<入れ替わり>絶対に元に戻りたい彼氏と絶対に元に戻りたくない彼女①

とあるカップルが入れ替わってしまったー!

彼氏の方は”絶対に元に戻りたい”と考えている一方で、
彼女の方は”絶対に元に戻りたくない!”と言い出してー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同じ大学に通うカップルー

手島 雅夫(てじま まさお)と、
綾瀬 里奈(あやせ りな)ー。

二人は、小さい頃からの知り合いで、
高校は別の高校に通っていたものの、
大学で偶然再会を果たしー、
幼馴染から恋人同士に、その関係性も変化したー。

恋人同士になってからも、二人の関係性は変わらないままで、
とても仲良しで、喧嘩もしないー
そんな、状態が続いていたー。

幼馴染の間柄でありながら、
雅夫は里奈と喧嘩をしたことが一度もないー。

いやー
それだけじゃない。
里奈が誰かと喧嘩をしたり、言い争いをしている姿を
一度も見たことがないー。

それもそのはずー
里奈は”何でも我慢してしまうタイプ”で、
自分の悩みや、弱い部分を人には一切見せようとしないタイプー。

それ故に、高校時代には
無理をしすぎて倒れてしまったこともあるー…と、
里奈の友人から聞かされたことがあるー。

ギリギリまで無理をして、
周囲にそれを悟らせようとせずー、
限界を超えて一気にー…と、いうことだったらしいー。

”ーー手島くんが、里奈を支えてあげてー”

里奈と付き合うことになった時にー
里奈の高校時代の親友であるというその子からは
そんな風に言われたー。

だがーーー
まさかー
”二人の身体が入れ替わってしまう”
などとは、夢にも思わなかったー

そんな、現実離れした恐ろしいことが起きるなんてー

「ーーお待たせ~!ちょっと色々やることがあって遅くなっちゃったー!」

大学帰りー、里奈が慌てた様子で中から出てくると、
雅夫は「全然構わないよー」と、優しく言いながらも
「でも、あんまり無理しちゃダメだからな~?」と笑うー

「ーえ~全然無理なんてしてないよ~」
そう言いながら笑う里奈ー。

「ーーーホントか~?なんか顔色悪く見えるけどな~?」
雅夫が冗談を口にすると、
「ーわたしの顔は元々こういう色ですぅ~!」と、
少しムキになった様子で里奈が言い返してきたー

幼馴染である故に、恋人同士になってからも
気軽に色々と言い合える仲ー。

いつもー
大学から里奈の家まで二人で帰りー、
そこから一人雅夫が家に帰るー。

里奈の家はちょうど大学と雅夫の家の中間地点にあるためー
ほぼ寄り道せずに、一緒に帰ることができるのだー。

今日もー
いつものように何気ない雑談を交わしながら歩く二人ー。

「ーそういえば、大阪(おおさか)くんがね~」
里奈が同じ大学に通う仲間のことを話題に出すー

「あいつ、またそんなことやったのかよ~!懲りないなぁ」
大学の仲間の何気ない話題で盛り上がる二人ー。

その時だったー

「ーーきゃっ!?」
背後を歩いていた里奈が声を上げるー

「ーえっ!?」
雅夫が振り返ろうとしたその直後ー
背後から里奈の身体が接触してきてー
そのまま、階段になっている道を降りようとしていた雅夫はー
里奈と共に階段を転がり落ちてしまったー

