいつものような様子で
部屋から出てきて、食事を食べ始めたもののー、
妹の瀬奈とは一切口を利かず、
母親の久恵とだけ話をしている状態が続いたー
「お、お姉ちゃんー…!」
そんな様子に耐えかねて、瀬奈は勇気を振り絞って声を掛けると、
笑顔で母親と話をしていた直美が、突然笑顔を消して
瀬奈のほうを見つめたー。
「なに?」
露骨に不機嫌そうな声ー
”キズナ芸術家”を名乗る怪しげな男に姉が洗脳されてしまったなどとは
夢にも思っていない瀬奈は、
自分が何か悪いことをしてしまったのではないかと不安に思い、
謝罪の言葉を口にするー
「ーーお…お姉ちゃんの気に障るようなことー
何かしちゃったならー、ごめんねー…
だからー…機嫌直してー…?」
瀬奈がそう言うと、直美は不満そうな表情を浮かべるー
「ーーーーそういうのも、ウザいんだよね」
直美が箸を少し乱暴に置くと、
「ーわたし、瀬奈のこと可愛いと思ったことなんて、一度もないから」と、
敵意を剥き出しにして言うー。
「ちょっと、直美ー…やめておきなさいー」
母親の久恵が見かねて声を掛けるー。
「ーごめん、お母さんーー少し静かにしてて」
”洗脳された直美”は、母親の言葉でも止まらなかったー
「ーーブスのくせに生意気だって言ってんの!」
直美が攻撃的な言葉を投げかけるー
瀬奈は決してブスではなくー
可愛い部類に入る容姿であるもののー
今の直美からしてみれば、そう言わずにはいられなかったー
「ーな…なんでそんなこと言うのー…?」
瀬奈が目に涙を浮かべるー
「ーうわっ!出た!そういうのー!
何でも泣けば済むと思ってる!
あ~~~~~うざい!」
イライラした様子の直美ー
「ーーーーーうぅぅ…酷いよお姉ちゃんー」
涙を流しながら俯く瀬奈を見て
直美はさらにイライラを膨らませると、
「そういうのウザいって言ってるんだよ!」と、
コップに入っていた水を瀬奈の顔面に向かって放り投げたー。
「ーーーちょっと!直美!」
母親の久恵がたまらず口を挟むー
「ーごめんお母さんーもう今日は晩御飯いいや」
直美は怒りをこらえるかのようにそう呟くと、
そのまま自分の部屋に戻ってしまうー。
「ーーせ、瀬奈ー…き、気にしないでー
ね?お姉ちゃん、多分、大学で何かあっただけだからー」
久恵が慌てて瀬奈のフォローに入ると、
瀬奈は泣きながら何度も何度も頷いたー
やがてー、仕事から父親が帰宅するもー、
結局姉の直美は、瀬奈とは一言も口を利かないまま、
その日、1日が終わってしまったー
”素晴らしいーーー”
その光景を”洗脳した人間の視界”を読み取ると特殊な装置で見つめながらー
キズナ芸術家・龍之介は笑みを浮かべたー
そしてー
”明日にはー君も洗脳してあげるからねー”
妹・瀬奈の写真を見つめながら、龍之介は静かに微笑んだー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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狂気の芸術家に洗脳されて
崩壊していく姉妹の絆…!
続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!
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