<憑依>眼科医のめぐすり①~点眼~

その眼科医はー
”目薬”を利用して、自分の魂を他人に憑依させていたー

気に入った相手を
”自分の分身”にしていくためにー

・・・・・・・・・・・・・・・・

銀城眼科(ぎんじょうがんか)クリニックー

そこは、今日も大勢の患者さんで賑わっていたー。

院長の倉島(くらしま)は、
とても穏やかな性格で、的確な診察を行うと評判の先生ー。

「ーーこれは”結膜炎(けつまくえん)”ですねー
 目薬をお出ししておきますので、
 それでまずは様子を見るようにしてくださいー」

男性患者に対して優しく、ハッキリとした口調でそう説明すると、
倉島院長の言葉に、患者は「ありがとうございます」と頭を下げたー

「お大事にして下さい」
丁寧にー
丁寧にー
一人ひとりの患者をしっかりと見つめる倉島院長ー

だがーーー

「ーーーー!!!」

「よろしくお願いしますー」

次の患者が入って来たタイミングで、倉島院長は少し表情を歪めたー。

”こいつー……俺好みだー”

そう内心で呟きながら
倉島院長は「本日はどうなされましたか?」と
穏やかな口調で、患者の女子大生・絵里(えり)の症状を
質問するー。

絵里は目のかゆみと、目をこすると少し痛みがあることを告げると、
検査に使う器具で、絵里の目を確認するー。

すぐに可能性の高い症状を判断し、
丁寧に説明する倉島院長ー。

「ー目薬を処方しておきますので、
 それを2,3日使ってみて様子を見て下さいー」

倉島院長はそう言いながらー
心の中で笑みを浮かべるー

「ーーーお前は”俺”になるー」
とー。

表向きは穏やかな倉島院長ー。
しかしー、裏ではー

”ソール”

カルテにそう書き込む倉島院長ー。

”ソール”とは、この銀城眼科クリニックが
処方している目薬ー。

表向きは治療用の目薬だがー、
その実態は単なる目薬ではないー。

”クククー…”ソール”には俺の魂の分身が込められているー。
 この目薬を使えば使うほど、目から俺の魂がその相手に侵入ー
 やがて、徐々に憑依している俺の魂の量が増えてー
 最後には完全にその人間の身体を、支配するー”

”ソール”とは、”ソウル”、
つまり、魂ー。

倉島院長は”分身”を特殊な方法で目薬に混ぜてー
そして、それを”気に入った”患者に処方しているー。

「ーーーーーお大事にして下さいねー」
倉島院長が何食わぬ表情で絵里にそう言い放つと、
絵里は何も知らずに「ありがとうございました」と、
そのまま立ち去って行ったー

ニヤッと笑みを浮かべる倉島院長ー。
その横に立っていた女性看護師も倉島院長と同じ笑みを浮かべるー。

そうー
この銀城眼科クリニックのスタッフはー
既に全員、”ソール”を通じて目から魂を侵入させてしまい、
憑依されているー。

”この病院の女どもは全員この俺の忠実なるしもべー
 いやー、俺そのものと言うべきかー”

倉島院長は心の中でそう呟くと、
「それでは次の方ー」と、何も悪意を感じさせない声で
待合室の方に向かって呼びかけたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した絵里は
”何も知らずに”
貰った目薬ー”ソール”を点眼していくー。

「ーーー早く治るといいなぁ…」
そんなことを思いながら、何も知らずに
普通の生活へと戻っていく絵里ー。

”1滴”では足りないー。

だが、絵里の中に、”男の分身体”が、
入り込んだのは事実ー

今はまだ、絵里の精神が主導権を握っているー。

しかし、この目薬の点眼を続ければ、
やがて、”身体の支配者”は逆転するー

どちらがこの可愛い身体の支配者なのかー
絵里が思い知る日が来るー。

”ククククー…
 俺の魂がどんどん増えて行けばー
 お前の身体は、俺のものだー”

絵里の目に点眼された最初の一滴ー。
そこに潜んでいた魂は明確な自我を持ちー、
絵里を侵食し始めていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー最近、記憶が飛んでるー?
 大丈夫かー…?」