「ーーいてててて…だ、大丈夫か!?ーーって…えぇっ!?」
声を上げた里奈が表情を歪めるー。

すぐに反応した雅夫が「えっ…!?」と困惑の表情を浮かべるとー
二人とも”えっ…!?”と、自分の身体のほうを指差してー

絵に描いたような展開で、二人は入れ替わってしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

里奈の家までやってきた二人は、
とりあえず里奈の家に入るとー、
里奈の家の中で状況の整理を始めたー

大学生になってお互い一人暮らしをしていて、
互いの家を訪れたことも何度もあるため、
里奈の家の中に入ること自体は、
別に珍しいことではないー。

家に入った二人はー
「ど、どういうこと…?」と混乱した様子を見せるー

「ーーー……ど、どういうことってー…
 見ての通り…だよなー?」

里奈になった雅夫が言うと、
雅夫になった里奈が「そ、それは分かるんだけどー…どういうこと?」と
今一度繰り返したー

「ーあ…あれだよー…よく映画とかアニメとかでやってるやつー
 そう…い、入れ替わりー?」

里奈(雅夫)がそう言うと、雅夫(里奈)は困惑した様子で
「そ、それは…それは!分かってるよ!けどー…どうして?」と、
言葉を口にしたー

「ー現実で、こんなことが起きるなんてー…」
戸惑った様子の雅夫(里奈)ー

そうー”入れ替わり”のことは理解できるー。
だが、何故それが現実で起きたのかー
いや、むしろ現実でこんなこと本当に起きるのかー
それが、分からないー。

里奈になった雅夫も、そんな風に思いながら困惑するー。

だが、このままずっと困惑しているわけにもいかないー。
里奈と雅夫は改めて状況を整理するー

里奈は後ろから誰かに押されたのだと言うー。
そして、前を歩いていた雅夫にぶつかり、
そのまま二人で階段を転落ー。

里奈を押した人物は、
里奈自身も確認することができなかったため、”不明”のままー

「ーーわたし…何か恨まれるようなこと、したかなー…?」
入れ替わってしまったこともそうだったが、
”誰かに押された”ということに、雅夫(里奈)は
怯えたような表情を浮かべていたー

「里奈を恨むような人はいないと思うケドー」
里奈(雅夫)がそう言いながら
雅夫(里奈)が手をガクガクと震わせていることに気付くー。

”里奈ー…”

里奈は何でも自分で抱え込んでしまうタイプー
口にはしないが、今の状況を、心底怖がっているように見えるー。

とにかく、里奈を安心させてあげなくてはならないー

「ーでも良かったよー」
里奈(雅夫)がそう言うとー、
雅夫(里奈)が「え?」と首を傾げるー

「いや、だってほらー、お互いあまり知らない相手と入れ替わるよりー
 俺と里奈ならー、何でも知ってるようなもんだしー…
 色々なこと、心配しなくていいだろ?」

里奈(雅夫)が言うー。
雅夫(里奈)は「た、確かにーそれはそうだね」と、頷くー

「それに、後ろから里奈を押したってやつがー
 もし里奈のことを恨んでいたんだとしても、
 俺が中身のうちは、そんなやつが来たら  
 やっつけてあげるしー、
 少なくとも、里奈が俺の身体のうちは
 心配しなくてもいいと思うしー」

里奈(雅夫)の言葉に、
雅夫(里奈)は、頷くとー、
少しだけ目から涙をこぼしたー

「え…」
里奈(雅夫)が少し戸惑うー

急に泣かれたのもそうだったがー
”自分の姿”で急に涙をこぼされると
何だか妙な気持ちになるー。

「ーーあ…ううんー
 雅夫、優しいなーって」

雅夫(里奈)が言うと、
里奈(雅夫)は「今更気付いたのか~?」と笑いながら
雅夫(里奈)の肩を優しくポンポンと叩いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”元に戻るための方法”をー、
思いつく限り、その場で試したー

赤い糸やー
キスー
手を繋ぐー
ぶつかるー

色々試してみたが、ダメだったー。

「しかしまさかー、俺とキスをすることになるなんてー」
里奈(雅夫)が困惑の表情を浮かべていると、
雅夫(里奈)も「う、うんーーわたしもびっくり」と、
”目の前の自分の顔とキスした瞬間”を思い出しながら
雅夫(里奈)は少しだけ顔を赤らめたー。

「ーー周囲に入れ替わりなんて、言っても信じてもらえないと思うケドー…
 どうしようかー」

里奈(雅夫)がそう言うと、
雅夫(里奈)は「ーー…このままお互いのフリをして過ごす…とか?」と、
不安そうに提案するー

「ーーまぁ…俺も里奈もお互いのことは良く知ってるしー
 大学も同じだからー何とかなるとはおもうけどー…
 
 ………」

少し間を置いてから里奈(雅夫)は「まぁ、それしかないか!
明日になれば元に戻ってるかもだし」と、前向きな表情を浮かべたー

「今日、わたしの家に泊まってくー?
 あ、帰らないといけない用事があれば別だけどー」

雅夫(里奈)がそう提案すると、
里奈(雅夫)は「いやー…特にはないから、ここで泊まるよ」と、
里奈(雅夫)は頷くー。

こうしてー…
二人は入れ替わった状態のまま、その日を過ごすことになったー。

「ーーーーーそれにしてもー
 小さい頃からよく知ってる間柄でも、
 やっぱー……自分がいざその本人になってみると
 変な気分だなー」

里奈(雅夫)が苦笑いしながら言うと、
雅夫(里奈)は「う、うんー確かに…」と笑うー。

入れ替わった相手の性別が違うこともあってかー
余計にそう感じるし、
そもそも入れ替わる相手が同性だったとしても
やっぱり、色々な違いは感じると思うー。

身体の形が違う以上ー
手でモノを掴んだ時の感覚から、
歩く時の歩幅の感覚、
顔の手触りから、髪の感触ー
あらゆるものが異なるし、
食事をすれば味覚も違うー
寒さ・暑さの感じ方も違うー

