<入れ替わり>お兄ちゃんにバレちゃだめ①~驚き~

同級生の男子と入れ替わってしまった女子高生。

しかし…
入れ替わった彼女が真っ先に危惧したのはー

”お兄ちゃん”のことだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

高校2年生の西岡 愛華(にしおか まなか)は呆れ顔で
兄・良樹(よしき)の方を見つめるー

「うぉおおおおおおおおおおおお!!」

視線の先にはー
頭を抱えながら絶叫している兄の姿ー

「ーま、ま、愛華をこんな目に遭わせるなんてー
 絶対に許せない!!!!!!!!!!!!!」

良樹がオーバーリアクション気味にそう叫ぶのを見て
愛華は苦笑いしながらー

「あ、あの~~
 お、お兄ちゃんー???」

愛華の指には切り傷ー。
学校から帰宅して、母親に”絆創膏あったっけ?”と、確認した愛華ー。

それを少し離れた場所で聞いていた兄の良樹が
駆け寄ってきて、愛華の指を切り傷を確認しー…
今に至るー。

「ーーお兄ちゃん!お兄ちゃんってば~~~!」
愛華が兄の良樹に声を掛けながら
「お~~~い!」と、兄の目の前で手を横に振るー

「ーーうぅぅぅぅ…可愛い愛華に傷をつけるなんてー」
放心状態の良樹ー。

「ーーー…お兄ちゃんー…自分の世界に飛んでちゃったみたいー…」
愛華が苦笑いしながら言うと、
母の佐奈子(さなこ)は「ーー良樹にはわたしから説明しておくからー」と
笑いながら呟いたー。

愛華が指を怪我したのはー
”誰かにやられた”からではないー。
美術の授業中に画用紙を掴もうとした際に
ピッ、と切れてしまったことによる怪我でー、
誰もが時々経験する”紙で指を切ってしまった”というだけのことだー。

しかし、妹の愛華を溺愛している兄・良樹は、
愛華の指を怪我を見た瞬間に、絶叫して、
別の世界に飛んで行ってしまったー

そんな、状態だったー

愛華が部屋に戻ってからしばらくすると、
部屋をノックする音ー

「ーいいよ~!」
愛華がそう返事をすると、正気を取り戻した兄の良樹が
「そ、そのーさっきはごめんなー」と、
申し訳なさそうに言葉を口にするー

「も~お兄ちゃんってばー」
絆創膏を貼った指を見せながら
「美術の授業中に紙で切っちゃっただけだよ~」
と、照れくさそうに笑う愛華ー

「そ、そ、そうだよなー…
 ごめんー」

勝手に誰かにやられたと決めつけて
我を見失っていたことを、良樹が謝ると
愛華は「そんなに謝らなくてもいいってば」と笑うー。

愛華と良樹は、仲が悪いわけではなくー、
寧ろ仲良しだー。

兄の良樹は、妹の愛華のことを本当に大切にしていて、
そのことは愛華自身にもよく伝わっているし、
愛華本人も感謝しているー。

束縛をするようなことも絶対にしないし、
兄の良樹のことを、愛華は尊敬もしていたー。

しかしー

愛華に何かがあると、
良樹は我を見失ってしまう癖がありー、
その都度、愛華はそんなお兄ちゃんを見て苦笑していたー

「あぁぁぁ…代われるものなら、人差し指だけでも
 交換してあげたいー」

良樹がそう呟くー。

愛華は「大げさだよ~!別にもう痛みもないし」と、
指を見つめながら言うー。

「それにさー」
愛華は笑いながら良樹のほうを見るとー
手を広げて見せながらー
「わたしの手に、お兄ちゃんの人差し指だけつけたらー
 なんかー奇妙な見た目になっちゃうよ?」と、
笑って見せたー。

「ーた、確かにー…
 愛華に俺の汚ねぇ指なんかつけたら
 愛華が腐っちまうー」

良樹がそんな風に言うと、
愛華は「ーちょ…そういう意味じゃないんだけど~~」と、
苦笑いしながら、
「でも、まぁ、いつも心配かけてごめんねー」と、
愛華が兄のほうを見て申し訳なさそうにするー

それを聞いた良樹は、
少し嬉しそうに
「妹の心配をしないお兄ちゃんなんて、いないさー」と、
笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーーありがとうー」