不安そうに言葉を口にする
男子大学生ー。

彼はー、絵里の彼氏である
尾口 浩明(おぐち ひろあき)ー。

絵里から”最近記憶が飛んでることがあるー”と
相談されたのは、
絵里が銀城眼科で目薬”ソール”を処方されてからー、
1週間ほどが経過したタイミングだったー。

「ーーう、うんー…
 なんか、そう感じることが多くてー」

絵里がそう言うと、浩明は
「少し疲れてるんじゃないか?」と、心配そうに
絵里のほうを見つめるー。

「それだけならいいんだけどー…」
なおも心配そうな絵里ー。

その表情を見て、浩明は絵里が
”単に疲れているだけではないのかもしれない”と、
絵里の強い不安を感じ取るー。

「ーーーーー」
浩明は考え込んでから、
しばらく様子を見て、症状が悪化するような病院に
相談した方がいいんじゃないか?と、提案したー。

「もしあれだったら、俺も絵里と一緒に
 付き添いで病院に行くからさー」

そんな彼氏の言葉にー、
絵里は安堵の表情を浮かべたもののー

その”原因”には気付くことはできずー
その夜もまた、目薬”ソール”を点眼してしまったー

「へへへへ…だんだんと、この身体が俺のものになっていくのを感じるー」
絵里がニヤッと笑うー。

そして、目薬を手にすると、
それを何滴も何滴も点眼していくー

「ひひひひひっ…あぁ…”俺”の身体になって行くのを感じるー!」

10滴ほど点眼を終えると、
「あまりヤリすぎると、目がイカれるからなー」と、
絵里はニヤニヤしながら今日はここまでにして目薬を閉じるー。

最初はー
絵里の身体を支配することはできなかったー。

だが、一滴一滴ー、
男の分身体の一部が、絵里の中に徐々に増えていくにつれてー
絵里を支配することができる時間が、増えたー。

これからー、
今では、大学から帰宅したあとの時間の大半を
支配することが出来ているー

「ーーぐへへへへへ…」
絵里が下品な笑みを浮かべながら
自分の胸を触り始めるー

履いていた黒いタイツを、顔を赤らめながら
引きちぎると、露出した肌を見て
「うっひひひひひひひ♡」と、その場所を
触り始めるー。

彼氏からちょうどスマホに連絡が入るー

しかし、今の絵里はー
”そんなものには興味がない”ー。

彼氏からの連絡も無視して、
やがて、自分の破れたタイツと生足をペロペロと
舐めまわしながら、心地よさそうに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー
眼科に再び絵里がやってきたー

「ー本日は、どうされましたか?」
院長の倉島先生が、いつものように穏やかな笑みを
浮かべつつ、そう言葉をかけると、
絵里はニヤッと笑みを浮かべてー
倉島院長にキスをしたー

女性看護師たちは、満面の笑みでそれを見つめているー

「よぉ、”俺”」
絵里が倉島院長にそう言うと
倉島院長も「よぉ、どうだその身体はー」と、
絵里の支配がほぼ完了したことを確信して、
笑みを浮かべるー。

「ー最高だぜ…特に喘ぐ声がなー」
絵里がそう言うと、倉島院長はニヤニヤしながら
「へへー…なら、今週中にその声、録音して送ってくれよ」と、
言葉を口にすると、
絵里は「へへ…言われなくてももう準備してあるさー 
”俺”が何を欲しているか、”俺”には分かるんだからなー」と、
自分の喘ぎ声を録音したUSBメモリを、倉島院長に差し出すー。

「ークククー流石は”俺”ー
 物分かりが早いー」

倉島院長がそう言うと、
絵里は「ホント、エロイ声だから、仕事中に聞くんじゃねぇぞ?」と
ニヤニヤしながら笑うー。

「ーー分かってるさー」
倉島院長はそう言うと、一応絵里の目を診察しー、
”今度は、ちゃんと治る目薬を出しておくぞ”というと、
”分身させた魂”を封じ込めた目薬・ソールではなく
普通の目薬を絵里に処方するー。

「ーへへ…どうもー。
 で、こいつの後は、もう誰か獲物は見つけたのか?」

絵里が診察室の出口に向かいながらそう言うと、
倉島院長は「ーそいつの後に、二人、ソールを処方したー」と、
笑みを浮かべながら告げたー

「ーははは、流石は俺だー。
 今度また”俺パ”するかー」

絵里が言うと、倉島院長は「あぁーそうしよう」と、頷いたー。

診察室の外に出る絵里ー

”俺パ”とは、
俺たちのパーティー…
つまり、倉島院長や絵里、
”俺”になった人たちで集まって色々お楽しみをする集まりだー。

定期的に開かれていて
”俺”になった色々な身体がやってくるー
そういう集まりだー。

「ーーーは~~エロイ身体同士で早くキスしてえなぁ…」
絵里は小声でそう呟きながら、
静かに笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

