<憑依>あなたは憑依されました①~ゲーム~

”あなたは憑依されましたー”

ある日、少女は精神世界で目を覚ましたー。

”自分の身体を取り戻すため”
男の挑んだ”ゲーム”に挑む少女の運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーえ…?」

学校から下校中だったはずの少女が
ふと気づくと、
そこは”いつもの通学路”だったー。

だがー、何かがおかしいー。

異様な気配を感じるしー、
”自分の意識”が何だか飛んでいたようなー
寝起きかのような感覚を感じるー

たった今ー…
ここに”いる”前後の記憶が、何故か曖昧だー

それにー

夕方にしては、”妙に”明るい気がするー。
昼間ー…いや、不自然な明るさだー。

「ーーーー…」

人の気配すらないー。
そういえば、いつも下校する時間帯には、
この場所は人で賑わっているはずだー。

しかしー
周囲を見渡す限りー…
”誰も”いないー

「ーえ……」

少女は戸惑い、近くのコンビニまで走るー。

コンビニの前にやってくるまでの間も
”誰とも”すれ違わずー、
車一つ、走っていないー。

不気味な明るさの中、コンビニの中に入るとー
入店を知らせる音だけが鳴り響きー…
中には、誰もいなかったー。

「ーあの…すみませんー!」
不安になった少女はカウンターの奥に向かって叫ぶー。

普通に店員が出てくればそれでいいー。
適当に何か買って帰ろうー、
そんな風に思いながらー。

しかしー、
どんなに待っても店員が出て来ることはなくー、
店の外にもう一度出るとー、
比較的普段は人通りが多い道のはずなのに、
”誰も”いなかったー。

「ーー…」
再びコンビニに戻る少女ー。

「あの!!誰かいませんか!?」
そう叫ぶもー、その声だけが不自然に響き渡りー、
誰も姿を見せないー。

「ーー…」
強まり続ける不安ー。

少女は、カウンターの奥の事務所に向かうー。
だがー事務所にすらー”誰も”いなかったー。

「ーーな…何なの…?」
不安でいっぱいになり、引き返して人を探そうとした
その時だったー。

事務所のテレビが突然写り出しー、
”自分”の姿が映し出されたー。

「えっ…?」
見知らぬ場所にいる”自分”

”自分”がニヤニヤしながら知らない男とキスをしているー。

「ーーーな…なに…これ…?」

戸惑うことしかできないー。
コンビニの事務所のテレビに映し出されているのは
間違いなく”自分”だー。

しかし、
彼女はこんなことした記憶はないし、
相手の男のことも分からないー。

胸を自分から触らせながら笑みを浮かべる”自分”ー

その顔はー
確かに”わたし”の顔なのに
自分でも見たこともないような、そんな、邪悪で妖艶な表情だったー。

「ー驚かせてすまないねー」
背後から声がしたー。

少女が振り返るとー、
そこには眼鏡をかけた男がいたー。

「ーー!あーーーあなたはー!?」
少女はそこまで呟くと、
このコンビニの店長かと一瞬思い、
勝手に事務所に入ってしまったことを
すぐに謝罪したー。

しかし、その男は笑みを浮かべながら
「あ、いやー私は店長ではありませんよー」と、首を横に振るとー、
「ーー永井 梓(ながい あずさ)さんーあなたは憑依されました」
と、男は言葉を続けたー