人は、”自分の身体を動かすこと”しか本来は体験できないー
それが、まさかこんなことになるなんてー

「ーーー……そ、そういえば…トイレとかどうするー…?」
少し不安そうに里奈(雅夫)が確認すると、
雅夫(里奈)は「えっー」と、顔を赤らめながらも
少し考えてから
「今更そんなこと遠慮する間柄じゃなくない…?
 ーーっていうかー…トイレ行かないわけにも行かないしー」
と、雅夫(里奈)は少し恥ずかしそうに答えたー

「だよなー…オムツ履いとくわけにもいかないしー」
里奈(雅夫)はそう言うと、
「ー…その…ごめんなー…お風呂とかトイレとか着替えとかー」
と、先に申し訳なさそうに謝っておくと、
「ううんー…そんなこと、謝らないでー…謝るのはわたしの方だからー」
と、雅夫(里奈)は首を横に振りながら呟いたー

「いやいやいや、悪いのは里奈を押したやつだしー。
 そいつを見つけ出して、
 入れ替わりの原因も突き止めてー
 必ず、元に戻れるようにするからー」

里奈(雅夫)は力強く、そんな風に呟くー。

「絶対に、元に戻すー。」

里奈のためにも絶対に元に戻りたいー!
そう思っていた雅夫は、里奈に対しても
そんな言葉を口にして、
里奈を早く安心させようとしたー。

だがー
雅夫(里奈)は頷きながらも
少し表情を硬くするー。

「そ、そんなに頑張らなくてもいいよー
 ほ、ほらー
 とりあえずわたしたち、お互いのことよく分かってるしー
 大学でも、何とかなるでしょ?」

里奈(雅夫)が、笑いながらそう言うと、
「ーははは、まぁー…その点は助かったけどなー」と、笑うー。

入れ替わり相手がもしも、全く知らない他人だったら
相当苦労することになるだろうし、
相手がもしも悪人や変態だったら最悪だー。

例えば、里奈と入れ替わるのが自分ではなく、
変体のおっさんだったりしたら、
里奈の身体で何をされるか分かったもんじゃないー。

その点、自分であれば、里奈の身体で変なことをしよう、
などとは思わないー。

「ーー………それにしてもー
 里奈の声で”俺”とか言ったり、”里奈”って呼ぶのー
 すげぇ変な気分だなぁ…」

里奈(雅夫)は少し恥ずかしそうに笑うー

「目の前に自分がいるのも変な気分だよね」
笑いながら雅夫(里奈)も言うー。

普段の自分の声とは違う声が自分の口から出るー
普段、鏡や映像でしか見ることがない自分の姿が目の前にあるー。

自分自身の姿なのに、自分は案外、自分のことを知らないー。
その表情も、その動きも、第3者視点として見ると、
”こんな感じだったのか”と驚かされるー。

「ーーーーあ、じゃあ、トイレに行ってくるー…
 えっとー……やり方はー…?」

里奈(雅夫)が、雅夫(里奈)から
トイレのコツを少し聞くと、そのまま
「あとは、実践あるのみー…だな」と、
苦笑いしながらトイレに向かっていくー

「ーーーー」

雅夫(里奈)は、里奈(雅夫)が、トイレに向かっていくのを見つめながら

「ーわたしは…元に戻りたくないなー」
と、静かに呟いたー。

絶対に元に戻りたいー…
彼氏の雅夫がそう思っているのとは真逆ーー

彼女の里奈は
”絶対に元に戻りたくない”
と、そうー
考えていたー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

題名が長いので、今回はサブタイトルナシで…★笑
(いつもは①、②のあとにサブタイトルがついてます~)

絶対に元に戻りたい彼氏とそうでない彼女…

今後もぜひ楽しんでくださいネ~!

今日もありがとうございました~!

コメント