クラスの男子生徒・若林 紀明(わかばやし のりあき)が、
愛華の方を見ながらそう呟いたー

「ーううんー全然、気にしないで」
愛華が笑いながら返事をすると、
紀明が照れくさそうに、言葉を口にするー。

紀明は、奥手な感じの男子生徒だがー
愛華と同じ図書委員に所属していて、
接点も多いことから、
愛華に対して、密かな好意を抱いているー。

しかし、奥手な紀明が愛華に告白できるはずもなくー、
一方の愛華は”誰にでも親切”なタイプで
紀明に対しても、特に恋愛感情があるわけではないー。

”同じクラスの比較的仲が良い方の男子”ぐらいの認識だー。

その上ー
恋愛関係にはかなり鈍いタイプだったので、
恋人同士に発展することもなくー、
そのままの状態が続いていたー。

今日はー
愛華は図書当番ではないー。

しかし、紀明と一緒に当番の予定になっていた
1年生が今日は欠席のため、
愛華が代わりに紀明を手伝っていたのだー。

「ーー困ってたら助けるのは当然だしー
 そんなに気にしないで?ね?」

脚立に乗って、返却された本の片づけをしている愛華ー

その近くで、紀明は図書室の掃除をしているー。

だがー
その時だったー

「あ…!」
脚立の上で背伸びをしていた愛華がバランスを崩して
脚立から転落しそうになるー

「ーーあっ!?えっ!?」
咄嗟のことに、紀明も愛華を助けようとしたものの、間に合わず
脚立から落ちて来た愛華に巻き込まれる形で、
図書室の床に倒れ込んでしまったー

「ーいたたたたたた…」
幸い、そこまで高い脚立ではなかったため、
大怪我をするようなこともなく、
すぐに紀明の方が立ち上がるー。

だがーー

「え…?」
紀明は表情を歪めたー

「ーーわ…わたしが…目の前に!?」
紀明の口から発される意味不明な言葉ー

「ーーえ!?!?何これ?ゆ、幽体離脱ー?」

紀明が、そう叫ぶー。

「え…でも、声がー!?」
そう呟いているとー、
愛華の方も少ししてから起き上がったー

「ーひっ!?わたしが勝手に!?」
紀明が意味不明な言葉をなおも口走ると、
愛華が自分の身体のほうを見つめながら
「えっ…!?え~~~~~~!?!?!?!?!?」と、
驚きの言葉を口にしたー

自分がスカートを履いていて、
ないはずの胸の膨らみとーー
長い黒髪が見えるー。

「ーー!?!?!?」
愛華と紀明が顔を見合わせてー
二人は、”自分たちに何が起きてしまったのか”を理解したー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーごめんなさいー」
愛華(紀明)が申し訳なさそうに言葉を口にするー

「ーーえ…??え???若林くんは何も悪くないでしょ…?」
紀明(愛華)が笑いながら言うー。

「脚立から落ちたの、わたしだしー…
 むしろ、巻き込んじゃってごめんなさいなのは、わたしの方だからー」
愛華(紀明)のそんな言葉に、
紀明(愛華)は「でも…僕が図書当番手伝ってもらったりしなければー…」と、
申し訳なさそうに、さらに言葉を続けたー

「ーーいいってば~そんなこと~…
 
 …なんかわたしの回りには、謝らなくていいのに、謝る人、多いなぁ~…」

紀明(愛華)が、兄・良樹のことを思い浮かべながら
そんな言葉を口にしたー。

がーー

そこでーー

紀明(愛華)が「あっ…やばっ…」と、表情を歪めたー

愛華(紀明)は、そんな反応を見て「えっ…?」と、
不安そうに言葉を口にするー

「あ~~ううんー…
 入れ替わっちゃったのは仕方ないとしてー…

 でも、このまま元に戻れないとー…
 その、何て言うかー…大変なことにー」

と、要領を得ない言葉を、紀明(愛華)が口にしたー。

「ーえ…??え…?ど、どういうことー?」

誰もいない放課後の図書室で話を続ける二人ー。

紀明(愛華)は、少し考えてからー
「ううんー…わたし、お兄ちゃんがいるんだけどー…
 もし”クラスの男の子と身体が入れ替わった”なんて言ったらー…
 大変なことになるなぁってー」
と、戸惑いの表情を浮かべながら、
愛華(紀明)に説明したー

「た、大変なこと?」
ゴクリを唾を飲み込む愛華(紀明)

”うぉおおおおおおおおおおおお!!!!
 愛華の身体を返せ!絶対許せねぇ!コロス!!!”