「え…ひ、ひ、憑依…!?」
梓が困惑しながら言うと、男は笑うー。

「えぇ…私があなたに憑依しましたー」
その言葉に、梓は「え…ど、どういうことですかー?」と、
困惑した表情を浮かべたー。

「ーーー簡単なことです。
 下校中のあなたに私は憑依したー。
 後ろから、あなたに声を掛けることもなく、シュッとねー。

 でー、憑依されたあなたは、私に身体を乗っ取られて
 意識を心の奥底に封じ込められた状態になっていますー」

男はそれだけ言うと、コンビニの事務所のテレビを指さすー

「そこにー”憑依された自分”が映ってたでしょう?」
男がそう言うと、
テレビには、椅子に座って口を半開きのまま虚ろな目をしている
梓の姿が映っているー

「ーーはは…ご安心をー
 今は私がこうして、”心の中”に赴いているので、
 身体は抜け殻のような状態になっているだけです」

男の言葉に、
梓は「ーーじ…じゃあ…ここは?」と、困惑の表情を浮かべるー

”憑依”の言葉の意味は知っているー。
そして、この男が梓に憑依したということはー
梓は”この男に乗っ取られている”ということー

そんな風に思いながらも、”憑依”に対する焦りよりも
”今、この状況は何なのか”が分からず梓は困惑していたー

「ーここは、あなたの意識が作り出した精神世界ー
 急に、身体を乗っ取られて行き場を失くしたあなたの心が
 脳の中に残るイメージを元に作り出した世界ですー。

 だからー”いつもの場所”が、再現されているー

 まぁ、人は誰もいないようですが」

男がそこまで言うと、
梓はここが現実世界でないことを理解して、
「わ、わたしをここから出してください!」と叫んだー。

だがー、男は首を横にするー

「ーあなたみたいな可愛い身体を手に入れたんですー
 返すと思いますか?」

男のそんな言葉に、梓は怯えたような表情を浮かべながらも
「返してー…!わたしの身体!」と言い放つー。

「ーーー」
男はしばらく考えた後に
「いいでしょうー。一方的に身体を乗っ取るというのは”フェア”ではないー」
と、呟くと、
「ー私は常に勝負ごとには”正々堂々”戦い、勝利してきたー」と、
言葉を付け加えたー。

「ーー”身体を賭けたゲーム”をしましょうー
 あなたが勝てば私はあなたに身体を返し、
 二度とあなたに近付かないと約束しますー。
 あなたに憑依することもしないー。」

男がそこまで言うと、梓は「わたしが…負けた場合は?」と
困惑の表情を浮かべるー。

「ーあなたの、身体を貰いますー」
男の言葉にゾクッと、恐怖心を覚える梓ー。

けれどー、梓は身体を震わせながらも
「ーーわたしが勝てば、本当に身体を返してくれるんですね?」と、
強い口調で確認したー

「えぇ。私は賭け事で嘘をついたことは一度もありませんー。
 誓いましょう」

言い切る男ー。

けれど、当然そんな言葉、すぐに信じることはできないー。

「ーーー疑ってますね?」
男がそう言うと、梓は頷くー。

「ー急に”憑依”だなんて言われてー
 こんな状況にされてるわたしがー…
 信じれると思いますか?」

梓が不快そうに呟くー。

男はにやりと笑うとー

「ーー…まぁ、それはその通りですねー。
 
 ですがー、誓いましょう。
 あなたに負ければ、私はあなたから離れますー
 絶対にー。

 私は”ゲーム”に命を懸けているー
 それで不正を働くなど、あってはならないー
 命を懸けて、誓いましょうー」

男のそんな言葉に、梓は困惑しながらも、
「ーー分かりました」と、頷くー。

立場的には圧倒的不利な状況であることには違いないし、
最終的には”信じる”ほかないのも事実だったー。

梓は、少し間を置くと「それで…ゲームってー?」と、
確認するー。

男は「ーそうですねー」と、コンビニの外に出て
周囲を見渡すと、
「ーー誰もいないこの街ー…心地よい」と、
笑みを浮かべるー。

そしてー、空気を吸ってから、梓のほうを見つめたー。

「ー町全体を使って”鬼ごっこ”をしましょうかー。
 あなたは私を捕まえれば勝ちー、
 逆に私はこの街のあらゆるものを使って
 あなたの”心”を潰しにかかるー。

 どうですー?」

男の言葉に、梓は
「ーータッチすれば、わたしの勝ちってことですか?」と呟くー

「えぇ。その通りですー
 簡単でしょうー?」

男はそう言うと、パチっと指を鳴らして姿を消すー

空から響き渡る男の声ー。

”ー申し遅れましたー。私は財前 卓(ざいぜん すぐる)ー
 これでも、裏社会では”カジノの帝王”と呼ばれているんですよー
 クククー”

卓はそれだけ言うと、

”ー町中があなたの敵ですー。
 あなたの心が折れて、あなたが消えればあなたの負けー

 その前に私を見つけ出してタッチすれば、あなたの勝ちー”

と、ルールを説明したー

「ーーー…ちゃんと、この街にーいるんですよね?」
梓が確認するー。

卓は”えぇ、いますともー。こんなゲームを挑んでおいて
”残念だったなぁ!私は最初からここにはいない!ハハハハ”なんてー…
イカサマですからねぇ”
とー、空から響き渡る声で説明したー

”それではー健闘を祈りますー
 まぁ、私は負けるつもりはありませんがねー”

それを最後に、卓の声は聞こえなくなったー。

昼間よりもー少し明るい不気味な無人の街を
走り回る梓ー

”憑依って一体何なのー?”