絵里の彼氏・浩明は強い不安を感じていたー。

彼女の絵里の様子がここ最近、おかしいからだー。

”最近、記憶が飛んでいる”

そう、相談されたのは少し前のことー。

だがー、
ここ最近は妙に元気になり、
”記憶が飛んでるって話はー?”と確認しても
”もう治った”の一点張りだったー。

それどころか、何だか絵里から距離を置かれているようなー
そんな感じもするー。

デートの予定も急にキャンセルされてしまったし、
今まで以上におしゃれにー…

いや、何というか色っぽくー…
そう、エロくなったような、そんな気がして、
浩明は強い不安を感じていたのだー。

「ーなぁ、絵里ー…最近…何かあったのか?」

そんな日が続いたある日ー
浩明は絵里にそう確認したー

”既に”
絵里は、絵里ではなくなっているー

絵里の身体と、記憶を引き継いだ”別人”になってしまっているー。

しかし、そんなこと、夢にも想像していない浩明からすれば
”絵里の様子が何だかおかしい”ぐらいにしか、考えることは
できなかったー。

「別に何もー」
絵里は浩明の言葉を不真面目そうな雰囲気を出しながら聞いているー

「ーーー…で、でも、最近何だかー」
浩明がそう言うと、
絵里は「あ~~~…なんかーーうるさいねー」と、
笑いながら浩明のほうを見つめるー

「え…?」
少し困惑した表情を浮かべる浩明ー

「ーどうした? どうした? どうした?
 大丈夫か? 大丈夫か?

 ーーーってさ、
 あんた何なの?しつこいんだけどー」

絵里が強い口調でそう言うと、
浩明は「ご、ごめ…そんなつもりじゃー」と、
不安そうな表情を浮かべるー

「もういいよー。別れよっか」
笑う絵里ー。

”憑依された絵里”は分かれる口実を探していたー

「え……」
呆然とする浩明ー。

「ーーえ…な、何で…!?どうして!?」
浩明がそう言い放つと、
絵里は笑みを浮かべたまま言い放ったー

「だってーー好きじゃなくなっちゃったんだもんー
 それ以外に、理由、必要?」

絵里の冷たい言葉に、浩明は凍り付くー。

「ーーえ…絵里……
 ー俺が何かしたって言うなら、謝るからー…

 体調のこと、何度も聞いたのはごめんー
 絵里のことが心配だったからー…

 で、でもー、絵里がもう嫌ならー
 聞かないようにするからー」

浩明が吐き出すように言葉を言い放つと、
絵里はクスッと笑ったー

「ーーーーーいいから、いい加減、うざいから、消えてー」

そう、言い放ちながらー

浩明が、悲しそうな表情を浮かべながら
次の言葉を口にしようとしたその時だったー

「ーーうっ…!?」
絵里が突然ビクンと震えて、目のあたりを抑え始めるー

「ーーうっ…ぁ?????ぁ… なんだー…こいつ、まだー!?」
苦しそうな声をあげる絵里ー。

「え、絵里!?」
困惑する浩明ー

「ひ、ーーー浩明…ごめ……んーーー
 わたしにもう……関わらないでー」

絵里が苦しそうにしながらそう言うー。

”別れの言葉”であることには変わりはないー。
だが、さっきまでトーンが違う気がするー

そう思いながら浩明が「ど、どういう意味だよー?」と、
聞き返すと、絵里は
「これ以上ーーーーいっしょにいたらー
 浩明のこと、傷つけーーーーちゃうかも」と、
苦しそうに叫んだー

心配する浩明を押しのけて、そのまま逃げるように立ち去っていく
絵里を見て、浩明は呆然とすることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くそっ!!!この女ー!まだ完全に支配できてなかったのか!」

”しぶとい女だー”

そう思いながら、帰宅した絵里は
怒りの形相で、目薬”ソール”を再び目に点眼すると、
血走った目で鏡を見つめたー

「ーこの身体はもう俺のものなんだよー
 無駄な抵抗はやめなーーーー」

不気味な笑みを浮かべながらそう呟いた絵里はー
彼氏の浩明に対して改めて”お別れ”のメッセージを送ると
スマホを放り投げて不愉快そうにため息をついたー。

②へ続く

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今日と明日は、私自身は都合上、不在なので
いつもと違う時間帯に更新しました~☆!

明日の分は予約投稿してあるので、
更新自体は毎日更新が続きます~!☆

明日もぜひ楽しんでくださいネ~!

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