「ーーみたいなーー…」
紀明(愛華)が苦笑いしながら人差し指を立てて
兄のことを説明するとー

「ひぃっ…?」
と、愛華(紀明)は小さく悲鳴を上げたー

「ーだから、そうならないように元に戻る方法
 探してみよ!」

紀明(愛華)はそれだけ言うと、
”元に戻る方法”を色々と実践し始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人は、色々なことを試したー。

”元に戻る”ために、
元に戻れそうなことを二人で思いつく限り
色々と試したー。

けれどー…
元に戻ることはできなかったー

「あとはーー…」
紀明(愛華)は、そう呟くとー
「キスしてみたりとか?」と、笑いながら提案したー

「ぶっ…! き、き、き、き、き、きすぅ!?」
愛華(紀明)が顔を真っ赤にして、声を上げるー

「ーえっ!?ちょ、ちょっと!?
 そ、そんなにわたしの顔を赤くしないで?!」

紀明(愛華)が、”自分の顔”がまるで
リンゴのように赤くなっているのを見て
困惑の声を上げるー

「ーだ、だ、だ、だってー…!?えっ!?えっ!?」
愛華(紀明)が狼狽えているとー、
「ーあ~…汚いのとか、イヤだった?ごめんね?」と、
紀明(愛華)が申し訳なさそうに言葉を口にしたー

”えっ!?ち、ちがっ…!?え?なんか誤解されてるー!?”
愛華(紀明)が困惑していると、
「ーそ、そうじゃくて、なんか申し訳ない気がしてー」と、
叫ぶと、紀明(愛華)は、「元に戻るためのキスだからー
別にわたしは何も気にしないけどー」と、少し不思議そうに
首を傾げたー

愛華の心臓はドキドキしているのを感じて
愛華(紀明)は、それを意識してしまい、
さらにドキドキが強まるのを感じるー

”そ、そうだよー!
 何考えてるんだ僕はー
 た、確かに元に戻れる可能性はありそうだし、
 可能性があるなら試そう!ってなるのは
 当然のことじゃないか!”

自分で自分に対して、必死にそう言い聞かせると、
愛華(紀明)は「あ、う、うんー…それで元に戻れるならー」と、
ドキドキバクバクしながらー
ようやく、”キス”をしたー

好きな子の身体で、自分とキスをするー

目の前に、自分の顔がー…

「ーちょ!ちょっと待って!タイム!」
愛華(紀明)が思わず叫ぶと、
紀明(愛華)は「えっ!?」と、少し驚いた様子で言うー。

「ーえ…いや…そのー…
 ぼ、僕が僕とキスするみたいで
 なんか…気持ちの整理がー」

と、愛華(紀明)は困惑の表情を浮かべるー

実際、キスしようとしてみるとー
”好きな子の身体で自分の身体とキスをする”という状態は、
何だか”自分の身体で自分とキスをする”ような錯覚を
してしまいー、頭がバグりそうになるー。

「ーーあ~…それはちょっと分かるかもー
 目の前に自分の顔があると、びっくりするよねー…」

紀明(愛華)もそんなことには賛同しながらもー
「ーわたしも頑張るから、若林くんもがんばろ!」と、
鼓舞する言葉を口にするー

愛華(紀明)は、深呼吸をすると、
ようやく気持ちを落ち着けて、そのまま”自分”と、
キスをしたー。

けれどー…
元に戻ることはできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーわたしのフリをするコツは、そんな感じかなぁ…」

紀明(愛華)が一通り説明を終えると、
学校の近くの道を歩きながらそう呟いたー

「ー僕に、西岡さんのフリなんて…できるかなぁ…」
愛華(紀明)がそう言うと、
紀明(愛華)は「大丈夫!できるできる!それにー」と、
スマホを取り出しながら紀明(愛華)は
「困った時はお互いに連絡を取るようにすれば、大丈夫でしょ?」と、
スマホの連絡先交換を求めて来るー

ごく自然に連絡先を聞かれて
愛華(紀明)はドキッとしながらも”好きな人”の連絡先を
予想外のカタチで入手することになってしまったー。

「ーーあ、そうだー…若林くんの家ではどんな風に過ごせばいいのかな?」
紀明(愛華)がそんな風に呟くとー、
愛華(紀明)は「えっ…僕?」と、言いながらー

ふと、”あること”を思い出して青ざめたー

「ーーーあ」
愛華(紀明)が表情を歪めるー。

紀明(愛華)が「え?」と不思議そうに言葉を口にするー

”ーー西岡さんが僕の身体で僕の家に帰宅するってことはー
 ぼ、僕の趣味とかー…全部、見られちゃうー?”

そう思いながら、愛華(紀明)は、
”お、終わりだー…”と、心の中で絶望の言葉を口にしたー

②へ続く

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コメント

入れ替わってしまった二人…!

次回からが本番(?)ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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