「ーーーー………」
立ち止まって周囲を見つめる梓ー。

”いつもの街並み”
けれど、そこに人はいないー。

昼間よりもちょっと明るい、不気味な明るさに
恐怖が芽生え始めた梓ー。

見慣れた街もー、
誰もいないと、こんなにも気味が悪いー。

駅ビルのスクリーンに、
梓が胸を揉んでニヤニヤしながら鏡を見つめている
映像が映し出されているー

「ほらほら、早く私を見つめないとー
 どんどんこの身体、堪能しちゃいますよぉ~?
 えへへへへへっ」

現実世界のー
”憑依された梓”の映像が映し出されているー。

「ーー…わ、わたしの身体で変なことしないで!」
梓が必死に叫ぶー。

すると、駅ビルのスクリーンの梓は笑みを浮かべながら
「ーだったら、ゲームに勝つことですー
 町全体を使った、わたしとの鬼ごっこにー」
と、挑発するような口調で呟いたー。

梓は震えながらも、街中を見渡すー

お昼の繁華街なのに”人がいない”
その光景は、何よりも不気味で、ホラーな光景だー。

まだ、これが夢なのではないかと思いながらー
数秒後には、スマホのアラームがなって
自分はベッドで目を覚ますのではないかと、
そう、思いながらー。

”ゲームとはーーー”

現実世界の”憑依された梓”が笑みを浮かべるー。
梓に憑依した財前 卓は、現実世界で梓の身体をー
梓の中の精神世界で、自分の精神体を動かしながらー、
”両方の視点”を見ているー。

「ーゲームとは、初手で相手の心をへし折ることが
 何よりも大切なのですー
 それをあなたに教えて差し上げますよー」

憑依された梓はクスクスと笑いながら、
梓の精神世界に”刺客”を送り込んだー。

梓の心を一発でへし折りー、
ゲームに勝利するー。

初手で相手を仕留めー、
反撃のチャンスも、心を立て直すチャンスも、
何一つ、与えないー。

精神世界ー。

梓が、卓を探し回る中ー
突然、背後から”音”がしたー。

この世界では、するはずのなかった音ー

梓が振り返ると、
そこにはーーー
赤いスポーツカーの姿ー

「えっ…」

ここは”わたしの精神世界”
目覚めた時からずっとそうだったようにー
他の人間は誰一人おらずー、
走っている車もないー。

ではー
あの車はー

梓は一瞬、”誰かが助けに来てくれた”と、
そんな希望を抱いたー。

一瞬笑顔を浮かべる梓ー。

けれど、その笑顔はすぐに消えるー

赤いスポーツカーは、梓目指して一直線に、
全速力で梓に突進してきたからだー。

「ーーーえっ…ちょっと待ーーーー

言葉を言い終える前に、
梓に赤いスポーツカーが激突ー

梓の身体はものすごい勢いで吹き飛ばされてー、
繁華街前の大通りに叩きつけられたー

「ーーぅ…… ぁ」
激痛を感じながら、誰もいないこの世界で空を見上げる梓ー。

血がーー
流れているー。

身体中が、痛いー

そう思いながら、梓は天を見上げるー

「クククククー
 もう、終わりですかー
 あっけなかったですねー」

卓は”梓が見える場所”から、梓のことを確認しながら、
静かにそう呟くと、
”これで、あなたの身体は、正真正銘、私のものー”
と、勝利を確信する笑みを浮かべたー。

梓の”心”を一撃でへし折ったー
これで、梓の精神体は消滅するはずー。

卓は、不気味な笑みを浮かべー
”ゲームオーバーです”と、静かに囁いたー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

いきなりの敗北…!?
これで”おわり”ではなく、明日も続きます~!

今日もありがとうございました~!

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